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90、それぞれの優しさ


 キラ君が王族!?

 衝撃的な事実に驚いていると、寝ていた筆頭騎士たちが身動きするのが見える。どうやら謎の睡眠から目が覚めたみたい。


「んー? なんで俺、寝てんだ?」


「やけに頭がスッキリして……うーん?」


 気だるげに夜色の髪をくしゃりと搔きあげる美丈夫と、ふわぁと小さくあくびをする銀髪の美青年……眼福ですっ!!


「時間的に数分ってところかな? 体力は回復したみたいだねぇ」


「ああ、なんか体が軽くなってるな」


「目の疲れが、だいぶ取れました」


 ジークリンドさんは昨日からずっと、恩寵『祈り』を使って色々と試していたとのこと。

 え、それって大丈夫なの?


 ハラハラしている私を見て、ジャスターさんが苦笑する。


「たしかに姫君の恩寵は不思議な現象を起こしますが、基本的に塔の中では危険なことが起こらないようになっていますから」


「そういえば、最初に聞いたような気が……」


 でも、訓練場でキラ君は怪我をしているし、レオさんたちが突然寝ちゃったりしているけど、それは危険に入らないってことなのかな?

 何が「危険」と認識されるかにもよるのかも。うーん、わからん。


「それで、姫さんに何があったんだ?」


「え? ああ、そうそうキラ君が王族だってジークリンドさんから聞いて、驚いていたの」


「そういうことでしたか。かなり強い衝撃だったので、姫さまがおじいさまに何かよからぬことを言われたのかと……」


「ジャーたん、じぃじのことをそういう目で見ているとか! すごく悲しいよぉ!」


 ここぞとばかりに抱きつこうとするジークリンドさん。ジャスターさんはひらりと身をかわした。


「強い衝撃?」


「四季姫様の騎士になると、世界の根の部分で繋がることになります。信頼関係の程度にもよりますが、姫君に何かあった時……以前のようなことがあれば、すぐに分かりますよ」


 以前のようなっていうのは、魔法陣の誤作動や誘拐されたりしたことかな。

 ふむふむと納得していた私は、はたと気づく。


「いや、そうじゃなくて。キラ君が王族だっていうの、驚かないんですか?」


「彼が騎士になる前に身元を『鑑定』で調べてますよ。筆頭にも報告済です」


「あれ? 私には?」


「すまない。言わないでほしいと頼んでいたのだ」


 しょんぼりとしているキラ君を見たら、知らなかった寂しさとかどうでもよくなる。

 そうだよ。キラ君は騎士になってくれた時、家名を捧げるって言ってたもん。

 王族だとか身分なんて関係ないよね。キラ君は、キラ君なのだから。


「ジークリンドさんは、なんで知ってたのです?」


「そりゃ、貴族年鑑は年代ごとで覚えているからね。珍しく抹消されていたから、どういう理由だったのか気になって調べてみたら、キアラン君だったというわけだ」


「恐ろしい頭の構造をしているのだな」


「あはは、こんな老人を褒めても何も出ないぞぉ」


「いや、別に褒めてはいないが……」


 ふわふわな金髪を揺らし眉間にシワを寄せていたキラ君は、私を見るとまたしょんぼりとする。


「黙っていて、すまない」


「いいよ。王族だからってキラ君がどうとか思わないし、レオさんたちも何か考えがあったんだろうから。でも、図書館にいく権限って……」


「一応、王族が権限を得られるなんて言われているけれど、そうでもないんだよ。神界の端っこにあると言われる図書館は、権限を持つ者が一人だけ連れて行くことができるんだ。たぶんレオ君と春姫たんは資格を得られるだろうから、ジャーたんとキアラン君がいれば何とかなると思うよ」


「え!? ジャスターさんも持っているんですか?」


「自分は幼い頃、おじいさまに連れていかれて……修行として道中の魔獣狩りをさせられました……ちょっと、思い出したくないくらいの辛さでしたね……」


 心なしか青ざめているジャスターさん。

 なんというスパルタおじいちゃんエルフ。おそろしい。


「あ、あ、そんな目で見ないでおくれ春姫たん!」


「きっと天使のように愛らしかっただろう幼いジャスターさんを、魔獣狩りさせるなんて……ひどいです」


「そんなぁっ!」


 がっくりとうな垂れるジークリンドさんは放置しておくとして、図書館に行く話をかためることにする。


「もしかしたら、恩寵について詳しく書かれている本とかあるかも」


「そうだな、次の儀式が終わったら行ってみようか?」


「はい! よろしくお願いします!」


 ぺこりと頭を下げた私は、隅っこでイジけているジークリンドさんを見る。

 ジャスターさんとキラ君で、私とレオさんを連れて行くように言ってたけど……。


「ジークリンドさんも行くんですよね?」


「おじいさまは、たぶん行かないと思うよ」


「そうなんですか?」


 祈ってやるーなどと何やら不穏な行動をしようとしたジークリンドさんは、やめさせようとするレオさんの攻撃をかわしたりして楽しそうだ。


 なんにせよ次の儀式が終わってからだと、気合いを入れた私は『身体能力強化』を使い、騎士たちの訓練に混ざるのだった。




 全勝したよ。やったね。


お読みいただき、ありがとうございます。


暑い日が続きますが、皆さま体調には気をつけてくださいませ。

もちだも無理せず、ゆっくりやることにします。

これからもよろしくお願いします。

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