夢と幻想の狭間で。
私の行く所に平穏はない。
ーーいや、違う、人は争うように出来ている哀しい生き物なのだ。
だが人は、優しい生き物でもある。
ーー力なき優しさなど無意味。ただ己の身を削るだけ。
身を削る事を厭わない勇気だってある!
ーーその結末はいつも悲劇ではないか!
砂漠の街も!
ハルノクニも!
極夜の城も!
結局は我を通したものが局面を動かしてきたではないか!
お前は何を得た?
お前は失ってばかりだ。
どうせ傷つくならば何かを得れば良いものを。
優しさと言う幻に惑わされお前は傷を増やす。
滑稽だな。
私は・・・・道化だ。いちいち傷ついては道化は演じれぬ。
それに私は何も得てない訳ではない。
人々の強さを見た。心を見た。勇気を見た。愛を見た。優しさを見た。信念をみた。覚悟を見た。
決して無駄にはしない。
ーー無駄に?ふふふ、無駄にしない?ふははは。
お前はそれらをどこで説くつもりだ?
お前の行く先は破滅ばかりなのに。
お前の説くソレでは破滅には勝ち得ないのに。
痛いほどわかっているはずだろ?
もう、捨ててしまえ。
心も、勇気も、愛も、優しさも、信念も、覚悟も!
それが真の強さだ。
そうすれば傷つく事はもうない。
もう・・・・傷つかない?
ーーそうだ。もう傷つかないのだから、もう癒される必要はない。もう他者をもとめる必要もない。
モウ・・・・必要ナイ?
ーー仮面を捨てろ。自分の道を探せ。人の物語ではなく、自分の物語を紡ぐのだ。
ワカラナイ。仮面ヲ捨テタ私ハ何者デモナイ。誰ニモ必要トサレナイ。
ーー他者に必要とされるな。他者を必要としろ。仮面を捨て、一人の人間として、生を謳歌するのだ。人々を笑わすのではなく、笑う側に回るのだ。
ソノ他大勢ニハ・・・ナリタクナイ。
ーーならば朽ちろ。道化のまま、見るものもいない舞台で一人踊り続けろ。その足が折れるまで。その声が枯れるまで。
ワカラナイ・・・ナリタクナイ・・・ナリタクナイ・・ワカラナイ・・
私は・・・地獄行きが確約された追放された悪魔祓い・・・?
ワカラナイ
私は・・・殺しの悪魔を従える白髪の呪術師?
ワカラナイ
私は・・・悠久の時を生き、時間の理を手にした錬金術師?
ワカラナイ
私は・・・無から創造された自律したゴーレム?
ワカラナイ
私は・・・平穏な生活をしながらも人々に迫害された怪物ミノタウロス?
ワカラナイ
私は・・・殺しあいの末に生き残った魔女の末裔?生き延びる為に魔道に堕ち、混沌を統べる魔人?
混沌・・・?魔道・・・?コロシアイ・・・最後の一人・・・。
蠱毒ノ法・・・。コドクノホウ・・・。
胸に空いた穴はいとも簡単に道化を飲み込みました。
自身を見失い、意識もないままに彷徨い歩く。
歩く事はできる。喋る事もできる。
ですが意識は薄く、記憶もできない。
何が夢で、何が幻想か。
ワカラナイままに時を過ごします。
そう、最後の魔女に会うまでは。




