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電子一夜物語  作者: メフィストフェレス
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道化と少年と、意地悪な天使。前編。

とある国の、とある広場に

ある日天使が堕ちてきました。

天使は広場の熱烈な歓迎に感激し、

皆の為に大きな塔を建て

その上にすむようになりました。

待ち合わせの為に。

目印の為に。

そして、思いを伝えあう為にです。


さて、広場にはいつからか

意地っ張りな少年が来るようになっていました。

自慢話ばかりなのにどこか気弱で、

誰よりも明るく、誰よりも真っ直ぐな、ヒマワリの様な少年です。

少年は、堕ちた天使の姿に一目で心を奪われました。

少年は毎日塔に通い、天使を褒め称えます。

星空ほどの数の愛の言葉に

天使はいつしか、少年の訪れを心待ちにする様になりました。


さてさて、広場にはとても捻くれた

変わり者もいます。

醜い心を仮面で隠した道化です。

道化は堕ちた天使にいたく関心を持っていましたが、

少年のひたむきさを前に素直になれません。

天使を見かければ、気紛れ程度に戯曲を披露しますが、

天使の瞳は、何処か冷めているように見えました。

まるで何かが欠けているような。

捻くれ者の道化は更に天使を気にするようになりました。


天使は少年に無茶難題を言うようになりました。

曰く、足を使わず塔を登り切れ。

曰く、声が枯れるまで歌い続けろ。

少年は日が暮れるまで難題に挑戦しますが、上手くいきません。

そしてへとへとになる頃に天使は塔から降りてきて、少年の頭を優しく撫でるのです。


少年は道化に不安を覚えていました。

いつかその話術で、天使に毒牙を掛けるのではないかと。

酷い言い草ですが、あながち間違いでもありません。

道化は少年に恐怖を覚えていました。

そのひたむきさに、その素直さに。

ですが捻くれ者の道化は少年の弱さを見逃しません。

それは、不安と向き合えない弱気な心です。


後ろ向きな心は、後ろ向きな事態を呼び寄せるものです。

不安を吹き飛ばす為に、少年は敢えて道化と天使を二人きりにしてみました。

もし、天使が自分を想ってくれるなら、道化のシルクの様な滑らかな言葉など跳ね除けてくれるだろうと。

もし、道化が少年の努力を認めてくれるのなら、天使に毒牙を掛ける事なく場を収めるだろうと。


しかし、この世に完璧なものなどありません。

少年に弱点があるように

道化にも弱点はあるのです。

それは皮肉にも、天使の弱点でもありました。

二人はとても、寂しがり屋だったのです。

欠けた心を補う様に寄り添う二人に、少年は酷く動揺しました。

少年は我を失い、呆然としながらフラフラと歩き出しました。

そしてーー気付いた時には一昼夜が経っていたのです!

それがさらなる悲劇を呼び寄せる事になるとも知らずに・・・・。



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