結晶ト戦線ノ鉄槌
帝の軍勢第一戦闘部隊と第ニ戦闘部隊が特攻を開始してから数分が経過していた。
第三戦闘部隊の絨毯爆撃によって負傷したと思われていたヴィゼイアスは未だに健全、イクサ達も攻撃をしてはいるが致命傷をあたえられずにいた。
そもそもこのヴィゼイアスはどのようにすれば倒せるのか?
攻撃を繰り出しているワイズマンは残りの弾薬と相談しながら考え事をしていた。
『残りの弾薬は半分・・・不味いですね』
『ワイズマン様!』
『どうしました?』
『神化の名U ユセ、帝の軍勢特務夢見姫子が目を覚ましました』
『了解した。とりあえず両名の事は第四戦闘部隊に任せましょう』
目を覚ましたユセと姫子が見たのは奇怪な仮面を着けた男が3名、女性が2名が警備していた。
警戒するのは機械侵食者から守る為なのか、それとも警備している者達が攻撃してくるのを防ぐ為なのか・・・
『貴様達はこの戦いが終わるまでこの場を動かないでもらおう』
目を覚ました姫子に問いかけるのはZの適合者の仮面を着け、背中に身の丈ほどの大きな刀を背負った大柄な男であり、背負った大剣は銀色の輝きを放ち装飾品の金色の宝石が目立っている。
その他にも帝の軍勢と同じような形状の銃を持っている女性、両手に手の甲にプロテクターを装備したやせ形の男性、肩にはクロスボウと腰には鞭を装備した少女のような見た目をした女性、そして最後には真っ赤な槍を装備した青年がそれぞれ姫子達を警備している。
『あ、あの・・・貴方は?』
『悪いがその質問に答える事は出来ない』
姫子の問いかけに対してキッパリと断ったのは、やはり最初に姫子に問いかけたのは大剣を所持したZの適合者だ。
どうやらこの5人の中では彼がリーダーなのであろう、姫子は彼の身につけている帝の軍勢の制服にある勲章が少佐である事を理解し、これ以上は話しても意味がないと理解すると直ぐ近くで黙り込んでいるユセに話かける。
内容はこの場で起きている事についてだ。
『なるほど・・・貴女がいるから私も監視されているという訳ですね』
『ユセには何でお前が監視されているのかわから・・・』
ユセと姫子が話していると上空から蟲等が羽ばたく音が聞こえてくる。
その羽音は金属音を奏で、この戦場でこの音が聞こえてくるというのは・・・
『機械侵食者!?』
姫子の悲鳴と共に強襲してきた機械侵食者にいち早く気がついたのはクロスボウと鞭を持った少女で、クロスボウで迫り来る機械侵食者を向かい撃つ算段だ。
そして強襲してきた機械侵食者から姫子、ユセを守る為に痩せ型の男性と銃を持っている女性が陣形を組み、大剣と槍を持っている青年が武器を構える。
『来ます!』
クロスボウを構えていた少女が矢を放つと同時に雲に隠れて襲撃してきた機械侵食者が姿を表す。
1匹は特長的な顎を持つ昆虫・・・この地では滅多にお目にかかれない昆虫で何処かの誰かが輸入してきたのであろう。その昆虫は世界で最長のクワガタムシ・・・ギラファノコギリクワガタである。
そしてそれに追随するのは長い触覚に黄色と黒の警戒色が特長的な昆虫・・・シロスジカミキリ。
その後に続くのは人間に最も嫌われ、古代よりその生態を変えていない昆虫・・・ゴキブリが6匹強襲してきた。
クロスボウの矢を交わしたギラファノコギリクワガタだが、後ろにいたゴキブリの一匹に命中し爆発する。
その爆撃に巻き込まれてしまったのか、後ろにいたゴキブリも空中で体勢を崩し姫子とは違う方向に落ちて行った。
『うわぁ・・・キモい』
爆発の衝撃で顔が吹き飛び落ちてきたゴキブリを見ながらユセが呟く。
事態に気がついた第三戦闘部隊の面々も銃で応戦するが、この銃の威力はZの適合者の持っている武器とは違い威力が低い。
しかし陣形を組めば撃ち勝てるが・・・この場は砲撃隊が展開する第三戦闘部隊であり、陣形を組もうにも物資が邪魔で陣形を組めないでいた。
『警告する。もしこの場を動けば殺す』
槍を構えて警戒している青年は姫子、ユセに向かって冷たく言い放つ。
その瞳を見る事は出来ないがきっと冷徹な瞳なのであろう・・・
『そう・・・残念ですね』
ユセが言い終えるやいなやユセが侵食細胞を発動させ・・・槍を構えている青年に不意討ちを食らわせる。
突然の不意討ちに反応が出来なった槍を構えている青年は無惨に刺され、体からクリスタルの刀が飛び出してしまっていた。
見るからに致命傷であり普通の人間であれば即死、もしくは気絶するはずだが・・・この青年もZの適合者。
ユセの一撃を受けていても未だに反撃の兆しを表していたが・・・
『一発で死ねばいいのに・・・侵食細胞発動』
ユセが侵食細胞を発動させて槍を構えている青年に追撃する。
その姿はあの時と同じ・・・UとVの紋章が重なるあった仮面を着け、巨大な歯車と禍々しきロングブーツを装備している。
『きさ・・・!?』
侵食細胞を使用して攻撃仕掛けてきたユセ、もう1人のZの適合者がユセを撃ち殺そうと銃を構えたたが・・・撃つことは出来ずに地面に倒れこむ。
何が起こったわかないZの適合者。
視界が百八十度回転し・・・最後に見たのは自身の身体であり、そこにはある筈の首から上がなかった。
『ちゃんと狙ってください』
倒れこんだZの適合者を見つめるのは夢見姫子。
その顔にはユセと同じ仮面を着け、手にはクリスタルで出来た刃を持っている。
そしてその姿は正に花嫁と言うのに相応しい純白のドレス。飛び散った筈の血が付いている筈なのだがその麗しき純白のドレスには何も付着していない。
姫子はクリスタルの刃に付着している血を拭き取るとこちらに敵意を向けている帝の軍勢を睨み付ける。
『先に行ってるよ』
『了解。私はこれを掃討してから行くよ』
槍を構えていた青年を倒し終えたユセは残りのZの適合者。
大剣持ちのZの適合者、クロスボウと鞭を装備したZの適合者、両腕にプロテクターを装備したZの適合者に向かって攻撃を開始する。
『貴様ら我々の仲間を!』
『くすっ。直ぐに同じ運命にしてあげますよ』
空から降ってきた機械侵食者を倒し終えたZの適合者が攻撃を仕掛ける。
己の拳を強化しての接近戦に対してユセは、歯車を地面に叩き込み迫り来るZの適合者をスタンさせた一瞬の隙をついての蹴りが炸裂した。
ギラファノコギリクワガタを相手にしているZの適合者と、シロスジカミキリを相手にしているZの適合者は乱入してきたユセによって深手を負い両名共に機械侵食者の餌となる。
『これは・・・何故?』
ユセが呟き見ている先にあるのはZの適合者を捕食した機械侵食者なのだが・・・何故捕食した機械侵食者が悶絶し始める。
きぃきぃと耳障りな悲鳴を叫びながら地面を転がっていたシロスジカミキリとゴキブリの機械侵食者が動きを止め、二匹とも動かなくなってしまった。
『これは?毒なのか?
なるほど・・・この贋作にはこのような能力も不味いですね。取り敢えず本体に連絡しておきま・・・』
そう言い終えるより先にユセの右手側から爆発音が聞こえ、黒煙と火柱が立ち上がる。
どうやら第三戦闘部隊の大砲の中に積めてあった弾薬が爆発したようで、その弾薬を爆発させた犯人は・・・偽りの名W ワイズマンが侵食細胞を発動させて爆発させたのだ。
『やってくれましたね・・・これではこちらの位置が』
ユセはこちらに近づいてくる弾丸の音を聞き取るや否や歯車を回転させて飛んでくる方向と、ユセの直進上になるように移動させる。
金属と金属がぶつかる合う音が響き渡る。
歯車を回転しさせユセが視界を確保すると・・・そこには目視出来る数でおおよそ6人のZの適合者が迫ってきていた。
機械侵食者侵食区域第三戦闘部隊第ニ戦線
内部から帝の軍勢の戦力を削ぎ落としていた姫子の足が止まる・・・それもその筈、連絡していたユセとの通信が途絶えてしまったからである。
(ユセとの連絡が途絶えた!?なるほど・・・あの爆発は帝の軍勢の1人が惹き起こしたと思って行動した方が良さそうですね・・・そうすると、あの贋作の連中は回りに複数いるのですね)
爆発の後にユセからの連絡が途絶えたということ、つまりそれはユセの身に何かあったという事なのであろう。そう仮定するのが一般的だ。
『客人・・・ではないようですね』
姫子の先には爆発の調査に来たであろうZの適合者と2名と鉢合わせになってしまった。
1人は大柄な男性でその両手には人の頭蓋骨を容易に砕く事が可能なほど巨大なハンマーを所持し、もう1人は帝の軍勢の制服を着ており、その両手にはサブマシンガンらしき銃を所持しているようだ。
『エルフェ私が先に行く』
『了解!ワールズ彼奴の力未知数・・・気をつけて』
巨大なハンマーを持ったZの適合者、ワールズが姫子に向かって攻撃仕掛ける。
此方からの距離がまだ遠いのにかかわらずに一気に距離を詰め、相当重いのであろうハンマーを下から掬い上げるような強力なスイングなのだが・・・ハンマーは空を切り、その反動でワールズがよろめく。
間一髪で攻撃を回避した姫子がバランスを崩したワールズに斬りかかろうとするが、もう1人のZの適合者、エルフェがマシンガンを発砲し牽制する。
『なるほど・・・』
マシンガンでの攻撃を侵食細胞使って作りあげた盾で防ぐ。
盾の隙間から視線を向けた先にはエルフェの元まで撤退したワールズがいて、そして騒ぎを聞いたのか第ニ戦闘部隊が10名程駆けつけいた。
『奴は強い。援護をしてもらえるか』
『了解です!』
ワールズの合図と共に駆けつけた第ニ戦闘部隊が砲撃体勢に入り発砲を開始する。
無情にも辺りを薙ぎ払う一斉に射撃により姫子が無惨にた折れこむ。
当然である。
いくら身体能力が強力されたからといっても、無数に飛び交う弾丸を数百発も浴びれば絶命は避けられない筈なのだが・・・
『い、いない!?』
『消し飛んだのか?』
『警戒を解除するな!何処からか襲ってくるかもしれないぞ!』
『ワールズ。見に行って下さい』
ワールズが無言で頷くと姫子のいた場所に移動するが・・・そこには姫子が倒されたという形跡はなかった。
当然人が射殺されてれば血が飛び散り、肉片がその場に残るであろう。
しかし何も残っていないという事は・・・
『なっ!?』
ワールズがエルフェに告げようとした時、ワールズの後方エルフェ達が陣形を形成している場所から衝撃と共に悲鳴が聞こえてくる。
ワールズが振り向き確認したのは巨大な昆虫、ギラファノコギリクワガタがエルフェ達を奇襲していた。
そしてそのギラファノコギリクワガタの影に隠れるように現れた女性・・・姫子がエルフェに向かってクリスタルの刀を降り下ろす姿があった。
ワールズが助けようと駆け出すが・・・時既に遅くエルフェの首から上が地面に落ち、身体が崩れ落ちる。
残りの帝の軍勢は既にギラファノコギリクワガタに餌食になってしまったのか口元には血や肉片が付着していた。
それを見て絶望してしまったのか、ワールズの動きが鈍くギラファノコギリクワガタに挟まれてしまう。
『やめろぉ!止めてくれ!』
ワールズがギラファノコギリクワガタに向かってハンマーを降り下ろすが硬いのか、挟まれた事によって力を失ってしまったのか中々倒せずにいると姫子が近づいてくる。
最早これまでと思ったワールズだが締め付けていたギラファノコギリクワガタの顎が緩み拘束が外れる。
そしてワールズを殺そうとしていた姫子の歩みも止めてしまった。
何がどうなっているのか困惑しているワールズの前に二人の影が舞い降りる。
1人は悪魔のような形の翼の翼に全てを断罪しそうな大斧と大鎌を所持した人物、その顔には奇っ怪な仮面を着けていた。
そしてもう1人は悪魔の翼とは反対・・・天使の翼をその身に宿し、その指から銀色の糸がギラファノコギリクワガタを捕らえていた。
『貴様は誰だ?』
舞い降りたオメガとパルパトは仮面を着けた姫子と対峙する。




