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63、双子の神秘とピンクな執事


 騎士たちとも顔合わせをさせたかったから、今日だけ夕食の席にチコちゃんとルーくんを呼ぶことにした。セバスさんが親御さんの許可をもらったという報告に、その考えがうっかり抜けていた私は反省している。ありがとセバスさん。

 

 ペコリとお辞儀して挨拶するオレンジのふわふわ頭の二人を、ジャスターさんとキラ君は物珍しげに見ている。


「チコリです」

「ルークです」

「よろしくお願いします」

「ちゃんとお仕事します」


「ずいぶんと可愛らしい司書さんたちですね。セバス殿の見立てであれば間違いはないのでしょうけれど」


「幼いがしっかりとしているようだ」


 キラ君は私の騎士になってから身分というのをあまり気にしなくなったみたい。あの時は見張りっていう役目もあったからなのかなと思ったりするけど、変に見下したりとかしないから彼も成長したんだね。きっと。

 夕食の時間に、この日にあったことの報告を受けるのが日課になっている。今日のメインはもちろん双子ちゃんの「初めての司書勤務」だ。


「神王様の麟について書かれたものはなかったです!」

「神王様について書かれた神話は数冊ほどあります!」


 塔の書庫には一般的な神話のようなものしかなくて、神王の麟であるアサギについて書かれたものはないってことだよね。うーん残念、アサギの寝てる時間が長いのが、悪いことじゃなければいいんだけど。

 私の表情に何かを感じたのか、チコちゃんとルーくんが申し訳なさそうにしている。


「お姫さま、ごめんなさい」

「本なくて、ごめんなさい」


「えっ、いやいや大丈夫だからね!」


 アワアワしている私を見かねて、料理長のモーリスさんがしょんぼりしてるチコちゃんとルーくんに甘いお菓子をあげている。それを笑顔で受け取っている二人にホッとした私はふと気づく。


「ねぇ、あの書庫の中、全部の本を探してくれたってこと? 今日一日で?」


「はい。整理整頓は明日です」

「はい。目録も作り直しです」


 大きな図書館というほどでもないけれど、書庫にはかなり多くの棚があってギッシリと本が詰まっていたはすだ。それを全部確認したとかこの子たちもしかして……。


「姫君、この子達を鑑定してもよろしいですか?」


「私はいいけど……チコちゃんルーくん、このお兄さんに見てもらっても大丈夫?」


「はい!」

「はい!」


 鑑定の意味が分かるのかと思ったけど、そういえばこの子達すごく頭が良いというのを思い出す。ジャスターさんはしばらく何かを呟きながら二人を見ていたけど、やがて少し強張った顔を私に向ける。


「姫君、二人とも恩寵を持っています。『感応』と『記憶』です」


「二人とも同じ恩寵なの?」


「そうです。おそらく二人が別々に見たものを『感応』で共有し、全ての情報を『記憶』していくのではないかと」


「だから私がお願いした本が町の図書館にないって分かったんだね。……ちょ、ちょっと待って。恩寵って国に囲われたりするとか、そういうのじゃなかったっけ?」


「恩寵持ちは国に管理されているはずだ。騎士学校では恩寵を検査し国に報告が上がるが、日曜学校にその義務はない」


 キラ君も難しい顔をしている。これって、つまり……どうしたらいいのかな? この子達は塔にいていいんだよね?


「塔の関係者でいる限り、どの国とも関わりはありません。この子達は今までどおりご両親の元で暮らせます」


「今までどおりって……もし塔の関係者じゃなかったら?」


「国に搾取される。貴族ならともかく平民であればどこぞの貴族の養子にされるかもしれない」


「そんなっ!!」


 こんな小さな子達を親御さんから離すなんて……と、思わず声を荒げた私はチコちゃんとルーくんを見る。すると二人はニコッと笑って言った。


「だから今まで隠してました!」

「ここに来れて良かったです!」


 横でパンのおかわりを置いてくれるセバスさんが小さく頷いている。

 なるほど、セバスさんはそこまで見越していたのか……いやいや、最初に説明してくれても良かったんですけど。


「あのね、増えたのです」

「感応、なかったのです」


 えっ……それってどういうこと?

 セバスさんを見れば驚いた表情だ。ジャスターさんとキラ君も目を見開いている。

 皆が驚いているってことは、これは異常事態だってことだよね? おかしいことなんだよね?

 うわーん! 物知りレオさん! 早く帰ってきてー!







 翌日の朝食後、セバスさんが町に注文していたウサギ小屋が完成したと報告を受けて、私はさっそくウサギ飼育場予定地へと向かう。双子ちゃんずの神秘はレオさんが帰ってくるまで置いておく。

 アサギがうつらうつらしながらも一緒行くと駄々をこねる(姿がめちゃくちゃ可愛かった)ので、サラさんが布バックを作ってくれてその中にいれることにした。体にフィットする作りだから揺れは少ないかな?


「胸の所に入れておくでもいいんだけどね」


「それは筆頭殿に禁止されているだろう」


 私の後ろで護衛してくれているキラ君は呆れてるみたい。サラさんも「はしたないですよ」と言ってたから控えるようにしているけど、フワフワなたてがみとか気持ちいいんだけどな。

 しばらく同室だったピンクのモフモフ達とお別れと思うと少しさみしい。塔の周辺は春の気候で保たれているから、夜とか少し寒かったりするんだよね。


「はぁ、もう一緒に寝れないのかぁ……」


「ブッフォ!!」


「キアラン様、ウサギのことでございますよ」


「わ、わかっている!!」


 キラ君とサラさんが何かやり取りしてたけど、私はこの先アサギだけでモフモフ成分が足りるだろうか不安でそれどころじゃない。

 鳥さんたちを大量に……いや、それはやめておこう。朝とか鳴き声すごそうだし。かわいいけど。


 それよりも気になるのが、上半身がピンク色になっているセバスさんだ。


「春姫様、この先にある小屋が飼育場となっております」


 渋い素敵な声で先導してくれるセバスさんなんだけど、部屋にいたウサギを全部一人で抱っこしているからピンクがすごいことになっているよ。

 キラ君が半分持とうとしたんだけど、護衛の手を塞ぐなど!とキラ君はセバスさんに怒られていた。元はといえばウサギを飼いたいとか言った私のせいだ。ごめんよキラ君。


 それにしても、なんというかどっかの雑技団みたいにウサギを大量に持つセバスさん。ぜんぜん体がブレてなくて、体幹が相当鍛えられていそうだと勝手に妄想してしまうね。ふふ。






お読みいただき、ありがとうございます。

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