絶機絶偽ノ戦場
ヴィゼイアスの指示に従い攻撃を開始する機械侵食者達、対するは第一戦闘部隊率いるトトが接近戦闘で相手をする。
数では多い帝の軍勢だが相手は機械侵食者の軍勢・・・しかも単体で攻撃して来るわけてではなく蟲特有の軍団戦術での戦いをしてきている。
元々軍団戦術をする蟲だが、機械侵食者と成った者達は例外なく単体で攻撃をしていた。
理由として考えられるのは他の生物より優れた生物に成れば軍団戦術をする必要が無いからと言うものだ。
帝の軍勢や偽りの名には知られていないが生物が機械侵食者化する場合、大抵はその生物・・・蟲であれば巣の中から適合者がでた場合その巣にいる蟲全てを食らう習性がある。
狼など複数で共同生活をする生活の場合は適合した者が縄張りから離れる習性にあるが・・・しかし今帝の軍勢が相手をしている蟲達はヴィゼイアスの指示によって共食い、互いに敵対する事なく帝の軍勢に攻撃をしている。
『数が多いのぉ・・・それにこの動き』
『ぐぁぁぁ』
『しまっ・・・』
『ちっ、戦場に余計な考えは不要か』
トト自身も全線に乗り出し蟲型の機械侵食者達の迎撃に移動しようとすると、その行動を見ていたイルミデンテがトトの方へと移動する。
イルミデンテがトトの元へと移動する理由・・・それはイルミデンテ神化の名達だけが知っている秘密をトトに知らせる為だ。
勝手に持ち場を離れたイルミデンテに対してゼータが第四戦闘部隊の数名を付いて行くように指示を出す。
イルミデンテが裏切りトトに攻撃するのを防ぐ為だ。
無論イルミデンテを倒す事は出来ないが足止め程度は出来るからだ。
『トト!』
『イルミデンテ何しに来た!?』
『手短ニ話ス』
イルミデンテからトトはこの機械侵食者達の動きが組織された動きであり、動かしているのは・・・ヴィゼイアスだと告げる。
その事を断言させるようにイルミデンテがトトの元に移動してから数分後・・・イルミデンテの足元から巨大な百足が出てくる。
全長を見ることは出来ないが長さはゆうに100mを越えており、イルミデンテを捕らえる為なのか身に纏わり付こうとするが・・・Zの適合者達が身動きを封じるように行動し、イルミデンテ、トトが打撃と斬撃を食らわせて討伐する。
『トトコノ場ハ任セマスヨ』
『貴様も自身のすべき事をしたらどうかね?』
『無論』
イルミデンテはヴィゼイアスの足元、木の根元に向かって移動し攻撃を開始する。
イルミデンテより先に戦闘を開始していたイクサなのだが、防御が高いのかヴィゼイアスにダメージを与えてはいないようだ。
『ゼータに隊の指揮は任せたものの・・・何て硬度だ』
『総隊長自ラ前線デ戦ウトハ変ワッテマセンネ』
『そんな事はどうでもいいがイルミデンテ・・・こいつは硬いぞ』
『ソレハヴィゼイアスノ能力ダカラデショウ』
同じく攻撃を開始したイルミデンテだが、やはりヴィゼイアスの作りだしたこのクリスタルを破壊するのは相当骨のいる作業なのであろう。
イクサは接近戦での攻撃を止めてゼータに指示を出す。
『了解しましたイクサ様。
『第三戦闘部隊に告げます!これより砲撃を開始してください狙いはヴィゼイアス。
絨毯爆撃で面での制圧を開始してください』
『こちら第三戦闘部隊。砲撃を開始します』
既に砲撃できる体勢を整えていた第三戦闘部隊は後は狙いを付け・・・爆撃を開始する。
爆音が空に響き渡り地響きが辺りを駆け巡る。
それは正に戦場のオーケストラ。
無慈悲なまでの絨毯爆撃によってヴィゼイアス、そして周りの地形すらも破壊と言うなの世界に誘う・・・
しかしそこには未だに健全なヴィゼイアスが君臨していた。
あの絨毯爆撃でさえもヴィゼイアスを傷つける事は出来なかったのか、と悔しさを滲ませる帝の軍勢達だが、イクサ、イルミデンテだけは違っていた。
『気ガツイタカイクサ?』
『あぁ・・・もしかすればあの場所が』
『試シテ見ル価値ハアルサ』
そう言うとヴィゼイアスは侵食細胞の力を発動させて大きくジャンプする。
あの巨体でどのようにすればあのような動きが可能なのか?
迫り来るイルミデンテに対してヴィゼイアスはハエを振り払うように攻撃してくる。無論イルミデンテもその攻撃に対してむざむざ食らうはずなく、侵食細胞を使用して両肩にあるミサイルを展開して応戦する。
迫り来るヴィゼイアスの腕は巨大で大きくまるで巨大な壁が迫ってくる勢いであり、ヴィゼイアスの大きさはからすればイルミデンテもその腕で握り潰せるほどだ。
『イルミデンテ!』
その動きに最初に気がついたのは空を飛んで全軍指揮していたゼータだ。
声を荒げてイルミデンテに注意を促そうとするがそれよりも早くヴィゼイアスが行動を開始していた。
迫り来る攻撃を両肩のミサイルによって迎撃したイルミデンテに対して、ヴィゼイアスが報復とばかりに自身の侵食細胞を発動させ、ヴィゼイアス全身に身に纏うクリスタルが淡い緑色に発光し、腰の辺りなのであろうか地面に向かって伸びているクリスタルの木の根のような物が複数形成され、イルミデンテに向かって飛んで行く。
しかし・・・その攻撃はイルミデンテにあたる事はなく地面に向かって落ちる。
『なんじゃ!?意外に脆いのぉ』
ヴィゼイアスの攻撃は侵食細胞を使用して脚力を強化して飛んで来たトトの斬撃によって防がれたのだ。
だがトトの言う通りにヴィゼイアスが先ほど作り上げたクリスタルの木の根の槍は脆く、今まで通じていなかったトトの斬撃で意図も容易く切れる程に脆くなっている。
これがどのような事を意味するのか。少し考え事をしていて反応が遅れたトト、クリスタル木の根の槍を切り落とし着地しようした場所に蟲型の機械侵食者が襲いかかる。
通常であれば蟲型の機械侵食者の餌になるであろうが、トトは空中で体勢を立て直し下で待ち構えている蟲型の機械侵食者を切りつける。
その動きはとても老人とは思えない動きだ。
『行け!イルミデンテ』
トトの言葉を聞く前にイルミデンテは既に行動をしておりヴィゼイアスの身体を伝い既に肩まで移動していた。
ヴィゼイアスの肩にたどり着くのは容易ではない。
そもそも先ほどヴィゼイアスがイルミデンテに攻撃を仕掛けたように数回同じように攻撃をしてきたのだが・・・Zの適合者によって迎撃された事でイルミデンテは肩までたどり着けたのだ。
道中数名のZの適合者が襲撃にあい命を落としたが仕方のない事だとイルミデンテは納得している。もとより彼らもそのつもりなのであろう。
『返シテモライマスヨ』
そう言うとイルミデンテはヴィゼイアスの結晶によって閉じ込められているユセを取り返す為に。
しかし・・・現実とはそう簡単にいかないものだ。
ユセを取り返えそうとしたイルミデンテが吹き飛ばされる。
イルミデンテを吹き飛ばしたのは爆発であり、その爆発はイルミデンテの足元からでありヴィゼイアスの肩が爆発したのだ。
至近距離からの爆発だがイルミデンテにダメージが無いのか着地して直ぐに体勢を立て直し、ヴィゼイアスを視界にとらえる。
爆発のダメージなのかイルミデンテの肩に少しひび割れてた。
『マサカアノヨウナ防御能力ガアッタトハ。
シカシ・・・イクサ!』
イルミデンテの合図と共に後方で隠れていたイクサが特攻を仕掛ける。
狙いは先ほどイルミデンテがいた方とは別の方向、姫子が囚われいるクリスタルだ。
『ナルホド、イルミデンテノアノ動キハ囮・・・デハ無イヨウデスネ』
イルミデンテが迎撃しようとした時既に遅くイクサの槍によって姫子が、ユセはゼータがクリスタルを破壊し両者を救い出す。
姫子はイクサがユセはゼータが救い出して離脱して直ぐにワイズマン達第三戦闘部隊によって砲撃を開始し、再びヴィゼイアスが爆炎に飲み込まれる。
『思った通りだな』
『見事ですイクサ様』
ユセと姫子を救出したイクサ達は比較的安全な第三戦闘部隊へと移動し、部隊に預けると再び戦場に舞い戻る。
ワイズマン達第三戦闘部隊が砲撃を終えた後に姿を現したイルミデンテは、迫り来る爆撃に対して侵食細胞を使用して何層にもなる壁を形成していたのか、辺りには砕けた結晶が散らばり地面に落ちて戦闘をしている帝の軍勢と機械侵食者に襲いかかる。
『あぁぁぁ』
『くそ!足が!?』
『機械侵食者を止めろ!一匹も後ろに通すな!』
『野郎!よくも仲間を!』
『この蟲共がぁぁぁ!』
上から降り注ぐクリスタルに押し潰された帝の軍勢の叫び声や、仲間を助けようとする声、機械侵食者の潰される音が重なりあい不協和音を奏でる。
しかし注目すべき事はその事ではない。注目すべき事は・・・ヴィゼイアスが防御したという事だ。
一度目の絨毯爆撃では防御をしてこなかったのに今回は防御をした、つまりダメージを負う可能があるという事だ。
その理由はイクサとゼータよる姫子とユセの救出なのであろう。
どういう理由かは不明だがヴィゼイアスの身体を形成するクリスタルは脆くなっているのかもしれない。
『ワイズマン様攻撃が通じているようです』
ワイズマンの部下の1人が双眼鏡で覗き込みながら報告をする。
今は再装填するために砲撃を止めているがもう一度攻撃を開始するのは決定事項であり、どれ程の犠牲を出したとしてもそれは殺らなければならない事だ。
そう・・・今なお必死で機械侵食者の進行を食い止めている第一戦闘部隊、第ニ戦闘部隊、そして第四戦闘部隊を犠牲にしてでも殺らなければならない事なのだ。
正直味方を犠牲にしたくはない。だれだってそうだが時には多くを救う為に少数を切り捨てる覚悟をしなければならない、それは上に立つ者の責任であり、使命だからだ。
『しかし・・・イクサ様も意外に外道なのですね』
そう言ったワイズマンの視界にはイエスメデスが指揮を取っている姿が写し出される。
本来であれば第一戦闘部隊を指揮する筈のトトが前線に出て戦闘をするなど言語道断だが、トトの性格を考えれば指揮をするのはあまり得策ではない。
人には適材適所というのがあり、その人に最もあった事をするのが理想だ。
イエスメデスもその事を最初っからわかっていたのか、トトが抜けた際には直ぐ様に第一戦闘部隊の指揮にはいり、今は第一戦闘部隊と第ニ戦闘部隊を指揮している。
イエスメデスの指揮の元で勇敢にも、無謀にも機械侵食者に襲いかかる帝の軍勢達、ある者は迫り来る機械侵食者の攻撃をその身で受け止め、またある者は死んだ仲間の武器を手に取り戦いを挑む者、またある者は捕食された仲間ごと撃ち殺す者。
どの人物も後ろに引く事はなく、負傷した仲間でさえも踏み台として攻撃を仕掛ける帝の軍勢の戦闘は狂気さえ覚える程だ。
しかし・・・何故彼らはこれ程までの戦闘を出来るのでああろうか?
通常であれば自身の目の前で仲間が捕食されれば戦意は落ちるであろう、隣にいた友人がクリスタルによって押し潰されれば失意の念に陥るであろう、しかし彼らはの戦意は衰えない。
耳を裂くような悲鳴も、大地を揺るがす爆音も、降り注ぐ仲間の血、機械侵食者の血も気にせず、足を進め敵を殺すように行動する彼らは何者なのか?
恐怖を人間が捨てる事は出来ない、それをもし捨て去る事が出来る者がいるのであればそれは生きるという事を放棄した者だけであり、恐怖とは人としての正当防衛のようなものだ。
恐ろしい思いをすれば人はその恐ろしい事を二度と繰り返えさないように努力するであろう、手を火傷したのであれば次は火傷しないように行動するであろう。
交通事故にあったのであれば事故にあわないように行動するだろう。
何故彼らが攻撃を止めないのか・・・その答えはイエスメデスにある。
イエスメデスの侵食細胞の能力に加え、Mの侵食結晶を使用して得た能力・・・イエスメデスのレベル3の能力『鱗粉契恵』が原因だ。
『戦え・・・そうでなければ生き残れないのだから』
イエスメデスは阿鼻叫喚が犇めきあう戦場を操り、不協和音を奏で続ける。




