レベル5ノ狂気
隕石が露になっているのを目撃し、最初に声をあげたのは他でもない。
ユセが半狂乱になりながら悲鳴をあげて侵食細胞を発動させ駆け寄っていった。
ユセの顔には仮面が、身体にはドレスのような武装が展開させる。
仮面は左側に何やら幾何学的な模様、右側にはUの紋章、そして口元が何故か笑っているようになっている。
ドレスのような武装は動きやすさを重視しているのかユセの着ていたロングドレスより短くなっており、膝が見え隠れする位置ある。
背中から背負う形になるが、何に使うのかは不明な稼働式の棒・・・重機等にあるシリンダーと思われる物の先端に巨大な歯車が装備され、オメガやパルパトの用に武器等は見られず代わりに、両足にはロングブーツの用な鎧を身に纏いロングブーツの靴底にはローラースケートが取り付けられている。
突然悲鳴、そしてユセの驚くべき行動に呆気にとられたパルパトは弧爪を緩めてしまい脱出されてしまった。
『ど、どうしてこんなことに!?』
隕石の近くには破壊されたのか周りにはヴィゼイアスの侵食結晶が散らばっている。
しかし・・・自信を犠牲にして隕石を封印した筈のヴィゼイアスの姿が見当たらない。
何処へ行ってしまったのか?はたまた誰かがヴィゼイアスの侵食結晶を破壊して連れ去られたのか。
ユセが周りのヴィゼイアスの侵食結晶を集めようとするとオメガが攻撃を仕掛けてくる。
当然である。敵が自分の手を離れて好き勝手行動するのであれば追撃も止む終えないというものだ。武器を手にして襲い掛かってくるかもしれないのだから。
『何で居ないの!?』
『俺が知るかよ。てかなんの事だよ』
『・・・知らないの?』
『あぁ。知らないぜこの場所は何なんだよ』
オメガの攻撃かわし、オメガにヴィゼイアスの事を問いかけるがオメガからの返事は『知らない。この場合が何を意味しているのか分からない』と言う答えだった。
本当にそうなのかと疑問に思ったユセだったが、オメガ達は此処に来たのは初めてだった事を思い出す。何より冷静に考えてみればオメガ達、偽りの名は機械侵食者と戦っていた。
その事を考えると機械侵食者化を抑えているヴィゼイアスの侵食結晶を壊すのは不可解な行動だ。
そもそもオメガ達はユセと共に行動していたので破壊するのは不可能な筈だ。
『落ち着いたのかよ』
『えぇ・・・非常事態には変わらないけどね』
『此処で何が有ったのか?貴様が何を探しているのか?
この結晶が何を意味しているか?全て話せ』
『嫌です!だって時間がないからね』
そういうとユセは背中の2本の歯車を地面に突き刺すと、勢いよく回転し始める。
それに連動してローラースケートも稼働し移動する。
向かう方向は出口であり、第1区画にある情報収集室だ。
追撃してくるオメガの攻撃をかわし、姫子の弾丸をジグザグにそうこうする事によって回避する。
パルパトは一足早く出口に向かい弧爪によって出口を塞いでいる。蜘蛛の巣の用に張り巡らされた弧爪は生半可は力では引き裂く事が出来ない。この蜘蛛の巣状に展開したパルパトの弧爪であれば、オメガの一撃を塞せぐ事が可能だ。
『不味い・・・』
出口を塞がれたユセは急ターンして回避し、捕らえようとしてくるパルパトの攻撃をかわす。
オメガも跳躍と翼での滑空を生かして接近してきている。ユセ程ではないがどうやらゆっくり考え事している暇はなさそうだ。
(あの蜘蛛の巣・・・どう考えて突破は無理そう。それに出口で見張っているあの子も攻撃ではなく束縛する為に動いているし、少しでもあの糸に絡まったらオメガという奴に捕まるのは目に見えてるんだよね。
多分殺されはしないけど半殺しは覚悟した方がいいのかなぁ・・・)
ユセがオメガから逃げるように距離をとる。
オメガは以前追撃してくるが姫子、パルパトはあの場からは動こうとはしないようだ。
(良いこと思いついちゃいました)
後ろから追いかけるオメガに対して急ブレーキをかけるユセ。
しかしオメガは止まろうとはしない。当然であるオメガは近距離攻撃型であり防御力や攻撃力が売りであり、そのオメガより早く動けるユセは普通に考えればオメガより防御力が低い筈だ。
オメガが大斧を構えると、ユセの背中の歯車に向かって降り下ろす。
もちろん機動力をそぐのが目的であり殺したりはしない。敵対しているとはいえ貴重な情報を持っているのだから。
オメガの攻撃が当たりユセの歯車が破壊され・・・てはいない。
どうやらあの歯車の硬度は相当硬いのか攻撃したオメガの両腕に痺れが伝わってくる。
しかしながらユセの歯車にはオメガがつけた切り傷が残っおり、何度か攻撃をすれば破壊する事は可能かと思うが・・・どうやらそれよりも先にオメガの大斧の方が破壊されてしまうかもしれない。
刃物等の刃の部分はどうしても切断する為に細くなってしまう物であり仕方ないことだ。
そして刃物という物は横からの衝撃には脆く壊れやすい。その事を知っていたのかユセは歯車きオメガの大斧がぶつかり、刃が入った瞬間に横に動かしオメガの大斧の一部を破壊することに成功した。
『見えてねぇ筈なのに・・・てめぇやるじゃねぇか』
『本来は使いたくはないんだけどね』
攻撃した時のスピードを殺しきれなかったオメガはそのままユセの横を通り過ぎる。
弾かれて体勢を崩さなかったことは良かったがオメガはそのまま50m程でばかり行き過ぎてしまった。咄嗟に大 斧で減速しようとしたが勢い殺しきれなかった為に地面が抉れてしまう。
体勢を立て直しユセの動きを確認するが、ユセはこの場から立ち去っておりパルパト達のいる出口に向かって進んでいた。
『くそ!なんて速さだよ』
オメガが悔しそうに地面を叩くと衝撃で地面が割れ・・・中から半透明な物質が出てくる。
木の根の用な歪な型をしてはいるがこれは明らかに人工物だ。
オメガは半透明な物質を拾い上げる。
半透明な物質は照明の光を反射して輝く姿はガラス細工の様であり、この場には似つかわしくない。
そもそも何故この半透明な物質が地面から出てきたのが疑問で、なぜこの半透明な物質が木の根の用な歪な型をしているのかも意味不明だ。
この第3区画は地下であり木の根があること事態は別に不思議ではないが、この土地は隕石の衝撃によって根こそぎ壊滅的な被害が出たと報告されている。
なのに何故かこの場に存在するこの半透明な物質は何なのか?疑問には残るが今はそんな事に時間を使っている暇はない。
『オメガが出し抜かれた』
『分かっています』
オメガが抜け出された事に気が付いたパルパトは姫子に注意を促しライフル銃を構えさせる。
パルパトは出口を見張っているので動く事は出来ないが、姫子ならば好きな角度で撃つことが可能なので少し場所を変えてライフル銃を構える。
今のところユセは遠距離攻撃をしてきてはいないが遠距離攻撃が無いとも言いきれないので、ユセの移動の直線状にははいらないのが常識的だ。
(少し引き離せたようですね。しかしもしあのオメガとパルパトの考えがユセの考え方と違うのであれば・・・)
(速度を落とさない?目的は何なのでしょうか?)
姫子の弾丸をかわしなが此方に近づいてくるユセ。姫子の弾丸をかわし続けたとしてもパルパトの弧爪による拘束や、パルパトの守っている出口には蜘蛛の巣状にして封鎖してしまっている。
パルパトの弧爪は蜘蛛の糸の用に粘り気は無いのでくっついて止めるという事にはならないが、鉄以上の硬度を保つ糸を断ち切るのは骨のいる作業であり、近距離攻撃型であるオメガの攻撃でも一度では断ち切る事は不可能であった。
『パルパト様下がります』
『後ろに控え・・・』
パルパトが姫子に下がるように促そうとしたその時、ユセが速度を上げて此方に近づいてくる。
速度を上げたのは姫子の弾丸が飛んで来なくなったからなのであろうが、あの速度で出口に突進した場合・・・確実に深手を負う速さだ。
速度を上げて此方に近づいてユセの行動・・・それは意外な行動であった。
『がっ・・・き、きさ』
『ゲット!』
『姫子!?』
速度を上げて近づいてきたユセは先ほどオメガを撒いた時と同じように、背中の歯車を起動させパルパトの頭上を越えて姫子を拉致する。
速度を落とさずに姫子の身体に触ってしまった為に、姫子の身体にエルボーする形になってしまい衝撃で姫子が気絶してしまった。
『まさか!?』
姫子を拉致したユセは再び背中の歯車を起動させて扉の前に戻ると扉に向かってユセが突進する。姫子を盾にする感じでだ。
先ほどよりは速度は遅くなったがそれでも自動車並みの速度が出ているので、もし姫子がパルパトの弧爪の蜘蛛の巣に激突してしまった場合・・・死亡は確定しているようまものである。
姫子はパルパト、オメガにとって友達であり、数多くの死線を潜り抜けてきた仲間を自分の武器によって手をかけるのはかなり嫌なものだ。
そして気が付くとパルパトは咄嗟に出口の蜘蛛の巣を退けてしまった。
考えるよりも先に行動してしまったのである。
『思った通りですね』
『くそっ!』
去り際にパルパトに挨拶に挨拶をしてユセは第3階層の後にする。
直ぐに後を追おうとしたパルパトの前にユセの侵食細胞によって扉が締められてしまった。
抉じ開けようとするがユセが言っていた通りにこの扉は開かない。やはりユセ達、神化の名の侵食細胞が必要なようだ。
『パルパト!』
『オメガごめん。姫子が・・・』
『俺も出し抜かれたからな・・・抉じ開けられないのか』
『私の力では無理』
『・・・試してみる』
パルパトと合流したオメガは大斧を構える・・・分厚い扉を破壊する為に放った一撃は扉を凹ませた。
一撃で破壊は出来なかったがオメガの複数の連撃によって破壊され、オメガパルパトは姫子を追いかけようとしたが既にそこにはユセの姿はいなくなってしまっていた。
神化の名本拠地第1階層 侵食細胞研究所
侵食細胞を解除したユセは第3階層の侵食濃度を調べる機械の前にやってきた。
第3階層の隕石が露になっているという事は侵食濃度が高くなっている可能性があり、そのデータを調べれば急激に高くなった原因を特定する為にも便利だからだ。
『これは・・・侵食濃度ZERO?
何でこの数字っていったい』
侵食濃度ZERO・・・ということはその区画には侵食細胞が存在していないという事になる。第3階層の通常侵食濃度はレベル3を表している。
ヴィゼイアスの侵食結晶によって防がれているが多少も漏れてしまうのも仕方ない事で、イルミデンテはヴィゼイアスの侵食結晶を壊したがってはいたがユセは反対であった。
『何かの間違いじゃ・・・』
侵食細胞研究所に銃声が響きわたりユセが崩れ落ちる。
ライフル銃を構えた姫子が既にユセの後ろに立っておりライフル銃から消炎が立ち込める。
『余計な検索はしないでくださいね』
にっこりと笑いユセと別れを告げた姫子の顔には仮面があり、目元だけを覆う形の仮面の左側には人間の目を縦にした用な模様があり、本来は動かない筈なのだがギョロリと辺りを見渡す。
そして右側にはAの紋章とVの紋章が重なっている。
『やっと自由になれる身体を手に入れたのですから』




