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電子一夜物語  作者: メフィストフェレス
24/29

黄泉の国までは。


ここに辿り着いたか旅人よ。おぬしも闇に心を飲まれたのだな・・。


ここは・・・・?


ここは最果ての地。ケイオスタウン。ああ、ワシの名はパンサー。ここの古株じゃ。生きる事に絶望し、ここで朽ちるのを待っている。


私は・・・私は・・・



かつて道化だった男は考えました。


振り返るのが辛い過去に囚われるのはもう沢山だ。

様々な感情がせめぎあい、潰し合い、喰らいあい、最後に残ったのが自分。

感じるのは、飢えと渇きだけ。


かつて道化だったものは歪んだ笑いを浮かべます。

仮面を捨て、今まで忌み嫌っていた醜い傷痕を顕にします。



私は・・・コドク。



そして初めて、自分の名を口にしました。



コドク・・・孤独か・・・はたまた蠱毒か・・・。何にしろ全てを喰らいつくしたようじゃの・・。



老人、パンサーは深くを訊ねませんでしたが、代わりに自らの事を語ってくれました。


片目が失明している事。

徐々に身体が動かなくなる事。

人集りに混じれぬ事。

そのせいで組織に馴染めぬ事。

妻に真実を語れぬ事。

未来に希望を持てぬ事。



ここから半日も歩けば黄泉の国の入り口がある。このまま朽ちるのが一番じゃが、余りにも耐え難い苦痛があるなら儂は・・・・。



かつて道化だった男、コドクは、老人の差し示す方角に顔を向けます。

全ての生命が行きつく所。

黄泉の方角を。

しかし恐ろしさは微塵も感じられませんでした。

山の様に。海の様に。空の様に。

有るべくして有る。

ただそれだけです。


道化は・・コドクは・・いえ、私は、壊れてしまったのでしょうか?

いえ、違います。

私は元々壊れていたのです。

それを治す為に。

癒すために。

私は道化を演じていたのです。

人々に必要とされればきっと癒されると信じて。

人々に愛されればきっと治ると信じて。


それでは語りましょう。

この旅が始まる前の、私の過去を。






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