神蛇ノ花嫁
イクサとゼータ、イルミデンテが戦闘を開始するより前・・・神化の名本拠地
『俺の事を知っている?』
『知り合い・・・には流石にいないですよね?』
『当たり前だぜ』
オメガに話しかけて来た異形の者は誰なのか?何故オメガの事を知っているのかは置いといてとりあえずオメガとパルパト、姫子は距離をとり様子を見ることにする。
『オメガちゃん』
異形の者・・・ネクロートが動き始める。
ゆっくりとではあるが異形へと変化した背中から生える触手を引き摺りながらオメガの方へと。
自身よりも巨大な触手は不気味に青銅色に輝き、血が通っているのか赤色の血管らしきものが浮かび上がっている。
そればかりか今尚も変化している最中なのか触手に鱗のような物が出来上がっている。
『私ハ貴殿ヲあ・・・』
ネクロートが言い終えるより早く姫子が持っていたライフル銃で頭部を撃ち抜く。
何を語ろうとしていたのかは不明だが頭部を撃ち抜かれたネクロートはよろけ倒れ・・・てはくれなかった。
『な!?』
姫子が放った弾丸はネクロートの歯と歯によって受け止められてしまっていた。
通常ではありえない反射神経、動体視力、そして歯の頑丈さだ。
ネクロートが弾丸を噛むのに力をいれたのかバキバキと音を立てて砕かれ吐き出される。
『なんて歯だ・・・』
『問題はそこじゃない』
『化け物め!』
姫子はライフル銃で応戦する今度は受け止める事が出来ないように心臓を狙ってだ。
『私も攻撃する』
『俺も畳み掛けるぜ』
『待ってくださいオメガ様。接近戦は危険です』
『後手に回るよりはましだ』
姫子が接近戦を仕掛けようと試みるオメガを抑制しようとするが、オメガはお構い無しにネクロートに向かって突撃する。
パルパトも姫子と共に狙撃で様子見をしようと考えていたが、オメガが突出するのを見て侵食細胞を発動させて弦爪で身動きを封じ込めるように動く。
『この感じは・・・』
侵食細胞を発動させ、斬りかかろうとするオメガは違和感を感じる・・・自身の侵食細胞とは別の感覚。
リッチが死亡してしまいオメガが灰色の結晶を手にした時と同じ感覚だ。
侵食細胞を発動させ終えたオメガの姿は前回・・・灰色の結晶を手にした時と同じ姿に変化し、ネクロートに斬りかかる。
右腕にオメガの大斧、左腕にリッチの大鎌を持っての攻撃はアンバランスであり、重量のあるオメガの大斧で一撃は当たった場合致命傷に成りかねない。
対するリッチの大鎌は鎌であるが故にテクニカルな戦闘や死角からの攻撃等が可能である。
『うぁぁぁぁぁきぁぁぁぁ』
ネクロートが突如悲鳴をあげ周囲に響きわたる。
聞くに耐えない悲痛な叫びに突撃したオメガは堪らず後退し距離をとる。
自身の身体を強化をしている偽りの名の2人は無事だが姫子は堪らずうずくなってしまい、両耳を抑えても尚も響きわたるネクロートの叫び声は相当きついものがあるようだ。
大気を振動させる程の威力をもつネクロートの叫び声が終わり辺りに静寂が訪れる・・・しかしながらさっきの叫び声が堪えたのか姫子は気を失ってしまった。
『不味いな・・・パルパト、姫子を連れて別の場所に移動できないか?』
『多分大丈夫だけど・・・アレが何をしてくるかわからい』
『俺の事が心配なのか?』
パルパトは頷きオメガを見つめる。
突如オメガ達の前に現れた不気味な神化の名の化け物はいったい何をしてくるのかわからないし、どんな攻撃をしてくるのかもわからないのだから当然である。
『だが姫子をこの場に残したままあの化け物と渡り歩くのは不可能じゃないのか?』
『確か・・・オメガ!』
パルパトとオメガが話しているとネクロートが動き始め、今までゆっくりと近づいていた筈のネクロートが脅威のジャンプ力でオメガに襲いかかる。
パルパトの一声によって避ける事に成功はしたが、かすめたのかオメガの鎧に傷がつく。
『パルパト、姫子は?』
『無事。そっちは?』
『鎧に当たったがかすった程度だ。問題ないぜ』
離ればなれになったオメガとパルパトは両方とも無事なことを確認し安堵する。
動けない姫子もパルパトが抱えてくれたおかげで無事である。
しかしながらネクロートがオメガ達と敵対し、オメガの鎧に傷つけることを考えると危険と判断したオメガは姫子を近くの物陰に避難させ、パルパトの弦爪で守る事にする。
さっきのネクロートの攻撃を見る限りでは逆に姫子を避難させた場合、オメガの手に余る可能性が出てきたからだ。
『うぁぁぁわぁぁぁ』
ネクロートが再び叫び声をあげてオメガ達を睨みつける。
オメガが逃げた事に腹立てたのであろう。しかしながら空中にいるオメガ達には手が出せない為に吠えたのであろうとイクサ達は予測して話を続けている。
話がまとまったらしくパルパトがこの場を離れていくのが確認できる。
『これで心おきなく戦える!』
姫子を連れていったおかげでオメガは翼を翻しネクロートへと攻撃を仕掛ける。
大斧を利用しての一刀両断の攻撃を反射的にかわしたネクロートはオメガに向かって襲いかかる。
ネクロートの獣のような攻撃を受け流し、器用に大鎌を使って逃げれなくすると右拳で鳩尾に攻撃するのだがネクロートも一筋ではいかなく背中の触手を動かしオメガの拳を防ぐ。
『それで防いだつもりか?』
オメガは大鎌を手放すと近くに落ちてきた大斧を使いネクロートを薙ぎ払う。
体制を崩したかに思われたネクロートだが残りの触手を上手く使い倒れるのを避けると一気に後ろにさがりオメガとの距離をとる。
『ナイスタイミングだぜパルパト』
『でも倒せなかった』
『あぁ・・・あいつのあの触手。
どうやら自身の身体を支えられるくらい丈夫なようだな』
『それだけじゃない・・・オメガの鎧も傷つけるパワーは危険』
『接近戦で俺が仕掛ける。パルパトは援護を頼むぜ』
『了解』
姫子を避難させてきたパルパトが戻りオメガの大斧を持ってきたようで、先程の手助けはパルパトが行ったようだ。
ネクロートはダメージを受けた脚を支える為なのか触手の一本を地面に刺して支えている。
ネクロートの触手は以前よりも格段に大きく強固になっているようで以前では直接的な攻撃はしてこなかったにも関わらずに、今ではオメガの鎧を傷つける程のパワーになっている。
パルパトはオメガと違い鎧など纏ってはいない。そもそもパルパトには翼が生えているので大抵の攻撃は空中に逃げるか、高い機動力を生かしての回避が主流で、鎧などの重装備でダメージの軽減等は考えていない。
やむ終えない場合は弧爪を使い受け流すが。
『いダイ・・・オメガちゃ・・・』
ネクロートが機械音にも似た声でオメガの名前を呼ぶ。
侵食が進んだのかそれとも自身の意識が薄れたのか・・・はたまた媒体にしたエンラの抵抗意識が強くなったせいなのかは不明だ。
ゆっくりと動き始めるネクロート・・・先程まで地面に刺して身体を支えていた触手や周りの触手も後ろ向きになり触手を覆っていた鱗が逆立つ。
急に触手が動き始めたのを警戒したオメガがパルパトの前に出て身構える。左腕の大鎌を突き出し、右腕の大斧で触手からの攻撃を防御する算段だ。
『潰す!つぶす!ツブス!』
ネクロートの叫び声と同時に触手が蠢き、白青炎を噴出しながらオメガ達へと突進していく。
その姿はミサイルのように一直線に、周りにある瓦礫をことごとく吹き飛ばしながらの爆発的な推進力を利用しての突撃だ。
『まっ・・・』
まさかあの距離を一気に近づいてくるとは思っても見なかったオメガだが、咄嗟の判断で左手の大鎌も防御に回し、受け流す事に成功させ一旦上空へと待機する。
パルパトはオメガが一瞬受け止めてくれたおかげていち早く上空へと避難していた。
『嘘だろ・・・あの距離を一瞬で』
『オメガ無事?』
『判断が遅かったら危うく左半身が亡くなるところだったよ』
手が痺れたのか左手を摩りながらオメガは答える。
どうやらさっきのネクロートの突進は受け流す事は可能でも、回避、受け止める事は不可能だとオメガは判断する。
当然であるミサイルのような爆発的は推進力を利用しての突撃の影響で、辺りの瓦礫が吹き飛び一直線に焼け焦げた後が残っている。
巨大な爆発音と共に廃墟となっていた施設が崩壊するのが目に見える。
どうやらオメガが受け流した事によって止まることが出来なかったのか激突してしまったらしい。
『彼奴は何者だ?』
『まだ私達の知らない神化の名かもしくはイクサ様の言っていた偽装機械侵食かも』
『どちらにしよ可笑しな話がだよな・・・あんな爆発力のある奴なら何で中央本部を直接狙わない?
いくら中央本部が厳重で強固だからといってもあんな速さで来られたら太刀打ち出来ないぜ』
『確かにそうね・・・何故でしょう』
オメガがネクロートについて話していると再び爆発音と共にこちらに近づいて来る光が見える。
どうやら止める事に成功したネクロートが再び突撃を開始したらしい。しかし先程のまでとは距離が遠いので来る方向を予測してオメガとパルパトは射線上から回避する。
ネクロートが空中へと飛び立ってる事は予測していた為に回避するのは早かった。
『うぁぁぁがぁぁぁ』
ネクロートの叫びに共鳴したのか触手蠢き4本の内の2本がジェット噴射を止めて、もう残りの2本は方向転換するために逆噴射を始めオメガ達のいる方向へ軌道修正する。
あまりにも乱暴で自身に掛かる負荷も考えずへの軌道修正なのかネクロートの口からは血出ている。
『化け物がぁぁぁ』
『オメガ!?』
このままでは自分ばかりか隣にいるパルパトも巻き込んでしまうと判断したオメガはネクロートへと突撃し、翼、手足を使ってネクロートに絞め技を喰らわせ推進力を奪おうとするが、やはり爆発的は推進力は弱まる事はなくオメガの身体もろとも吹き飛ばされようとした時、パルパトは弧爪を利用してオメガとネクロートの方向を変える。
再び無理やりの軌道修正・・・しかも軌道修正の先を真下、地面に叩きつけるように変える。
『ナイスだパルパト』
そう叫びながらオメガはネクロートと共に地面に叩きつけるられる。
通常であれば即死・・・いくら接近戦闘型の偽りの名だからと言っても致命傷は免れない。
最早生物として概念が無くなってしまったネクロートが無事かは分からないが、先程の吐血やオメガの攻撃が効いたの考えるとそれほど強固ではないらしい。
砂埃が止み倒れているオメガをパルパトが運びだす。
『生きてる!?』
『あぁぁ・・・生きてるぜ』
パルパトの問いかけにオメガは答える。
オメガを守っていた鎧は最早見るも無残に壊れており、あちこちに打撲したのか内出血や衝撃で出来た切り傷から血出ている。
リッチの力を受け継いだ証の翼も翼膜に穴が空きぼろぼろだ。
『これで奴も倒れただろう』
『彼奴はそれほど頑丈じゃないの?』
『少なくとも俺よりはな・・・ダメージは彼奴の方が大きい筈だ』
ネクロートの付近から再び砂埃が巻き上がり蒸気らしき煙もたちこめる。
明らかに人為的で、巻き上げられた砂埃が晴れるとそこにはネクロートが満身創痍で立っている。
どうやらネクロートの触手、逆立った鱗から熱を放出する為なのか蒸気が上がっているようだ。
『本当に化け物かよ・・・』
『オメガ殺せる?』
『殺らなきゃ前に進めないからな』
オメガを地上に下ろすとパルパトも援護する為にライフル銃を取り出す。
オメガはぼろぼろに破壊された鎧を再生するには時間が掛かるだけでなく、残りの侵食細胞を回してまでも再生させる価値はないと判断して戦闘準備をする。
今度こそネクロートを完璧に倒すために。
『倒サナきゃ・・・手にいれなキャ・・・私のオメガちゃんを』
塗り潰されていく意識の中で何を思っているか・・・自身の欲望が暴走するなかでネクロートは願い、それを成就させるために抗う。




