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電子一夜物語  作者: メフィストフェレス
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ハイノマチ。

ーーかつてハルノクニと呼ばれていた場所に、今はアッシュタウンと呼ばれる街があります。

火山灰の様に雪が降りしきり、治めるのは水の女王。

一癖も二癖もある人物はここに訪れ、過去と向き合い、受け入れ、そして生まれ変わったかの様に成長するのです。

さながら灰から蘇る、不死鳥の様に。


街角や、物陰からたまに「ブス」だの「しゃしゃんな」だの「死ね」だの呪いの言葉が飛んできますが、それは邪神の可愛い悪戯ですので御心配なく。

揺るぎない心で立ち向かえば、取るに足らない、そう、ただの挨拶だと分かるでしょう。


勿論、全ての人が成長できる訳ではありません。

業が深い者。過去と向き合えない者は己の罪深き炎に身を灼かれ、灰となり散っていくだけです。


過去を暴かれるのが嫌ならば、過去を暴く側になる事も出来ます。

邪神に付くのです。



僕を尊敬してくれる弟子が欲しいな~



なんて声を聞いた人がいますから、邪神ナギナークは不遜に見えて、結構寂しがりやみたいですよ?


街を歩くと、闇のオーラを纏った男が、水色の鎧を身に纏った剣士に修行をつけているのをよく見かけます。

水色の剣士スパイダーといえば、今や街一番の有名人。

修行をつけているのは、その名を諸国に轟かせる魔王様です。

近々、長く顔を合わせていなかったという御友人とお会いになるらしく、上機嫌の様ですよ。



清すぎる川には魚は住めない。という古い言葉があります。

思えばハルノクニかつて、美しい者、平和を尊ぶもの、迎合できるもの集いでした。

問題は常に白か黒で判断され、「灰色」という答えは用意されていませんでした。

邪神は説きます。



言いたいことを言って、訊きたい事を訊いて何が悪いの?

訊かれて嫌な事なら最初からやらなければ良いのに。



皆が皆、そんな調子では衝突は避けれませんが、問題を指摘する存在は、成長する上で確かに必要です。

人々と邪神、お互いが分かり合うことが出来れば、もしかしたら「試練の神」「裁きの神」「真実を映す鏡の神」なんて呼ばれる日もそう遠くは無いかもしれませんね。


アッシュタウンは、これからも多くの試練が訪れる事でしょう。

人の心は移ろいやすく、約束とは守る為に存在し、同時に破る為にも存在するのです。

もう、いいじゃないか、で終わりを告げれていた時代は終わり、何故、どうして、どうすればいいかを考えなければいけない時代が訪れました。

向かう道は破滅か、繁栄か。

ですが、アッシュタウンに訪れる、心強き者達ならきっと大丈夫でしょう。

一般的な答えではなく、今の自分達に必要な答えを必ずや導きだす事でしょう。

あの、邪神降臨の日を乗り越えた人達なのですから。






道化はペンを置き、一つ伸びをしました。



ーー長いようで短いようで、色々ありましたねぇ・・・。



道化は空を見上げます。

天使はまだまだ目覚めそうにありません。



今は、恋する男でいる事より、道化らしく在る事にしましょうか。



天使が目覚めた時、沢山の戯曲を披露する。それが道化にしかできない、道化の生き方。

その時、天使と道化がどんな関係に収まるか。それは誰にも分かりません。



道化は纏めておいた旅道具を背負い込むと、館のドアをあけました。


一面の銀世界と、その中に立つ少女、パンドラ。



ーー何処に行くの?


浪漫を探しに。



道化は間髪入れずに答えました。




・・・・私も行くっ!!


貴女はしつこいですねぇ、パンドラ。・・・それが貴女の良い所だと思いますが。

ご自由にして下さい。

来るなと言っても聞きやしないでしょう。



パンドラは満面の笑みで、道化の横を並んで歩き出しました。

館から4つの足跡が、ハルノクニ・・いえ、今は灰のアッシュタウンとは逆の方向に伸びて行きます。




そういえばこの前ラトリーを見ましたよ?バレバレの変装で、私は巫女!!とかやってました。


え?私が見た時は、お姉ちゃんやってるって・・・。


ふふふ、迷走してますねぇ。次に会う時が楽しみです。


あ!そういえば、こっちの方角には執事の街があるんだよ!

ちょっと寄ってみない?


執事の街ですか・・。この街で随分と執事っぽいと言われたものです。

執事の真髄を極めに行くのも良いかも知れませんねぇ。




道化は光を愛さぬ者。

道化は希代の大嘘つき。

道化はとってもへそ曲がり。

言ったことをやるとは限りません。

東の果てか、北の果てか。

次に会うのはいつ頃か。

もしその足取りを求むなら。

灰のアッシュタウンのハズレにポツンと

うち建てられた、とある館。

そこの書斎の本棚に。

いつの間にやら増えている。

本を手に取り開いてごらん?

人々の浪漫、記す水鏡。

電子の海の一夜物語。





それでは皆様、ご機嫌よう。




ひとまずここで、お話を区切らせて頂きます。

完結にしませんのは、勿論続きを書くつもりがあるからでございます。

天使は眠ったままですし、道化とパンドラがその後、どんな旅をしたか、私も興味がありますし。

また、お話のタネが揃った頃に続きを書かせて頂きますね?


あ、宜しければ、得点や感想をつけて下さい。

とても励みになります。


それでは皆様、ご機嫌よう。

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