04-010 異変
そして、その頃……
私が親友の鹿の女王ピュリカの敵討ちを心に誓っていると、
配下の偵察隊のリーダーが、慌てて駆け込んできた。
「大変ですっ、姫様!魔の山が消失しました!」
え?魔の山が消えた?
魔の山は数年前に突然出現した、黒い岩山だ。
そしてその岩山から出現した凶獣が率いる魔獣達か跋扈し、平和だった森が蹂躙され、森の仲間達が数多く殺されたのだった。
そして凶獣は恐らく、あの残忍な魔王に変身して、ピュリカを殺して…
「大変です!姫様!」
今度は何?魔の山が消えたのはもう知って…
「姫様、死の砂漠が消えました!」
えぇっ??死の砂漠まで?いったい何が起こって居るの?
死の砂漠は何年も前に、この森に隣接した大湿原に出現した、広大な砂漠だ。
それまで大河を伝って細々ながら交易の有った人間の街とを、突如隔てた天然の障害だ。
砂漠を越えるルートを求めて探索隊が何度か出立したが、砂漠の環境は厳しく大半が行方不明となり、僅かな帰還者による中継になりそうなオアシスの発見が伝えられただけだった。
その後、凶獣の出現によって探索どころではなくなり、人間の街への救援要請も不可能になってしまった。
その、砂漠が消えた?
あの、魔の山も消えた?
…そういえば、あの邪悪な魔王は、砂漠を目指して去って行った。
凶獣が邪悪な魔王に変身して去り、死の砂漠も消えたいま、恐らくはこの森を脅かす脅威は格段に低下している筈…
「皆様、聴いて下さい!邪悪な魔王は恐らく、人間の街へと向かったようです。人間の街へ、危機を伝えられなければなりません。私は、人間の街へと向い、危機を伝え邪悪な魔王を討伐しなければなりません。」
「姫様、危険です。そのような役割は私達が…」
「いいえ、これは森を守るエルフ王族の役割です。凶獣の毒牙に倒れた女王亡きいま、その役割は私の役割です!」
「姫様、そのような役割は私達が!高貴なる血筋たる姫様が自らの身を穢してまですることでは…」
「いいえ!私が高貴な血筋の王族だからこそ、この大任は私が自ら果たす必要があるのです。」
「ひ、姫様ぁ…」
そう、これは私の役割!
母上と親友ピュリカの敵を討つのは、私の役割!
いいえ、これは私恨ではないわ。
邪悪な魔王を討伐するのは、エルフの王族たる私の使命!
…例え私の身が穢れようとも、私はこの大任は私が自ら果たす必要があるっ!
待っていてね、ピュリカ。私は必ず…