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偽りの名AtoZ  作者: 砂白ゆとり
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策略ト攻防ノ一手

土の結界棟より外側・・・とある病院内個室


『チェインがまさか死んでしまったのか?』


炎を纏った鯨型の機械侵食者(イレギュラー)が土の結界棟に向かって墜落して行くのを見てイルミデンテは悲しそうに呟く。

現在イルミデンテがいるのは土の結界棟より奥にある区画、レインネスト商業区画に来ていた。

本来であれば土の結界棟で警備している帝の軍勢によって阻まれるが、チェインが土の結界棟の警備兵を倒した事によって侵入が可能になったのだ。

それに今墜落している鯨型の機械侵食者(イレギュラー)の対処に向かったのか、レインネスト商業区画に常駐している帝の軍勢が目に見えて少なくなっているのも原因だ。


『さて、はて・・・どうしましょうか?』


イルミデンテはチェインが死亡したと過程して少し作戦の変更を計画する。


『んーうぅー』

『うるさいですね。少し黙ってくださいよ』


イルミデンテの他に此処にいるのは両手足を縛られ口も塞がれた女性が椅子に括り付けられている。

それも1人や2人ではなく、8人が今イルミデンテと共に部屋の中にいて、8人全員が椅子に括り付けられている。

しかし今喋ることが可能な女性は3名・・・残りの5人はイルミデンテの実験によってこの世から去って行った者達の亡骸と化してしまったからである。


『っんーたっしゅけぇ・・・っあ。た、助けてください!』

『何ですか。何か言いたそうとしているから話せる様にしたのに助けてくれとは・・・貴女もさっきの女性と同じことを言うのですね』

『た、助けてください!お願いします。私には将来約束をした人がっ』


イルミデンテは喋っている女性の首もとを締め付ける。

首もとを締め付けられた女性は両手足を椅子に括り付けられているので、何も抵抗する事は出来ずに苦しそうにじたばたともがいている。

イルミデンテが気絶するかしないかいう瀬戸際辺りで女性の首もとから手を離すと、女性は今まで不足していた空気を大量に吸い込んで噎せている。


『他の女性方は大人しいのに・・・やはり帝の軍勢は一般人とは違いますね。

馴れているのでしょうか?』


そう言いながらイルミデンテは後ろにいる2人の女性に話しかける。

2人の女性は両方とも帝の軍勢の制服を着ており肩にはそれぞれの階級を表している。

1人は嵐島慧香27歳独身、階級は伍長であり所属部署は帝の軍勢中央本部・連絡班に所属している。今回は非番でレインネスト商業区画に買い物に行っている最中に今回の事件がおき、それを確認する為に戻っているところをイルミデンテに捕まってしまったのだ。

そして同じくイルミデンテに捕まってしまったのはこの病院に検査をするために来ていた女性で、リリネット・J・ゼイノーンと言う名であり、リュティ・J・ゼイノーンの母親にあたる。

年齢は47歳で階級は少尉、所属は帝の軍勢中央本部・第5部隊の副隊長を勤めている。

不運にもイルミデンテが侵入に成功した病院にて出会してしまったが為に捕らえられてしまったのだ。


『何も話してはくれないのですね。他の女性があんな姿になったのに強情ですこと』


嵐島とゼイノーンはイルミデンテの問い掛けに頑なに黙秘するだけで、一向に口を割る気配が感じられない2人に対してイルミデンテは少し不機嫌になっていた。

他の女性達とは違い、帝の軍勢である嵐島とゼイノーンは口を塞がれてはおらず喋れる状況であるにも関わらずに何も喋ろうとしないかのは、イクサへの忠誠心なのか、それとも話してしまえば直ぐに用積みとなり先ほどの女性と同じ目にあうと思ったからかも知れない。


『たすけて・・・あぁ。神様・・・』

『少し騒がしいですよイルミデンテさん。外は騒がしいといってもまだ院内には他の患者さんもいるのですからお静かに願います』


イルミデンテの手から解放された女性は瞳に涙を浮かべながら俯き、嘆くように独り言を溢していると、そこに扉を開けて入ってくる人物がいた。

髪は白髪で薄く、顔は温厚そうな老人であり、この病院の名前が刺繍している白衣を身に纏っている。

そして首から下げているカードには医院長と書かれており、下には名前が書かれている。


『すみません八治崎医院長。後3人なのでもう暫くかかるつもりですので』

『あまり時間はありませんよ。それにどうやら土の結界棟が落ちようです。

今外では大騒ぎになっていているのでこれから忙しくなるはずですので、また後日来ますがその時はちゃんと準備は出来ているように頼みますよ』

『えぇ、もちろんです。八治崎医院長もお大事に。帝の軍勢に見つかると大変ですので』


八治崎と名乗る男はイルミデンテに外の状況を報告をし終えると部屋を後にする。

どうやらここの病院の医院長とイルミデンテは結託しているらしく、その事は帝の軍勢や、(コード)りの(ネーム)には知られていないようだ。


(こいつの名前はイルミデンテと言うのか。しかし、まぁ・・・偽名と言うのあるな)


嵐島は心の中で脱出した後の事を考えていると、何やら落ち着かない様子のゼイノーンを目にする。

ゼイノーンの額からは冷や汗なのか汗が流れていて、顔色も先ほどより青白くなっており、何処かそわそわしている感じだ。


(ゼイノーン少尉?どうしたのだ先ほどから妙に落ち着かない様子だが)


『ゼイノーン少尉どうしましたか?』

『ひ、い・・・あ、いえ、その大丈夫です』


先ほどとは様子が違う事をイルミデンテに気付かれてしまったゼイノーンは質問をされてしまう。

咄嗟に大丈夫だとは答えたが、どうも大丈夫は雰囲気はなく、明らかに動揺していて先ほどまで黙秘していたイルミデンテの問い掛けに答えてしまったのも動揺している証拠である。


『おやおや?やっと私と話してくれるようになったのですね。有難いことです。

それでゼイノーン少尉どうしましたか?何か気になる点でも?』

『あ、あの・・・と、トイレに行かせてくださいませんか?』

『あぁ・・・なるほどトイレですか。

大丈夫ですよ。別に此処で用を足しても構いません』

『え・・・あ、あの』

『あ、あんたふざけているの!?女性に対してかなり失礼ね!』


イルミデンテの発言に先ほど首を締め付けるられた女性が食い付く。

当然である。

イルミデンテの発言は成人女性に対してかなり失礼で、常識外れの事だからである。捕虜や囚人でさえ許されている行為をイルミデンテは否定しているのだから。

困惑してるゼイノーンを他所に、何も問題はないとでも言うようにイルミデンテは語り始める。

未来から来た(コード)りの(ネーム)と、元々此処に住んでいる人間との違いを・・・


『失礼?何を貴女は言っているのですか?別に可笑しなことはないでしょうに』

『はぁ!?ちょっとふざけてないでよ。そんな犬や猫じゃないんだから』


女性の問い掛けにイルミデンテは高笑いをし始める。

その笑い声はどこか下劣で見下しているような笑い方だ。


『な、何が可笑しいのよ』

『いや・・・すみませんね。私と貴女達では色々と違うのですよ。まぁ・・・例えるなら貴女の言った通り我々未来から来た者と、元々此処に住んでいた者では人と家畜程度の差はありますね』

『な、何を言っているの?あんた達が未来から来たのは知っているけどイクサ様は私達を助ける為に戦ってくれているし、他の(コード)りの(ネーム)に会ったこともあるけど私達と普通に話してくれたわよ』

『あぁ・・・そう言えばイクサはヴィゼイアスと同じように貴女達を人間として見ていましたね。

なんと愚かなことか』

『な!?イクサ様はあんたよりイケメンで超優しくてとっても好い人なんだから』


イルミデンテと女性との会話の最中が好機と判断したゼイノーンは、密かに隠し持っていたナイフを使って縄を斬ろうと試みる。

その様に気が付いた嵐島はイルミデンテの注意をゼイノーンから引き離そうと、今まで閉じていた口を開く。


『私も同感だよ。イクサ様はあんたとは違いとってもいい人さ』

『おや?貴女もやっと話してくれたのですね。

しかし・・・お話の内容が下らないですね。もっと有意義な事を喋りましょうよ』

『例えば?』

『そうですね・・・今から逃げようとしている彼女がどうなるかとかはどうでしょうか?』


そう言い終えるや否やイルミデンテはその身体からは似合わないくらい素早く移動し、ゼイノーンの椅子を蹴り飛ばす。

蹴り飛ばされたゼイノーンは床に転がり隠し持っていたナイフがイルミデンテの視界に入る。それを取り上げるとイルミデンテはゼイノーン手の甲に突き刺す。

悲鳴こそは上げなかったが瞳からは涙を溢し、痛そうにしているゼイノーンを他所にイルミデンテは嵐島に質問の答えを聞いてくる。

しかし、嵐島は答える事が出来ずにいた。

ゼイノーンがこれからあの床に転がっている女性の様になるのではないかと思ったからだ。


『ちょっとあんたまさか1人で逃げるつもりだったって言うの?

貴女の仲間や私を見棄てて』


女性の問い掛けににゼイノーンは答える事が出来ず、嵐島も緊張しているのかうつむいたままである。


『帝の軍勢といえども仕方ない事もあるのですよ。

しかし・・・』


イルミデンテは嵐島に質問をするのを止めて女性の方に近づいていく。


『ちょっ!?こっち来ないでよ』


イルミデンテは女性に近づくと近くに置いてあるメスを使って拘束している縄を斬り女性を解放する。


『な・・・どういうつもりなのですか?』


突然解放に言葉使いがおかしくなっているのは気にせずにイルミデンテは話しを進める。

話の内容は帝の軍勢であるゼイノーンと嵐島にとって一般人である彼女を使用すれば何かしらの情報が得られると感じていたが、どうやら見込み違いだったらしく人質の価値のない者には用はないということ。

もう1つはイルミデンテのやっていた実験は既に最初の2.3人で答えは出ており、別に彼女で実験する価値はないと言うことだ。


『だ、だとしてもどうして解放してくれたのですか?』

『貴女にはもう価値が無いからですよ。もう隙にしてくださって結構です』


そう言うとイルミデンテは興味無さそうにして、未だに踞っているゼイノーンに近づき手元に残っている薬品をゼイノーンの口元にあて無理矢理飲ませる。

先ほどまで床に倒れている女性達に服用させた薬品とは明らかに違い、倒れている女性達が飲まされたのは半透明な濁った液体なのに対して、ゼイノーンが飲まされた薬品は墨の様にどす黒く、一見ではイカスミかと見間違える程の黒い薬品だった。


『あ・・・うっ・・・ぶぇぇぇぇ』

『ひっ!?なっ何をしたのですか?』

『今にわかりますよ』


黒色の薬品を飲まされたゼイノーンは口から吐血し始める。しかしその血液は健康的な赤色をしてはおらず、赤黒い色をした血液で吐き出す量も尋常ではなかった。


『あ・・・だ、ズけで』


身体中の血液を出し尽くしてしまったのかゼイノーンの身体は干からびだ様になり絶命してしまう。

その様に満足したのかイルミデンテは懐から小さな黒い石を取り出すと、ゼイノーンの吐き出した血溜まりに向かって投げいれる。

すると、床に飛び散っていた血液が1ヶ所に集まり半固形状になりその場で固まる。

それを見ていた女性は腰を抜かしたのかその場から動けなくなり、ゼイノーンが絶命したと悟った嵐島はこれから自分に降りかかる惨状に絶望していた。


(お母さん、お父さんごめんなさい・・・ゼイノーン少尉私ももう少しでそちらに行くようです)


嵐島は心の中で母と父に別れを告げているとイルミデンテが近づてくる。手元には赤黒い色のした液体の入った注射器を持ったまま。


『これならば上手くいくでしょう』


そう言うとイルミデンテは嵐島に注射し始める。

注射さてから数秒後・・・嵐島は強烈な睡魔に襲われてしまいその場に眠りこんでしまった。




『嵐島さん。起きてください』


自分を呼ぶ声と身体を揺すられたことによって嵐島は夢の中から帰ってくる。


『大分疲れていらっしゃたのですね。元気にはなりましたか?』


視界がはっきりしてきて最初に目にしたのはナース服を来た看護婦であり、周りはカーテンで仕切られたてはいるが複数の人の気配はする部屋の中に嵐島はベッドで寝ていた。

今までの事は夢だったのか・・・それともイルミデンテに注射された薬の影響なのかは不明だが、嵐島は身体を起こして外に出ようとする。


『体調はよくなったからと言っても、直ぐに動いては駄目ですよ』

『あ、あの・・・そ、外は大丈夫なのですか?』

『どういう事ですか?』


嵐島は今までに身に起きたことを看護婦に全て話したが、八治崎医院長が言っていた土の結界棟の崩壊はなく、それに八治崎医院長は2日程前に出張に出掛けていて現在は病院内にはいないとのこと。

そして看護婦と一緒に屋上に上がって確認したが土の結界棟は崩壊しておらず、未だ健在であり異常はみられないことを確認した。


『そう言えば嵐島さんは、この後帝の軍勢中央本部へと向かわれるのですよね?』

『え・・・そうでしたっけ?』

『言ってましたよ。私、他の帝の軍勢さんと話しているのを聞いていたしたが時間は大丈夫なのですか?』

『時間?』

『はい。午後から向かうと言っていたの様でしたが今は2時を回ったばかりですよ』


嵐島は考え込む・・・しかし数秒考えた後で答えは決まり行動を開始する。

あれが正夢なのかそれともイルミデンテの薬品の作用なのかは分からないが、この世界において1番頼りになる人物に会えば答えたがわかるかも知れないと思ったからである。

看護婦に別れを告げていると嵐島は帝の軍勢中央本部へと向かっていった。



『これが例の薬です』

『おぉ!?これが!しかしこの薬の作用はどれくらいかね?』

『およそ72時程、即効性を重視しましたのでこれくらいしか効果はありませんよ』

『充分ですよ。イルミデンテさんやはりあんたと手を組んで正解でした。

これで私は・・・』

『えぇ。八治崎医院長の思い通りに出来ますよ』


イルミデンテは八治崎医院を後にすると土の結界棟のある方向を見つめている。


『され・・・これで餌の準備出来ました。どれくらの引っ掛かるかは不明ですが予備もありますしきっと上手く行くでしょう』


イルミデンテは再び人混みの中に紛れるようにレインネスト商業区画に歩いていく。

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