神化機械巨人
『これ程とは・・・』
『これが機械侵食隕石の力なのですね』
『そのようだな』
完璧に別の者になり変わったイルミデンテは強者の余裕なのか、それとも神化した反動なのかは不明だがイクサ達が話ているのを見ている。
目線的に言えば見下ろしていると言った方が正しいのかな?
『どうした?私達を倒すと言いながら何故攻撃をしてこない?』
『最後ノ別レノ言葉クライハ言ワセテヤルサ』
変化した影響なのかイルミデンテの声が以前に聞いた時よりも機械的になっていて、その声質からは何も感じられない。
神化は姿形の変化だけでなく心その物も変わってしまったのかもしれないし、神化した事によって絶対的強者になった事で余裕が生まれたのか。
どちらにしろ今のところイルミデンテは動かないでいる。
『余裕ですね・・・神化した事によって調子に乗っているのですね』
ゼータが哀れむような目線を送る。
仮面に隠れて表情は読めないがその声は呆れたようなしゃべり方だ。
『クハハハハ』
全く感情の籠っていないイルミデンテの笑い声が木霊する。
機械の巨人が笑う姿というのは何とも言えない気持ちになるが、ゼータもイクサもさほど気にしてはいないのか未だに戦闘体制を崩してはいない。
イルミデンテは戦闘体制に入ってはいないが先程まで戦闘をしていたということもあり警戒を怠らないのは重要である。
例え相手が笑っていたとしてもだ。
『調子ニ乗ルデアロウ・・・コノ沸キ揚ガル力ヲ感ジレバ』
『なら先制攻撃をさせてもらおうか』
そう言うとイクサは槍を構え一直線に飛んで行く。引き絞られた弓から放たれる矢の如く、イクサの侵食細胞を利用して攻撃で狙いは勿論イルミデンテがいる中央部分だ。
ゼータもイルミデンテの両腕の関節部分に向かって発砲し、攻撃させない算段である。
ゼータの放つ弾丸が直撃したイルミデンテだが、あまり効いていないのか右腕を動かし攻撃の体制に入り・・・斬撃を放つ。
『神羅ー酷刻斬』
異変をいち早く察知したイクサは方向を変え斬撃の範囲外である脚の部分、人間でいう所の膝に向かって進路を変更する。
普通の人間とは違い逆関節になってはいるがだいたい場所はあっている。
ゼータも範囲外も砲撃を止めて範囲外の上空へと避難する。
巨体であるが故に動きは鈍いがその威力は凄まじく大地が裂け、避難区画限界まで斬撃が及び悲鳴が聞こえてくる。
(この世界にあるどんな物でも一刀両断出来そうな大剣・・・名付けるなら無情ー虚絶ノ剣とでも名付けておきましょうか。
名前があった方が何かと便利で・・・)
イルミデンテが考え事をしていると右膝に少し痛みが襲いかかる。
机等にぶつけたような鈍い痛みだ。
(イクサか・・・この姿になり耐久度はかなり底上げされているのにも関わらずにこの攻撃力とは。
やはりXの適合者であるイクサは別者ですね)
(なんて硬度だよ・・・この私の槍でも破壊出来ないとは)
攻撃を当て、反撃を喰らわないように回避してイクサはゼータの元に戻って行く。
やはり動きは鈍く飛行出来るイクサを捕まえることは不可能なのか、イルミデンテの左手が空を切る。
『やはり小回りは効かないようですね』
『問題ナイサ君達ノ攻撃デハ神化シタ私は倒セナイ』
『確かに私の槍でも破壊は出来なかったからな・・・何て固さだよ』
『例エXノ適合者デアレド私ヲ破壊スル事ハ不可能・・・絶望ヲシレ』
そう言うとイルミデンテは左腕の巨大な大砲を構える。
戦艦程の大きさの大砲だ、その砲弾の飛行距離は考えただけで絶句してしまいそうだ。
もしかすれば帝の軍勢中央部へ砲撃が可能なのだから。
(不味い!?)
『崩撃ー光業炎羅!』
砲弾が放たれるより先に攻撃を止めさせようとイクサが突撃をするが・・・それよりも速く絶望の弾丸は放たれる。
爆音が響き渡り、大気が振動する。
帝の軍勢中央部が巨大な火柱となり周り全てが業火に包まれる。
人々の悲鳴も崩れ逝く建物の音も全て消し去り炎は燃え盛り、この世の終わりを告げているようだ。
(まさか・・・あれは叡智の光炎!?)
『素晴ラシイ・・・シカシ少シ威力ガ大キイデスネ。
コレデハ貴重ナ施設マデモ破壊シテシマウカモシレマセンネ』
砲撃をし終えた大砲が放熱をするために各部位が展開する。
全く感情が籠っていないイルミデンテの言葉は本当に残念がっているのか不明だ。
炎に包まれた帝の軍勢中央部を見つめているゼータは何を思うのか?
自身の部下が産み出した兵器を使用されたのを目の当たりにしたイクサはイルミデンテに向けて問いかける。
機嫌が良いのかそれとも帝の軍勢中央部を破壊出来た事からの優越感なのか、イルミデンテはイクサの問いかけるに答えてくれる。
叡智の光炎を囮としてこれまで姿を眩ましていたイルミデンテを誘き寄せる作戦の時にデータを収集していたということなのだが・・・普通はデータを見ただけで造れる品物ではない。
専門的な知識、この地で取れるガンデスニウムの他にこの地で産み出した鉱物も使用しているので造る事は不可能だと思っていたからだ。
ブライドの後任であるワイズマン未だに造れてはいないのだから。
『よくも我々の本部を・・・彼処には非戦闘員もいたのだぞ』
『確カニソウデスネ・・・神化シタカラナノカ他ノ者ニハ興味ガ薄レテシマイマシテネ。
非戦闘員ダロウガ帝の軍勢ダロウガ関係ナイデスネ』
『外道が!』
『勘違イシナイデクダサイヨ、侵食細胞ノ適合者ハ仲間ダト思ッテマスヨ』
『全く感情が込もってないようですが?
貴方に歯向かう私達も仲間だと』
『勿論。些細ナイザコザハ多少アルモノデスカラ』
あの叡智の光炎を後何回撃つことが可能なのかは不明だが、もう一度あの攻撃を居住区画へ攻撃されれば被害は甚大だ。
かと言ってもイルミデンテの砲撃を止める手段がないのも事実である。
そしてイルミデンテは侵食細胞を持つ者との和解もあると言っている。
あれほどの破壊兵器を所持しているイルミデンテと和解が可能かというと・・・不可能に近い。
和解、協定、同盟等は対等であるからこそ意味があるというものだ。
そもそもイルミデンテとイクサ、ゼータの利害は一致していない。
イルミデンテは人類を機械侵食者化させ新たなる進化の種に、対するイクサ、ゼータは機械侵食者の全滅、及び人類の侵食細胞への適応化が目的だ。
それにイクサ、ゼータからすれば実に馬鹿馬鹿しく大勢の部下を1度に大量に失ったのも、有能な人材、大切な機材や今まで集めた資料も台無しにした相手との和解などありえない。
『ドウデスカ心ハ決マリマシタカ?』
『答えはNO。お断りだ。です。』
イクサとゼータが同時に答える。
双方とも答えは既に決まっていたようだ。
『残念デス。貴殿方モ神化出来ルカモシレナイトイウノニ』
『私達は確かに人智を超えた力を持っている』
『しかし私達の心は人間のまま』
『貴様のような化け物とは違うのだよ。のですよ』
イルミデンテと決別を終えイクサが攻撃を仕掛ける。
先程確認したがイルミデンテが神化したからといっても弱点はある。イクサの侵食細胞の能力が通用しないからといっても単純な火力ならば倒せる可能性はある。
問題はあのイルミデンテの硬度に対応できるかなのだが、イクサはともかくゼータの銃では難しい。
先程イクサが攻撃したように関節部分や、稼働部分を狙うのが理想的だ。
『ソノ程度ノ威力デ傷ヲ付ケル事ハ不可能デスヨ』
ゼータの攻撃が煩わしかったのかイルミデンテは右足を軸に回転し周りの物を薙ぎ払う。
巨大化したイルミデンテの回転は小さな竜巻の如く周りの瓦礫集め、右手の大剣で斬り裂き、左腕の大砲で粉砕していく。
大砲もあれだけ巨大であれば只の鈍器と変わらない。それに周りの瓦礫程度では大砲が変形しないと考えての一網打尽の作戦だ。
『不味い・・・クインティア使わせて貰うぞ』
イクサはポケットにしまっておいたクインティアの侵食結晶が入っているロケットを取りだし、能力を発動させる。
イクサの背中から生えている翼が追加され4枚の翼になり、両腕には槍と盾が合体した武器を手に持っている。
この武器はイクサが右手に持っていた槍と左手に持っていた盾で、それが合わさった感じであり、更に堅牢で鋭利な輝きを放っている。
身に纏っている鎧は更に神々しくなり、見るもの全ての記憶に焼き付いてしまいそうなほどだ。
迫りくるネクロートの回転を利用しての斬撃を受け止め、回転を止めようとし激しい火柱が飛び散る。
その隙を逃さないとばかりにゼータは右腕の関節部分にありったけの弾丸を浴びせ破壊しようと目論む。
『受ケ止メタノハ評価シマスガ彼女ハダメデスネ。
何故無駄ナ攻撃ヲスルノデス?無駄ダト理解出来テイナイノデスカ』
『余裕だ・・・な!』
イルミデンテの攻撃を受け止め、そして大剣の軌道を変える為にイクサは攻撃をする。
先程よりもスピードが速くなったイクサの攻撃は、動きの鈍いイルミデンテの大剣に捕まることはなく大剣の軌道をイクサ、ゼータの下方向に変える。
全く効いていないと思われたゼータの攻撃だが、実のところ無駄でない。それにイルミデンテが気がつく事になるのはもう少しだけ後になるが。
『溜マッタ。崩撃ー光業炎・・・』
砲撃を始めようとしたイルミデンテの砲身が下を向き砲撃の機会を見失う。
いくら自身が神化したからといっても無敵になったわけではないので、叡智の光炎程の威力ともあれば自分自身にもダメージがあるであろう。
しかし何故急に砲身が下向きになったのか。その答えは今地面に立ちイルミデンテを見つめている。
自身の持っている刀に刃こぼれはなく、そして一撃を喰らわせた筈の砲身は傷が付いているだけで両断出来ていない。
とちらも相当な硬度だ。
『トト・・・貴方モ参戦スルノデスネ』
『貴様は誰だ?儂の知り合いかのぉ?』
『トトそいつはイルミデンテだ』
『そう言う貴様は・・・イクサか?
あの時とは姿が違うようだが?』
『トト様申し訳ございませんが時間がありません。協力してあの化け物を打ち倒しましょう』
『Zの適合者・・・そしてその声・・・まぁいろいろと有るだろうが今はあやつを倒すことを優先するとしよう』
先程イルミデンテに攻撃を止めたのは偽りの名T トトで、土の結界塔での後始末を終えていち早く駆けつけて来てくれたのだ。
クインティアの侵食結晶を使用して強化したイクサと、20年前には居なかったゼータの事は最初は分からなかったが声、そして鎧の形状からして判断しイクサ達の味方に付く。
『・・・コノ音ハ』
『見つけた!アレだ』
『他にもいる』
イルミデンテの上空から羽ばたく音が聞こえ2つの若い女性の声が聞こえてくる。
イクサやゼータも飛んではいるがそれよりは高い高度なので見上げる形になりその姿を目撃する。
白き翼を生やした人物で両足も猛禽類のように変化している、もう一人の声の主は吊られている形になってはいるが左半身がガトリングに変化した人物だ。
『ジェスパーとシルベルトか!?』
偽りの名J ジェスパー。
偽りの名S シルベルトがレインネスト商業区画での戦闘を残りの帝の軍勢に任せて駆けつけてくれたのだ。
『5体1・・・侵食細胞ガ完全回復シテイナイト仮定シテモ面倒デスネ。
貴殿方ヲ排除シタ後ニモ殺ルベキ事ハ沢山アリマスカラ』
『その仮定にもう1人追加してくれませんか?』
そういい終えるや否やイルミデンテの右肩に金属がぶつかり合う音が響き渡る。
蝶が舞うように着地したのは偽りの名 Yイエスメデスであり先程の金属音の正体はイルミデンテの右肩と、イエスメデスの鉄扇がぶつかった音だったのだ。
少し遅くはなってしまったがイエスメデスも元々はトト共に土の結界塔で戦闘していたので、こちらに駆けつけてくれたのだ。
イエスメデスも翼があるとはいえ移動速度や、身体能力ではトトの方が上なためにこちらに到着するのが遅れてしまったとのことだ。
『トトニイエスメデスト懐カシイ面子ガ揃ッテマスネ。
知ラナイ人モイマスノデ改メテ自己紹介サセテイタダキマショウ。
私ノ名前ハ神化の名 Iイルミデンテ。一緒ニ世界ヲ変エマセンカ?』
『喋った・・・!?』
『何か不気味ですねー。面白そうだとは思いますが嫌な予感がするのでパスです。
今回はご縁がなかったということで』
『私もジェスパーに賛成だ。突然何を言い出すんだ』
『あの時儂達を裏切った貴様と仲間になれじゃと、馬鹿馬鹿しい話じゃ』
『悪いがここの民を蔑ろにした貴様を許す訳にはいかないですね。あの一撃でどれくらいの損害額かお分かり?』
『私達の心は決まっいる』
『ソウカ・・・残念デス。
ナラバ全テ葬リ去リマショウ。コノ・・・神化シタ力ヲ使用シテ』
イルミデンテとイクサ達の戦いが幕を開ける。




