最終舞台
機械侵食者侵食区域
ヴィゼイアスは地面に倒れている偽りの名X イクサ。
偽りの名T トト。
偽りの名Y イエスメデスをみていた。
イクサの身に纏う鎧は所々に傷や凹みがあり、顔を守る鎧の兜のような仮面は破壊され割れた仮面からは素顔が見えている。
持っていた純白の槍はイクサの手を離れ地面に突き刺さってはいるが傷どころか、汚れ一つ付いておらず美術品のような美しさは未だに健在である。
背中から生えている翼は自身の血なのか薄赤色に変色しており、濡れたようになっていてボロボロだ。
イエスメデスの衣装もボロボロになっていて、所々から見える素肌には打撲傷のような紫色に変色してしまっていてあまりにも痛々しい。美しかった背中の蝶の羽根は最早原型を止めてはいなく片方は根元からもぎ取られたのかなくなってしまっている。
そして最も酷い怪我をしているのはイエスメデス、イクサより離れた位置に倒れているトトだ。
トトは偽りの名の中でも高齢に属している。しかしながらトトは年齢に似合うだけの死線を潜り抜けており、感覚、直感、そして技のキレは達人と言っても過言ではない。
だが今はトトの右腕は既にこの世には存在していない。そして既に片足も失ってしまっている。止血はしたが時既に遅く力尽きてしまったのであろう。
いくら最強の剣術の使い手であってもこれ程ハンデがあれば全盛期より腕は落ちてしまうものだ。
(さて・・・次はどうでる?)
どの偽りの名も辛うじて生きているのか微かに呼吸音が聞こえている。何時でも倒すことは出来るがヴィゼイアスはイクサ達を倒そうとはしない。
その理由は・・・
『盾砲ー機色の捕食者』
『双銃ー重転発破』
ヴィゼイアスの元に駆けつけたのは偽りの名I イルミデンテ。
そして偽りの名Z ゼータが遅れて駆けつける。
二人の攻撃が直撃したのにも関わらずに依然としてヴィゼイアスは健全、少なからずダメージを負ってはいるようだがあまり支障はないようだ。
『イルミデンテ私はイクサ様を救出する。貴方はヴィゼイアスの相手をしていなさい』
『エェ・・・分カッテイマスヨ。ドウヤラ私ノ攻撃ハヴィゼイアスニ通ジルヨウナノデ』
砲撃を止めたイルミデンテが今度は接近戦を開始する。
ユセの侵食細胞を取り込んで強化した事によって移動能力が向上しており、ヴィゼイアスの下半身・・・木の根のような触手による刺殺攻撃を交わしながら接近する。
何故クリスタルのような木の根が意識を持ち向かって来るのかはわからないが、イルミデンテは無数の触手を掻い潜りヴィゼイアスに攻撃を開始しようとしたその時・・・急にイルミデンテが立っている地面が盛り上がり行く手を阻む。
地面の中から出てきたのはヴィゼイアスの触手と同じクリスタルの木の根であり、やはり意識を持っているのかイルミデンテを見つけると攻撃してくる。
(避けきれない・・・ならば!)
『侵食結晶U 発動!危機断罪の歯車!』
避けきれないと確信したイルミデンテは背中に背負っているユセの歯車を起動させ、左腕に移動させ能力を発動させる。
その動きはイルミデンテに倒されたユセと同じように左腕に移動した歯車からノコギリの刃が飛び出て、迫りくるクリスタルの木の根と直撃し木の根を粉砕する。
しかし地面から伝わる揺れは一向に収まる気配はない・・・
(何ですかこの揺れは・・・何かが地面の中を動いているような)
イクサ達の元までたどり着いたゼータは違和感を覚える・・・瀕死の偽りの名が3名、一度にゼータが運べる人数は一人、後方に運ぶにも3往復しなければならない。
イルミデンテがヴィゼイアスの相手をしてくれているからといってもあの姿になったヴィゼイアスの力は未知数、残りの侵食細胞がどれ程残っているのか、それとも残っていないのか。弱っているのか弱っていないのかが不明であるためにペース配分を間違えれば命を落としかねない・・・
『ゼータ様!』
ゼータを呼ぶ声と同時に振り返るとそこには機械侵食者を倒し終えたZの適合者が集結しており、数は数えれるだけで13名まで減ってしまっていた。
ゼータは10名のZの適合者にヴィゼイアスと戦っているイルミデンテの援護に向かうように命じ、残りの3名はゼータと共にイクサ達を運ぶように指示をだす。
本来であれば数名援護に付けたいのだが今回は余裕がない、50名いた精鋭部隊が13名にもなれば当然だが。
『それともう一つ確認なのですが、他の帝の軍勢も随時ヴィゼイアスと戦闘をするということで良いですね』
『数名は援護の為に・・・この揺れは!?』
集まったZの適合者が一斉に揺れている地面を見つめ・・・地面が割れる。
突如地面が割れてしまった事によって動揺してしまったZの適合者達は、地面に手足を縫われてしまったかのように動けずにいる。
地面が割れるなど眉唾な現象が起きている今の現状を理解出来ているZの適合者はいるのだろうか?
嫌・・・いない。
この現象を理解出来ているZの適合者は誰一人としていないのだ。
それもそのはず・・・割れた地面からクリスタルの柱が現れヴィゼイアスを中心に円形状に壁が構築される。
円形状に構築された壁は分厚いのか、壁に遮られた外の風景はまるで曇りガラスのように霞んで見えている。
しかしそれは重要な事ではないぶ壁が分厚くとも遠回りや、その壁を超えて進めば問題ない。
そう・・・進めれば。
『な、何なんだ壁が・・・』
『何て高さだ・・・このままでは』
『まさか嵌められたのか』
『あいつを倒すしかないのかよ・・・』
地面を引き裂き現れたクリスタルの壁は分厚いだけではなく巨大で、高さはおおよそ6階立ての建物に相当しとても人間が道具無しでは登ることは不可能だ。
そして帝の軍勢も壁を登る道具等持ち合わせてはいない。
何処の世界に戦争をする為に壁を登る道具を持ってくる軍人はいないであろう。特に平地での戦闘であればなおさらだ。
人間の身体能力を超えたZの適合者もこの壁を越えることは不可能であろう。
一部のZの適合者は登る事が可能かもしれないが・・・
『事態を収拾してきます。イクサ様達を頼みますよ』
『了解です』
Zの適合者にイクサ達を任せるとゼータは翼を羽ばたかせてクリスタルの壁を越えようとするが・・・
『サセマセンヨ』
ヴィゼイアスが呟くと同時にクリスタルの壁が動く・・・そしてクリスタルの壁が狭まると同時に壁からクリスタルの結晶が突き出てヴィゼイアスを中心に天井を形成する。
形成された天井も壁を形成するクリスタルと同じらしく曇りガラスのようである。
『双銃ー重転発破!』
天井を破壊しようと攻撃をしたはずなのだが・・・クリスタルの天井はゼータの『双銃ー重転発破!』が直撃したにも関わらずに傷がついている気配はない。
ゼータに習い他のZの適合者もクリスタルの壁に攻撃するが・・・かすり傷程度しか与えられていない。
手榴弾による爆発も、刀による斬撃、棍棒等の打撃武器での攻撃もまるで効いていないようだ。
『嵌められたのか・・・』
『ゼータ様どうやら我々は閉じ込められたようですね』
『ヤット造ル事出来タノデスソウ簡単ニ脱出ハサセマセンヨ』
『ゼータドオヤラ我々ハ閉ジ込メラレテシマッタヨウデスネ』
ヴィゼイアスの攻撃を防ぎながら後退したイルミデンテがゼータ達の元まで移動する。
ゼータはイルミデンテにこの壁、天井を破壊出来ないか頼んでみるが答えはNo・・・そもそもこの状況では壁、天井を破壊する為には複数回攻撃しなければならないとイルミデンテは仮定する。
そして複数回攻撃しなければならないという事は、当然壁の方を向いて攻撃しなければならない。背中ごしにパンチを打てる人間が存在しないのと同時に、機械の巨人となったイルミデンテも背中ごしに攻撃等出来るはずがない。
『コレデ貴方ハ袋ノ鼠・・・ソロソロ本気デ行キマスヨ』
そう告げるとヴィゼイアスがその大きな腕を降り下ろし攻撃を仕掛けてくる。
図体が大きいからなのか攻撃スピードが遅いが、周りをクリスタルの壁によって行動範囲を狭まれているゼータ達には回避するのは少し難しい・・・人間の図体より大きな鉄球を防げる人間がいないようにヴィゼイアスの攻撃を防げる偽りの名は存在しない。
機械の巨人となったイルミデンテであれば侵食細胞を防御にまわせば防げない事もないが、それは悪手でありかわした方が無難だ。
『皆さん回避を!』
降り下ろされたヴィゼイアスの攻撃・・・轟音と振動が辺りを支配する。
翼を所持しているゼータはヴィゼイアスの攻撃をかわすことは出来たが、空を飛べる事が不可能はZの適合者はかわすことが出来ずに直撃してしまう。
そして見るも無惨にもヴィゼイアスの攻撃によって倒されてしまったZの適合者達だが・・・まだ彼らを襲う不幸は始まったばかりであった。
『開導ー次元無情の聖地』
倒れてしまったZの適合者に襲いかかった悲劇・・・地面が割れそして出てきたクリスタルの木の根のような触手に貫かれてしまった。
そしてあろうことか貫かれたZの適合者は割れた地面に引き込まれてしまう。
『全クヴィゼイアスハ何デモアリナノデスネ・・・』
『イルミデンテ感謝しますよ』
『コレモヴィゼイアスヲ倒スカラ』
ヴィゼイアスの攻撃をかわしたイルミデンテの右腕にはイクサ達偽りの名が抱えられており、イルミデンテがヴィゼイアスの攻撃から守ってくれたのか無事である。
未だに気絶したままだが・・・
『シカシドウシマス?コノママデハ我々ハジリ貧ニナッテシマイマスヨ』
『そうですね・・・』
『クク・・・くはぁクァァハハハ。
サァ!舞台ハ最終局面!華々シク戦マショウ!』
ヴィゼイアスの咆哮にも似た声がクリスタルに反射し周りの反響する。
そしてクリスタルの木の根の触手に絡まれたZの適合者達がヴィゼイアスの下半身・・・木の根に絡まり不気味なオブジェの様になっている。
その姿はアート作品の様でクリスタルに絡まれたZの適合者は美術品のようだ・・・




