凶音ト進化ノ暴走
神化の名本拠地
『あれは間違いなくネクロートの・・・』
ユセは神化の名の本拠地であるアークコードの最深部、Vの結晶区画で復旧作業に勤しんでいた。
ネクロートのが壊したのか大きく破壊されたVの侵食結晶を修復するには時間が掛かる。幸いなことにVの侵食結晶の本体ヴィゼイアスは無事なので、修復することは可能だとユセ考えている。
実際このVの侵食結晶が破壊された事は1度も無いので修復が可能なのかは不明だが・・・数年の時を経て機械侵食隕石が皹をいれたことは確認してはいるがイルミデンテ曰く問題はないとのこと。
むしろ我々にとっては良いことだと言っていた。
『それよりも・・・これ不味くはないでしょか?』
機械侵食隕石からの侵食を避ける為に、神化の名の力を発動して作業をしてはいる。
オリジナルのVの侵食能力には及ばないが、ユセにもヴィゼイアスと同じように死なずに侵食結晶を産み出す能力がある。
もちろん自身の侵食能力と血を媒体にしているので、これ程大きく破壊された機械侵食隕石を覆うには数日程掛かるのだが、現在ネクロートに輸血してしまったが為に更に数日掛かるかもしれないのだ。
『これ以上は無理ですかね・・・』
疲れきった様子でユセが地面にた折れ込む。
大きく破壊された箇所をユセの侵食結晶で3分の2程覆うことには成功したが、なにぶん覆うことのみに使ってしまった為に薄くなってしまったようだ。
疲れた身体を引き摺りながら休憩しようと移動していると、遠くの方で何かが爆発するような音が聞こえ施設が大きく揺れる。
『次から次へと・・・』
ユセは音の発生源を探る為に偵察タイプの鳩型の機械侵食者を飛ばして様子を確かめるている最中に、再び爆発音と共に前方から土煙が巻き上げられるのを確認する。
戦闘能力を破棄させ、偵察のみに特化させた機械侵食者を戦闘させる訳にいかないので上空に飛ばしたのが正解だったのか鳩型の機械侵食者の映像には爆発音を発生させたであろう生物が映っていた。
土煙のせいではっきりとは分からないが人間にしては少々大柄で、ドレスなのかヒラヒラした布が確認できる。
そして体格よりも服装よりも目を引くのは背中から生えている鱗に覆われた触手で、大人の腕より太く逆立っている鱗は威圧的で恐怖を覚える程である。
『ネクロート!?
何であんなところに?』
ユセは土煙の隙間から見える仮面にNの紋章が刻まれているのを確認する。
この前会った時より変化していて最早、ネクロートの面影らしきところは少なくなってしまっていた。
『ネクロートは何をやっているのでしょうか?
はぁ・・・次から次へと問題が起こりますね・・・今日は厄日だなぁ』
ネクロートは映像を確認し終えるとため息をついて眠りにつく。
神化の名本拠地でオメガ達とネクロートの戦闘が続いている。
ボロボロになったドレスには血が付き、純白のウエディングドレスの所々に花が咲いている用になっていて、ネクロートの仮面にも皹が入ってしまっている。
それでも敵対心を剥き出しなのかオメガを見ている。
オメガも自身の破壊された鎧を脱ぎ捨てた為に身軽となり、ネクロートを倒すために構える。
パルパトはオメガの援護の為に後方に下がり弧爪で身動きを封じるようにトラップを仕掛ける。しかしながらパルパトの弧爪を全て使用してもネクロートの突進を受け止めることは出来ないと思っている。
だが、数秒でも身動きを封じることが出来ればオメガの助けになるので無駄ではない、達人と達人との勝負の場合一瞬の隙で負ける事があるのと同じように、ボロボロのネクロートの身体でオメガの一撃を受け止めることは不可能だと考えたからだ。
『あの反射神経をどうにかしないとなぁ』
『何か秘密があるのかも』
幾度もオメガの攻撃をかわしているネクロートに苛立ちを露にしながらオメガはパルパトに話しかける。
先ほど攻撃が効いたのかあの超突進を繰り出すことはなく、触手と右腕のガントレットに付いている短剣での攻撃に切り替え接近戦を仕掛けてくるようになったのだ。
あの超突進をしてこないのはオメガ達にとって有難いが、一度に3方向からの攻撃をさばき尚且つこちらの攻撃を当てるのには一苦労だ。
オメガが攻撃を放ってもネクロートの回避の方が早く、何よりも両足の他に支えている2本の触手による回避行動によって大振りの攻撃も即座に体勢を立て直し回避してしまう。
パルパトの弧爪によるトラップを試みるも、4本の触手によるジェット噴射の推進力を利用して無理やり突破されてしまう。
『オメガやっぱり私が・・・』
『却下だ』
『まだ何も言ってない』
『自分が囮になって弧爪で掴める作戦なんだろ。却下だぜ』
『だけどもあの化け物を仕留めるにはオメガのパワーじゃなければ』
『確かにそうだが俺の鎧に傷をつける程のパワーだぞ。当たりどころが悪かったら最悪死んじまうかもしれねぇんだ』
『オメガ来る!』
オメガとパルパトが相談していると再びネクロートが動き出す。
今度の攻撃は斬撃が主体の攻撃ではなく、触手を使っての接近戦のようだ。
はっきり言ってネクロートの攻撃は大振りなのだが斬撃は大斧で受け止めることは可能だが、触手による攻撃は受け止めるには重く、大鎌を使って受け流すしかない。
背中に大斧を担ぐと触手からの攻撃を斧鎌で受け流し反撃を開始する。
壊した鎧の一部を修復しての渾身の蹴りだ。
『やっと当たった!』
『痛い・・・オメガぁぁぁ』
顔面に蹴りがヒットしひび割れた仮面が欠けてネクロートの素顔が露になる。
金髪の前髪で見え難いが茶色で白目の部分が黒色になっている。何故このような瞳になっているかは不明だが、今までと普通に見えているので問題はないようだ。
ネクロートが激昂したのか大声をあげてオメガに襲いかかる。
『今回は避けないのかよ!?』
迫り来るネクロートの攻撃をパルパトが抑え込もうと弧爪を伸ばそうとするが、このままでは間に合わない・・・と思った時に何処からか発砲音が聞こえ、ネクロートの仮面から覗いている瞳に直撃する。
見事に瞳に直撃した事によってネクロートはオメガに攻撃する筈だった拳が空を斬り、オメガが反撃とばかりにネクロートの鳩尾に一発お見舞をする。
流石のネクロートも堪らず後退し瞳を抑えている。
『オメガ様大丈夫ですか?』
『姫子か?ナイスだぜ』
『逃げられた』
ネクロートを狙撃しオメガを守ったのは先ほどネクロートの悲鳴で気絶していた姫子だ。
運よく目覚めオメガの危機を救った姫子はもう一度狙撃する為に移動する。
パルパトは弧爪を戻しオメガの元に駆けつける。ネクロートが後退したことによって弧爪を外してしまったからだ。
『がぁぁぁ・・・ナんで上手ク行かナイんだぁぁ』
『叫んだな・・・』
『もう止めタ・・・殺す。
殺して手に入れレバいいんだ・・・』
ネクロートが呟き終えると右腕のガントレットを動かし、注射器を取りだし自身に注射する。
混合獣・・・空想上の産物であり複数の遺伝子を持っているとされており、外見に特徴が現れる者をいればそうでない者もいる。
では今目の前にいるこの生物は何なのであろうか?
背中の触手の先端が重機のアームのように変化し生物と機械の融合体へと産まれ変わり、姫子に撃たれた瞳は再生したのか怒りの眼差しがオメガに注がれる。
そして今までになかった腰の部分から指位の大きさの骨が複数生えてきて骨には肉、皮膚が生成され、そして機械侵食者の用に侵食していき、純白の鱗になって翼膜らしき物で繋がっている。
両腕も侵食されたのか皮膚には変化がないが所々に血管が浮き出ている。
『更に変化しやがった・・・』
『オメガ見てあそこ』
パルパトが指差した先はオメガに攻撃された箇所で、先ほどまであった傷が塞がっている。
そして身体をのあちこちにあった内出血の後もなくている。
つまり・・・オメガ達が苦労してダメージを負わせたのが無意味になってしまったということだ。
『再生能力・・・こい』
『オメガ!?』
『パルパトに・・げろ・・・』
一瞬・・・オメガとネクロートの距離は約50m程離れており、十分に対応できる距離だった。
しかし進化したネクロートはオメガの反応速度を上回る速さで攻撃しオメガの背中から剣が突き出る・・・ネクロートの短剣がオメガを突き刺したのだ。
『そんな・・・オメガ様』
遠くで狙撃しようと待機している姫子にもオメガが攻撃されたのを目の当たりにして、気力を失ってしまったのか座り込んでしまう。
今まで尊敬し、恋心を抱いていた人物が串刺しになってしまったのだ当然である。
『コれで・・・私ノモノに』
『早く逃げろ!パルパト!!』
一瞬気を失いかけていたオメガは目を覚まし大声で叫ぶ。
ネクロートは残りのパルパトと姫子を始末するつもりなのかオメガの身体から短剣を引き抜こうとする。
『・・・抜けない?』
『パルパトと姫子は殺らせないぜ』
(パルパトなら空を飛べるし、こいつのジェット噴射もあまり長距離を飛ぶのは向いてはいないだろう・・・パルパト姫子を頼むぞ)
『そんナニ離れたくないのネ』
『化け物が・・・自分の顔見てから言いやがれってんだ』
『顔?』
オメガがネクロートを止めているのを確認すると、パルパトは座り込んでいる姫子の元に駆けつけると脱出するように言うが、放心状態なようで反応が鈍い。
(手段は選んでられない・・・無理やりにでも姫子を連れて帰る!)
パルパトは座り込んでいる姫子の両腕を弧爪で縛ると無理やり立たせ一緒に飛び立つ。
『パルパト様・・・オメガ様は?』
『今は逃げるのが先』
『でも、オメガ様が!』
『姫子!』
過ぎ去りゆくオメガに手を伸ばしながら姫子は叫ぶが・・・手は届かず、叫んだ願いも届かない。
姫子を叱咤したパルパトの目にも涙が零れ、羽ばたく翼に力を込める。
もう助からないと思ったのか?
それともオメガなら乗りきれると思ったのか?
何を考えていたのかは分からないがパルパトと姫子はこの場を後にする。
『行ったか・・・』
『コれで二人っキリになれたネ』
『ほざけ・・・化け物。道連れだぜ』
二人が行ったのを確認したオメガは抑えていた両腕を離すと、対機械侵食者用の手榴弾のピンを引き抜く。
流石のオメガも偽りの名の力を使っても倒せない判断し、道連れの道を選んだのだ。
『駄目デスよ』
『がっ!?』
オメガの腹から短剣を引き抜き、ネクロートは周りの触手で手榴弾を握り潰す。
対機械侵食者用に開発された手榴弾は一撃で機械侵食者の皮膚を抉る用になっており、威力も以前に使用した物より格段に強力になっているのだが・・・ネクロートの触手は無傷であった。
それほど進化したネクロートの触手は硬く、オメガの鎧を傷つける程のパワーも持っている程でる。
『う、嘘だろ・・・』
『終わりですか?オワリナノデスカ?』
『ち、畜生・・・化け物め』
オメガは観念したのか瞳を閉じる・・・が、一向に攻撃をしてくる気配がない。
『オメガ様』
『姫子?』
『殺らせない!オメガは殺らせない!』
『パルパトまで・・・何故逃げなかった』
オメガが目を開けて先にはパルパトの弧爪で身動きを封じ込められたネクロートである。
いや・・・少しだがネクロートは動いている。
パルパトもオメガを担いで移動しようと行動する。
『じゃまだァァァァ』
『ぐ!?』
『早くオメガ!』
『バカ野郎達が・・・』
傷ついた腹部を抑えてオメガは動き出す・・・生きて帰る。その事を思いながら。
『しまっ!?』
オメガの頭に水がかかる・・・赤く生暖かい水が。
振り向くオメガが見たのはネクロートの触手によって胴体に大穴を空けられた姫子がそこにはいた。
ネクロートを抑えていた弧爪の一部が切れ、無理やり動かした触手は姫子を貫いている。
振り向いたオメガ姫子の目が合う・・・尊敬の眼差しをいつもくれる瞳は死ぬ間際でさえ輝いていた。
『そんな・・・』
言葉を失ったオメガはどうすることも出来ずにいた。




