天冥ト地骸ノ進撃
帝の軍勢中央本部近郊・・・機械侵食者侵食隔離区画
『コレデ全テガ終ワリニ・・・』
イルミデンテの爆撃によって辺りが破壊され見るも無残な廃墟と化してしまった。
もともと機械侵食者の侵略行動や、イクサ達の戦いで破壊されてはいたが最早無事な建物は辺りには見当たらない・・・
その中で佇む神化機械巨人となったイルミデンテも自身の爆撃によって至る箇所が破壊されてしまっていた。
弾丸を放った左腕は近距離で爆発を浴びた為に大砲が花を咲かせたようになっている。両足はあの巨体を支える為に頑丈なのだからか少し被害で抑えられている。
『流石ノ威力ダ・・・シカシヤハリ足元ニ撃ツノハ得策デハ無イデスネ。
防御力ヲ最大限ニシテモ大砲ガ破壊サレテシマイマシタカ・・・』
『だったら撃たなければ良かったのですがね』
イルミデンテの独り言に対して答える声が聞こえると、頭上から斬撃と打撃が直撃する。
直撃した左腕が悲鳴を上げて破壊されてしまう。
打撃よって凹んで傷んだ部分に的確な斬撃は見事なものだ。
『全く怪我人には堪えるスピードだわい』
『不意討ちとはいえ破壊出来た事が大きいですわね』
『トトニイエスメデス・・・生キテイタノデスネ。
ソレニ上空カラ落チテキタトイウ事ハ』
打撃と斬撃を食らわせた人物の正体は偽りの名Y イエスメデスと偽りの名T トトであり、上空を見上げたイルミデンテの頭上にはポツンと浮かぶ物が・・・
『ヤハリイクサトゼータニヨル上空ヘト回避シテイタノデスネ。
マダ隠シ玉ガアッタトハ』
『当然じゃな。戦いとは如何に手の内を明かさずに戦うというのも重要なのじゃよ』
『ナルホド・・・ナラバ貴方モ何カカクシ玉ガアリソウデスネ』
『さて、どうじゃろうなぁ』
イルミデンテの上空に居たのは偽りの名X イクサと偽りの名Z ゼータであり、あの爆風からトトとイエスメデスが逃れることが出来たのはイクサとゼータが上空へと回避したからだ。
今までイクサとゼータの移動速度より速度を最大限に上げての離脱により、ギリギリ爆風から逃れた形にはなるがイクサとゼータは侵食細胞を過度に使い過ぎたのかぐったりとしている。
イルミデンテの最大火力を潰したのは良かったがイクサ側の被害は、イクサ、ゼータが披露状態、トトが足を負傷した状態であり無事なのはイエスメデスだけである。
『話をしている暇はないのですけどね』
そう言い終えるとイエスメデスは扇を使っての攻撃を開始し、少し遅れるかたちだがトトも攻撃に移る。
左腕が破壊された事で異常発達した右腕の鉤爪と上半身の対空砲等があり、対空砲は攻撃出来ないのか今は格納されている状態だ。
(まさかあの爆撃から逃れるなんて・・・不味いですね)
イエスメデスの攻撃を防げばトトの斬撃が直撃し、トトの斬撃を防げばイエスメデスの攻撃が直撃する。
二人の連携攻撃により徐々にダメージをおっている筈なのだが・・・未だにイルミデンテは披露していないのか動きが変わらない。
『少し無理をし過ぎたかな』
『イクサ様私は先に戦線に戻ります』
『了解した。私はもう少し体制を整えてからにする』
『了解しました』
イクサとの会話を終えるとゼータはイルミデンテに向けて移動し発砲してトトとイエスメデスの援護にまわる。
イクサは爆撃が起こる前にイルミデンテとの戦いで消耗した体力を回復させる為に、戦闘に参加するのは後になりそうだ。
ゼータが合流した事によって戦略の幅が拡がったが・・・未だにイルミデンテは倒れない。
恐るべき耐久力を誇るイルミデンテ。
そしてまるで疲れるという事を知らないのか一向に動きが鈍くなかってはいない。
『トト様大丈夫ですか?』
『すまないのぉ。しかしこ奴もしかすれば』
『トト様も気がつかれましたか?』
『トトもZの適合者も気がついたようですね。
そうです。あの姿となったイルミデンテに疲労という概念が存在しないかもしれませぬ』
『こっちは負傷しておるというのにのぉ・・・どうなんじゃイルミデンテよ。
貴様には疲労という概念はないのかのう?』
問いかけられたイルミデンテは高らかに笑い答える。
『神ニ疲労トイウ概念ガ存在スルノカネ』っと、その事が真実だとすればイルミデンテは自身の侵食細胞が続く限り全力で活動できる事になる。
偽りの名になったからといっても疲労、そして睡眠、食事等の基本的には人間と変わらないイクサ達は戦闘が長引けば長引くほど不利になってしまう。
イクサも体力が回復したのか攻撃を仕掛ける。
狙う部分は右腕と肩との付け根部分であり、脆弱そうな部分だからだ。
イクサが攻撃してくる直前に危険を察知したイルミデンテは『重漠ー鉄色の雨』の時と同じように、両足を固定するアンカーが打ち込まれ右腕を手刀の形に変え・・・上空から降下して攻撃してくるイクサの槍と激突する。
『イク・・・』
イクサの槍とイルミデンテの手刀が激突した衝撃でゼータの声がかき消され、衝撃を逃がしきれなかったイクサが吹き飛ぶ。
事前にアンカーを打ち込んでいたイルミデンテは衝撃を地面に逃がしたようで、さほど衝撃を受けていないらしい。
そもそもイクサとイルミデンテでは体格差があり過ぎるのも問題だ。
『Zの適合者よ。お主はイクサの所へ向かうのじゃ』
『わかりました』
『行カセルトデモ?』
イクサとの戦いで打ち込んだアンカーを収納したイルミデンテがゼータに向かって襲いかかる。
巨大な体格を生かして道を塞ぎ長い右腕でのなぎ払い攻撃だ。
『行かせてもらいますよ!』
ゼータは侵食細胞を解放させてレベル2へと姿を変える。
ゼータの赤い翼がもう一組増え合計4つになり、ゼータの両腕に持っている銃の口径も大きくなる。
合計4つとなった翼を自在に操りアクロバティックな飛行でイルミデンテのなぎ払い攻撃をかわすと、追撃に放ったイルミデンテのミサイルを迎撃して横を通り過ぎる。
『逃ガスモノデスカ』
イルミデンテが巨体を反転させて再び追撃のミサイルを撃とうと展開させた瞬間にトトとイエスメデスの斬撃と打撃によりバランスを崩す。
いくら武装が強固になったとしても何度も攻撃を喰らわせれば疲労がたまってしまい、破壊可能になるというものだからだ。
『我々を蔑ろにし過ぎたじゃぞ』
『明らかに硬度が増してますね・・・しかしジェスパーが攻撃した時とは違い再生させないのですか?』
イエスメデスが指摘したようにあの爆撃を起こしてからのイルミデンテはジェスパーが攻撃した時とは違い、攻撃された箇所を再生させていない。
その代わりにトトとイエスメデスの攻撃で左腕を失って以来、まるで違う物質にでもなったのかと思わせるくらい硬くなっている。
例えるなら木材から金属へと変化したと思ってもらいたい。
それほどの変化をさせた背景には・・・イルミデンテに取り込まれたランテンが影響しているのかも知れない。
(やはりあの女性を取り込んだ時から能力が変化していますね。
しかしやっと・・・身体が慣れて来ましたね)
体制を立て直したイルミデンテがトトとイエスメデスと対峙しようとした瞬間・・・遥か後方で爆発が響きわたる。
しかし今は戦闘中であり爆発との距離が遠かったのかイクサ達にはまるで聞こえていない。
だがただ一人・・・この爆発で顔色を変える人物がいた。
変える顔は既に存在していないが爆発がした瞬間に動きが止まった人物・・・神化の名I イルミデンテだけが爆発に気がついたようだ。
(まさか・・・我々の本拠地が爆発した!?
何故!?ユセ、ネクロートは無事なのですか?)
(動きが止まった?これはどういうことなのでしょうか)
『何をぼーとしておるのじゃ?』
動かないでいたイルミデンテにトトが斬りかかる。
トトに斬られた事で正気に戻ったのかイルミデンテが動き始める。
『悪イデスガ貴殿方ト戦闘シテイル暇ガ無クナリマシタカラ』
『何を言っているんだ』
『教エラレマセン』
そう言うとイルミデンテはトトとイエスメデスを払いのけると自身の基地のある方向・・・旧都アークコードへと向かっていく。
『どうしたのじゃ・・・』
『撤退していく?』
『何故じゃ?』
『分からない・・・とりあえずイクサの元に向かいましょうか』
『了解じゃ』
撤退していくイルミデンテに追撃や追跡をする事はせずにイクサの元へと向かうトト達。
イルミデンテとの戦いで負傷したイクサは今はゼータの治療を受けている。イクサの治療をする為だけなのでゼータは今レベル2の侵食細胞を使用してはいない。
駆けつけたトト達を見たときは驚きの表情をしていたイクサだが、戦闘音がしなくなっていたので何かあったという事は分かっていたようだ。
『そしてこれからどうするのです?』
イエスメデスの問いかけに少し考え、そしてイクサの出した答えは『ゼータとイクサによる追撃を行う』っというものだ。
翼を持ち三次元行動が可能性なイクサとゼータで、旧都アークコードの方向に向かったイルミデンテの追撃を行い、負傷したトトには傷を癒してもらう事、軽症なイエスメデスにはこの事態を収拾する為に行動してもらう事を決定する。
その決定に不服はないようでトトは疲れたように中央本部へと帰還し、イエスメデスは事態の収拾の為に行動を開始する。
『イクサ様少し休んだ方が・・・』
『あの性格のイルミデンテが引いたのだきっと何かあったのであろう・・・彼奴はそんな奴さ』
『そうですか・・・レベル3迄使用なされたのですからあまり無理をしないでくださいね』
『わかっているさ』
そう言うとイクサとゼータは飛び立ち、イルミデンテが向かったであろう旧都アークコードの方向に向けて移動を開始する。
旧都アークコード・神化の名本拠地跡地
見るも無残に破壊され大穴が空けられた旧都アークコードから這い出た化け物は帝の軍勢中央本部へと向かっていた。
野生の本能によって危険だと察知した機械侵食者やその他の動物は物陰に隠れたのか見当たらない。しかし本拠地の爆発に巻き込まれた機械侵食者は物言わぬ骸と化していた。
ゆっくりとではあるが、巨体故に歩幅が大きいのでその一歩がとてつもななく大きく、長さにすれば約100m程なのであろう。
木の根を張り巡らせるように移動しているのでまるで何か悪い悪夢を見ているかのようだ。
そしてその化け物を見ている影が2つ。オメガはあまりの惨状に言葉を失っていた。
何故あの化け物が目覚めたのかは分からないが此方に攻撃しないのであれば様子見をしても良いだろうと思いオメガは少し休憩をしている。
『オ、オメガ!?』
『パルパト気がついたのか』
『あれは・・・なに?』
『俺にも分からないんだよ・・・奴等の本拠地が爆発した瞬間にあの化け物が現れたからな』
気を失っていたパルパトが目覚め周りの惨状、そして移動している化け物を見て唖然となってしまった。
気を失っていたとはいえ先ほどまでいた建物が見るも無残な瓦礫と化して、異形の化け物が辺りを移動していれば誰でも目を疑うものだ。
人間とは時として自分の常識から大きくかけ離れた出来事を認めたくないと思ってしまう生物なのであり、パルパトもこれは悪い悪夢だと思いたい程であった。
『これからどうするの?
姫子は見つかったの?』
『彼処にいるぜ・・・』
そう言って指を差したオメガの先にあるものは先ほどの化け物がいた。




