砂漠の街のアデニウム〜ある少女の想い〜
物事は、角度を変えると違って見えるもの。
道化は少女に願いました。
貴女の物語をお聞かせ下さい、と。
昔々、あるところに、
なんの取り柄もない少女がいました。
その少女は、恐る恐る広場へと向かいました。
受け入れてもらえるかが心配だったのです。
けれど、そこの広場は、少女のことを大切にしてくれました。
少女が困惑するほどに。
ある日、その広場にいた道化の想いを知りました。
しかし過去のこともあり、
最初は[その想いを誰か他の人に伝えるべきだ]、
そう伝えるはずでした。
それなのに、少女は寂しかっただけに
[待っていて欲しい]と言いました。
そうすれば、結論が出るまでは離れていかない、
そう思っていたのです。
それからまたしばらくたった日。
いつものように広場にいると、
幼馴染みが帰ってきました。
その幼馴染みは戦場で深手を負っていました。
幼馴染みはいつ目を開くかもわかりません。
少女は泣きました。ずっと、ずっと。
自らの想いをきちんと口にしておけば、
こんなことにはならなかったはずだと思いました。
そこで少女は、ある一つの想いに気づきました。
本当は、大切な存在であったと。
失ったものの大きさに気づいたのです。
けれど、この選択をすれば、道化は傷ついてしまう。
そう思い踏み止まりました。
どうしよう、どうすれば誰も傷つかないですむ、?
そうして少女は道化たちとの別れを決めたのです。
もう2度と、こんな思いをしなくていいように。
逃げという行動を選択をしたのです。
少女は本当は、自身を守ることで精一杯の弱い人間です。
広場のみんなは過大評価をしてくれる。
けれども本当は、そんな評価が下るべきではない、
評価に値しない人間でした。
弱みを見せないのは、自らを守るため。
心を開いているように見えて実際は、
何百層にもなった有刺鉄線のようなものを
張り巡らせていました。
それは、少女の本心に触れたら、傷ついてしまう。
それと同時に、少女も心を傷めてしまう。
そんな心の状態を表していました。
そしてある日、幼馴染みが目を覚ましました。
少女は幼馴染みに自らの想いを伝え、
幼馴染みの手を取り合り、一緒に広場へと向かいます。
そこの広場は、いつものように出会いと感情が渦巻く
何のかわりもない広場のままでした。
そして戻ってきた少女と少年を祝福してくれました。
ごめんなさい。
そう道化に少女は伝えました。
謝罪と感謝の詰まった言葉を。
そして少女は道化にアデニウムを渡されたのです。
もらう覚えもなければ、むしろ私が謝るべきであるのに
なぜ私が感謝されているのか疑問でした。
道化は少女に言うのです。
あなたの幸せが、私の幸せです、と。
少女は思いました。
道化は人を楽しくさせることは簡単にこなす。
けれど、自らをそこに含めることはしていないのだと。
あなたは愛を与えているけれど、
もらうことはしないのね。
けれど、愛はもらうこと、与えること、
求めることで成立するものよ。
だから勇気を出して、自ら愛を求め、受け取りなさい。
あなたは幸せにならなくてはいけないのよ。
そう少女は道化に伝えました。
道化は横に首を振ろうとしました。
しかし少女はそれをさせません。
例え、受け取ったあとに拒絶されても、
そうしたら他の誰かに求めればいい。
そうやって愛はループとなって、初めて完成するのだと。
今でも少女たちはその広場で
たくさんの物語を生み出しています。
次の物語は、どんな物語でしょうかね。
それでは。
そしてカーテンコール。
ある少女から頂きました。
大事に保管していたのですが、完結も見えてきましたし、そっとパズルピースの様にはめましょう




