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電子一夜物語  作者: メフィストフェレス
22/29

歴史は繰り返す。

極夜の城に戻ってからの道化は大忙し!

この城に住まうものは誰もが自由すぎるのです!

気ままな夜来香イエライシャンは気ままに掃除をし始めたかと思えば、次の瞬間庭弄り。


胡蝶蘭は、道化の館で読んだ本に触発されたのか『邪神の生態と思考』

という本を執筆していました。

道化は興味本位で読ませもらいましたが、本能を文字におこしたような血生臭い雰囲気。

はしばしには滲み出てる狂気。

長時間読んだら発狂する。

と感想を漏らした所、胡蝶蘭は満足気にうなづきました。

世の中いろんな人が居るものです。


いつの間にやら城の出入りも激しくなりました。

機械師に猟師、白い鎧の女騎士も居ましたね。

鳳仙様は相変わらずのつむじ風。

ここかと思えば次にはあちら。

目で追うのも一苦労です。

城での毎日は目まぐるしくて

思い耽る暇なんてありません!


道化の悩みはただ一つだけ。

それは澪姫の立ち振舞いでした。


皆がどれだけ澪姫を気遣おうとも、労うこともなく、それを下がらせる澪姫。

ただ一言「ありがとう」というだけで報われるというのに。

道化は二の足を踏みます。

執事として働くのなら、主を想って進言するべきか。

それとも身分を弁え、やりたい様にさせるべきか。

道化は人を笑わせるのが仕事であり、それが生来の気質なのです。

笑わせる人は、一人でも多く。

その気持ちが、ついに一線を越えました。


その日は澪姫の友人である白い鎧の女騎士様がーー名は、記す必要もないでしょう。直ぐに御別れする運命にあるのですからーー。沢山のお土産を持って、澪姫を訪ねに参っておられました。

しかし澪姫は体調が優れぬのか、不機嫌顏で言葉を交わそうとしません。

それでも騎士様はめげずに面白おかしく話しを紡いだり、花や果物や珍しいプレゼントをお渡ししたり。


そして道化は一線を越えます。



澪姫。澪姫を慕ってやってくるものにその非礼は如何なものかと。

主たるもの、来客に礼を尽くすのも務めにございます。



如何に道化が来訪者達に感謝の意を伝えても意味がないのです。

来訪者達は澪姫に会いにきているのですから。

しかしこの一言は澪姫の心を傷付けました。



うるさいのだ!ここは澪の城!澪を大事に出来ないものに用はないのだ!



これには道化も驚きました。

なるほど。王は慕われて当然、敬われて当然。その考えは一理あります。

しかし如何に忠実な犬も、食事を与えねば従わなくなるのです。

道化がどう説明するべきか悩んでる間も、澪姫は怒りに任せて言葉を吐き出します。



そもそもお前は何なのだ!澪の執事である事を望みながら、天使とのいざこざを持つ込みおって!知っておるぞ!今は亡き水の女王とも親しくしておったそうではないか!お主を訪ね何人もの人間がここを訪ねておる!!


それとこれとは話が違う。

そう反論する事は容易いです。ですが道化は頭を垂れて



不愉快な思いをさせて申し訳ありません。すべては私の不徳が致す事。


うるさいのだ!澪を大事に出来ぬものは要らぬ!来客をもてなさねばなんのなら、こんな城も要らぬ!!



その言葉を聴いて、道化は心を固めました。

居場所を失うのがどれ程の苦痛か、道化は長い旅で嫌というほど思い知ったのです。

あの苦痛を、この城に訪れる者達に味あわせる訳にはいきません。

頭を垂れたまま道化は語ります。



分かりました。ならば私がこの城を去りましょう。私のせいで皆様の居場所が無くなるのは何よりも耐え難き事。

澪様。ご友人は大事になさって下さい。


うるさいのだ!二度とこの敷地を跨ぐ事は許さぬ!!



こうして道化は、また居場所を失いました。

暫くの間は、自らの屋敷に留まっていた様ですが。

ある日、自ら屋敷に火を放ち、何処へと姿を眩ませました。


極夜の城は来訪者が一人減り、二人減り・・・やがて客足は途絶え、遂には夜の闇に呑み込まれてしまいました・・・・。




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