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日常に溶け込んだ非日常が浮き彫りになる瞬間に

作者: 昏虐 正念
掲載日:2019/04/28

 ――テントウムシみたいだね。


 彼はそう言って、一定間隔で走行する軽自動車の1つを捕獲したんだ。


 そうしたら、彼はそれを指で摘んで、顔の前に持っていって、まじまじと観察する。


 ――やっぱり、これ、ただの車だ。


 僕は呆れて、


 ――当たり前だよ。最初から、それは軽自動車さ。


 彼は、軽自動車を元の道路に戻して走らせ直した。


 緩やかに湾曲する湖岸の道路を、同じような軽自動車が、一定間隔を開けて、列を成し、等速で移動する。


 ――やっぱり、テントウムシだよ。


 彼は視線を巡らせて、


 ――あの平べったいのは、タマムシかな。


 彼にとって、その光景は、虫の移動に見えるようだ。


 ――この生物は、何だか機械的で気色悪いね。


 僕は何となく同意する。


 ――ああ、唸り声が不快だね。


 すると、彼は明らかに不機嫌そうに言うんだ。


 ――君、つまらないね。


 僕は訳が分からず聞き返した。


 ――え?


 彼は人差し指を使って、走行する車の1台を弾き飛ばした。


 ――彼ら、気持ち悪いんだよ。でも、ずっと見ていられる。


 そう言いながら、彼の視線は道路上から離れない。


 ――ほら、やっぱり、1つ欠けたくらいじゃ、止まらないよ。また新しい流れが生まれて、そこが道になって行くんだ。流れは、止まらないんだ。


 彼はようやく顔を上げた。


 ――ああ、気持ち悪い。




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