結婚の向こう側
恋人が突然いなくなった日から、一年が過ぎ、主人公の新たな恋が始まったが...
結婚して3ヶ月が過ぎた。
結婚後は俺の仕事が変わった。
結婚前に働いていたプールバーでは、
夕方4時に店に行き、開店準備をして6時open、夜中の2時close。忙しいと朝五時頃まで営業することもあった。
それから帰宅して、就寝は大体昼前という生活だった。
その職場のプールバーが潰れ、俺は塗装工になった。
塗装工の朝は以外に早い。朝五時頃起床し、現場には八時に着くように毎日家を出た。
そして、夜暗くなるまで、一生懸命働いた。
塗装工になるきっかけは、店が潰れて職を探していたときに、たまたま兄と話す機会があった。
「実家が塗装業を営んでいるのだから、親父の手伝いをしながら、手に職でも付けろ!所帯を持ったなら、ちゃんと昼の仕事をして、家庭を守れ!」と、説教に近い説得をされ、仕方なく塗装工になった。
子供の頃は、ペンキの臭いに馴染めず、「こんな臭い仕事には絶対に就かない!」と心に誓っていたはずが、朝から晩まで刷毛を握り、ローラーを転がし、身体にシンナー塗料の匂いが付くまで、汗水垂らして働いていた・・・
俺は、俺の求める幸せな家庭を築くために一生懸命働いた。
そんな俺が憧れていた家庭とは、ごく当たり前の普通の家庭だった。
仕事が終わり、自宅に帰ると、玄関に明かりが点いていて、玄関ドアを開けると、明るい声で「お帰りなさい!」
と愛する人の声。
そして、バタバタと駆け寄る俺の子供。
屈託のない笑顔で俺を見つめ、「パパーっ!お帰りーっ!」
と、抱きしめられる。
時間にして十秒...1分とかからない幸せを求めて俺は生きてきた。
そんな家庭が恋しくて俺は結婚をした。
しかし、俺の努力が足りなくて、俺の愛と思いやりが伝わらなくて、籍を入れてから半年で別居、そして、離婚...
共働きで、妻の帰宅が遅く、休みも一緒になる機会がなく、付き合っていた頃より笑顔と会話が無くなっていった。
俺の理想としている家庭を造るにはかなりの時間と努力、そしてお金が必要だと気がついたとき、俺は別れを決めていた。
彼女も、素直にそれに従った。
そして、あっけなく俺の結婚生活はおわった。
半年の同居、そして半年の別居...
そして暑い夏が終わった。
若干二十歳の夏だった...
若さゆえの恋はほろ苦い思い出が残る。
離婚を経験し大人になっていく主人公。
その先にある道は常に蕀の道だった。