黒キ侵軍
レインネスト商業区画
店での仕事が終わった紫蘇椿は地鳴りが聞こえた方向に向かって走りだす。
そこにはこの世の物とは思えない光景が広がっていた。
『た、助けくれー』
『ママ何処なの』
『くそ、帝の軍勢は何をやってんだよ』
『1ヶ所に固まるなバラけて逃げるんだよ』
突如出現した機械侵食者によって人々や動物達は襲われ、逃げ惑う人々によって人の波が出来ている。
応戦する帝の軍勢も駐屯所で警備していた人数しかいないので迫り来る機械侵食者に対して対処が追いつかない状態になってしまっているのだ。
『援軍はまだなのですか?娘とはぐれてしまって』
『落ち着いてください。中央本部には既に連絡していますのでもう少しで援軍が来る予定です。
それよりも避難してください』
『嫌です。娘を見つけるまでは』
『我々でお探ししますから、避難所に行ってください。
娘さんも他の帝の軍勢が避難させているかもしれません』
『し、しかし・・・』
娘を探している母親に帝の軍勢が避難所に避難するように促す。
機械侵食者が居住区、商業区画に進行して来た場合、数ヶ所にある避難所に避難するようになっているのだがこの母親は娘の事が気掛かりで避難していない。
『はい。こちらレインネスト商業区画駐屯兵団・第2駐屯所所属五月雨早苗です』
突如五月雨の無線に連絡が入る。
内容は第1区画にて多数の大型機械侵食者が確認され直ちに増援に迎えとの伝令だ。
『一つお伺いします。避難所に母親を探している子供はいませんか?』
『子供?名前や特長は?』
『特長はですね』
五月雨は母親から子供の名前と特長を聞き出し伝える。
すると偶然にも今連絡している帝の軍勢が迷子の子供を連れた老人を目撃していて、避難所に避難するように促したとのことだ。
そして今五月雨が教えた名前と特長が一致しているという。
『了解です。奥さん朗報です第1区画の避難所にてお子さんが保護されました』
『ほ、本当ですか?よかったー』
『それでは避難していただけますか?』
『わかりました。五月雨さんありがとうございました』
五月雨に敬礼をして母親は避難所へと向かって行く。
第1区画へと向かって行った五月雨が目にしたのは、全身が機械侵食者化した蠍型の機械侵食者と3m程の長さの百足型の機械侵食者、巨大な蜘蛛型の機械侵食者が帝の軍勢と交戦している。
未だに何故この機械侵食者がレインネスト商業区画に現れたかは定かではないが、この他にも各地の区画にて機械侵食者が確認されている。
幸いなことに空を飛ぶことがでる機械侵食者は確認さてはいない。
『こちら五月雨。ただいま到着いたしました』
『こちらレインネスト商業区画駐屯兵団団長秋風紅。あなたはあの蜘蛛型の機械侵食者をお願いします』
『了解』
五月雨は蜘蛛型の機械侵食者との戦闘を開始する。周りの散らばっている帝の軍勢は周りの建物に隠れながら狙撃していて、それぞれ数名ではあるが機械侵食者と戦っている。
人数があまりいないので機械侵食者にダメージを負わせているかは微妙だが仕方のない事である。
(それにしても・・・よくあの機械侵食者は争わないなぁ)
そんな事を思いながら五月雨は蜘蛛型の機械侵食者に狙撃していると、別の方向にいた百足型の機械侵食者が民家を破壊して進軍していく。
もう1匹の蠍型の機械侵食者は突破されていないが硬い鱗で覆われているため、此方の攻撃が効いているのかは分からない・・・唯一攻撃が通っているであろう蜘蛛型の機械侵食者も巨大で攻撃範囲が広く危険だ。
『まずい!?ガウネス達が殺られたのか』
『くそっ!行かせるか』
『硬いぞ!?手榴弾で・・・』
『馬鹿か貴様!辺りを燃やすつもりか』
『秋風団長どうしますか?』
蜘蛛型の機械侵食者をとの戦闘を継続しながも、数名が百足型の機械侵食者の動きを止める為に狙撃する。
しかしその硬い外角に守られていて距離も遠いせいかだダメージを負っている気配はなく、足止め出来ずにレインネスト商業区画を越えて中央本部へと向かって行った。
秋風団長の指示により百足型の機械侵食者の足止めに数名を派遣する。
(どうする・・・ガウネスが殺られたのならば我々の部隊でも足止めできるかどうか微妙だぞ)
秋風が次の建物に移動しているしていると急に地面が陥没し、秋風を含めた数名が落下していく。
『な、何だあれは』
『あっ、足が!俺の足がぁぁ』
『いったいどうなっているの』
『大丈夫かお前達!?』
落下の衝撃で足を折った者、混乱して周りが見えていない者等、地面の陥没という予想外の展開に動揺してる者が多数いる。その中でも崩壊を免れた帝の軍勢が様子を見に来ている。
様子を見に来たと帝の軍勢は陥没した場所とは別の場所にためかいち早く異常に気がつく・・・陥没した地面の中央付近が動きだし、中からもう1匹の機械侵食者が這い出くる。
這い出てきた機械侵食者は茶色い姿で大顎が特長的な昆虫型の機械侵食者だ。
『秋風団長気をつけてください。もう1匹機械侵食者がいます』
『何だと!?』
『だ、誰か助けてくれ動けないんだ』
地面が陥没した衝撃で足を負傷してしまった帝の軍勢に向かって、地面から出てきた機械侵食者は近くの瓦礫を顎で挟んで投げ飛ばしてきた。
足を負傷して動けなかった為に直撃してしまった帝の軍勢は無惨にも下敷きになってしまう。
『くそ!よくもエクロルトを』
仲間を殺させた事に激高した帝の軍勢の1人が発砲するが機械侵食者化した皮膚によって弾かれる。
発砲してくれたことによって狙いが秋風から反れ、無事に脱出する事に成功する。
秋風達が穴に落ちている間に周りには中央本部より駆けつけた多数の帝の軍勢が、百足型の機械侵食者の足止めをしているが動きが早く足止めが限界なようだ。
『こいつまさか・・・』
1人の帝の軍勢が穴の中いる機械侵食者のある特長に気がつく。
その特長とは穴に転がっている瓦礫を顎で掴んでは外に投げ捨てるというものなのだが、その投げた瓦礫は帝の軍勢を狙うように投げており、1人の帝の軍勢が犠牲になっている。
穴を掘り瓦礫、もともとは砂利等を投げ捨て獲物に当てる事をする昆虫・・・そして特長的な顎を見るにあの穴の中にいる機械侵食者は蟻地獄型の機械侵食者だと予測できる。
今まに確認されていり機械侵食者はいずれも成体であった為に分かりずらかったが、例外もいるは予想外だったらしい。
『秋風団長!あいつは蟻地獄型の機械侵食者かもしれません』
『蟻地獄・・・まずいぞ。成体でない機械侵食者が存在しているとなると殲滅が大変だぞ』
各機械侵食者との戦闘が長引き辺りはすっかり夜になってしまってしまった。
幸いなことにレインネスト商業区画にいた一般人の大半は避難を完了したとの報告が中央本部へと入ってくる。
それを確認したイクサはレインネスト商業区画にて戦闘をしている帝の軍勢に重火器での戦闘を許可する。
『やっと倒れた・・・』
『やっと一匹ですね』
『他の機械侵食者の方はどうなんだ?』
『さぁ?こいつを倒すので精一杯だったから分からないぜ』
蜘蛛型の機械侵食者を倒し終えた秋風達は、周りの機械侵食者が倒されたか各分隊に連絡を入れてみるが全く応答が無いことに気がつく。
連絡を取ろうにも無線にはノイズが混じっていて会話が出来ない状況だ。
『何でレインネスト商業区画でノイズが出ているんだ』
『第3班との連絡も出来ないぞ』
『こっちもだ』
『中央本部とも連絡がつかないのですが・・・』
『・・・意図的にジャミングされている?いったい誰・・・』
ジャミングされていると気がついた秋風が他の隊員に教えようとすると、近くの瓦礫を破壊して蠍型の機械侵食者が出てくる。
第2班と戦闘していた蠍型の機械侵食者が秋風達第1班に来たということは第2が全滅、もしくは戦闘不可の状態になってしまったと考えるのが妥当だろう。
しかしこの蠍型の機械侵食者の片方の鋏が無く、周りを覆っている皮膚にも所々に傷がついている。
『ま、まずい!?総員回避行動を!』
『うぁぁぁ!?
た、助けてく・・・』
1人の帝の軍勢が逃げ遅れ蠍型の機械侵食者に捕獲され補食される。
捕まってしまった帝の軍勢は生きたまま補食され、それを見ていた帝の軍勢の1人が嘔吐してしまった。
他にも腰を抜かしてしまった帝の軍勢や、逃げようとして躓いてしまう者もいた。
さらに不運は続き足元の地面が再び陥没し蟻地獄型の機械侵食者が出て来てしまったのである。
秋風はとっさの判断で瓦礫の背後に隠れる事に成功したが、隠れる場や周りに捕まることの出来なかった数名の帝の軍勢が蟻地獄の餌食となってしまった。
『秋風団長逃げ・・・』
『朝霧が殺られた!』
『団長この場から撤退を』
『残念だがそれは無理なようだ』
他の隊員が脱出しようと提案するが秋風に却下されてしまう。
理由は蟻地獄から脱出したとしても蟻地獄の上から蠍型の機械侵食者が待ち伏せており、脱出したとしても殺られてしまう可能性がある。
『覚悟を決める必要がありますね』
『帝の軍勢に入隊した時から覚悟は決めています』
『我々も同じですよ。秋風団長』
『ありがとう。そしてすまない』
秋風達が覚悟を決めると蟻地獄型の機械侵食者に突撃をしかける。
秋風達三人の銃剣突撃での攻撃は蟻地獄型の機械侵食者を翻弄したのか、突撃時に顎で挟まれることはなく銃剣が皮膚へと突き刺さる。
痛みを感じたのか左右に身体を揺らして振り払おうとする。
『しまっ・・・』
『フィル!』
『は、離れろ!爆発させる』
顎の近くに突撃したフィル・エンガレンスは振り払われてしまい、顎によって左足を挟まる。
蟻地獄型の機械侵食者の噛む力は相当なもので、振り払うことが不可能だと判断したフィルは対機械侵食者の手榴弾を取りだし投げ捨てる。
爆発と共に蟻地獄型の機械侵食者の大顎が破壊され、爆風が秋風ともう1人の帝の軍勢であるキャシー・マーガレッドを襲う。秋風とキャシーは好機と判断してすかさず軍刀で蟻地獄型の機械侵食者に畳み掛ける。
フィルの手榴弾によって機械侵食者化した皮膚を破壊された、斬りやすくなっており軍刀が深々と突き刺さる。
『斬れろ!』
『終わりですよ』
秋風とキャシーの斬撃で顔から腹部まで貫かれた蟻地獄型の機械侵食者は絶命してしまった。
絶命したことを確認すると秋風とキャシーが軍刀を引き抜く・・・軍刀には突き刺した蟻地獄型の機械侵食者の血だけではなくフィルの血も付いている。
『すまないフィル・・・』
『ごめんなさいフィルさん・・・』
懺悔の言葉を呟きながら秋風とキャシーは上で待機しているであろ蠍型の機械侵食者に目線を送る。未だに蠍型の機械侵食者は攻撃のチャンスを伺っており此方には攻めて来ようとはしていないようだ。
『秋風さんもしかして・・・』
『あぁ・・・上の連中が殺られたか』
気がつくと先ほどまで鳴り響いていた銃声や、瓦礫が崩れる音が聞こえなくなっていた。
遠くの方では音が聞こえるので、まだ残っている百足型の機械侵食者との戦闘は継続中であると判断できる。
次に何をするべきなのか考えていると、痺れを切らしたのか蠍型の機械侵食者が行動を開始して秋風達のいる方へと向かって来た。
もう助からない・・・そう思った秋風とキャシーは覚悟を決めて攻撃を仕掛ける。
『硬い!?』
『危ない!?』
『すまないキャシー大丈夫か?』
『大丈夫です。かすっただけですので』
鋏の部分は他の部位より硬いのか秋風の攻撃が弾かれてしまう。
その隙を逃がさないばかりに尻尾よる刺殺攻撃で秋風を仕留めようとするが、キャシーの援護よって避ける事に成功する。
しかし秋風を庇ったキャシーに攻撃がかすり左太ももを負傷してしまう。
キャシーの無事を確認した秋風は再び攻撃を開始する。無くなっている片方の鋏の方に移動して攻撃が当たらないように立ち回る。
キャシーも攻撃をしようと移動しようとするが・・・身体が動かない事に気がつく。
恐る恐る蠍型の機械侵食者の攻撃がかすめた部分の服を引きちぎると・・・かすめた部分が錆色になっていた。
『ひ!?ま、まさか・・・』
キャシーが恐る恐る傷口に触れると傷口が錆びたようにボロボロと崩れ落ちる。
『そんな・・・うそでしょ?』
キャシーの瞳から大粒涙がこぼれ落ちる。キャシーが蠍型の機械侵食者の攻撃で既に機械侵食者化してしまっていた。
しかも不運なことに機械侵食者因子とキャシーの相性が悪かったらしく皮膚が拒絶反応を起こしてしまっていた。
動かないキャシーに気がついた蠍型の機械侵食者が尻尾での攻撃を仕掛けてくる。
『くそ!?キャシー!』
秋風はキャシーを庇い蠍型の機械侵食者の尻尾に突き刺さってしまう。尻尾による攻撃はキャシーまで届いてはいないが、既に足に力が入らず動けないキャシーにとっては関係の無いことだった。
『ごめんなさい・・・秋風さん』
そう言うとキャシーは突き刺された秋風の元に這い寄る・・・太ももから侵入した機械侵食者因子が身体を蝕みキャシーの命を削っていく。
既にこの世から去ってしまった秋風に手を伸ばす・・・しかし秋風に触れる直前に腕の感触が無くなってしまった。
『くそ!?遅かったか?』
『遅かったようだね』
その2人の声は上空から聞こえてくる。
鳥のような翼とガトリング銃を持った2人組がレインネスト商業区画に舞い降りてきた。




