日常に溶け込んだ非日常が浮き彫りになる瞬間に
――テントウムシみたいだね。
彼はそう言って、一定間隔で走行する軽自動車の1つを捕獲したんだ。
そうしたら、彼はそれを指で摘んで、顔の前に持っていって、まじまじと観察する。
――やっぱり、これ、ただの車だ。
僕は呆れて、
――当たり前だよ。最初から、それは軽自動車さ。
彼は、軽自動車を元の道路に戻して走らせ直した。
緩やかに湾曲する湖岸の道路を、同じような軽自動車が、一定間隔を開けて、列を成し、等速で移動する。
――やっぱり、テントウムシだよ。
彼は視線を巡らせて、
――あの平べったいのは、タマムシかな。
彼にとって、その光景は、虫の移動に見えるようだ。
――この生物は、何だか機械的で気色悪いね。
僕は何となく同意する。
――ああ、唸り声が不快だね。
すると、彼は明らかに不機嫌そうに言うんだ。
――君、つまらないね。
僕は訳が分からず聞き返した。
――え?
彼は人差し指を使って、走行する車の1台を弾き飛ばした。
――彼ら、気持ち悪いんだよ。でも、ずっと見ていられる。
そう言いながら、彼の視線は道路上から離れない。
――ほら、やっぱり、1つ欠けたくらいじゃ、止まらないよ。また新しい流れが生まれて、そこが道になって行くんだ。流れは、止まらないんだ。
彼はようやく顔を上げた。
――ああ、気持ち悪い。




