Aノ支配適合者VSOノ適合者
機械侵食者侵食区域 第三戦闘部隊戦闘区画
銀色の糸によって拘束されるギラファノコギリクワガタを持っている大斧で一刀両断したオメガ。
機械侵食者化しているのにも関わらずに一刀両断したオメガの大斧には欠けてもいない、それほど硬度の武器をもっている偽りの名を相手にして姫子は考え事をしていた。
ヴィゼイアスの侵食結晶によって身体能力、武器を得た姫子だが奇襲する為に用意した機械侵食者を掃討されてしまったのだ作戦を練り直すには時間が必要なのだ。
しかしオメガはそれを許そうとはしない・・・オメガの問いかけに答えずにいた姫子に対して攻撃を仕掛ける。
『パルパト援護!』
『了解』
パルパトに援護を要求したオメガが距離を詰めての突進攻撃。
侵食細胞で強化された両足は常人では走って数分の距離をほんの瞬き程度の時間で一気に距離を縮め、大斧の使用しての地面から天を切り裂くような豪快な一撃を間一髪でかわす姫子。
オメガの攻撃をかわして一安心・・・とはいくはずもなく直ぐ様かわした姫子に攻撃して来たのはパルパトの弧爪での斬撃である。
オメガ程の切れ味はないとしても機械侵食者を拘束する事が可能なパルパトの斬撃を、食らってしまうのは得策ではない。
『Vの晶盾』
パルパトの弧爪の攻撃を自身の左腕に形成したクリスタルの盾で受け流す姫子。
姫子の形成したクリスタルの盾は六角形の形をしており、その中央部分にはVの紋様が刻まれている。即席の盾であるのにも関わらずに異様に凝ったデザインなのは姫子の性格からなのか、それとも盾はこのデザインしかないからなのか?
『オメガ!』
『了解!』
自身の攻撃を防がれたパルパトはすかさず姫子を捕らえる為に、攻撃をしていない方の弧爪を動かし地面に蜘蛛の巣状の紋章が描かれる。
銀の糸によって描かれた紋章は綺麗でありこの場にはにつかわしくない。
『銀の紋章』
地面に描かれた紋章がパルパトの侵食細胞と連動したのか姫子に纏わりついてしまった。蜘蛛の巣に絡まってしまった蝶々の様に動けなくなってしまった姫子。
身体を捻ったり、絡まる蜘蛛の巣を退けようとしてみるがパルパトの造り上げた蜘蛛の巣、銀の紋章は耐久度が高いのか壊れる気配はない。
そしてそこに襲いかかるオメガの攻撃・・・無慈悲にも大きく振り上げられたオメガの大斧は犯罪者を断罪するギロチンの如く大斧の刃が煌めいている。
『重鬼の紅鉄斬!』
オメガの侵食細胞によって強化された大斧が姫子に向かって降り下ろされ・・・
『オメガ様?』
突如名前を呼ばれたオメガは困惑してしまう。
しかしそれは名前を呼ばれたからではない・・・名前を呼んだ人物が原因なのだ。
『姫・・・子・・・?』
オメガの名前を呼んだのは目の前で拘束されている人物・・・姫子である。
突然名前を呼ばれてしまったオメガは動揺してしまったのか、大斧で攻撃するのも忘れマジマジと名前を呼んだ人物・・・姫子を見つめてしまう。
(姫子なのか・・・それとも)
『貴女は誰?』
オメガより先に問いかけたのは姫子を拘束しているパルパトである。
姫子を拘束している『銀の紋章』を緩めている気配はない、寧ろ攻撃を躊躇しているオメガに不快感があるような言い方だ。
『えっ!?あ・・・パルパトさま?』
今気がついたと言わんばかりに動揺している姫子はキョロキョロと周りを見渡し辺りの状況を確認しているようだ。
その姿を端から見ていれば可笑しく、そして不思議だ。
この場が戦場であり、周りに機械侵食者の死骸や帝の軍勢が散らばっていなければの話だが・・・
『こ、此処は何処なのでしょうか?それにこの格好とこの糸はどうゆう事なのでしょうか?』
『覚えていないのか?』
『待ってオメガ!
こいつ・・・本当に姫子なの?』
『え・・・ど、どういう事なのですか?
私が拘束されているのと関係があるのでしょうか?』
まるで状況を把握しきれていない様子の姫子。
自分が機械侵食者を利用して帝の軍勢を奇襲した事や、今現在オメガ達と戦闘をしている事も理解していないようだ。
パルパトの『銀の紋章』によって拘束されている人物は姫子なのか?
それとも姫子と声が似ているだけの違う人物が演技しているだけなのか?
必要な情報が大分欠如している状況での戦闘は出来るだけ避けた方がいいのだが・・・そうも言っていられないのが現状だ。
『姫子・・・貴女が此処に来るまでの記憶はないの?』
『記憶ですか・・・オメガ様とパルパト様と神化の名の本拠地に攻め込んだのは覚えているのですが、確か神化の名U ユセと名乗った者と戦ったことまでは覚えています。
そして気がついたら此処に居たのです・・・』
最後は自身なさげに答える姫子。
その様子は演技と言うにはあまりにも不自然で、やはり困惑しているのか周りをキョロキョロと警戒している。
そして何故今になって姫子意識が元に戻ってしまったのか?
何故オメガが姫子に対して攻撃を仕掛けるというタイミングなのか?
姫子は誰かに操られているのか、それとも演技なのか?
演技なのであればいったい何時から姫子がオメガ達を騙していたのか?
操られているのではあれば今目の前にいて姫子と同じ声で喋っているのは何故なのか?
『それよりも何故俺たちと同じ偽りの名と同じ仮面を着けている?
そして今の姫子は俺たちと同じ侵食細胞の能力を使えるのか?』
『それよりオメガ・・・姫子、侵食細胞を解除してくれない』
『えっと・・・ど、どのようにすればよいのでしょうか?』
侵食細胞の解除方法を知らない姫子に対してオメガが手取り足取り教えている。
どうやら無意識で侵食細胞を発動しているのか、姫子は侵食細胞の解除方法を知らないようだ。
そしてオメガが侵食細胞の解除方法を教えるが・・・どうやら変化はない。
何故出来ないのか?
姫子を操っている者の妨害なのか、それとも偽りの名の適性がない者が無理やり偽りの名の能力を疑似的にでも使用しているからなのかの弊害なのかは不明だが、姫子は侵食細胞を解除出来ずにいた。
(仕方ない・・・何故解除出来ないのかは不明だけど薬でなんとかする方が良さそうね)
『オメガ、薬使ってみて』
『確かに仕方ないな・・・パルパト姫子の拘束の一部を解いてくれ』
『了解』
自力での侵食細胞の解除が不可能だと確定するとオメガは懐から薬と注射器を取り出す。
中に入っている薬品はもちろん偽りの名、神化の名の侵食細胞を強制解除する為の薬品だ。
オメガの指示に従い姫子の右腕の拘束を解除する。
そしてオメガの持っている注射器が姫子の皮膚を突き刺し、血管に薬品が注入され・・・るよりも早く姫子の突き刺さった注射器が破壊され、中に入っている薬品が零れ落ちる。
異変にいち早く気がついたらオメガだが時既に遅く、注射器を破壊した物・・・姫子の鮮血がオメガに攻撃を開始していた。
その攻撃はまるで意識して動かしているように、細く鋭く触れば折れてしまいそうな針へと変化しオメガを突き刺す。
『オメガ!?』
『パルパト離れろ!そいつは敵だ』
後ろからでは姫子が攻撃しているのが分からなかったのか、オメガが後ろに飛んで距離を取ったのを見て大声をあげてしまう。
パルパトが姫子の拘束を再開させるより早く姫子が行動を開始する。
姫子の手から零れ落ちた血がパルパトの弧爪に絡まり、赤い糸のように変色する。姫子の今着ているのが純白のドレスだからなのか装飾品の様にも思える。
姫子の顔に不気味な仮面がなければの話だが・・・
『えぇ・・・残念ですがこちらまでは出来ないようですね。
仕方ないですが此方の2名は私が対処しましょう』
姫子が何か不明の事を話している隙に体勢を立て直したオメガが攻撃を仕掛けてくる。
今だに姫子はパルパトの弧爪で拘束されているので逃げれない筈なのだが・・・拘束されている身体を少し、動かし横からくるオメガの攻撃を間一髪で身体をくねらせる事で回避する。
しかし完全に回避する事は出来なかったのか吹き飛ばされた姫子の純白のドレスを引き裂き、潜血がドレスを染みあげる。
本来であれば姫子に追撃の攻撃をしたいのだが、オメガは大斧を構えて動かない。
次に姫子がどのような攻撃をしてくるか不明だからだ。
もしかすれば先程の様に不意討ちを食らいかねないと判断しただけでなく、パルパトがオメガと合流する為の時間稼ぎも含んでいる。
(あの手応え・・・あの姫子にはどうにもカラクリがある筈だ。
冷静になれ、目の前の敵に集中しろ。姫子の声に惑わされるな・・・彼奴は敵だ!)
『オメガ、ごめんなさい』
『大丈夫だ。それより彼奴の攻撃には注意しろ』
『了解』
パルパトは静かに頷き翼を拡げる。姫子の攻撃に対して何時ても回避しやすくする為だ。
左右、前後に回避するよりも空中に移動して上下左右前後に回避出来るのがどれ程重要なのか、パルパトは能力を発動させた時から理解している。
空中戦をする事の大前提は確実に攻撃を回避、致命傷を避けるのかが重要だ。
当然新たに力を手に入れたオメガにも空中戦の重要性を教えてはいるが・・・何故かオメガが空中戦を奥の手と考えているらしい。
そもそもオメガは近接戦闘型のパワータイプ。パルパトのような中距離攻撃でもなければ空中に長時間いる事はない。
不意討ち等に翼を使って強襲することはあるがその程度だ。
しかし・・・もしパルパトと同じように空中戦闘に長けた者がいるとすればどうであろう?
パルパトの方に軍配が上がるのかそれとも・・・
『・・・遅かったですね』
その言葉を待っていたと言わんばかりに空中から虫が羽ばたく音と重なるように金属音が聞こえてくる。
そして現れたのは一匹の蜂型機械侵食者だ。
体型は通常の蜂型機械侵食者と違いずんぐりむっくりな体型で、翼の生えている箇所が黄色い色をしており、体型から見れば何故この昆虫が空を飛べるのか不思議なほどなのだが・・・この昆虫は旧都アークコードに元々生息していたもので、クマンバチと言われている昆虫だ。
『パルパト!』
『了解』
オメガがパルパトに合図を送ると同時に攻撃を開始する。
パルパトは今降りてきた蜂型機械侵食者を、オメガは姫子への追撃だ。
(あいつでこの場を離脱する算段か・・・しかし甘いぜ)
いつの間にかパルパトの弧爪で拘束されていた筈の姫子が自由になっている。
どうやったのかは不明だが切れた弧爪が地面に落ちていることから弧爪を断ち切ったと判断した方が良さそうだ。
『お迎えは残念だが来ないぜ』
『まぁ・・・お迎えじゃあないのですが』
オメガの攻撃を交わしながら悠長に答える姫子。
先程までオメガ達に敵わずに拘束されていた者とは思えない言葉に、オメガは一瞬考え混んでしまいそうになるが迷いは一瞬、直ぐ様に迷いを振り切り攻撃を開始する。
オメガの大斧はオメガの背丈程あるので小回りは効きにくい、そして対する姫子の刀だが大斧よりも小回りは効くかもしれないが、オメガの鎧を斬る事は出来ないらしく数度オメガの鎧を斬ってはいるがオメガにダメージはない。
先程見せた自身の血液を自在に操り槍の様に変化させて攻撃をしてくるかと身構えていたオメガだが、なかなか攻撃をしてこない事を不信に思う。
だが・・・不思議なのはそれだけではない。
(・・・こいつ、傷が再生しているのか?)
オメガが不信に思ったのはオメガが姫子に攻撃した時に傷付けたと思われる胸部の傷から血が出ていないのだ。
ドレスによって視にくくなかってはいるが・・・
『さっきまでの攻撃はどうしたんだよ』
『そんなに焦らないで下さいよ・・・もう直ぐです』
『世迷い言を・・・仕方ない別の手段で攻めるか』
オメガの攻撃を数度かわしている姫子に対してオメガが痺れを切らしたのか、左手に侵食細胞を集中させ大鎌を精製し姫子に攻撃をする。
本来であれば両手で持つ程の大きさの武器を左右の手に1つずつに持つという事は並み大抵の筋力で出来るものではない。
しかも持っている武器が身の丈程の大きさの大斧と大鎌であるのならば、どちらもその違う間合いを理解して立ち回らなければならないが・・・オメガが左手に精製した武器と同調するように鎧が変化する。
赤黒い鎧が血管の様に紋章が刻まれ、躍動しているがの如く緑色に発光している。
そしてオメガの着けている仮面にはOの紋章に重なるようにNの紋章が刻まれていた。
『その力は!?』
『さようなら・・・姫子』
そう言うとオメガは左手で精製した大鎌を使って斬りつける。
突然攻撃の方法を変えたオメガの攻撃を姫子は対処する事が出来てはいない。そればかりかオメガが巧みに大斧で姫子の退路を塞ぐことによって、逃げ場をなくした姫子は避けれる事が出来ずにオメガの大鎌での攻撃が直撃し吹き飛ばされてしまった
『これで終わりか・・・』




