05-003 金策の策
…ふっ、カネがねーくらいじゃ、俺はメゲねーぜ?
ここへ来るまでに通った街道脇に、かなり魚影の濃そうな場所があったのさ。
ちと街道を引き返し、目星を付けといた場所へやってきた。
ふむ。
これは河跡湖だな。いわゆる、三日月湖って奴だ。
まぁ、かなり陸化が進んてるようで三日月型てはないけどな。
とりあえず、この湖…ってか、沼で釣りと洒落込むか。
ふふっ、俺はそこそこ、釣りには自信があるんだぜ。
とか言っても、釣竿も釣針もねぇ。
仕方ないのでそこらの枯れ枝を釣竿に、潅木の刺を上手く使って釣針モドキを作成した。
釣糸には、枯れた水草の繊維を利用した。
餌は…こーゆー場所の石の下には、都合のよい虫が居るもんなんだよ。
釣場を荒さないように注意して、餌を採取する。
さて、準備オーケーだ。
たっぷり釣ってやるぜ。
…ダメだ。
魚は掛かるんだが、簡単に糸が切れた。
…むう。魔法で強化だ。
…ダメだ。
魚は掛かるんだが、簡単に竿が折れた。
…むう。魔法で強化だ。
…ダメだ。
魚は掛かるんだが、簡単に針から逃げやがる。
…って、おぉう、針にカエシねーじゃんか。
…魔法で針にカエシを…。
…ん?
魔法で釣針作ったほうが、早くね?
…てか…
……てか……
んよっと!
腕をひと振りすると、俺の手には最高級の釣具一式が握られていた。
…そーだよ、最初から魔法で道具、作りゃよかったんだよ。
ふふっ、今度こそ俺の釣りの腕前を見せてやるぜ!
ヒュン!
いい音を立てて釣針が跳ぶ。
カラララ…
リールを巻けば小気味よく浮きが走る。
いい感じだぜ。
ぉ、掛かった。
竿がしなる。
よし、もうちょい、と、思ったところで魚はバレた。
あ、バレたってーのは、魚が針から外れたって意味な。
まぁ、気を取り直して、もう一投。
…くそっ、魚、バレまくりだ!
どーなってやがる?
あ、沼の真ん中ででかい魚が跳ねて、こっち見て嘲いやがった!
くっそー、腹立った!
こーしてくれるわ!
バリバリバリバリッ!!!
俺が電撃魔法を沼に喰らわせると、俺をからかった魚を始め、無数の魚が腹を上にして浮かび上がった。
ふっ、俺を怒られる恐さが判ったか!
…あ。
…い、いけね、自分で自分の釣場を荒しちまった!