05-009 チート of チート
まぁな、高額商品の定番って言ったら、まずは宝石だよな。
とりあえず他の転成者が頑張ったところで、魔法で宝石を作るとか恐らく無理だろ。
大概は勇者だの賢者だの…要は人間かせいぜいが亜人だろからな。
その点俺様は、魔王様だ。
魔の王だからな。魔が魔物を示すのか魔人族を示すのか、はたまた魔法そのものを示すのかはわかんねーけど、最低限そんじょそこらの連中に引けを取らねーのは、わかる。
なんせ…勇者一行が多人数でパーティーを組んで、それでやっと勝負になるのか魔王ってモノだ。
って訳で、『魔法でちょちょいと』で、いくらでも宝石程度は作っちまえるのが俺様だ。
とはいえ、山のような宝石を持ち込む程には俺はアホじゃねーぜ?
ここは、世界の市況調査を名目にして物見遊山をしてる、どっかの金持ち大商会のボンボンを演じとかにゃいかんからな。
「宝石商ですか?」
「いや、宝石商は俺の親父だ。俺はその代理人ってぇトコだな。他国にめぼしい商品になるモノがねぇかと、訪ねてきたってぇ訳だ。」
言いながら、宿屋で貰った紹介状みてーなヤツを渡す。
「こ、これは宿屋部門の…失礼致しました。暫くお待ち下さいっ」
商人ギルトの奥の、応接室っぺぇトコに案内された。
「で、ルイス様の商会での取扱い商品というのは、どのようなお品でしょうか?」
「まぁ、一応サンプルは用意してあるぜ。コレだ。」
俺は、魔法で用意しておいた、宝石ケースに入ったジュエリーを取り出し、テーブルに置いて蓋を開け、ギルトの上級役らしきオッサンに向けて見せる。
「………っ!?くぉ、これはっ!!!!」
まぁ、ド肝を抜いてやろと用意した品だからな。
「マイズ、こ、これが判りますか?!」
「こ、この輝きは本物だとは思いますが…すみません、手に取っても?」
「あぁ、構わねーぜ。じっくり見ないと、本当の価値はわからねーだろからな。」
「し、失礼致します…」
偉そうオッサンの傍らに控えていた男が、テーブルの脇に膝をついて、白絹手袋を嵌めてジュエリーを取り上げ、鑑定を始める。
「う、こ、これは間違いなく、最高品質のダイヤモンドですね……完全な無色透明な石の周囲に、同等の高品質のカラーダイヤが真紅色・濃橙色・輝黄色・深緑色・海青色・青紫色と虹色配置に6つとは……このような、贅沢過ぎるジュエリーは、この不肖マイズと致しましても、初めて見る品にございます。それにしてもこの輝き……よほどの腕の宝石工によるカットでございましょう。そしてこの石のクラリティ、全く内包物も結晶化の不連続面すら見受けられないようです。更には主石の完全なる透明色は勿論のこと、周囲を飾る6つのカラーダイヤですら同等以上の品質、何れもその一石だけで十二分に、特級品のジュエリーの主石と成りうる品でしょう。何故不純物を全く含まない純粋なダイヤモンドが、このような鮮やかな色調を湛えているのか私には判りません。しかしてその湛えるカラーは、計算し尽くされた如き色調を帯び、まるでこの全てがこのジュエリーの為に生み出されたが如き素晴らしい宝石達。仮に何れの一石を用いたジュエリーを作成したとしても、魔王城の宝物庫由来の財宝だと言われても納得の行く品となる事でしょう。それが七つの宝石が集まる事によって、その価値は数倍、いや、数十倍に跳ね上がっていると言っても過言ではありません。これほど同型同質の宝石が、これ程までに計算され尽くしての配置、更にはそれを支える台座の白銀も、恐らくはプラチナをベースにミスリルを割金に使ったものと思われます。どれほどの冶金技術があれば、このような合金が作れるものなのか…そしてこの極限までにシンプルにして美しき台座、奇跡の如き合金を使用して居ながら、その奇跡の合金を宝石の引き立て役に徹させる大胆さ。不肖マイズ、この素晴らしきジュエリーを触れることが出来ただけでも、宝石鑑定士となった甲斐が有りました。ありがとうございます、ルイス卿!」
……何を言ってるのか、半分も判らなかったぜ……
………すまん、見栄張った。全く判らなかった………
だがやべえシロモノを作っちまったようだ。よりによって、魔王城の宝物庫由来だとか、めっちゃやべえ。
いや、自分が出したジュエリーの鑑定に焦ってちゃ怪し過ぎるな。とりあえず焦ったのをごまかさねーと。
「おい、マイズとやら。ルイス卿ってぇのは何だよ。俺は、貴族じゃねーぞ。ただの、大商会の息子なだけの道楽ボンボンだ。」
しかし、誰も俺の話なんざ聞いてなかった。
「マイズ、それでこのジュエリーの価値はいかほどなのかね?」
「ギ、ギルド長。私は宝石の鑑定は出来ますが、その査定までは出来ません。この素晴らしいュエリーの価値こそ判りますが、その市況価値までは、判りません…
「確かに、価値は判っても価格はわからんか…市況価値は水物だからな。おい、ロックフェ・ラーリを呼んでこい!」
「はっ?あ、はい直ちに!」
マイズとかってヤツが慎重にジュエリーをケースに戻したあと、脱兎の如く駆け出して行った。
「恐れ入りました、ルイス殿。あなたの商会では、このような素晴らしい品を
取扱って居られるのですか。誠に恐れ入りました。」
「いや、俺の商会じゃねぇよ。親父の商会だ。それにコイツは、親父が俺に見本として持たせたモノだぜ。」
俺はジュエリーを、軽くつつきながら話す。
「お待たせしました、ラーリです。」
「おお、待って居たぞ。このジュエリーの価値を査定出来るか?」
…待たせたと言われたが、ほんの一分も経っていないぞ?
「こちらが、マイズの言っていたジュエリーですか?…失礼致しますね」
ラーリとかってヤツは、なにやら呪文を唱え始めた。
やべえ呪文か?と、思ったが、ギルドも一緒に戻ってきたマイズってヤツも、冷や汗は流してるが、逃げるような素振りは見せねーな。
やがて呪文を唱え終わったラーリってヤツの顔色が次第に蒼ざめ、そして、パタリと倒れた。
マイズとかってモブが大長舌したせいで、無駄に文章量が増えちゃいました。
お前一人で、今まで登場したサブキャラの発言を全部合わせた位、一気に喋らなかっなかったぁ?(苦笑)




