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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

オレのチ◯コを食べてくれ!

「ねぇ、ダーリン? あなたがウチのお兄ちゃんと密室で二人っきりになって、チ◯コを舐めてたって学校新聞に載ってたんだけど?」

「ブフォ!!ゲハッ!!ゴホゴホ!!」

大学受験本番も近づいたある日の昼休み、オレが教室で英単語帳を横目に見ながら弁当を喰っていたら、恋人の美咲(みさき)が満面の笑みで語りかけてきた。

これあかんヤツや。口が笑ってるのに目が1ミリも笑ってない。

「……あぁん? オレと高和(たかかず)が? いったい誰がそんな下らねぇ与太記事書いたんだよ。そんなことより、お前も入試が近いんだから勉強しろよ」

オレは裏返りそうになる声を必死で堪え、なるべく不機嫌そうな低い声を出す。

「新聞部の京子よ。昨日の放課後、家庭科室でコソコソ二人でなんかしてたから、コッソリ覗いたら見えちゃったんだって」

あの腐女子の京子かよ!

「そそそそんな訳ないだろ!鍵だってキチンと閉めたし、暗幕だって引いてあったはずだ!」

「語るに落ちるとはこのことよね。鍵穴からファイバースコープカメラで盗撮したそうよ。」

あんのクソバカ盗撮マニアが!

いや、だがまだ隠し通せるはず。

「たっ、たまたま授業で分からなかったことがあったから聞いてたんだよ」

「放課後の密室で二人っきり、あま~い空気を漂わせていたって書いてあるわよ?」

美咲がジリジリと顔を寄せながら地獄の底から響くような声で畳み掛けてくる。

「黒光りしててカチコチだったとか、初めは硬かったけど口に入れて舐めていたら液体が出て柔らかくなったとか!」

「おおお落ち着け、ごごご誤解だ!!」

「何が違うっていうのよ! 私に近付いてきたのも、どうせお兄ちゃんが目当てだったんでしょ! やっぱりあなたも女の私なんかより、男の方がいいんでしょ?」

「オレが男なんか好きになる訳ねーだろ!」

「そういえば、今朝お兄ちゃんが、お尻が痛いって言ってトイレにこもってた! あなたまさか、お兄ちゃんのお尻を!」

「それは全部勘違いだから!」

ダメだこいつは、京子の腐女子菌が脳にまで感染したのか?

何と言えば、美咲は納得してくれるのだろうか?

誤解を解こうと、焦れば焦るほど頭が白くなっていく。


「ねぇ、本当に私のことが好きなの?」

昼休みの教室に静寂が訪れる。

ポトリと美咲の頬から落ちた涙の音が聞こえた気がした。

オレは美咲の目を見つめたまま瞬きもせず、たっぷりと呼吸三回分沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。

「明日まで隠すつもりだったんだがな……」

「やっぱり、私と別れるつもりだったのね!」

「違う!!」

思わず声を荒らげてしまうと、美咲はビクリと肩をすくめ、半歩退いた。

オレは追いかけるように椅子から立ち上がり、彼女を力一杯抱きしめた。

美咲はオレの胸に顔を埋めたまましばらく暴れ続けた。

どのくらい時間が経っただろうか。ふと力の抜けた美咲の耳元で、オレは囁くように言葉を紡いだ。

「美咲。お前は嫉妬深いし、すぐ勘違いして暴走するし、料理は下手だし、チビだし、胸なんかオレよりペタンコだし、お前を好きになるやつなんて少ないだろうな」

ドスンとオレの脇腹に拳が突き刺さるが、気合いでこらえて言葉を続ける。

「だ、だがな美咲。お前が優しくてイイヤツだってことは誰よりもオレが知っている。東に疲れた婆さんが居れば荷物を持ってやり、西に泣きじゃくる迷子が居れば日が暮れるまで一緒に探してやり、北に雨に濡れた子犬が居れば里親を探してやり、南に……」

「バカ。ほめたって許してあげないんだから」

再び脇腹に拳が弱々しく刺さる。真っ赤になった美咲の耳たぶにオレは語り続ける。

「何よりお前はオレを受け入れてくれた。オレみたいに鈍くて、不器用で、喧嘩っ早くって、バカで……」

オレは少し体を離し、美咲の両頬に手を添えて、目を見つめながら言葉を続ける。

「オトコみたいにガサツでズボラ、そんな『()』であるオレをだ!」

オレは一歩下がると、スカートのポケットからリボンでラッピングした袋を取り出し、(ひざまず)いて美咲にそれを捧げた。

「美咲、改めて言おう。好きだ。大好きだ。男とか女とかそんなこと関係なく、お前がお前であるから、オレは世界の誰よりもお前のことが大好きなんだ!」

情けない事に、心臓が喉から飛び出るほど脈打ち、美咲の目を見ることも出来ずに床を見つめる。

「それは何?」

「え~と、あの、その……」

「ハッキリ言いなさいよ、あなたらしくもない!」

俺は意を決し、美咲の目を見つめて言い放った。

「オレのチョコを食べてくれ!」

教室の静寂が耳に痛い。

「は? え? なにそれ?」

美咲が戸惑ったような声を上げる。

「明日が何の日だか忘れたのか?」

「えっと、今日は2月14日だから……、バレンタインデー!?」

いくら女子高の受験生だからといって、女の一大イベントを忘れるとは。

しっかり者のようでいてどこか抜けている美咲らしくて、オレは頬を緩める。

「そう、バレンタインデーだ。そしてこれは、オレの手作りの本命チョコだ」

「え? だって、あなた料理なんてしたことないでしょ? 一体どうやって?」

「美咲の兄貴が家庭科の教師だっての忘れたのか? 頼み込んで教えてもらったのさ」

「じゃあ、あの新聞の記事って……」

「もう一度読み直してみろよ。腐った脳した京子の悪ふざけさ」

「お兄ちゃんがお尻痛いって言ってたのは?」

「あ~、あれは正直スマンかった。ウイスキーボンボンを試食してもらったんだが、うっかり間違えてタバスコを大量にぶち込んじまってな」

「なにそれ、バカみたい」

安心して膝の力が抜けたのか、倒れそうになる美咲を慌てて抱きしめて支えた。

「オレの本命チョコ、食べてくれる?」

真っ赤になって硬くなっている美咲が小さくうなずくのを見て、オレはチョコを取り出すと、口にくわえて美咲に優しくキスをした。

始めはカチコチだったが、舐めるうちにだんだんと甘く柔らかくなっていった……。


ところで、すっかり忘れていたんだが、そろそろ教室の皆の生暖かい視線が痛い。

そんな事も気にせず、美咲が嬉しそうに言った。

「そうそう、こんなに情熱的な本命チョコをもらっちゃ、お返ししない訳にはいかないわよね!」

「ヴぇ?」

思わず変な声が出た。

美咲は、()()()()()()()()()()なのである。

「私のチョコ、食べてくれるわよね?」


翌日、高和とオレが、ケツを押さえながら仲良くトイレにこもったのは言うまでもない。

小説を投稿している友人に憧れて、初投稿してみました。

「女主人公、勘違い、チョコ」と三題噺のお題をいただいて書いてみました。

タイトルと内容につきましては……、正直、本当にこれでいいのかと、書き上げてから自問自答しましたが、せっかくなので投稿してみました。

いや、「タイトルは目立つ方が良い。むしろ、目立たないと見てもくれない」と聞いたもので。

(「違う、そうじゃない!」by友人)

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