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57、モフウサギで副収入を狙う執事


 レオさんの馬に同乗させてもらっている私は、パカランパカランと走る馬の動きに苦戦させられていた。


「ちょ、レオさん、腰とかくすぐったいんですけど」


「ここを支えないと、ケツが痛くなるぞ」


「やん、ダメだってば」


「……グハッ」


 なぜか隣で並走しているキラ君が咳き込んでいる。反対側で走るジャスターさんを見ると、やれやれと肩をすくめていた。


「まだまだ修行が足りないですね。三人で持ち回りするつもりでしたが、キアラン君は外しますか」


「んだな」


 二人乗りでずっと走ると、馬も疲れてしまう。そこで三人交代で乗せてもらうということになっていたんだけど、キラ君は調子悪いみたい。


「ごめんね。私が一人で馬に乗れたらいいんだけど」


「気にすんな。塔に戻ったら乗馬を教えてやるよ」


「ありがとうレオさん」


 乗馬を習えば、きっとアサギにも乗れるようになれるよね。頑張らないと。

 レオさんには他にも教えてもらいたいことがあるから、塔に戻って落ち着いたら相談してみよう。


「おい、もっと腿の内側を意識しろ。ここだここ」


「もう! レオさん変なところに手を入れないで!」


「……グホァッ!?」


「キアラン君、落ち着こうか」


 ずっとむせてるけどキラ君調子悪いのかな?







 アンゴラウス・ベニウサギ……じゃない、アンゴラ・ウスベニウサギたちは無事に塔に迎え入れることが出来た。

 執事長のセバスさんをどう説得するか悩んでいたのだけど、あっさり受け入れてくれたのが嬉しい。モフッてて気づいたんだけど、この子たち抜け毛が激しいんだよね。部屋で飼うと掃除とか大変だよね。


「塔の近くに専用の小屋を建てましょう。ウサギたちの抜け毛ですが、これを町の雑貨屋が高額で買い取ると思いますよ」


「え? ただの抜け毛ですよ?」


「そもそも人に懐くことはなく滅多に森から出てこない希少な生き物ですから、抜け毛であってもなかなか出回らないのです。芝生で運動させても良いのですが、悪い輩に攫われる危険性もありますので塔の結界から出ないよう言い聞かせてくださいね」


「りょ、了解です!」


 春の塔周辺には、芝生と花畑があってぐるっと鉄柵に囲われている。塔の結界はそこまでになっていて、悪意のある人間は入れないようになっているらしい。

 ちょっと前に貴族だと豪語する騎士学校の生徒さんたちが来たときも、確か柵の内側には入れなかったんだよね。


 あれ? ということは……。


「抜け毛が売れるなら、塔を管理する連合国からの支援金以外で収入を得られるってこと?」


「その通りです。春の塔から生まれた『幸運のお守り』という売り文句で雑貨屋に出してもらうのも良いかもしれませんね」


「この世界でもウサギは幸運の象徴なんですね」


 確か元の世界でも、ウサギの尻尾とか足とか幸運の象徴だったような気がする……いや、本物の足とか持ってるのは怖いけど。

 それにしてもピンクっていうのはいいよね。桜色とかって、春っぽいし可愛いし。


「えーと、君たちはそれでいいの? 塔で暮らしたい?」


『モフモフ、ハナにいっぱいモフモフ、してもらいたい。あとキラキラに、いっぱいあらってもらう』


 ピンクのモフモフたちはつぶらな瞳で私をジッと見る。

 やだ……可愛い……めちゃくちゃ可愛い……。そしてキラ君に洗ってもらうのが気に入ったんだね、モフモフたち。キラ君には申し訳ないけど頑張ってもらおう。


 私が動物と話すのをサラさんもセバスさんも最初すごく驚いたみたいだけど、あっさり受け入れてくれた。恩寵だからといっても、かなり特殊なケースなのに不思議に思っていたんだけど理由はとても単純なものだった。


「そもそも四季姫様は神に愛される存在です。この世界すべてに愛されて然るべき存在なのですから、もっとわがままで良いのですよ」


「うーん、とりあえずはウサギたちと一緒に暮らせるのが嬉しいから満足してますよ」


「そういうことではないのですがねぇ……」


 私の言葉に対し困ったように微笑むセバスさんだったけど、ふと窓から私を遠ざける。飛び込んできたのは青い鳥さんが数羽だ。


『ピピッ、もうすぐここにハナと同じなのがくる!』


「え? 私と同じ?」


『チュピッ、赤い服!』


「赤い服? 夏姫かな?」


「鳥たちを目として使うとは……さすが姫様……」


 セバスさんが何やらふむふむと頷いているけど、私は慌てて立ち上がる。夏姫だとするとここに来る目的は私の描いた漫画を読むことに違いない。

 王都には丸一日で帰ってくる予定だったのに、色々あって漫画を描く時間がなかったんだよ。どうしよう。


「姫様、とりあえずお着替えをなさってください。わたくしめはお客様を出迎え、ここ最近の姫様はお忙しくしていたと事前にお話しておきましょう」


「ありがとうセバスさん。夏姫には魔法陣の事故のこと話しても良さそうだけど、一応レオさんたちに確認してからにします」


「それがよろしいかと」


 丁寧に一礼したセバスさんはが部屋を出て行くと、入れ替わるようにしてサラさんが入ってくる。アイコンタクト?でセバスさんから指示を受けたらしいサラさんにお風呂で容赦なく磨かれて化粧を施される。

 恩寵のおかげで肌つや良いから、こういう身だしなみに時間をかけなくてすむのがありがたいよね。


「姫様は磨き甲斐がないですね。元々お綺麗ですから」


「肌だけは、ね」


 まるで魔法のような手を持つサラさんに髪を綺麗に結ってもらっていると、来客を知らせる音が塔に鳴り響く。鳥さんたちのおかげで、夏姫たちを待たせることなくもてなすことができそうだ。


 エントランスには騎士服に片方だけマントを羽織った状態のレオさんたちが並んでいる。私はクローゼットにある春姫公式のドレスで、フリル少なめの比較的シンプルなものを選んだ。


 さて、久しぶり……でもない気がする夏姫にご挨拶してきましょうか。




お読みいただき、ありがとうございます。


気温差が激しすぎてついていけないですぅ……

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