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リビングデッド〜命の雫〜  作者: 悟飯 粒
学校の怪異その1〜屋上の首吊り場〜
10/25

オカルトと美術

「自殺した人間の特徴?」


(しずく)についていき、辿り着いた場所はまたも美術室だった。そして辿り着いてすぐに、雫は昨日の2人に切り込んだ。


「いきなり乗り込んで来たと思ったら……自殺なんて噂でしょ?そんなの調べたって……」

「………気になることがあるんです。協力してくれませんか。」


本当こいつ、この人達の前となるとしおらしくなりやがる。ただでさえ低い背を屈めて下手にでるんだ。


「気になることねぇ……なに?関係者に身内がいるとか?」

「僕は転入して来たばかりなので友達もなにもいませんよ。」

「いや、ほら、遠距離で連絡を取り合ってた仲間がいきなり音信不通となり、危機感を抱いた雫君は、その仲間の学校にわざわざ転入してきた……とかありそうじゃない?」


あってたまるかそんなこと。転校と転入って凄い決断だよ。そう軽々出来るものじゃない。


「はははっ……想像力豊かですね。僕じゃあ絶対に思いつきませんよ。」

「ふふん、そうでしょう。美術において想像とはプラスチックにおける石油みたいなものだからね。想像力の逞しさは天下一品よ。」


うーん、それ褒めてんのかな。


「じゃああれか、噂は実は本当だったとか?」


昨日会ったうちのエロ本じゃない方が、ニヤニヤしながら聞いてきた。


「まさかー。昨日見てきたけど何も……」

「そうですね、あそこで人が死んでます。」

「………マジ?」


冗談だと思っていたのだろう。ニヤニヤしていたエロ本ではない方は、ゆっくり口角が下がっていった。


「はぁ!?何言ってんのあんた!屋上には何もなかったでしょ!!」

「……聞きますけど、死体をそのまま放置する人間なんています?」

「………いませんけど!?」

「じゃあ黙れ。」


むきゅぅうあああ!!!本当腹立つなこの男はぁああ!!!


「ふぅー……僕の鼻は人並み外れてましてね、一晩でこびりついてしまった臭いを簡単に拾うことができます。」


雫は自分の鼻を指差し、無表情で説明する。


「………つまり、自殺みたいな臭いがしたと?」

「んー………ど直球に言えば様々な体液と排泄物の臭いですかねぇ。これらが一度にこびりつく機会なんて、学校内部では自殺ぐらいしかないでしょう。」

「う、うさぎ跳びしてたら便意に我慢できずに漏らしただけかもしれないじゃん!?」


嫌だ、認めたくない。この学校で本当に自殺が起こっているなんて……あんな化け物が隠れているなんて認めたくない。

だから私は雫の言葉を必死で否定した。


「へぇ……血便だったなんて大変だ。よくもまぁそんな状態で運動なんてしてたもんですね。」

「うっ………切れ痔とか……」

「規則正しい生活をして、運動してる人は便秘になり辛いんだよなぁ。うさぎ跳びなんか出来る人なら尚更、痔にはなり辛いよ。」


エロ本じゃない方がツッコミを入れてきた。

………確かに私もなったことないけどさぁ。


「………本当なのねぇ。マジでこの学校で自殺が起こったわけか。」

「ええ。だから僕達はその情報が欲しいんです。」


………あれ、エロ本じゃない方信じ始めてる?ヤバくない?


「い、いやいや!!本当に自殺なんて起きてないって!!大体それじゃあなんでマスコミはそれを報道しないのさ!!」

「……死んだ人間が地味だったからだよ。」


ぬぁ!?

エロ本じゃない方がトートパソコンを起動し、カチャカチャと何かをした後に私達に画面を見せてきた。


「成績が上位10番以内ってわけでじゃないから[学歴社会に殺された]なんて使えないし、誰かからイジメられていたわけでもないから[昨今話題のイジメの記事]を書けるわけでもない。まぁ言っちゃえば[話題性のない死]なわけよ。………そんなの、マスコミが利用するわけないでしょ?」


エロ本じゃない方の目が一瞬光った。


「……そ、そんなわけないじゃん。人が死んでるんだよ?話題性とかそんなの関係ないよ………」

「………なんていうか、バカみたいに純真ね。」

「………無知と純真は紙一重ですよ。これはどちらかというと純白。」


………??

私を無視して雫とエロ本じゃない方は会話をしている。

なーんか私のことを言っている?まぁ、私は純白が似合う女性ですから?当然っちゃ当然か。


「…………とにかく、情報の命は[インパクトがある]ことさ。普通の学生が勝手に自殺したなんてインパクトも何もないでしょ?人の命がどうじゃない、人が見向きをするかどうかさ。」

「……………」


エロ本じゃない方の言葉が納得いかない。だって命以上に大切なものなんてこの世にはないじゃないか。それなのになんで………他が優先されるんだ。


「……はーー2人ですか。結構な数ですね。」

「でしょ。これが大手企業の自殺だったら大スクープだ………良くも悪くも学校らしいよ。」

「ですね………」


私を無視して2人は会話を進める。

むー………本当に自殺してたとして、軽すぎない?なにその反応………


「……どちらも1年生ですか。……クラスはバラバラで、性別も別々。共通部分は少ないですね。」

「そうなんだよねー。繋がりが全然ないの……同じ部活に入っているってわけでもないし、中学校が同じってわけでもない。……唯一の繋がりは学年だけ。」

「……………」

「見たければ見ればいいじゃないですか。」

「つっ……」


蚊帳の外の私が、パソコンの画面をチラ見していたのを雫は気づいたようだ。私に声をかけてきた。

……いや、なんか自殺した人の個人情報を勝手に、しかもこんな気持ちで見るのってな……不謹慎じゃない?


「不謹慎と好奇心を天秤にかけて、好奇心を殺せる人間はよく教育された人間ね。んで、あんたは好奇心が勝ってる。こっち側の人間よ。」

「………私、めっちゃ教育受けてるもんっ。」

「…………」

「…………」

「………うけてるもんっ。」

「バカね。」

「ですね。」

「なんだとあんたら!!」


とは言ったものの、興味があるのは事実だ。本当に自殺者がいたとして、なんで死んでしまったのか……気になる部分がたくさんある。

私は画面を直視した。

……金本(かねもと)と、村田(むらた)?……うーん、知らないなぁ。


「しかし、こんな情報をよくここまで集めることができましたね。大変だったんじゃないですか?」


………確かに。もし本当に自殺が起こっていたとして、それを隠すような学校だ。その死んでしまった人達の情報を調べるのは難しいような気がする。


「んー……言うほど大変じゃないわよ。今はどんなものだって電子化するからね、情報ぐらいそこら辺にゴロゴロ転がっている。……消されてしまった情報を、悪戯で再アップする人間が現れるのを待てば良いだけよ。」


…………それって本当に簡単なの?


「ふーん………じゃあなんでこんなのを調べようと?ただの噂止まりの情報を調べるなんて普通じゃないですよね。」


雫がエロ本じゃない方に聞いた。

それは確かに………人が死んでいる出来事の情報を調べるなんて、普通はしない。しかもそれは身近で起こった出来事で、死んだ人間に共通点がないなら尚更だ……死にたくないもん。でもこの人は調べた。いったいなぜ?


「それは……噂や怖い話っていうのは良く出来た創作じゃない。人の恐怖心や好奇心を的確に刺激する作り話………それって芸術として凄いことでしょ?だから私はそれを調べて勉強しているのさ。」

「で、本当は?」

「何を隠そう私はオカルト研究部も掛け持ちしているのさ!!学校の噂など朝飯前、今じゃ世界の超常現象にも目を向けている筋金いりのオカルトマニアよ!!」


………うわーー。関わらなければよかった。


「どう?雫君!!こんな事件を調べるような君だ!!ぜひ我がオカルト研究部に!!」


エロ本じゃない方は、雫にガツガツ猛アプローチをかましている。

……美術の話をしている時よりもずっとやる気あるじゃん。


「いやーー、僕も習い事とかで忙しいんですよ。入部とかはちょっと………」

「えーー。入ってよぉ〜、2人しかいないのよオカルト研究部ぅ〜。」


えぇぇ………過疎ってるなんてもんじゃないな。

エロ本じゃない方は色仕掛けでもしようというのか、雫の体に絡みついて説得を続けていた。


「………分かりました、登録だけはしておきます。でも活動はしませんよ?」

「ぶふぅ!!!」


色仕掛けに負けてやんの!!なにこいつ、うわー、ダメな男だわー。


「ありがとう雫君!!流石は私が見込んだだけのことはある!!さぁこの紙に個人情報をバシバシ書き込んじゃって!!」


エロ本じゃない方は、自分のリュックから入部届けを取り出すと、雫にそれを渡した。

えぇぇ………持ち歩いてるのそれ。


私は2人が紙に何かを書いている間、美術室の内部をぐるりと見た。

………一応、他の人もいるが、全員マンガ読んだりご飯食べたりと好きなことをしている。美術部ってのは建前で自由クラブって感じだ。だから変な奴が集まって、変に個性的になっているのかも。


「うんうん……しかと書いたね。それじゃあ生徒会長に渡しておいてね。」

「わかりました。……それで、」


雫は自分のリュックに入部届けを入れながら、口を開いた。


「……勿論、話してあげるさ。」


カチカチッ

エロ本じゃない方のポールペンが音を立ててノックされた。


「連続自殺のあらましと、儀式の方法ね。」

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