01-006 パーティーとパーティー
ここが正念場か?
主人公は必死です。
勇者様御一行のあまりの混沌ぶりに、すっかり困惑した俺だったが、おかげで少し気分の余裕が出来た。
とりあえずコイツらは4人パーティーらしい。
まず、勇者ああああ。
ツッコミ所満載な名前だが、当人も自覚が強いらしく、勇者アレスと名乗っているらしい。
次に、女賢者アンディ。
柄の悪い女だが、実は出奔した姫君らしい。
そもそもの始まりは、この女を俺が誘拐したのが発端らしいのだが…
そして、鬼畜ドワーフのアレクサンドロス様。
こいつの中身はかつて俺相棒だったハラダだ。
最後に、忍者のカゲマル。
コイツに至っては本名(?)はヤバ過ぎて何度も書く訳には行かない。
そして四人とも転成者らしい。
「なぁ、みんな落ち着いてくれ。とりあえず、お茶でもどうだ?」
俺は、マントをふわりと振るい、そこに瀟洒な円卓と五人分の椅子、それに紅茶とクッキーを出現させた。
「まぁ、掛けてくれ。落ち着いて話そう。」
…流石に勇者様御一行も、少々驚いた様子だ。
…本当は俺が一番驚いているんだが…。
魔王すげー、こんな事もできるんだ。
「心配しなくて大丈夫だぜ、罠も毒も仕掛けてねーから。」
「へぇ?結構素敵じゃん!」
女賢者が率先して椅子に着く。
…度胸ありやがるなぁ、この女。仮にも魔王の居城で、すっかり寛いでやがる。
俺と他の連中も、テーブルに着く。
「まぁ、飲んでくれ…」
俺が言う前にもう飲んでやがる。
アンディに至っては、二枚目のクッキーに手を伸ばした所だ。
落ち着いてよく見ればかなり…いや、一級品の美少女た。
「ねぇ、魔王。ケーキないのぉ?」
…遠慮ねーな、こいつ。
だが、ここが正念場だ。
機嫌を取って置かねーと、俺がヤバい。
テーブルにナプキンを置いて持ち上げ、ショートケーキを出現させる。
「キタガワ、儂はレモンサワーじゃ。」
…ドワーフならビールじゃねーのかよっ。
言いたい所を押さえて、レモンサワーを出してやる。
「拙者は、とりあえずビールを…」
…逆だろ、おまえら。
「俺、唐揚げ〜」
「あたし、バーボン!」
俺、居酒屋の店員かよ…。
まぁ、ここが正念場だ。
俺は次々と注文に応じる。
勇者様御一行は、飲めや騒げやだ。
その間に俺は、冷めた紅茶を一杯飲めただけだった。
…魔王も楽じゃない。
なんとか執り成したらしい主人公。
最初にして最大のピンチは切り抜けような…。