百機夜行
機械侵食者侵食区域
『サテ・・・アノ化ケ物ハドウスレバ倒セルノヤラ』
未だ活動を続けているクリスタルの化け物に対してどのようにして倒したらいいのかイルミデンテは考えていた。
クリスタルの化け物の左肩にはイルミデンテの同胞であるユセが捕らえられており、ヴィゼイアスと同じようにクリスタルに閉じ込められていて、気を失っているのか瞳を閉じている。
戦闘機部隊の戦闘を見ていたイルミデンテは、あのクリスタルの化け物が並大抵爆撃では傷つかない事を知っている。そして多種多様な攻撃方法をもっていることも。
しかしながら戦闘機に向かって撃った弾丸がミサイルに変化するのは流石に予想外だったようだ。
『シカシ・・・何故攻撃シテコナイ?』
イルミデンテは先ほど戦闘機に向かって撃ってきたミサイルを迎撃し、そして追撃の砲撃も撃墜している。なのにも関わらずにあのクリスタルの化け物はイルミデンテに向かって攻撃してきていない。
ミサイルを飛ばす事が出来るので射程距離外という事は無いであろうが、攻撃しないのは理由があるのかそれとも攻撃するつもりが無いのか?
どちらにしろイルミデンテの投げる瓦礫程度では傷つかないのでどうする事も出来ない。
『接近戦デ倒ソウニモアレニ通用スルノデショウカ?』
今のイルミデンテは接近戦での戦闘方法がメインであり、遠距離での攻撃方法は広範囲殲滅の『重漠ー鉄色の雨』と両肩の武装を展開しての『鬼門ー爆鬼の天井』がある。
トトとイエスメデスによって破壊された左腕の砲撃・・・『崩撃ー光業炎羅!』は使用する事は出来ない。
広範囲殲滅の『重漠ー鉄色の雨』は論外として、ミサイルでの攻撃である『鬼門ー爆鬼の天井』は通じるかもしれないが、イルミデンテの見立てとして両肩のミサイルの爆発力は戦闘機のミサイルに比べて爆発力は低い。
となれば接近戦に移るのが鉄則だが・・・あのクリスタルの化け物がヴィゼイアスの侵食結晶であるとするならば全く攻撃が効かないかも知れない。
以前のイルミデンテより力を付けているといっても、この姿でヴィゼイアスの侵食結晶を破壊した事がない。
破壊する機会が無いだけなのだが・・・
『流石ニ私ダケ損ヲスルノハ・・・来タヨウデスネ』
イルミデンテの目線の先には数万の影が現れる。
その数万の影とは偽りの名X イクサ率いる帝の軍勢であり、そして先陣をきるのはいずれもこの世界で死線をくぐり抜けてきた精鋭達だ。
そしてそれぞれの部隊を指揮するにはイクサ達偽りの名だ。
1番数が多くそして接近戦に優れた部隊・・・第一戦闘部隊総隊長・偽りの名T トト。
『やれやれ・・・隠居の身に堪える仕事じゃ』
この部隊はあのクリスタル化け物に対して接近戦をするために作られた部隊であり、どの兵士も手には対機械侵食者用の近接武器を手にしている。
そして最も血気盛んな部隊だ。
続いて第一戦闘部隊より後方に展開する部隊。
数は少ないが中距離での戦闘及び、遊撃戦をメインにした部隊・・・第ニ戦闘部隊総隊長・偽りの名Y イエスメデス。
『皆の者!この戦いは後に引けぬ戦いだ。我々の住む都があの化け物によって蹂躙されようとしている!
それはなんとしても防がねばならない。今こそ全ての力を使いあの化け物を倒すのです』
イエスメデスの掲げた拳に合わせ己の拳を上げる兵士達。その目には気迫が宿っていた。
中距離での立ち回りを良くする為に各兵士はライフル銃を担ぎ、腰には短刀を持っている。
『イエスメデス様凄いヤル気だなぁ・・・やっぱり仲間思いですね』
イエスメデスの部隊を後方にから見つめる人物。
遠距離攻撃・対空砲撃がメインの第三戦闘部隊総隊長・偽りの名W ワイズマン。
この部隊は戦闘機部隊隊長であるゼル・S・フルーロルト大尉の戦闘記録を元に組織された部隊で、あの巨体であるクリスタル化け物に対して遠距離攻撃をする部隊だ。
あの巨体であれば接近戦をする部隊を誤射することなく撃つ事が可能であり、もしクリスタル化け物の砲撃がミサイルに変化しても対空砲で迎撃できる寸法だ。
そして各兵士の中から選抜された選りすぐりの部隊。
偽りの名Z ゼータ率いる第四戦闘部隊が各方面に展開している。
50名程の数名の部隊だが、この部隊は特殊であり異質のだ。各方面にバラバラに展開しているが、この部隊はそれぞれ独立して活動だができ、各々の判断で戦闘する事が可能だ。
その理由は・・・50名全てのの兵士が目元を隠す仮面を付け、両手には自身の得意とする武器を持ち、統一されてはいない武器をしている。
ある者は右腕に剣を左腕に盾を装備し、腕、胸、腰を覆う防具を装備している。
またある者は身の丈程の長さの銃を所持し、その銃の反動を抑える為なのか肩を守るプロテクターを身に纏っている。
そしてある者は身に付けている物は小さな短剣1つと、取り扱いが良さそうな銃だけなのだが、その全身を包むのは闇に溶け込むような黒い服装をしている。
今は昼なので目立つと思うが・・・
そして極めつけは8本もの刀を所持している者までいる。その者は女性なのであろう、細くしなやかな腕を守る為の小手と、足首にも守る武装、刀を多く使用するからなのか上半身は邪魔にならないように胸にさらしを巻いているだけである。
この部隊はいずれも偽りの名Z ゼータと同じ能力を持つ者達だ。
身体能力、武器の精度、武器の生成能力はオリジナルであるゼータには及ばないものの、いずれも人間では不可能な身体能力を持っている者達だ。
『何とか50名は揃える事が可能でしたが・・・何分敵の戦闘能力は未知数、それにイルミデンテとの戦闘も視野に含まないと』
ゼータは後方で翼を広げ上空へと移動し、全部隊の状況を確認する。
そしてゼータの隣には純白の鎧を身に纏う騎手ーーと言うよりも背中から生える4本の翼を見れば天使と言った方が良いであろう。
偽りの名X イクサも完全武装で上空にいた。
『ゼータよ、私はこれよりイルミデンテに交渉してくる』
『わかりました。イクサ様御武運を』
そう言うとイクサは先ほど場所を確認したイルミデンテの元まで移動する。
イルミデンテもイクサの事を確認したのかイクサの方を見る。
『共闘感謝シマスヨイクサ』
『利害が一致しているのでな・・・それでイルミデンテよ貴様はあの化け物をどう見る?』
『ドウトハ?』
『はっきり言って我々は勝てるのかということだ』
『アノ化ケ物ハ此方キ気ガツイテイルノカ・・・ソレトモ気ガツイテイナイノカ。
ドチラニシロアノ化ケ物ハ此方ニ攻撃シテキテハイナイ。
私ガ貴殿方ヲ待ッテイル時デモ攻撃ハシテコナカッタコトヲ考エルト・・・』
『我々と同じで能力に限界がある』
イクサの言葉に頷いて答えるイルミデンテ。
あのクリスタルの化け物の姿を形成する物が、イクサ達同じ侵食細胞の結晶体である侵食結晶であるとするのであるのならば・・・一体どれ程の力なのか?
人間という存在を超越したイルミデンテでも自身の侵食細胞に限界があるという事をしっている。
(だから私もこの結晶によって能力を使用した分を補っていのだがな)
イルミデンテが考え事をしていると敵であるクリスタルの化け物が動きを止める。
その止まった距離は遠距離部隊でがる第三部隊のちょうど射程距離外だ。
遠距離部隊の射程距離がばれたのか?それとも気まぐれで止まったのか?
第一戦闘部隊の隊員が総隊長であるトトに問いかけようとしたその時・・・突然部隊全体に声が響きわたる。
声の発信源は部隊の中から発せられたのではなくその前方・・・クリスタルの化け物からだ。
『サテ・・・コレガ貴殿方ノ全戦力デスカ?』
クリスタルの化け物から発せられた声の口調に覚えがある者達・・・イクサ、イルミデンテ、トトの3名は一斉に戦闘準備に入る。
何時でも戦闘出来るようにする為だ。
『ドウシタノデス?何故答エテクレナイノデスカ?』
『貴女は誰ですか?』
クリスタルの化け物の問いに答えたのは戦闘体勢している3名ではない人物、ゼータが答えたのだ。
そしてゼータの問いかけにクリスタルの化け物は素直に、そして当然の如く答える。
声帯らしき部分もそれを発する口もないのは気になるが・・・
『私ノ名前ハヴィゼイアス・・・ヴォナルガンド』
喋っていたヴィゼイアスの口調が変わりあからさまに殺意がにじみる。
それは抑える事が出来ないものでその殺意に蹴落とされてしまったゼータが後退りをする。
『貴様ラニヨッテコノ土地封印サレタ者ダ!!』
ヴィゼイアスが言い終えるより先にゼータの元にイクサが駆け寄り、イルミデンテもクリスタルの化け物もといヴィゼイアスの前に立ち塞がる。
両名共に戦闘できる体勢でありイクサは槍を、イルミデンテは右腕を構えている。
『お前はヴィゼイアスなのか?』
イクサの問いかけに対してヴィゼイアスはゆっくりとそして怒気の籠った口調で答える。
『アァ・・・イクサデスカ?多少姿ハ変ワッテマスガ』
『そうだ。そしてお前は・・・』
『私ハヴィゼイアスデスヨ。
ソシテ貴様ラガ機械侵食隕石ト言ウ存在デモアルノデス』
『アノ機械侵食隕石ニ意識トイウ物ガ存在シテイルトハ驚キデスネ』
以前とは比べ物にならない位見た目が変化しているイルミデンテに対しても、ヴィゼイアスは動じてはいないのか冷静に答える。
普通に考えれば人間から機械に変化していたら驚くどころの話ではないはずだが・・・やはりヴィゼイアス自身も変化しているからであろう。対して動じていないのは。
『ヴィゼイアスお前の目的はなんだ?』
イクサが問いかけると同時に各部隊は戦闘体勢に入る。
トト率いる第一戦闘部隊は抜刀し武器を構え、イエスメデス率いる第ニ戦闘部隊はライフル銃を構える。
ワイズマン率いる第三部隊は既に援護射撃する準備は出来ており、ゼータ率いる第四戦闘部隊も各地で侵食細胞を発動している。
ヴィゼイアスの答え次第ではすぐさまに攻撃を行えるようにするためだ。
『目的・・・ソウデスネ』
ヴィゼイアスはゆっくりと腕を上げてイクサを指差すと・・・『世界ヲ救ウ為ニ・・・デショウカ?』
『世界ヲ救ウ?』
『それは一体どういう事なのでしょうか?』
『意味がわからないな』
意味がわからないという顔をしているイクサ達に対してヴィゼイアスはゆっくりと、子供に教えるような口調で話始める。
曰くこの星は脆弱であり、その脆弱なままではこの星は数千年の内に滅んでしまうと言うことであり、ヴィゼイアスにはそれを解決する術があるというのだ。
しかし・・・イクサ達には疑問がある。
イクサ達、偽りの名は未来から来た存在だ。しかし未来ではそのような危機は訪れてはいない、些細な争いはあるが星が滅ぶということまでは達してはいない。
この時代も争いもあるが・・・星が滅ぶという事は考えられない。
そもそも星が滅ぶという事はどういうことなのか?何かの争い・・・戦争なのか。はたまた自然災害か。
それともこの時代のように隕石の衝突なのだろうか?
イクサはその事を確かめる為にヴィゼイアスに問いかける。
『コノ星ハイズレ人間ニヨッテ滅ボサレル・・・愚カニモ人間ドモノ進化ニツイテ行ケズニ』
『その事を断言できる理由はなんなのですか?』
『コレデスヨ』
ヴィゼイアスは自身の中心・・・機械侵食隕石を指差す。
機械侵食隕石もといヴォナルガンドが知らせたのか?
そんな事はどうでも良いがヴィゼイアスがと唱える救済とは何のか?
『ヴィゼイアスお前は何故我々の同志を殺したのだ?』
『コノ星ノ救済ノ為デスヨ』
そう言うとヴィゼイアスの足元が動き出すと・・・足元から蟲が溢れ出す。
その蟲はどれもかれも大きさは疎らだが総じて皮膚が金属質に変色している・・・つまりヴィゼイアスの足元から出てきた蟲は機械侵食者だ。
それも1匹や2匹どころのではなく無数に出てくる。イクサ達帝の軍勢には及ばないもののその数は・・・今までに見たことの無い数だ。
それだけではなく土の中から這い出た者は蟲だけでなく動物・・・狼等も少数ではあるがまざっている。
『コノ数ハ・・・』
『百機夜行・・・全テノ人間ヲ根絶ヤシニシテサシアゲマショウ』
ヴィゼイアス率いる機械侵食者の軍勢とイクサ率いる帝の軍勢の最終決戦が幕を開ける。




