戦場ノ舞姫
土の結界棟跡地
『これは酷い・・・これではトトも』
土の結界棟が崩落したのを聞き入れてイエスメデスは現場に急行した。
イエスメデスの目の前に広がるのは、爆発によって吹き飛ばされ瓦礫が散乱し所々が燃えている旧土の結界棟である。
周りには帝の軍勢や消防隊の連中が協力して消火活動や、救助活動に勤しんでいるのが目にはいる。
イエスメデスがこちらに来たのは土の結界棟が崩落した事によって機械侵食者が進行してくると予想して、帝の軍勢での撃破の指示と帝の軍勢でも対処出来ない相手との戦闘があると予想したからだ。
イエスメデスの前に此方に到着し、先ほど目撃の会った機械侵食者との戦闘を開始したであろうトトの捜索は最重要任務の1つであり、イクサの言っていた数時間前に土の結界棟から連絡が途絶した理由を探すのも任務の1つだ。
『イエスメデス様!』
『どうしました?何かありましたか?』
消火活動をしていた帝の軍勢の1つがイエスメデスに話しかけてくる。
階級的には少尉ではあるが見た目は若く少し痩せていて目元には隈が出来ている。
『お主は確か獅子町真治郎であったか。どうしたのです?』
『な、何故私の名前を?』
『少し前に中央本部で見掛けてのう、お主と同僚の会話を聞いてから名前を知っていたんですよ』
『そうなのですか。それよりもイエスメデス様、我々の部隊が偽りの名トト様の武器らしき物を発見いたしましたので確認をお願いします』
そう言うと獅子町は布に包まれた鎖の破片を取り出す。
当然イエスメデスはトトの武器や身に付けている武具等を知っているが、トトの武器は日本刀であり武具にも鎖のような物は見られないため別の物と判断し終える。
すると鎖の破片が少しずつ崩れていき崩壊する。
『この鎖の破片はトトではないが神化の名、もしくは偽装機械侵食者がこの土の結界棟にいたらしいですね』
『そうなのですか!?』
『えぇ、この土の結界棟に先行して行ったのはトト以外にはいないのです』
『他の部隊にこの事を知られてください。何か異常がありましたら直ぐに連絡を、この規模の爆発で生きているとは思えませんが念のためです』
『了解しました』
獅子町はイエスメデスに敬礼をした後でこの場を後にする。
(しかしトトが殺られたとなるとまずいですね・・・残りの神化の名は何体いるのかも分かりませんし)
土の結界棟.第1調査団
『しかし酷いですね・・・』
『まさか土の結界棟が崩落するなんて』
『あれだけの爆発があったんだ土の結界棟にいた人達の生存は絶望的に思えてくるが』
『それは言わないでもらえるかしら、我々の仲間が少しでも生存している可能性があるのならば探してみましょうよ』
『しかしルルシエ中尉この瓦礫が散らばる現状では・・・』
崩落した土の結界棟で調査をしているのは帝の軍勢中央本部より派遣されたのは調査団であり、その第1部隊を率いているルルシエ・フィーネス中尉は部下が愚痴を溢すのに不快感を露にしていた。
確かにこの惨状を見れば目を瞑りたい気持ちも分からないではあるが、救助する人間がその言葉を言うのはご法度だからである。
『・・・?何か音が?』
『どうした?』
『何か音が聞こえないか?丁度あの瓦礫辺りから』
『確かめて見よう』
第1調査団のロネス・タンジーと西院寺イリエは音のする方向に向かって進んでいく。
念のためにライフル銃を担いで二人が向かった瓦礫の辺りは足元の安定が確保出来ずにいたため、調査範囲外に指定されおり他の帝の軍勢は立ち入ってはいない場所だ。
『しかし本当に足場が悪いな』
『うっかり転んで鉄筋に刺さるんじゃねぇぞ』
『わかってま・・・な、なんだ!?』
ロネスと西院寺が進んでいると急に足元がカタカタと動き始める。
地震のように思えたが横に揺れているのではなく、周りの瓦礫が膨れ上がる様に動いているのが目にはいる。
『まずいロネスこっちに戻ってこい』
『あ、あぶねぇ!?なんだ!なんなんだこいつは』
ロネスと西院寺が見たのは巨大な船・・・ではなく先ほどトトによって墜落させられた鯨型の機械侵食者が両ひれを使って立ち上がった姿だった。
『ま、マジかよ・・・』
『で、でけぇ・・・』
間一髪で崩壊からま逃れたロネスと西院寺はその大きさに呆気にとられていて、その場を動けずにいた。
鯨型の機械侵食者が何故再び活動したのかは不明だが、先ほどの瓦礫が崩れる音を聞きつれて複数の帝の軍勢や消防隊が集まってくる。
集まった連中もその大きさに目を伺っていた。
いくら目撃していたとはいえ、空中に浮いていて尚且つ自身の周りを蒸気によって隠していた時とは違い周りからは蒸気は出ておらず、そして何よりも地上に降りて立っている姿は爆撃機よりも更に巨大でこれが空を飛んでいたとは想像出来ない程である。
『お、おい。お前信号弾はあるか?俺はさっきのでどっかに落としてしまったみてぇなんだ』
『あるぜ!確かにこれは緊急事態だからな』
そう言うと西院寺は信号弾を発砲する。
もちろんこれ程巨大な者が急に出て来たのであれば当然帝の軍勢の調査団や、現場で指揮と執っているイエスメデスも気が付くと思うが念のためである。
発砲をし終えて周囲を確認しようとしていると、ロネスと西院寺の方に近づいてくる人物が数名。
ロネスと西院寺は現在鯨型の機械侵食者に1番近く、周りが瓦礫によって見渡しにくいが鯨型の機械侵食者がいる所はクレーターになっているようだ。
『信号弾を発砲したのは貴君らか?』
ロネスと西院寺に近づいてきた複数の帝の軍勢は先ほどの信号弾を発砲した人物がロネスか西院寺なのかを聞き、この場所で何か起きたのかをロネスと西院寺から聞き終える。
何故ロネスと西院寺に確認したかというと、突如再び活動を開始した鯨型の機械侵食者に疑問にしており、近くにいたロネスと西院寺が何かしたのではないかと疑ったからだそうだ。
『申し遅れた。私は第4調査団の伊勢権剛と言う者だ』
『第1調査団所属ロネス・タンジー』
『同じく第1調査団所属西院寺イリエ』
『第1調査団と言うとルルシエ中尉のところか』
ロネスと西院寺から事情を聞いた後でそれぞれ自己紹介を始める。
先ほど此方に来た帝の軍勢の部隊は第4調査団であり、団長の伊勢権剛は少尉で2人より格上だ。
『集まって来ましたね』
『そのようだな』
周りをよく見ると西院寺の発砲した信号弾に反応して近くで捜索していた帝の軍勢が集まってくる。
中にはロネスと西院寺が所属している第1調査団も到着していた。
『どうやら我らのイエスメデス様も御到着のようだ』
第4調査団の1人がイエスメデスが到着した事を確認する。
イエスメデスと一緒に降りてきた第1調査団もロネスと西院寺から話を聞き終えると、イエスメデスの指示で第1~第4調査団までを鯨型の機械侵食者の調査に回して残りを再び調査へと戻し終える。
『さて・・・この鯨型の機械侵食者は妾達が此処に集まるまで待ってくれていたのかな?』
『動けないのではないでしょうか?』
『まぁ・・・鯨は陸では活動しませんからね』
『それを言うなら鯨は空を飛んだりはしないと思うけどなぁ』
第1~第4調査団は鯨型の機械侵食者を囲むように配置に着き、虚ろな瞳の鯨型機械侵食者が何か行動を起こさないか警戒していた。
しかし先ほどイエスメデスが言った様にこの鯨型の機械侵食者は瓦礫から出たが動かずに、地面に伏せているだけで何も行動はしていない。
動かないのか、動けないのかは不明だが。
『これよりこの鯨型の機械侵食者に攻撃を開始する。
周りの帝の軍勢は警戒せよ』
『了解!』
動く気配がない鯨型の機械侵食者に対してイエスメデスは侵食能力を発動させて、攻撃する事を決断する。
いつまでもこの鯨型の機械侵食者を野放しにしてはいけないと考えたからである。
侵食能力を発動させたイエスメデスは、自身の纏っている衣服に重なるように薄い羽衣が出現する。
そして偽りの名の象徴である仮面は、右側にYの紋章、それに絡まるようにして薔薇が描かれており、左側には金と銀の蝶が描かれいた。
イエスメデスの背中からは美しい瑠璃色をした蝶々の翼が現れ羽衣が輪を描いて背中に飾られる。
両手には瑠璃色を基調にして所々に金と銀の装飾をあしらった鉄扇子を持っており、その姿はまるでおとぎ話にでも出てくる舞姫のように美しく可憐であった。
『美しい・・・』
『なんだロネス。貴方はイエスメデス様の侵食能力を見るのは初めてか?』
『はい。初めてですルルシエ中尉は初めてではないのですか?』
『1度だけだがな。それにしても美しいのには変わりないが』
『写真という物がありましたよね?あれで撮って周りの連中に配ったらどうですか?』
『残念な事にイエスメデス様はそういうのは嫌いだそうだ。今までも取材等を断っていると聞いている』
『そうなのですか。それはざっ』
ロネスとルルシエが話をしていると、周りから何かが転がり落ちる音が聞こえてくる。
音の出所は鯨型の機械侵食者の上に乗っている瓦礫が落ちた物で、瓦礫が落ちた理由は鯨型の機械侵食者が活動を開始した為であった。
『動き出した!?』
『何故今頃?』
ぼろぼろ瓦礫が剥がれるように落ちていき、ゆっくりとではあるが鯨型の機械侵食者は両ヒレを使って前進していく。
瓦礫にが剥がれ落ちたことによって隠れていた鯨型の機械侵食者の皮膚が露になっていく。
爆発の衝撃なのか墜落した衝撃なのかは不明だが尾ひれの一部が壊され、蒸気を出していた通気孔からは黒煙が出ている。
飛ぶことが不可能なのか浮き上がる気配はない。
(こいつはまさか・・・)
鯨型の機械侵食者の正面にいるイエスメデスは進行方向の右側に移動する。
すると鯨型の機械侵食者も両ヒレを器用に動かしイエスメデスの方向に向かって動き出す。
動きはかなり鈍いが。
(やはり妾に反応しているのか?
そうなるとやはりトトは・・・)
イエスメデスは少しうつむいた後、声を張り上げて周りにはいる帝の軍勢に指示をだす。
『こんなでかい機械侵食者の討伐は初めてですよ』
『私もだよ。第1調査団は私と共に右側のヒレの破壊を結構せよ。
弾丸はありったけ使用しても構わない。他の調査団に遅れをとるなよ』
『了解』
イエスメデスの指示で周りの帝の軍勢は一斉に行動を開始する。
『お呼びでしょうか?』
『此方は土の結界棟の調査に向かったイエスメデスですわ』
『イエスメデス様、如何なされましたか?』
『ワイズマンに連絡をいれて下さいます。新兵器の使用準備を』
『了解いたしました』
帝の軍勢中央本部に電話を終えて無線班から受け取った受話器を元に戻すと、イエスメデスは再び囮となる為に動きはだす。




