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君に伝えたいこと  作者: まさのし
1/3

様々な愛情

親の愛情に恵まれないで育った子供が大人になり、様々な恋愛を通じて愛とは家族とは何かを模索して、時にに激しく、時に優しく人を愛して生きていく

電話がなった。

はい、もしもしどなたですか?

...

こんばんは...

暫くの沈黙の後に聞こえた受話器の向こうの声は、俺の鼓動を加速させながら、俺の脳裏に、懐かしさと切なさをあわせ持った言い知れない感情を想い出させようとしていた。

こ、こんばんは・・・

誰だかわかる?

誰って?だれ?

やっぱりわからないの?

あれから何年もたってるからね...


その言葉のやり取りのなかで俺の中に、三年前の光景が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。


あれは俺が18歳のある日、仕事帰りに神奈川県のとあるパチンコ店に遊びに行っていた時の事。

彼女はそこにいた。


髪の毛は金髪、胸元まで有りそうな長い髪の毛をボニーテールにして景品カウンターの中に立っていた。

笑顔がとても可愛い小柄で色白な女性。一件ヤンキー風ギャル。俺的には、髪の毛を黒髪にしたら知的な女性の雰囲気を持つ、より清楚で、綺麗な女性になるような気がした。

だから正直金色の髪の毛は似合ってなかった。


けれど、何故かその彼女の笑顔に一目惚れし、貴賓ある雰囲気に魅了されて毎日そのパチンコ店に通う羽目になった。

そして毎日景品を取れるまでパチンコを打った。


景品を代えるときが、唯一彼女と話が出来る瞬間だからだ。


おはようー。

おはよ。

今日勝った?!

勝った!

また明日も来るから頑張るよ!

君も頑張ってね!

有り難う!


そんな当たり前の言葉を交わして、時間として1分も満たない会話のなかで俺の頭の中は彼女のことで一杯になった。

寝ても覚めても彼女のことが愛しくなり、あの笑顔に恋心を覚え、日々の仕事が手につかないほど、彼女の事が好きになった。

つぶらな瞳、綺麗な長い髪、愛情ある唇、笑うと微かに出来る頬のくぼみ。透き通るような綺麗な声。

どれを取っても俺好みの可愛い女性だった。

そして、誰もが羨むような可愛い女性だった。


そして、ある日この熱い想いを伝えるべく彼女を食事に誘った。


お疲れ様ー!

いつも仕事何時まで?

終わったらご飯でも行かない?


断られる可能性は無し!

自信があった。


車持ち、バイク持ち、少し小金持ち、社会人野球のエース!スポーツ万能!細マッチョ!自称イケメン...当時の言葉で、イケメンと言う言葉はなかったが、そこそこ良い男の部類に入っていたと思う。当時イケメンの代わる呼び方は、醤油顔とソース顔。そんな調味料的な冴えない言葉で日本男子を呼んでいた時期もあった。


なんて国だ!


醤油顔ってどんな顔だって思ってたけど、会社で俺は醤油顔の部類に入れられていた。

俺の友達はソース顔。

ソースって焼きそばか?!

どんな顔だっ!...

そいつはいつも怒っていた。。。


そんな醤油顔の俺が彼女とデートの約束をするのに

時間は掛からなかった。


のはずだった...


いつも仕事は何時まで?

早番と中番、遅番があって、今週は中番で九時までだけど...

じゃあ今日終わったら駅で待ってるから焼き肉でも食べようよ!


ね!

...

今日はダメ、かな...

ダメって?彼氏でもいるの?

なんか用事あるの?

...ないけどいきなりは出れないかな...

そっか、じゃあ今度!

今度行こうよ!

うん、ごめんね...

中々忙くて...

そっか...駄目かぁ...


こんな話をパチンコ店のカウンター前で話をしていると、景品を交換しようとしている後ろのお客の視線が突き刺さる...

このままでは彼女の仕事に支障が出るので、一度外に出た。


えっ!何!

振られたってこと!?

えっ!

チッキショー!!

何がダメって!?

何で!

マジか!

彼氏いねーんじゃねーのか!?

なんで??!!

どして??!!

自問自答を繰り返す。


醤油顔はしょっぱいからか嫌だってか!?

ソースがいいのかぁ!!

ソースねー...

ソースすると、醤油はどうなんだ!?

ソースねー...

要するに振られたってことでしょ?

あっ!?醤油ーことですか!?


って、一人で訳のわからない漫才をして、悲しみを紛らわし、

車の中で疑問を投げ掛けながら、込み上げる苛立ちを押さえられずにいた。


何で振られるの...

悲しみが溢れ出す。


そんな悔しさと切なさが頂点にたどり着い時、俺は

車を海に向かって走らせていた...

海には40分位で着いた。

車中では、フロントガラスが雲って前がよく見えない。

何度も何度も曇ってくる。雨も降っていないのに...


そして海に着いた。

湘南の海。

海に問いかける。


彼女に思いを伝えるには、俺の想いが伝わるためにはどんな方法が良いか教えて欲しい。

このまま諦めるのか。

まだまだ行けるのか?


迎える波の音が優しく俺を包んでくれる。

そして返す波が悲しみを包んでくれる。


カウンター越しでの会話には限界が有る。

仕事中に愛を語れない。


波の音を聴きながら瞑想に耽た。

そして、波の音が教えてくれた方法は...


ラブレター...


当時はメールもパソコンも余り普及していない。

勿論携帯電話も持っていない。

そんな当時の若者達が愛を語る方法は、公衆電話と

ラブレター。

そのラブレターに思いを馳せ、彼女に俺の気持ち伝えようと決めた。

彼女を思い、感じ、憂いながら一字一句真摯に書く手紙こそが最高の愛の伝達方法だと信じて...


俺は精魂込めて彼女に手紙を書くことにした。


名付けて、(話が駄目ならラブレターはガムを紙ながら出そう作戦ー!)

と命名した。

その名前の通りに、ガムの包み紙の裏に愛を綴る作戦だ。

ガムの包み紙なら小さくて誰にも気付かれず、彼女に渡した所を誰かに見られても、紙くずを渡していると思われ、何度でも愛の言葉を彼女に伝えられる画期的な作戦だ。



そして、彼女が本当に俺の彼女になった時に、沢山の便箋に愛を綴ることを心に誓い作戦を実行することにした。


次の日から俺は沢山のガムを買い込み、その包み紙の一枚一枚に彼女への思いを綴り、何度も何度もカウンターを行ったり来たりした。

何日も...景品も持たずに...



君と食事がしたい!

少しでいいから俺に時間をください!

君に一目惚れです!!


包み紙は小さいので書けることは少ない。

しかも字も小さくなる...

今ならあのCMの眼鏡が有れば大きく見れるのかも知れないが...


君と沢山話がしたい、

何時までも待ってるから、駅で待ってるから。

五分でいいから話がしたい!

返事下さい。


君を大事にしたい!

会いたい...


いつまでも返事はなかった。

彼女は賑やかに笑うだけで、何の返事もなかった。


やっぱりもうダメか...

何日か過ぎた頃、俺の心にも敗北感が溢れ、嫌われている事を分かっていないかも知れないと言う、嫌悪感が芽生え始めた。


今日で最後にしよう。


そう決めた最後の手紙。


一度で良いから時間をください。

最後の手紙です。

一方通行だけど君が好きです。


二枚目に続く。


今日駅で君を待ちます。

来るまで待ちます。

君と話がしたい。

これで最後にします。



二枚のガムの包み紙を畳んで彼女に渡し、彼女のが見える角のパチンコ台に座り彼女の反応を見ていた。


手紙を見た様子は有るけれど返事が来る様子はない。

仕方がないこれで帰るか。。。

そう思った瞬間、俺の台が大当たりした!

ピロリロリーッ!

ピロリロリーッ!


おっ!?

ラッキー!

取り敢えずこれ打ち止めして帰ろーっ!


見事打ち止めして、出玉を交換して、何度も何度もレシートを持たずに行ったり来たりしたカウンターに今度は堂々と並ぶ。

その手にはもうガムの包み紙はない。


そして彼女に手渡す紙。

それは本物の交換用レシート。

その顔は少し驚いていた。


俺の気持ちは晴れやかだった。

一週間だけど毎日彼女に会えて、一方通行だけど彼女に思いを伝えられて、パチンコも最後に打ち止めになって...


そして景品を貰うとき彼女に言った。


頑張ってね。

有り難うね。


彼女はうつむき黙ったまま俺に景品をくれた。



そこには景品と一緒に挟まれた一枚のガムの包み紙が

...


10時になるけど待っててください。

...

うぉーーーーーーーーーーーーっ!!


歓喜の瞬間。。

俺は腹の底から叫んでいた。


そして、待ち合わせの場所でドキドキしながら憧れの彼女を待っている自分が、この先の人生で棘の道を歩む事になるとは誰も知るよしもなかった。


そして、

彼女が来た!

可愛い!

私服の彼女も最高だ!

黒のミニスカート、胸元が綺麗に見える白いカットソー

綺麗に束ねた長い髪...


最高に素敵です!!


ごめんねー!呼び出してー!

うん、あんな手紙ビックリしたけど!

だよね!

でも可愛いくて笑ったーっ!

小さくて見えないし!

次はきちんと手紙送ります!

うん、待ってる。

どうして今日は急に来る気になったの?

だって最後にって書いてあったし、

本当に最後なんだと思った瞬間寂しくなって...

そっか...

...

じゃあ取り敢えずご飯にしよーお腹空いたでしょ?

ね!

...うん。

よし!

ご飯ご飯ご飯にしよーっ!

ね!

うん。。

取り敢えず焼き肉ー!!

焼き肉ーっ!

レッツゴー!!

...レッツゴー!!


そんな笑顔に包まれた素敵な彼女と小田急線で横浜に出て、駅近くの焼肉屋で食事をしながら色々な話をした。

けど...内容は覚えいない。

彼女の可愛さと嬉しさと楽しさ、全ての喜びで肉の味も、何を注文して何を飲んだのかも、店の場所も分からないほど心身共に満足していた。

覚えているのは、彼女の瞳と屈託のない笑顔だけだった。


その日は食事をすませ、もうそろそろ時間だと言う彼女を、待ち合わせをした駅まで送り、今日この日は二人の初デート記念日として、彼女の後ろ姿が見えなくなるまで見送った。手を振る彼女の姿が見えなくなってもその残像を追いかけて、暫くその残り香を楽しんでいた。

そして、夢冷めやらぬまま帰路に着いた。


至福の一時だった。

人生で最高の一時だと感じた一日だった。


次の日から毎日のように、ガムガム作戦を決行して、その都度作戦は成功を収めた。

そして、心身共にお互いが愛し合う事に、それが当たり前のようになるまでに、時間は必要なかった。


好きだよ。

愛してる。

私も。

こんなに人を好きになれるなんて、信じられない...

俺も...

お互いを思うときに出る言葉は、ありふれたどこにでもある愛の言葉でしかない。

でも今は、そのありふれた言葉がお互いを繋いでいる。

互いに求め、互いに惹かれ、互いに生を感じた日々が続いた。


そんなある日の帰り際、彼女が電車の中で呟いた。


このまま何処かに行きたいな...

何処かに?

そう...誰もいない、誰も、誰も私たちを知らないところに...

バーやん連れってくれる?

私を誰も知らないところに連れてってくれる?


一瞬...意味が分からず困惑した。

何処かってどこ?

どこに行きたいの?

どこでも連れてってあげるけど...

知らないところにって...

...何でもない!

バーやんと離れたくないってこと!

イタズラにそう言うと彼女は窓の外に目をやった...


あのとき、彼女の瞳が潤んでいたことを俺は気付かなかった。


その次の日、何時ものように仕事を終えて、彼女に会う為に、彼女が勤めている店を勝手に戦場に見立てて、彼女がいる店に向かった。


そして一人芝居で店に潜入した。


前方左舷に目標を確認せよ!

了解!


隊長!

どした?

彼女が居ません!?

何!?


よし!右舷後方に戻り偵察せよ!

ラジャー!


隊長!

何だ!?

右舷後方にも居ません!

...

よし!

後方待機!

店が閉まるまで待機!!

了解!



その日は、店の隅々を閉店まで探した。

何度も店を出入りして。

時に出そうもない台に座り時間を潰して、彼女が現れるのを待っていた。


隊長!彼女が見つかりません!

仕方ない

今日は引き上げよう...

作戦は中止だ!

二等兵は悲しみに溢れ帰路に着いた。

その日、彼女には会えなかった...


昨日は、休みって言ってなかったけどなー...

体調でも壊したのかな?

何でもなければ良いけど...

明日は逢えます様に...

そんな祈りをして信じていない神様に手を合わす。


そして、次の日の朝!

ヨシ!今日は、あの笑顔に会える!

早く彼女に愛に行こう!

1日会えない日が有ると、その反動で気が狂うほど愛しくなる。

たとえ一時間でも、1分でも彼女に会えないと思うと心が張り裂けそうになる。


今日はあの笑顔に逢えると信じている。

神様お願い致します!

そして定時で上がり足早に店に行く。


慌てず焦らず相手に会わせて愛ラブユーだ!!


この言葉は、当時流行っていた横浜銀蝿という、ロックンロールグループが歌っていた歌の歌詞の一部で、当時俺の好きな言葉の一つだった。

曲のタイトルは覚えていないが、そのグループの歌全てが俺の青春だった。

そして、その青春を謳歌するべく俺は彼女に愛に行く。


そして、何時ものようにカウンターで素敵な笑顔を見せているはずの彼女が、

いない!...

今日もいない!!?


心がざわつく。

??!!

そして、次の日、また次の日も。

あの素敵な笑顔が見つからない。。。

突然彼女が俺の前から、

消えた...














自分の愛する人達からの愛情が受けられず苦悩する生きざまの中に、本物の愛とは、人生とは何かを見つけ出そうとした作品。

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