犠牲ト結晶ノ秘密
『来たぞ!』
トトの叫びと共にイクサとゼータは空中へ、イエスメデスと負傷したトトは地上での攻撃に切り替える。
防御力の高いイエスメデスがの攻撃を受け止め、トトの斬撃がイルミデンテの右足に直撃する。
やはりイルミデンテ武装の方が硬いのかダメージは通らない。
『イクサ様少し試したい事が』
『何か考えがあるのか?』
『はい』
『では任せたぞ』
イクサはゼータをその場に残してイルミデンテに攻撃を仕掛ける。攻撃する箇所はジェスパーの攻撃によって負傷した右肩だ。
右肩が破壊された事によって弾丸の雨を発砲出来なくなったか迎撃される事なくイクサ攻撃が直撃し、バキバキと音をたてて壊れ始める。
ゼータはジェスパーが攻撃している最中も、殺られそうになった時でも助太刀することはない。
非情だと思うがあの化け物を倒す為には仕方のないことなのかも知れない・・・それが参謀であるゼータの役割なのだから。
(私の見立てでは・・・あの部分が)
様子を見ていたゼータがイルミデンテの右腕の関節に向かって発砲する。正確な射撃による一点集中の攻撃を喰らったイルミデンテだがあまり効いてはおらず大剣を高く上げ攻撃体制にはいる。
『不味いぞ。イエスメデス大きいのがくるぞ』
(この攻撃の後で・・・)
『煩ワシイ・・・散牙ー殻硝宴渦』
イルミデンテの大剣が降り下ろさせる直前に右腕の武装から砕けた硝子の塊の様な物がボロボロと地面に落下し、イルミデンテの大剣が降り下ろされ硝子が砕け刃のように辺りに拡散し飛んでいく。
先程の硝子の塊はイルミデンテの造り出した簡易的な手榴弾の様な物らしく、大剣の衝撃によって拡散する仕組みだったのであろう。
周りの建物や地面に刃が突き刺さり辺り一面が刃の海と化した。
そう・・・イルミデンテの目的は硝子の刃による範囲攻撃ではなく、イクサ達の行動範囲を狭めることだったのだ。
イクサやゼータが飛べるからと言っても無限に飛び続ける事は不可能。
今はまだ疲労してはいないがいずれは地上での戦闘に切り替え、羽を休ませて戦闘する必要もある。
『邪魔じゃ!』
『邪魔ですわ』
硝子の刃をかわしたトトとイエスメデスは目の前にある硝子の塊を両断、砕いて視界を確保する。
どうやらこの硝子の塊は砕けて周りには散らばらなかったらしく、トトとイエスメデスの攻撃によって容易に破壊される。
この硝子は強度が高くないようで簡単に壊す事が可能だが・・・何分硝子の刃は地面や建物に突き刺さっているので斬ったり砕いたりしても多少破片として残ってしまう。
侵食細胞を鎧のようにしているイクサには余り障害があるようには見えないが、トトやイエスメデス、ゼータには気をつけて戦う必要が出てきたということになる。
当然、イルミデンテは全身を鎧で覆いっているので問題はない。
『我々の動きを制限するのが目的のようですね』
『儂らの攻撃が通らないのに制限する必要があるのかの?』
『さぁ・・・どうでしょうか?
しかしジェスパー、シルベルトが倒されたのです。貴様も早く本気にならないとなぁトトよ』
イエスメデスが殺気の籠った声でトトを睨み付ける。
仮面越しなので表情は分からないがジェスパー、シルベルトが倒された事にこちらも相当頭にきているようで、ジェスパーのように攻撃しにいかないのは性格なのか、それとも経験の差からなのかは分からない。
『そう恐い顔で怒らないでくれ・・・儂にも理由はあるのじゃよ』
『ほう・・・』
『じゃが・・・お前さんの言う通り本気でいかないと不味いようじゃ。
イエスメデス援護を頼めるか?』
『貴様が本気というのであれば・・・』
そう言うとトトはイエスメデスの前に立ち居合い斬りの構えにはいる。
どう考えても今トトのいる場所はイルミデンテより離れてていて、居合い斬りの範囲ではないことは素人とでもわかる程に距離は離れている。
好戦中のイクサ、ゼータの隙間・・・ちょうどよいタイミングでトトが全身のバネを利用し斬りかかる。
先程のイクサの様に弓を限界まで引き絞って放たれた矢のように飛んでいくトト、侵食細胞によって強化された強靭な脚力により一気に距離を詰め・・・一閃。
イエスメデスの中央部分に喰らわせる。
『トト!』
『トト様』
突然現れたトトにイクサとゼータは困惑しつつも自分たちの攻撃を緩める事はなく、イルミデンテもまた対して気にしてはいないのか煩わしく砲撃を開始する。
空中での移動手段がないトトに向かって無慈悲にも弾丸の雨が降りかかる・・・と思いきや先程の位置にトトは居らず鉄扇が宙を舞っていた。
『演舞ー鉄扇空歩』
『武脚ー空猿瞬地』
再びイルミデンテにトトの斬撃があびせられ、今度は左肩に直撃にする。
響き渡る金属音が鳴り止まぬうちに再び金属音が響き渡る。
今度はイルミデンテの真後ろ背中からだ。
(これは・・・見えない)
今のところイルミデンテに致命的なダメージは攻撃を喰らってはいないがこれでは反撃が出来ない、何よりどのようにして空中での移動手段がないトトがイルミデンテに攻撃を当てているのかが問題なのだ。
足場となる地面や建物は既に硝子の刃によって足場としては機能していない。何より第二撃の攻撃の角度は左上からの攻撃であり、その場所には足場となる建物は存在していない。
イクサ、ゼータと協力しての攻撃にしては、攻撃までのタイムラグが速すぎる。
翼を持ち、空中での移動手段があるイクサの攻撃は確かに直線的には速く先程のトトと同速かもしれない。
しかし、最初の攻撃は速く出来たとしても次の攻撃はそうもいかない。イクサの戦闘はヒット&アウェイによるもので翼を利用しての高速の斬撃、攻撃や風の抵抗を受けないようにしての盾使い方は利に叶っている。
ちなみにゼータは銃を使っての中距離攻撃であり、先程から同じ箇所を攻撃してはいるがイルミデンテはイクサ程驚異ではないと考えて後回しにしている。
重漠ー鉄色の雨を何度もかわしているのも後回しにする。
『見エナイノデアレバ違ウ戦法ヲ取ルマデデス』
そう叫ぶとイルミデンテの左肩の盾が展開し始める。
またミサイルによる攻撃だと思ったゼータは発砲を止めてミサイルの迎撃体制にはいるが、ミサイルが発射させる事はなく代わりに煙が吹き出し辺り一面を覆い隠す。
『やられた・・・トト一端退きますよ』
『ばれ・・・』
煙から逃れようとしたトトに向かって大砲を使っての打撃が迫ってくるが、トトはそれを回避する。
正確には回避してもらったと言った方がいいのかもしれない。
トトが今足場にしているのはイエスメデスの鉄扇であり、その付け根部分が鎖で繋がれていてイエスメデスがその鉄扇を操っているのだ。
そしてもう片方の鉄扇にも鎖は繋がっている。
空中での移動手段がないトトが何故攻撃を自在に繰り出す事が出来たのか。その秘密はイエスメデスの鉄扇を足場にしての攻撃であり、一度足場にした鉄扇はトトの脚力によって吹き飛ばされることによってイルミデンテの視界から遠ざけ、再びイルミデンテの死角に飛ばしトトが攻撃をするという戦法である。
つまり見えないと思っていたトトの攻撃は、イルミデンテの死角からの高速の攻撃だったのだ。
イルミデンテはその事に気が付いてはいなかったが、偶然にもスモークによる視界を奪う作戦が効いたらしくトトとイエスメデスの攻撃戦法がバレてしまった。
『助かったわい』
『でもこれでバレてしまいましたね』
『流石と言うべきなのだろうよ』
『種ガ分カレバコチラノモノデス。少々眠ッテクダサイネ』
距離を置いていたイエスメデスに向かって大剣を降り下ろそうとしたイルミデンテの右腕が崩れ落ちる。
右腕を失った事によってバランスを崩したイルミデンテが見たのは・・・右腕の核となっている黒色の結晶が砕けた姿だった。
無様にも地面に横たわるイルミデンテをみてゼータは確信する。
イルミデンテがこの機械の化け物になる瞬間に握り潰したあの黒色の結晶が各部位を司る核であるという事を。
(やっぱり。ジェスパーがイルミデンテの右肩の盾を破壊した時に何故再生しないのか不思議だった。
ジェスパーによって破壊された中央部分は再生したのに何故右肩の盾の部位だけ再生しなかったのか?
他の部位に傷つくがそれは再生する必要のない傷だと過程して、一点集中による右腕の破壊工作は成功したようね)
ゼータは懐から5発の弾丸を取り出す。
これといっても特徴が有るわけでもないこの5発の弾丸、しかしこの弾丸には対偽りの名ように造り出された弾丸だ。
生成にはゼータの侵食細胞によって造られておろ、この弾丸が当たった部位からZの侵食細胞の作用が働き被弾者の侵食細胞を貪り、死滅させる作用がある。
イクサの侵食細胞とは違い対象者を殺してしまいかねないがそれもまたZの適合者の宿命なのかもしれない。
(しかしジェスパーが肩の部分を破壊した事によって全身には廻らなかったようですね)
(あのZの適合者・・・彼奴は危険だ始末しなければ)
『トト、イエスメデス、ゼータ、一気に畳み掛けるぞ!』
この気を逃さないとばかりにイクサが先陣をきって攻撃を仕掛ける。
それに続くトトと、援護に回るイエスメデス。
ゼータは弾丸で牽制をしながら弱点である核の部分を探る。
中央部分は確定しているが真っ向から行けば蜂の巣になりかねないし、最早一度種があけてしまったゼータの攻撃をそう易々とは通してはくれないだろう。
それにどの弾丸に先程の弾丸があるかどうか分からないのはイルミデンテにとって脅威となるかもしれないのだから。
『フザケタ事ヲ』
イルミデンテは立ち上がるとイクサ達を近づけさせない為に弾丸をばら蒔き牽制するが、右腕と右肩が無いが為にどうしても右側は弾幕は張れず攻撃をうけてしまう。
どうか身体を動かして当てようとするがやはり機動力がないのか、なかなか当たらない。
『これなら行けるか?』
『少なくとも先程よりはダメージを与えています』
『なんだあれは?』
イクサとゼータの話し合いに第3者が割り込んでくる。
その姿は肩まで武装した巨大な鉤爪を纏っていて、上半身を覆うのは黒と黄色の色をした鎧。腰のミニスカートは金属質の輝きを放っている。
顔を覆う仮面は右側にLの紋章、左側だけに複眼の様な物があり、口元には蟻の顎様に変化している人物だ。
『ランテン戻ってきたのか』
『イエスメデスこれはどういう状況なんだ?』
『説明している時間はない、ランテンそなたの敵はあやつじゃ』
『暴れ良いって訳?』
『あぁ・・・暴れるがよい』
『キャハハハハハハ。思いっきり暴れるよ』
偽装機械侵食者C チェインを倒した後、機械侵食者を狩っていたランテンだがこちらの方が面白いから来たという事らしい。
まぁ・・・戦闘狂であり飽きやすいランテンが此方に来たのは最もな理由だ。
状況はまるで掴めていないランテンだが目の前にいる機械の巨人がいかに出鱈目な存在なのかは理解している。
動きは鈍く負傷していたとしてもその巨体から溢れでる異質性は異常なものなのだから。
『マタ増エ・・・ホウコレハ』
何かを口にしようとしたイルミデンテが意味深に戦闘に参加したランテンを見ている。
何が気になるのか?そんな事は関係無いとばかりにランテンはイルミデンテに斬りかかる。
ランテンの鉤爪がイルミデンテに触れた瞬間・・・ランテンの身体が変化を始め、斬りかかったランテンの右腕がイルミデンテと融合しているのか機械侵食者のようになる。
『なんだこれは!?私の腕が!?』
『ランテン?』
『ふざけたじゃねぇぞ!いったい何がおきているんだよ』
ランテンが咄嗟に侵食された右腕を斬り離そうとするが、既に間に合わずに右腕を侵食され着地した時に侵食された両足も既に融合しており身動きが取れない状況になってしまった。
既に間に合わないと思ったのかランテンは自害するための手榴弾を手に取り・・・爆発させ絶命してしまった。
しかしながら侵食した部位は手榴弾の爆発では吹き飛ばなかったようで、無残にもランテンの侵食した部位がイルミデンテにくっついている。
『何が起きたのじゃ』
『妾にもわからぬ・・・何故ランテンだけが?』
『イクサ様あれを』
『ランテンを取り込んでいる!?』
ゼータが指摘したようにランテンの侵食された残骸がイルミデンテに取り込まれてしまった。
取り込まれた残骸は金属色のスライムのように変化し、破損した箇所の右腕に移動していくと腕ように形成された。
しかし、形成された右腕は以前のイルミデンテのようは形はしておらず細長く、その長さは地面に着く程度で先程あった大剣はなく、代わりに爪が猛禽類のようになり黒色の金属質は輝きを放っている。
左右非対称になったイルミデンテは挨拶がわりとばかしに右腕で辺りを薙ぎ払い、動作確認の為なのか近くにある瓦礫を遠くの市街地のほうにぶん投げる。
『アレニハ及ビマセンガ、コレハコレデ良イモノデスネ』
『色々と分からないことだらけだがとりあえず目の前の化け物を倒さないと何も解決しないな』
『全くじゃわい・・・さてどうしたものか』
『弱点はわかりましたがあの硬さと、あの弾幕をなんとかしないといけないですね』
『作戦会議中デ申シ訳ゴザイマセンガ私モソロソロ終リニサセテモライマスヨ』
そう言うとイルミデンテは大砲を地面に向けると何の躊躇いもなく発砲し、辺り一面が光に包まれる。




