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リビングデッド〜命の雫〜  作者: 悟飯 粒
学校の怪異その1〜屋上の首吊り場〜
5/25

トリプルタッチも入れたかった

「スパァァアアイク!!」


スパーン!!

智子がトスしたバレーボールを、私は飛び上がり、右手で思いっきり打った!!

バチーン!!

打たれたボールは地面に高速で叩きつけられ、大きな音を立てながら跳ね上がった。


「やったぁああ!!決まったぁああ!!」


バチーン!!

智子とハイタッチを交わし、ガッツポーズをした!!

むっふっふっ………有無を言わせぬレベルでグラマラスなこの私にしては意外なことだろうけれど、運動が大の得意だ。小学生の頃から野球やサッカー、バスケットボール、ゴルフ、カバディ、アルティメットなどなどをかじってきたし、リレーの選手にも毎年選ばれていた。そりゃあもう足速いよ。50メートル6秒ほにゃほにゃさ。細かいのは覚えてないけど。


「スパイクスパイクスパーイク!!!」


バシバシバシーン!!

ボールが相手のコートにバシバシ決まる!!

フハハハハ!!!アッハッハッハッハッ!!!運動はこの私の得意分野!!!独壇場!!!グラマラスで運動ができるなんて完璧すぎる!!!

「空気抵抗がないだけだろ。」

「シェエァラップ!!!」

ベシン!!!

智子に上げてもらったボールを雫めがけて打ち込む!!

「こっちのセリフだ。」

ボムッ

雫はボールを蹴飛ばしこっちに返してきた。


うちの学校では体育は男女別で行われる。1学期、女子はバレーボールで男子はサッカーだ。

私はこの通り運動で活躍しているんだけど、雫は黙々と人から来たボールをすぐにパスして試合をぼーっと見つめている。まるで目立とうとしていない。

………ふんっ、チビに相応しい状況さ。


「雫君、いまいちよくわからないけどクールな感じがしてカッコいいよね。」


私がサーブを打つために、ボールをポンポン地面に叩きつけていると、後ろから声が聞こえて来た。コート端……今回試合に出てない別のチームのメンバーか。


「ねーー。今時の男子にはない……その、なんていうの?知性?達観?………言い表せない静けさがあるよね。いまいちよくわからないけど。」


な、なんだと?あの男がカッコいいだと?確かに物静かではあるが、あいつは人に遠慮なく罵声を浴びせる悪者だ!クールなんて一切ないから!見下してるだけだから!


バシン!


「あ、ごめん。」


私はサーブを打った時、珍しいことにミスをしてしまい雫の頭に当ててしまった。


「………気をつけろ。」


バシン!!

今度は敵の攻撃をブロックしようとした時、腕の角度が、これまた珍しいことに、悪く、跳ね返ったボールが雫の頭に当たった。


「あ、ごめーん。」

「…………気をつけろよ。」


バシン!!!

今度はスパイクを打った時、手の角度がこれまた偶然、超偶然、悪く、えげつないバッグスピンがかかって雫の顔面にボールが当たった。


「あ、ごっめぇーん。」「わざとだろお前!!!」


バシーン!!

雫が私めがけてバレーボールを蹴っ飛ばしてきたが、ふん、バレーボールなど軽い軽い!私はそれを片手で止めた。


「はーいしょぼーい〜!!ぶふーーっ!!片手で止められてやんの!!ちっちゃいからね!!あははは!!男!?本当に男なの雫君!!」


笑いながら私はボールをバンバン地面にぶつける。

あーーすっきり!!これで徹夜の借りは返せた!!後は運動を楽しもうじゃないか。


「………かせ。」


私のことをフツフツとした怒りをたたえながら見つめていた雫が、自陣でボールを持っている仲間に向かって呟いた。


「………な、なぁ雫。やめた方が良いぜ、あいつは男子も引くほど運動ができるんだ。張りあおうなんて…………」

「良いからかせ!!!」


雫はボールを取り上げると、敵陣に向かってドリブルをしかけた!

足首を捻らせアウトサイドでタッチしながら押すようにドリブルしている!ぎこちなさはない!自然体だ!それにタッチが柔らかすぎる!足に吸い付いているみたい!

キュキュっ!

左足に重心を乗っけた瞬間、右に行く……と見せかけ左足のアウトサイドで押して敵を一人抜いた!

タタン!

今度は左足でボールを蹴って左方向に行くと見せかけ、右足でボールを止め回転しながら左足裏でボールを前へと押し出すジダンターンで二人目を抜いた!

キュッキュキュっタンタン!タタン!

今度は立ち止まり、3連続でファルカンを決め、相手の体制が完璧に崩す。だがそれだけでは終わらない。右足裏でボールに乗っかり、左インサイドでボールを蹴り右方向にゆっくりと進むフェイントを二回行い崩れた相手をもう一度誘い込み………エラシコ!あまりにも速すぎるそのフェイントは、左に行くと予想していたであろう、持ち直していた敵の虚を完璧につき抜き切った。敵はズテーンと尻餅をついて倒れた。

トトン……

ゴール前へと近づくと、ヒールリフトで敵の最後のフィールドプレイヤーの頭上を超えると、

トンっ

空中に浮いていたボールを右肩で叩いてゴールに入れた。


「………誰がしょぼいって?」


………ワァアアアアア!!!!

雫の、素人でもわかるあり得ないほど洗礼された惹き込まれるような技の数々に、息を飲んで呆然としていたクラスの人達があいつの元に駆け込んで行く。


「スゲーー!!お前サッカーやってたのか!?」「なんでユース行ってねーんだよ勿体ねーよ!!」「つうかあれどこで身につけたんだよ!!」「本州に決まってんだろ!!北海道のサッカーは遅れてるからな!!」


みんなが口々にあいつを賞賛する。

………あり得ない。あんなの、あり得ない。こんなサッカーの名門校でもなんでもない場所に、あんな技術を持ってる人間がくるなんて…………あの、下半身だけじゃない、上半身のなめらかな動き………ジンガが、タッチが、エロすぎる。プロに行っても通用するレベルだよあれ…………


「………ニヤっ。」


雫が私の方を見て、クッソ腹立つほど口を大きく横に広げて笑った。そして上唇をすぼめ、目を細め………アアアア!!!腹立つーー!!!

そんなこんなで体育の残り時間、あのムカつく雫はみんなにチヤホヤされながら授業を受けた。

どうでも良い話ですが、私が最も[サッカー]において尊敬する人間はロナウジーニョです。フットサルと競技サッカーを見事に織り交ぜたような足技におけるボールさばきの速さとシュート能力、パス能力………これぞ[サッカー]って感じがして尊敬しています。

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