新兵器W-B
帝の軍勢中央本部
『イエスメデス様から連絡がありました。
やはり土の結界棟の機能は停止していました。そして土の結界棟を破壊したと思われる鯨型の機械侵食者の存在が確認されております。それに伴いイエスメデス様は鯨型の機械侵食者の討伐の為に新兵器WーBの使用許可を求めてきています。
如何かさいますか?』
『イエスメデスの指示ならば問題は無いであろう。しかしそれよりも先遣隊として向かったトトは見つかったのかね?』
『いいえ。未だトト様を発見したという報告はなされていません』
『そうか。ではワイズマンに連絡して新兵器WーBの準備を』
『了解です』
イクサの指示の元で葵はワイズマンに連絡をいれる。
電話越しのワイズマンからは新兵器の実験体が大物だとしり興奮した様子だったがトトが未だに発見されていないとわかると、急に冷静になったようでこれから最終確認をするとのことだ。
『それでは何分位で調節がおわりますか?』
『30分程で』
『そうで・・・』
ワイズマンが30分で調節が終わると言い終える前に受話器越しから、何やら騒がしくなってきている。
途切れ途切れだが整備士の連中が無理だとか、必要なメンテナンス道具は何処かなど、いろいろと騒がしくなっているようだ。
『大丈夫なのですか?後ろから不安そうな声が聞こえますが』
『大丈夫ですよ。急ピッチでやりますので他の仕事は後に回しますが問題無いですよね』
『問題ありません。新兵器WーBの調整が最優先ですので』
『了解です』
ワイズマンに連絡を終えて受話器を置いた葵は直ぐ様に別の部署、航空班へと連絡をいれ貨物機の手配を整える。
帝の軍勢中央本部ー受付
『やっと来ました・・・あれ?私の何の為に来たのでしたっけ?』
『あれ?嵐島さんじゃないですか。どうしたのです今日は非番なはずですよね?』
そう言って嵐島に話しかけて来たのは同じ時期に入隊した区木悠である。
嵐島と同じくご伍長ではあるが歳は25と嵐島より2歳若く、整った顔立ちとオールバックが印象的な好青年だ。
本来非番であるはずの嵐島が帝の軍勢中央本部にいたので話しかけて来たと言うのだ。
『あ・・・い、いや、非番なのはわかっていたのだがあの・・・その』
『どうしたのです嵐島さん?いつもは冷静な嵐島さんが今日はなんだか変ですよ?』
『あ・・・そ、その・・・どうしちゃったのかな私?』
『何かあったのですか?』
『あ、あの・・・此処に何の用で来たのか思い出せないの』
『どういう事です?』
嵐島の話によると帝の軍勢中央本部に来たのはいいのだが肝心の何故来ようとした要件を忘れてしまったということらしいのだが。当然ながら区木には検討がつかない。
いくら今土の結界棟が崩壊して機械侵食者が侵入可能だと言っても、非番である嵐島を呼び出して任務にあたるということは無い。
そもそも嵐島の担当部署は連絡班なので非番の嵐島を呼び出してまで仕事をするということは基本的に無いらしい。今は結構忙しそうではあるが。
『そ、それだけじゃないです・・・どうやって此処まで来たにかも分からないのです』
『・・・嵐島さん今から1時間前何をしていましたか?』
『思い出せない・・・レインネスト商業区画に出掛けたことまでは覚えているのですが』
(一時的な記憶障害?しかし・・・だとしたら何故この中央本部に?帰省本能は違う気がするなぁ)
『1度見てもらった方がいんじゃないんでしょうか?』
『どうしたら・・・』
『嵐島さん?』
混乱しているのか嵐島の顔は青ざめていて挙動がおかしくなってしまっているようだ。
区木は落ち着くように嵐島をなだめるが一向に良くなる気配がなく、どうしたらいいのか不安になっていた。
(な、何で記憶がないの?何がどうなっているの?私は何で中央本部に行こうとしたの?
分からない・・・何も分からない)
『どうしたのですか?』
『あぁ!グリム姉さん。丁度良かった』
何やら揉め事が起きていると噂になってしまっていたのか、偶然通りかかったグリム・V・ノノワール軍医が話かてくる。
帝の軍勢の連中からはグリム姉さんと慕われていて、特に女性の帝の軍勢からの信頼は厚く時折診察以外でも親身に相談に乗ってくれる優しい人物である。
歳は相応の筈なのだが健康に気を使っているからなのか未だに若々しく、赤髪と泣きホクロが印象的な女性で何度か婚約を求める男性はいるが、いずれも拒否されている。
ちなみにトトもその中の1人だったりする。
『なるほど・・・嵐島さんちょっと診療所まで来てもらえるかしら』
『あ・・・はい』
『それでは俺はこれで』
区木から事情を聞いた後でグリム女医は嵐島を診療所まで一緒に来るよう提案して嵐島もこれを承諾する。
心配ではあるがもしかしたら女性特有に悩みかも知れないと思った区木はこの場で去っていき、自分の仕事を再開し始める。
帝の軍勢中央本部・第2区画診療所
本部であれば近場の第1区画の診療所に向かう予定であったが、先客がいたらしく今は第2区画で診療している最中だ。簡単なカウンセリングを受けた後、心拍数や脈拍、体温を測定したが異常が無いことから今は血液検索を行っている。
『あ、あの・・・グリム姉さん私はどうしてしまったのしょうか?』
『嵐島さんの症状は記憶に何らかのショックが加わったことによる記憶喪失。もしくは何らかの原因で忘れている可能性がありますね』
『忘れている・・・』
『多分貴女が心にトラウマ的な何かを感じて、その時の記憶を忘れてたいと思ったかも知れないですね』
『じゃ、じゃあ何故血液採取を?』
『薬物による記憶障害というのをご存知ですか?薬の中にはそういった種類のも存在しています。帝の軍勢に所属している人たりはあまり馴染みがないと思われますが、現在警察がその薬物を追っているとの噂ですよ』
グリム女医の話によると1.2年程前から違法薬物が裏の社会で流通するようになり、数件ではあるがその時間帯に何をしていたのか分からないという記憶障害の類いの報告も上がっている。
しかしながら嵐島のように1日単位という報告は上げられてはいない。
『それでは採血しますので腕を出してください』
嵐島の採血を始めたグリム女医は困惑する。嵐島から採血した血液は普通の血液よりも赤黒かったのである。
それは一目で分かる程でグリム女医も嵐島も困惑していた。
帝の軍勢中央本部・対機械侵食者兵器研究所
本来であれば土の結界棟の後継者となったワイズマンは常駐していないといけないのだが、イクサの命によって決戦兵器用の新兵器の開発をする為に研究所に来ていた。
本来自分が警護する筈の結界棟が敵によって破壊された事を悔いてはいるが、同時に今自分が出来るであろう新兵器を開発する為に活動している。
この新兵器WーBは土の結界棟の前任である偽りの名B ブライドが開発していた物であり、後継者のワイズマンはこれを完成させるのが目標なのだ。
そして今新兵器WーBは最終調整にはいっている。
『値はどうなっている?』
『正常ですよ。そちらは?』
『平均より低いが許容の範囲内だ』
『こっち終わったよーそっちは?』
『まだ掛かるかな』
新兵器WーBというのは対大型機械侵食者に対抗する為に造られた武器で、武器の形状的にはロケットランチャーなのだが先端部分がドリル状になっており、ワイズマンの侵食能力を利用して造られており機械侵食者の皮膚に突き刺さる事可能である。
突き刺さった部分から爆発する事によって機械侵食者化している皮膚や筋肉ダメージを負わせるという寸法だ。
しかしそれだけではなく、前任であるブライドの造り上げた兵器・・・叡智の光炎を使用する事によって機械侵食者の身体機能を一時的に弱体化させることができるのだ。
技術班のメンバーが急ピッチでWーBの調整をしている中で主任技師であるワイズマンの元に伝令が届けられる。内容はメンテナンスが終了したWーBを順次貨物機に乗せてイエスメデスの元に届けるというものだ。
そう新兵器WーBは複数存在しておりその数は10機で、試作品も含めるのならば20機は造っている。
『ワイズマンさん4個のWーBは最終調整を終えたそうです』
『了解。それじゃその4機は貨物機に乗せる準備をして。
それと残りの6機のWーBはどうなってるの?』
『残りの4機は予定通りであれば残りの5分程で、ですが残りの2機は少々整備班が集まるのが遅かった為にまだ掛かるようです』
整備班から4機のWーBの完成の報告を聞き終えた後で自分の整備しているWーBをカスタムする為に作業に取りかかる。
ワイズマンが整備しているWーBは特殊で他のとは違い対神化の名に改造したもので、このWーBのメンテナンスはワイズマンだけした出来ない。
そもそも作り方が違うのだから当然である。
周りでは完成したWーBを搬入している帝の軍勢が世話しなく動いて電話で話したように忙しそうにしてる。
『しかし・・・この新兵器WーBは我々でも使用できるのでしょうか?』
『無理じゃねぇの?これ使うのって前線の連中らしいじゃん。
俺らみたいな整備班の連中は使用できないでしょ』
『確かになぁ・・・でも自分で使ってみたい気持ちはあるんだよなぁ』
『まあな。よしこれでこっちは完成だ』
それから数分後10機のWーBによって鯨型の機械侵食者は討伐され、土の結界棟を奪還する事に成功したのは月明かりが照らす夜の事あった。




