05-004 内水面漁業
…しばらく呆けて浮いた魚を眺めてた俺だが、我に帰って慌てて魔法で網出して魚を回収した。
そうだよ、目的は釣りじゃなくて、魚の確保だったのを忘れてたよ。
まぁ、魚法は邪道かも知れんが、大漁だ。
コレを門前市場で売ればいいカネになるだろ。
俺は城門前へ引き返し、魚を売る事にした。
適当に露店っぽいモノを作って、魚を売る。
…。
客、こねーな?
みんな素通りしやがる。
全く、俺の売る魚に見向きもしやがらねーぜ。
…むー、なんでだ?
「おい、あんた!」
なんか、強面なオッサンが声を掛けてきた。
なんだ?
ここで売っちゃ、ヤバかったか?
「なぁ、あんた、それ、川魚だろ?」
まぁ、沼で漁ってきたからな。
「ここ、海辺の都市だせ?そんなマズイ川魚なんか売れねーぜ?海魚のほうが旨いからな。」
………あ。
親切なオッサンの言う通りだ。
しかし、ちと腹減ったな。
まぁ、マズくても、この川魚でも喰うか…。
俺は七輪を魔法で出して火を起こし、焼き網に魚を並べた。
そして、醤油を出して、魚を浸け焼きに…。
おし、焼けたぜ。
はむっ。
あちっ。
…ふむ、魚はまぁ、旨くはねーが、醤油がそこそこカバーしてるな。
ん、うむ。
醤油に山椒と生姜、大蒜を加えて…。
よし。
ん、結構旨ぇ。
川魚の臭みがカバー出来たぜ。
よし、コレで行くか。
ん?なんだ?
気付くと俺は、人垣に囲まれていた。
「おい、兄さん。旨そうだな?」
さっきのオッサンだ。
「それ、さっきの川魚か?」
あぁ、そーだぜ?
「一匹、味見させてくれよ。」
あぁん?
「あぁ、判ってるよ。代金は払うぜ?」
おぉ、それなら。
「モグモグ…ふむ?このタレが旨ぇのか?川魚もこの焼き方だと、案外旨ぇな?」
「おぃ、俺にも一匹売ってくれよっ!」
へいっ、毎度ありー。
「わはは、毎度って、初めてだろ?」
俺の焼いた魚は、焼く傍から跳ぶように売れた。