真命ハ終滅サセル者ナリ
ヴィゼイアスが倒された事によって周りを覆っていたクリスタルのドームも崩れ落ち始める。
何故壊れたのかは置いておいて、ヴィゼイアスとの戦いで満身創痍なイクサ達も崩れ落ちるクリスタルを見極めながら撤退していく。
最凶最悪の巨人を倒したが問題は山積みで、この戦いで多くの人物が亡くなり多くの建物が破壊されたのだ。
残っている偽りの名はイクサ、ゼータ、そしてイエスメデスしかいなくなってしまった。
そして真命の名A アリスは・・・
『イエスメデスあの女性は何処に行ったのだ?』
『それは私も気になっていたのですが・・・飛んで見つけたらどうなのです?』
『飛んでいる最中に落ちるのは勘弁なのでな、それにあの女性の能力が不明なのだ無闇に侵食細胞を使ってしまうのは危険だ』
『確かに・・・それでゼータは何処に行ったのだ?』
『ゼータは残りの機械侵食者がいないのか捜索中だ』
『了解です』
ヴィゼイアスとの戦闘を終了したのだが何処かに行ってしまったアリスを空から探すようにイクサに進言するが、イクサからは未知の力を持っているアリスに対して侵食細胞を温存するように言われて断られてしまう。
突然現れ、未知の力を使い、そしてあのヴィゼイアスに対して有効な攻撃が可能な彼女は脅威であり、そして頼れる味方でもあったのだが・・・戦闘が終了すると同時に姿を眩ますなど怪しいことこのうえない。
そのような状況では不測な事態が起こる可能性が高い。
無論何事も無いことが望ましいのだが・・・勝って兜の緒を締めよという言葉があるように勝ったからと言って油断してはならないのだ。
なのでゼータには生き残りの機械侵食者がいないのか捜索しているのだが・・・ヴィゼイアスを構成する機械侵食隕石が壊れた事によってもしかすれば機械侵食者にも何かしらの影響があるのかもしれない。
『しかし・・・まさかイルミデンテに助けられるとはな』
イクサは崩れ落ちたクリスタルのドームを見て嘆く。
あの時イルミデンテがイクサ達を庇ってくれなければ今ここにいることはなかったであろう。
それほどまでにヴィゼイアスは強力で理解外の存在だったのだ・・・
『そうですね・・・まさか我々を裏切ったイルミデンテが味方してくれるとは思ってもいなかったですよ』
『あぁ・・・だが我々の任務もこれで終了だな』
『これからどうするのですか?』
『どうしようか・・・とりあえずは目先の事を片付けなければならなっ』
イクサとイエスメデスが会話をしていると風切り音が聞こえてきて、そしてイクサとイルミデンテの近くに落下してくる。
砂埃が舞い散り、イクサとイエスメデスの視界を遮るが、イエスメデスが鉄扇を使って砂埃を薙ぎ払い視界がクリアになる。
そして落ちてきた物の正体を見てイクサ、イエスメデスは驚愕する。
『ゼータ!?』
『どうしたのです!?それに翼が・・・』
イクサ、イエスメデスの近くに落下して来たのは偽りの名Z ゼータなのだが、無惨な事に綺麗な深紅の翼はボロボロになり四つの翼の内一つが根元から亡くなっている。
誰にやられたのか?
ゼータは確かに偽りの名としては戦闘経験が浅い。しかしだからと言ってもゼータはヴィゼイアスと戦闘を経験しており、並大抵の機械侵食者でこうまでボロボロにはならない筈だ。
それなのにも関わらずにこれほどまでやられてしまったということはゼータ以上の戦闘力を持つ人物、機械侵食者がいるという事に他ならない。
『ゼータ誰にやられたのだ!?』
『イ・・・イクサ様、気をつけてください』
『どうした!?機械侵食者かそれもとも・・・』
『そうです。イクサ様・・・私はあのアリスにやられてしまいました』
『やはりあのアリスと名乗る女性は、敵なのですね』
『目的は分かりませんが攻撃して来たので敵と過程します。異論は・・・無いですね』
ゼータを攻撃して来た者の正体はアリスであり、ゼータの四本ある内の一本の翼を破壊して出来たということはアリスはゼータに不意討ち、もしくはゼータ以上の速度で攻撃してきたという事になる。
ゼータが疲労しているという事もあるが、アリスにもかくし球は持っているようだ。
その理由だが、ゼータの傷痕に無数にあり、どれも鋭利な刃物で斬られたような傷痕だ。
『致命傷ではないようですが・・・ゼータ貴女の残りの侵食細胞は?』
『は、ははは・・・此処に戻って来るのに大半を使用してしまいましてね。もうイクサ様達の援護は出来ないですね』
『ならば私とイエスメデスで迎え・・・』
ゼータの手当てをしようとしていた矢先にクリスタルの結晶がイクサ達に向かって飛んで来るが・・・その事にいち早く気がついたイクサによって防がれる。
電柱ほどの大きさのクリスタルを盾で防いだイクサだが、飛んで来た位置を把握すると即座に行動を開始しようするが時既に遅く、アリスはクリスタルの結晶と同時に攻撃を開始していたのだ。
速度で劣るアリスはイクサとの距離を積める為にクリスタルの結晶を投擲したのであろう。
そして盾で防いだイクサに対して攻撃を仕掛ける。
イクサの喉元を狙った攻撃を繰り出し、イクサの喉元から鮮血が溢れでる・・・筈であった。
『イ・・・イクサ様』
『ちっ・・・反応が以外に早いですね』
『イエスメデス援護!』
『吹き飛ばしますよイクサ!』
アリスのイクサに向かって攻撃をゼータが体を張って止める。
腹部に刺さったアリスのガントレットをイエスメデスが鉄扇で攻撃し、鈍い音と共にアリスのクリスタルのガントレットとイエスメデスの鉄扇が激突する。
通常であれば人間の骨など粉砕するほどのイエスメデスの一撃なのだが、アリスの侵食細胞によって攻撃した筈のイエスメデスの鉄扇が砕け散る。
しかし、その運動力は相殺出来なかったのか、ゼータの腹部からガントレットが抜けてアリスが吹き飛ぶ。
『イエスメデス、ゼータの介護を』
『無理です。それに・・・』
『そう簡単に吹き飛ばせると思っているのですか?』
そういい終えると吹き飛ばされた筈のアリスが空中でクリスタルの羽を広げたことによって威力を弱め、空中で静止すると再びイクサに向かって攻撃する。
イエスメデスの攻撃が直撃したのにも関わらずにアリスのクリスタルのガントレットには傷どころか、凹んでもいない。
『イ、イクサ様、私に構わずに戦ってください』
『し、しかし・・・』
腹部から出る血を抑えるゼータだが確実に出血量が多く、このままではいずれ出血死する可能性は高い。
戦闘能力は未だに未知数ではあるが、イエスメデスの鉄扇を破壊したアリスの危険度はかなり高く迂闊な攻撃をするべきではない。
もしかすればこちらにガードが全て無意味になってしまう可能性があり、アリスの攻撃は回避するのが得策であろう。
しかし回避してしまえばアリスの攻撃を回避出来ないゼータは確実の死亡してしまう。
その事が一瞬で頭を過ったイクサは戸惑ってしあう。
当然である。イクサとゼータ・・・四季葵は将来を約束した二人なのだから。
構わずに戦ってくれと言われても助けなくてはと思うのは当然。
しかし此処は戦場・・・身内でさえも切り捨てなければ生き残れない場所である。
『こいつは私が何とかする』
イエスメデスが吠えてアリスの攻撃を防ぎ、アリスの身動きを止めようと鉄扇の鎖で身体を拘束しようとするが・・・やはりアリスの攻撃を防いだ鉄扇も鎖もアリスのガントレットが触れた瞬間に砕け散る。
しかし先ほどの攻撃で学んでいたイエスメデスはアリスの腹部に蹴りを喰らわせて吹き飛ばす。
だがしかしアリスの腹部に触れた瞬間イエスメデスの脚に纏っていた衣服が、ボロボロと引きちぎられるのをイエスメデスは持っていたナイフを使って切り裂く。
(危なかった。まさかアリス自身の衣服にも破壊能力があるなんて・・・あと少しでも切るのが遅かったらパンツ見えてましたよ)
『ちっ・・・仕留め損ねたのか』
周りに散らばっている鉄扇の破片を踏みつけてアリスは攻撃しようと攻撃体勢に入る。
対してイエスメデスは衣服を切るのに使用したナイフを構える。
一撃でも触れた瞬間相手の侵食細胞を破壊する能力を持っている相手に対してイエスメデスはナイフのみ・・・明らかに不利である。
そう・・・今のままでは。
イエスメデスは首から下げているペンダントを握り締め・・・破壊する。
その行動に気がついたアリスだが時既に遅く、遠距離での攻撃手段がないアリスにはそれを止める手段はなく、破壊されたペンダントの中に入っていたMの侵食結晶がイエスメデスの身体を包み込む。
『まだ奥の手があったのですか・・・さて、どのようになるのやら』
アリスの言葉を待っていたと言わんばかりにMの侵食結晶の特性を得たイエスメデスが君臨する。
その姿はまるで巨大な蝶であり、イエスメデス自身の姿変化はないが、イエスメデスの背中から生えている蝶のような羽が異常に巨大化してしまったのだ。
自身の身長を優に越えて異常発達した機械の蝶の羽は、巨大過ぎるが故に地上で行動するのは非常に困難なようでイエスメデスは直ぐ様に空中に飛び立つ。
その姿は正しく異形・・・自身の身長を遥かに越える羽は5mを越えており、幅は3m以上ある。
しかしそれだけではない。先ほどまで着ていたイエスメデスの和服のような衣装にも変化が見られ、その姿は昔話にでも出てきそうなほど豪華な物に変化する。
幾重にも重ねられた衣は地面に着くほど長い。昔の女性が着ていた十二単というのに酷似した衣服に変化したのだ。
そしてイエスメデスが飛び立った瞬間、その巨大な羽に付着していたのか大量の鱗粉が周りに飛散してしまう。
その勢いは凄まじくまるで火山灰のようにアリスの方向に向かって飛んで来る。
無論これはイエスメデスが意図的にやったものであり、その巨大な羽を羽ばたかせて飛ばしたのだ。
明らかにヤバいと直感で理解したアリスは上空へと回避する。
『いったいどのような能力なのでしょうか・・・』
そういい終えるや否や応援に駆けつけた帝の軍勢がイエスメデスの鱗粉に呑まれてしまった。
運悪くアリスの直線上にいたために直撃してしまった帝の軍勢を見ていたアリスだが、異常な雰囲気を感じとり振り向くと・・・そこには変わらず帝の軍勢がいた。
しかしその身に纏う覇気はまるで別物に変化しており、最早鬼とも見間違えるほどの異常である。
赤子すらも躊躇なく殺しそうな帝の軍勢は全員武器を構え・・・アリスに向かって躊躇なく発砲する。
『これは・・・あの鱗粉には何か不味い薬でも混ざっているのでしょうか?』
アリスは自身に迫り来る弾丸を交わしならが、鱗粉をばらまいた張本人であるイエスメデスを目視するが・・・そこにイエスメデスと言う人物は存在してはいなかった。
イエスメデスの姿形をしているがまるで別物・・・美しかったその瞳は濁っており何を考えているのはか不明だが、ただ一点、アリスだけを見つめている。
『侵食細胞に呑み込まれたのですね・・・哀れですね。自身の扱える以上の侵食細胞を取り込んでしまったが為に自我を崩壊させてしまうとは』
アリスの言ったようにイエスメデスからは感情というのは読み取れず、感情が亡くなったと言われれば納得してしまうほどイエスメデスは無表情になってしまっている。
『私ガ・・・守ル・・・』
ただ一言イエスメデスが言葉を発するとその事を実現させようと、帝の軍勢の覇気も上がり、イエスメデスもまた鱗粉を周りに飛散させる。
アリスに向かってではなく、周りで倒れている帝の軍勢に向かってだ。
倒れている帝の軍勢にイエスメデスの鱗粉が飛散すると・・・やはり予想していたように倒れていた帝の軍勢が動き出し始める。
その目には生気はなくなってしまってはいるが武器を構える姿は不気味で、まるでゾンビのようである。
『強制的に戦闘させているのですか・・・しかし貴女もこのままで侵食細胞に呑まれて機械侵食者化してしまいますよ。どうするですかイクサ?』
アリスの問いかけに無言なイクサ。そして治療を受けているゼータもまた無言のままだ。
イエスメデスがMの侵食結晶に侵食されるとは思ってもみなかったイクサとゼータは、この事態にイエスメデスを助けるべきなのか迷っている。
イエスメデスは決死の覚悟でMの侵食結晶を使いアリスを倒そうとして、今イエスメデスは機械侵食者になりかけの存在となってしまっている。
あと数分、もしくは数秒なのか?はたまた数時間、数日なのかはわからないがこのままいけば確実にイエスメデスは機械侵食者になってしまう。
イクサにもゼータにも止める事は出来ない。
別に手段がないわけではない。
イエスメデスは決死の覚悟でMの侵食結晶を使用したのだ。助けるのは無粋とも言える。
『そうですか・・・見捨てるというのですね』
帝の軍勢の弾丸をクリスタル羽ばたきによって無効化しているアリスは、様子見が終わったと言わんばかりに別れの挨拶をしてイエスメデスに向かって突進する。
最早観察するより早く仕掛けた方が有利だと判断したためだ。
『守ル・・・私ガ守ルノダ・・・』
突進してくるアリスに向かってイルミデンテは自身の羽衣を侵食細胞で動かし、まるで壁のように展開する。
しかし現実は非情なのだ。
例え戦車の主砲が直撃したとしても壊れることのないイエスメデスの羽衣も、アリスのてにかかればただの紙切れと化してしまいボロボロと朽ち始める。
『このまま一気に破壊して・・・』
アリスの侵食細胞がイエスメデスの羽衣に侵食してボロボロと羽衣が朽ちてゆく中で、イエスメデスの脇から純白の槍が突き出し攻撃していたアリスの右肩を貫く。
『くそっ・・・私の視界外から』
『右肩に当たってしまったか・・・本当はもっと違う場所を狙いたかったんだがな』
アリスの右肩を貫いた純白の槍はイクサの槍であり、イクサも狙っていた部分とは別の部分に刺さってしまったようだ。
しかし最早アリスの右腕は使い物にはならない。
攻撃手段の内の一つを破壊したのは不意討ちとはいえ上出来であろう。
『血よ。槍となりイエスメデスを貫け』
イクサの槍によって貫かれ、肩の骨を砕かれたであろうアリスだが未だに戦意は衰えてはおらず。
激痛に顔を歪ませながらも自身の血を侵食細胞で操り、無数の細長い血で出来た槍を出現させ・・・イエスメデス、イクサに向かって放出する。
細長い槍は脆く爪楊枝程度の大きさしかないが・・・イクサの鎧、イエスメデスの羽衣を貫く。
『守モ・・・レ・・・』
『イエスメデス!』
血の槍によって貫かれたイエスメデスが羽ばたいていた羽が動きを止め、ゆっくりとイエスメデスが地上へと落下してゆく。
イクサも自身を貫かれてしまい動きが鈍くなってしまう。
そして鈍くなってしまったのを見ていたアリスは、砕かれた肩を犠牲にする事によってイクサに近づき左腕のガントレットでイクサに攻撃しようとするが・・・再びアリスの死角、イクサが身体を捻ったことにより視界がクリアになったゼータがアリスに向かって弾丸が飛来して・・・アリスに直撃する。
『二段構え・・・しかし私は歩みを止めることは出来ないですよ!』
そう言い終えるとアリスは全身の筋肉が断裂してしまいそうな程に、身体を酷使してイクサの槍から抜け出す。
ベキベキと音を立てて槍の刺さった右肩を犠牲にして進んでゆくアリス。
最早あれでは右肩から下は機能することはない・・・しかしそんな事はどうでもよいのだ。
イクサ、ゼータさえ倒せれば・・・
『がぁ・・・何故動ける!?』
『使命を・・・果たす・・・未来の為に!』
アリスの攻撃によって全身を貫かれたイクサが鈍い動きでアリスを引き離そうとするが、アリスはしぶとくその瞳には狂気が宿りイクサを捕らえて離さない。
アリスの能力によって徐々ににイクサ鎧も侵食していき、所々からボロボロと崩れ落ちてゆく。
どうやらアリスの侵食細胞を死滅させる能力には個体差があるようでイクサには効きにくく、侵食速度が通常よりも遅い。
しかし完全に無効化出来ていない以上イクサいずれこのままではアリスに侵食されてしまう。
必死に引きはなそうとするが、アリスの血液によって作られた槍がイクサの動きを妨害する。
『イクサ様から離れろ!』
残りの少ない侵食細胞を使いゼータがアリスに向かって弾丸を発砲する。
数発命中するが今アリスの使っているのはアリス自身が造り上げた銃を使っているのではなく、帝の軍勢に支給されている対機械侵食者用のライフル銃を使っている。
威力、精度共に優秀なのだが、自分用にカスタムしているゼータの銃と比べると少し使いづらいらしく、移動して撃つのは向いてはいない。
しかし、相手のアリスは既に満身創痍であり、帝の軍勢用のライフル銃を使っていたとしても接近させ出来れば問題ない。
アリスには遠距離攻撃は無くアリスの血の槍の射程はせいぜい5m程度で、それにライフル銃の弾丸に比べて遅いのだ。
よってゼータはアリスの血の槍の射程外ギリギリに接近して、アリスの眉間に向けて一発。絶対に避けることの出来ない至近距離で発砲し直撃・・・する筈であった。
『ば、化け物め・・・』
『そう簡単に殺られるわけにはいかないのですよ!』
ゼータの放った弾丸はアリスの眉間に直撃することはなく、アリスの血液の槍が弾丸に絡まり止める。
『だが、油断したなアリスよ』
ゼータの弾丸を止めることに意識を向けてしまったアリスに向かって一撃繰り出し、イクサの首を絞めていたアリスの腕が緩まり離れる。
『今だゼータ!』
『はい!』
アリスがイクサから離れた瞬間、ゼータが即座にアリス向かって発砲する。アリスも気がついたのだがゼータの発砲を止めることは出来ずに被弾してしまう。
カートリッジに入っている全ての弾丸を撃ち尽くしたゼータ、そしてゆっくりと羽ばたきを止めたアリスが落下していく。
これで全てが終わった・・・そう思いイクサとゼータがアリスから目を離した瞬間。
イクサ、ゼータを赤い結晶が貫く。
明らかに致命傷であり、場所が悪かったのか夥しい血がイクサ、ゼータから溢れでる。
薄れゆく意識がとらえたのはアリスの笑う顔であった。




