偽りト神化ノ起源
拘束され椅子に座らせられたユセはこれからどうすれば良いか考えていた。
元来戦闘向きではないユセの侵食細胞では、2人の偽りの名を相手にするのは少々骨のいる作業だ。
(この大鎌を持っているこいつ・・・明らかに近接戦闘型ですね。
ユセを拘束したこの弦の使い手は中距離支援型でしょうか?それにあの翼はイクサと同じ複合型でもあるようですし、そしてユセを撃ったあの女・・・帝の軍勢なのでしょうか?)
ユセが考え事をしている最中に声を掛けられ考え事が中断する。
『まずは名前から聞こうか』
『名前は神化の名U ユセ』
『他にも神化の名はいるか?』
『・・・・・・』
『パルパト』
オメガの質問に答えなかったユセに対してパルパトが拘束している弧爪を使って縛り上げる。
ギチギチと皮膚に食い込んでいく弧爪により圧迫され、徐々に痛みを増してくるがユセは答えない。
忠誠なのかそれとも仲間は売れないのか、パルパトは少し弧爪を緩めオメガの指示を仰ぐ。するとオメガは首もとに当てている大鎌をユセから遠ざけると、一定の距離を保ち話始める。
ちなみにこの距離はオメガの間合いの距離だ。
『そう言えば先ほど討伐したあの化け物は貴様らの仲間か?
それとも悲惨な人体実験の成れの果て・・・偽装機械侵食者なのか?』
オメガの話を聞いていたユセのが反応する。今までオメガ、パルパト、姫子の様子を探るように周りを見ていたユセがオメガが話をした途端に、オメガだけを見つめ興味深そうに聞いている。
その事を意思したオメガは更に詳しく話そうと口を開く。
『あれが貴様の言う神化の先なのかねぇ』
『人は自分に理解出来ない物を拒み、理解しようとしない』
口を開き突然語り出すユセ。
その曇りガラスの用な瞳が光を取り戻しオメガ、パルパト、姫子を順に見渡す。
『特に人間という種を大きく逸脱した者を見たときそれをどう思うのか?』
『どういう事だ』
『そうですね・・・貴方は神を見た事がありますか?』
『ない。そもそも神とはどのような姿をしているんだ?
男性か女性かも分からない曖昧な存在なのだろう?』
『そうですね。私も見たことはありません。
しかしこの地にも私達がいた未来でも神を信じる者はいます。不確定で曖昧な存在なのかもしれない神様を』
『だから何だと言うのだ。完結に説明しろ。
それに下らない話をするだけならもう一発弾丸を浴びせるぞ』
苛立ちを見せたオメガの指示の元に姫子がライフル銃を構える。
この神化の名U ユセがどの用な動きをしてもオメガの指示の元に撃ち殺せる準備は万端であり、例えば偽りの名、神化の名といえども変身していない状態であれば普通の人間とは大差ないのだから。
『完結にもう仕上げますと、我々神化の名は人類を神にしようとしているのですよ』
『人類を神に?』
『そうです。そこの天使のようなお嬢さんも、悪魔のようなお兄さんも神になれる器でしょう。
我々のように侵食細胞に適合しているのであれば』
『俺達が神になれるだと?』
『そうですよ。神様ですよ!人間という種を逸脱し、人間という種を支配する存在である神にです』
ユセの狂喜ともとれる壊れきった夢の話を聞かされたオメガ、パルパト、姫子は困惑していた。
確かに偽りの名や神化の名は侵食細胞を使えば、人という種からかけ離れた異形の者へと変わるであろう。
最初にこの地に降りていたイクサや、ヴィゼイアス、イルミデンテ達を化け物と言う者もいれば、神様、神の使いと言う者もいたように、何もしらない者が偽りの名や神化の名を見たときにどのような反応をするか等分からない、が1つだけ確定していることがある。
それはどの人々も驚きの声をあげるということだ。
そしてユセの言っていることは一利あり、偽りの名や神化の名は人間では不可能な事を可能にする事が可能だ。
人間には不可能な事を可能にする存在は神なのか?
一体誰が決め、誰の定義の元に神と言えるのか?
そんな事を考えながらオメガ、パルパトが長考していると、ユセが再び口を開く。
『天使のようなお嬢さんや悪魔のようなお兄さんは侵食細胞を使用して何年になりますか?』
『なに?貴様にそんな事を教えて何になる。
それに俺は悪魔ようなお兄さんではなく偽りの名O オメガ』
『私は偽りの名P パルパト』
『俺達が侵食細胞適合したのは約半年程で前だ。それが何か問題なのか?』
『半年・・・若いですね。何年も侵食細胞を使用していると分かってくるのですよ』
『貴方もオメガ様達とさほど変わらないように見えますが?』
『誰も貴女と話をしていないでしょう。人間の分際で気安く話し掛けないで』
オメガとユセの話に割って入った姫子にユセは苛立ちを見せ、姫子に殺気を叩きつける。
しかし姫子は今までに自身を食べようとしていた機械侵食者や、化け物となったネクロートの殺気に当てられても尚怯むことなく行動を出来ている。
今さらユセの叩きつける殺気など気にも止めずにライフル銃を発砲する。
むろん当てるつもりはないのが威嚇の意味を込めて発砲した弾丸はユセの耳を掠め、ユセの耳から鮮血が滴り落ちる。
姫子の行動に驚いたのは何もユセだけではなく、オメガ、パルパトも少しばかり困惑している。
今まで大人しかった姫子がキレたことはあまりない。しかし今回は明らかに殺気や苛立ちが今までとは違っている。
それほど姫子を怒らせることしたつもりないユセが黙り込んでいると、オメガが話題を変える為に再び口を開く。
『さっきも姫子が言った通りに俺達とお前ではそれほど歳は離れていないように見えるが若作りでもしてんのか?』
『わ、若作りなんてそんな・・・ただ、私達がこの地に来たのは10年ほど前ですよ』
『10年前だと?』
『えぇ・・・そうですこれが神化と言うものです。
神が歳をとると思っているのですか?』
『そんな・・・』
ユセから知らされた衝撃の事実・・・神化の名と名乗り、神化したと豪語している者達は皆歳をとらない正確には不老となっていると言うこと。
オメガ達が偽りの名として活動を開始してから半年間、そしてユセが今言ったことが正しいのであればユセは第二の戦徒の裏切り者だ。
オメガの知っている第二の戦徒は偽りの名M メリー。
偽りの名W ワイズマン。
五行信仰 木得 偽コードりの名ネームJ ジェスパー。
五行信仰 金得 偽コードりの名ネームS シルベルト。
五行信仰 土得 偽コードりの名ネームB ブライドのほかにも数名いる事は知っているがオメガ達とは面識がない。
第二の戦徒に裏切り者がいるとは知らされてはいなかった。つまりこの神化の名U ユセという人物は帝の軍勢の中では死亡、もしくは行方不明となっている事になる。
しかしそれよりも重大な事がある。それはユセの言ったことが事実なのであればオメガが倒したネクロートもまた20年前から変わらずにいたということになる。
ユセの言ったことを戯言だと切り捨てる事は簡単だ。
しかしオメガはユセの言ったことが真実ではないかと疑問に思う。
その理由は・・・オメガと対決し、倒され最後には侵食細胞を使用して侵食結晶をオメガの為に作ってくれた人物、リッチの言葉が頭から離れなかった。
『何故私には20年間の記憶がないのだ・・・』
ユセの話した内容とリッチと話した内容と合致する。
ネクロートとリッチの2人は20年前に既に此方に来ており、機械侵食者と戦闘を開始していた。
少なくともリッチの言う事が正解であるならばリッチはもしくはネクロートに裏切られ改造されたという事になる。
『私達ハ機械侵食者化をフゼグ為に戦ってイル。お前達ハ違うのか?』
リッチ達は機械侵食者と戦っていた・・・少なくとも2人以上が戦闘に参加していた事になり、正気を取り戻したリッチがネクロートを見て駆け寄って行った事を考えるとネクロートも戦闘に参加していたと言う事になる。
ならばあの化け物もリッチと同じ偽装機械侵食者となってしまった人物なのかもしれない。
(あの化け物は俺の事を知っていた・・・そして若干意味不明ではあるが言葉を話す事が出来た。
そしていまここいいるユセは俺の事を知らないのか俺達に名前を聞いてきた)
オメガは自分の考えが纏まったようで結論を言葉にする。
『ユセ貴様達の仲間にネクロートと言う者がいるだろう』
『えぇ・・・ユセの友達です。共に人類を神化させる仲間です』
『そうか。ならその夢は叶わない』
『何故です?』
『俺達がネクロートを倒したからだ』
『・・・・・・証拠は?』
『いま出せる証拠はない。だが・・・』
オメガが続けて話をしようとしたその時、オメガ達のいる階層の下から大きな衝撃が伝わってくる。
何かが爆発したような衝撃だ。
かなり大きな衝撃だったようで壁に置いてある家具や食器が散乱してしまう。
突然の衝撃に驚いたのはオメガ達だけでなく、この施設で生活しているユセでさせ驚いた様子で周りを見渡し状況を把握しようとしている。
『ユセ何が起きたのか説明しろ』
『ユセも何が何だか分からないですよ。今までこのような衝撃が起きたことはなかったですし』
『何かが爆発したような衝撃でしたよね。この下の施設から何か爆発したんじゃないですか?』
『そ、それはないです。だってこの下は・・・』
『この下は?』
途中で言いかけた言葉を止めてしまったユセ。
どうやらこの下の施設には知られては不味い物が置いてあり、ユセの話が本当であれば爆発するということはありえないらしい。
『オメガ私がこの下を見てくる』
『まっ、待ってください』
そう言ってこの部屋を出ようとするパルパトにユセが止めにはいる。
額には冷や汗なのか顔色が変わるくらいの汗を流しているユセの言葉を信用したのかパルパトは動きを止め、ユセの元にまで戻ると・・・弧爪でユセの首もとを締め上げる。
必死に酸素を取り込もうと口を開けるユセだが、首もとを締めつけられているので酸素を取り込み事が出来ない。
ユセが気絶してしまいそうになったその時、パルパトは弧爪を緩め解放する。
解放され大きく息を吸い込み肺に酸素を取り入れ乱れた呼吸を整えるユセに、パルパトが問いかける。
『貴女の言葉はいまいち信用出来ない。これ以上私を苛立たせるなら容赦しない。
別に死体でも有効活用出来るのだから』
『まっ、待ってください。この下に行くには我々、神化の名の力が必要なのです』
『つまり貴様を連れて行かなければならないということか?』
ユセは頷きオメガの方を見る。
確かにユセの言っていることは信用出来ない。そもそも敵である人物の言葉など信じる価値があるのか疑問だ。
しかしながらユセの言っていることが本当であればユセを連れて行かなければ面倒な事になる。
実際オメガ達が此処まで来るのにかなりの労力を要しており、オメガは既にネクロートとの戦闘で予備の侵食細胞を使ってしまった為にあまり時間はかけたくはないのだ。
『仕方ないこいつを連れて行くぞ』
『・・・了解』
『わかりました』
神化の名本拠地地下第3階層扉前
地下第3層の扉の前まで来たオメガ達、道中では解除しなければならない区画や、ユセによって下ろされた隔壁の解除をする為にユセは今少しばかり自由に行動している。
少しばかりという理由は首もとには以前としてパルパトの弧爪が締められているからだ。
例えるなら犬の散歩と思ってほしい。しかしユセの首もとにあるのは弧爪であり、下手な動きをした場合パルパトに締め上げられてしまう。
『解除しろ』
オメガの指示の元にこの第3階層の扉のロックを解除させようとパスワードを入力すると、何やら幾何学的な模様が刻み込まれた石盤が現れる。
文字ともとれる物がちらほらあるが、この石盤が何かを意味しているのかは不明である。
『何か刃物か何かないでしょうか?』
『何に使うつもりだ?』
『この石盤に我々、神化の名の侵食細胞を捧げなければならないのです』
『・・・面倒』
『姫子、ナイフでこいつの手首を切れ』
『了解です』
オメガの指示の元に姫子がユセの手首を切り、ユセの鮮血とその中に入っていり侵食細胞が石盤の幾何学的な模様を伝い、全てに伝わると第3階層への扉が開かれる。
扉が開きオメガ達が見たのは・・・この世界の元凶、機械侵食者化をさせる原因である隕石が露になっていた。




