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電子一夜物語  作者: メフィストフェレス
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這い寄る混乱。

邪神ナギナークは時を越え、その者の過去を覗く事が出来ます。

そして、その映像を見せる事も。

邪神ナギナークは自分の意思と関係なく、様々な怪物を呼び寄せてしまいます。

邪神ナギナークの言葉は人の心を抉ります。

例え事実無根の中傷でも、気にせずにはいられないのです。

想像して下さい。

これらが一度に現れる様を!


それらは竜巻の様に人を、建物を、心を巻き込み、更に力をつけ猛威を奮うのです。

ハルノクニが如何に精鋭揃いといえど、突然発生した竜巻の様な悪意には太刀打ちできませんでした。


このままでは為すすべなく蹂躙され、人々は散り散りになり、後に残るは不毛の荒野だけでしょう。


誰よりも早く行動に出たのは魔王様でした。

その秘術をもって、空間に穴をあけ、人々を魔王様の領土へと避難させたのです。


ナギナークと怪物達はそのままハルノクニに居座り、自らの根城としました・・・。





所変わり、魔王様の領地。


皆と共に舞踏会より逃げてきた道化は、再び過去と相対する事になりました。

塔を飛び去った天使は、魔王様の領地に羽を下ろしていたのです。


今まで、何度か空を翔ける影を見た事がありました。

しかし道化は敢えて探ろうとしなかったのです。

何を言えばいいか、どんな顔をしていいか分からなかったから。

館で留守を待つ、パンドラの顔が脳裏をよぎりました。


ひたすらに待とうとした少女。

心のままに、道化を追い求めた少女の姿が、道化の背中を押しました。



堕ちた天使・・・。貴女が好きです。この想いはもう止められません。



それは、ムードもへったくれもない、実に不器用な告白でした。

場は混乱し、ハルノクニは蹂躙され、残された人々が肩を寄せ合って今後を考えている中、道化は只、自分の気持ちを伝える事しか出来ませんでした。



堕天使はボクのモノだよ?



天使を見つめる道化の背後から、無邪気な声が飛んできました。

場にそぐわないその声は、虫の羽根をもぐ少年のようで。

その違和感に全員が鳥肌をたてながら、声のする方向へ視線を動かしました。



やぁ。ぼくの名前は、ナギナーク。世界を滅ぼす、有名な人だよ?



そこに居たのは、確かに先程までハルノクニで言い争っていた青年でした。

湯上がりのようにサッパリとした、晴れやかな顔付きで、ナギナークはそこに立っていたのです。



堕ちた天使は皆のものさ。みすみす君みたいな道化に、渡す訳がないだろう?


それを決めるのは天使です。ナギナーク。



道化は負けじと言い返します。

場にそぐわぬのはわかっています。

こんな事をしている場合ではない事も。

しかし道化はどうしても過去と対決をしたかったのです。

それは虫の知らせか。

パンドラの、はたまたラトリーの。

あるいはスパイダーと花の女王の熱に充てられたのか。

しかし、天使は応えず、寂しそうに微笑むと、空高く飛んで行ってしまいました。


天使の羽根がふわりと、雪の様に舞い散ります。

魔王様が道化の肩にポンと手を乗せました。

魔王様曰く、天使は眠りにつかなければいけないのでした。

それは、天を堕ろされた代償なのか、人々の為に力を奮った代償なのか、分かりません。


只、道化はまたも宙ぶらりになった心のまま、生きていかなければいけないのでしょう。

天使が眠りから覚め、答えを貰うその日までーー。



なんか白けちゃったな。今日はお暇するよ。ボクは暫くあの国にいるから、いつでも退治しにおいで?

ーー退治できればの話だけどね。



そう無邪気に笑うと、ナギナークの体は爆弾の様に弾け飛びました。

誰もが心臓が飛び出たかのように驚きを隠せません。


人は、得体の知れないものに恐怖するようにできているのです。

それでも、言葉で理解しようとするならば。

意思を持つ自然災害。

人の形をした悪意。

でしょうか。


長い歴史を持つハルノクニには幾度となく脅威に晒されてきました。

しかしこれ程までに圧倒的な悪意な晒されたことはありませんでした。


花の女王が、スパイダーに寄りかかりながら諦めたように言葉を絞り出しました。



もう、あの地を捨てるしかないのかも知れん・・。

また、違う地に新たな街を作ろうかの・・。



反応はまちまちでした。

皆、心の中では思っていたのでしょう。

そう思わせるだけの衝撃が、ナギナークにはあったのですから。


ーーアレハ、ドコマデモツイテクルーー



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