鯨姫ノ歌
金の結界棟・調査班
『何だ・・・あれは!?』
『飛行船なのか?』
土の結界棟に向かう途中に金の結界棟調査班が見たのは巨大な空を飛ぶ船・・・ではなく空を飛ぶ鯨である。
しかしこの鯨の身体の大部分が機械侵食者化している。だがそれだけではこの鯨が空を飛ぶ事が出来ないのは明らかである。
『・・・!?待て!あの飛行船の先端を見てくれ』
『な!?あ、あれは瞳なのか?』
『し、しかし班長どのあ、あれを見てくださいよ。け、煙が上がっているのですから機械ではないでしょうか?』
飛行船もとい鯨型の機械侵食者に瞳があることに気がついた金の結界棟・調査班長大野木修影は、驚愕し全身から冷や汗が出ていた。
調査班の団員であるリュティ・J・ゼイノーンが気が付いた水蒸気の様な煙の正体が機械の蒸気かのか、それとも生物が呼吸するときに出る白い息なのかは不明だが身体の四方から煙が確認できる。
『どうします?し、信号弾は何色を使用すればよいのでしょうか?』
『ゼイノーン軍曹、少し待ってくれ。ローウィー小尉引き続きあの生物を観察していてくれ』
『大野木大尉、あ、あれは生物なのでようか?』
『ゼイノーン軍曹、大野木大尉の邪魔をしてはならない私について来なさい』
『り、了解です』
『少しでもあの生物の事を観察して大野木大尉に報告するのだ。きっと大野木大尉ならばあの生物が何か特定してくれる筈だ。なんせ我々の2倍近く生きているのだから』
『あれ!?ローウィー小尉って30前半だと思ってましたが・・・』
『・・・私はまだ27歳だ。お前とは6歳しか違わない筈だが?』
ゼイノーン軍曹は帝の軍勢に所属してから約3年の年が経過して21歳になったばかりである。新たに所属先が変わり大野木大尉の元でローウィー小尉と共に任務を開始したのが今から丁度半月程前、今までローウィー小尉に年齢の事を聞いたことはなかったが顔をみる限り30歳相応であり、何より喋り方が年寄りみたいだったからである。
(だったら年寄りみたいにしゃべっらないでほしいのですが・・・)
ゼイノーン軍曹はそんな事を心の中で思いながら先を行くローウィー小尉を見ていた。
『これくらいでいいだろう・・・ゼイノーン軍曹双眼鏡で確認を』
『了解です』
ゼイノーン軍曹とローウィー小尉をあの飛行船の様な生物の観察の任務を言い放った後、大野木大尉は気になる事があり考え事をしていた。
(ローウィー小尉が気が付いたあの瞳、そしてゼイノーン軍曹が指摘した白い煙・・・あの瞳は造り物で無いことは確かであろう。しかし問題はあれの正体がなんなのかなのだが、『あの煙を見てください』煙・・・それ以前に何故ゼイノーン軍曹は煙どだと気が付いたのだ?)
ゼイノーン・ローウィー側・・・
『確かにお前が言っていた通りあれは機械なのかもな・・・あれを視てくれ。
あの翼部分だ。鳥型の機械侵食者に共通している羽が見当たらない』
ローウィー小尉が指摘している様にあの飛行船ような生物には羽毛らし物が見当たらず、表面に光沢の様なものが見てとれる。
あの飛行船の様な生物は土の結界棟付近で旋回して飛んでいるが先程からは羽ばたく様子はない。それに鳥型の機械侵食者が持っている筈の鉤爪状の足も見当たらない。
その事をあわせてローウィー小尉はあの飛行船の様な生物を人工物だと過程した。
しかしローウィー小尉とは逆にゼイノーン軍曹は困惑していた・・・
(あれって鯨なの・・・?でも昔絵本で読んだ鯨は空を飛ばなかった筈なのに。
でも・・・あの尾びれの形は間違いなく鯨とかの形)
『ローウィー小尉出来ればもう少し近づいてみたいのですが』
『何か気になる事があるというのか?』
『はい・・・あの生物はもしかしたら鯨かもしれないのです』
『鯨だと?あれは海に住んでいる生物であろう。なぜ空にいるのだ?』
ゼイノーンが鯨の特長をあげて話始める。
ゼイノーンが言っていた通りにあの生物は鯨の特長と一致している。ローウィー小尉はそういうことには詳しくはないが、どうもゼイノーン軍曹が嘘や冗談で言っている雰囲気はないようだ。
ゼイノーン軍曹とローウィー小尉が真面目に話を聞いている最中で東側から信号弾が撃たれるのを目にする。
『信号弾・・・あの色と方角は火の結界棟調査班か。ローウィー小尉こちらも信号弾を』
ローウィー小尉がゼイノーン軍曹に信号弾を撃たせようと合図を送るが、ゼイノーン軍曹はあの生物を見ているだけである。
『ゼイノーンぐ・・・』
ゼイノーン軍曹がローウィー小尉の口を慌てて抑えて物影に隠れる様に移動する。
『すみませんローウィー小尉。しかしもし私の考えが正しいのであれば・・・』
そう言っていると鯨型の機械侵食者は土の結界棟で旋回しているのを止め、金の結界棟調査班が信号弾を撃った方向に向きを変えて動き出す。
その動きはゆっくりではあるが胸ヒレ、尾びれを動かす姿は完璧に鯨である。空を飛んではいるが・・・
『あれは間違いなくマッコウクジラなのですが・・・そ、その攻撃方法として超音波による物があるのです』
『私は鯨には詳しくはないがたかが超音波であろう?大丈夫なのではないのか?』
『大有りですよローウィー小尉!マッコウクジラの超音波は他の生物の超音波に比べてとても危険で、もし喰らってしまった場合は・・・』
『場合は?』
『最悪死にます。良くて気絶らしいです』
『何だと!?ならば彼方の調査班は・・・』
『超音波の餌食になってしまった可能性があります』
『なればその事を大野木大尉に知らせなければ』
そうローウィー小尉が喋っているといきなり視界が暗くなる。
そして遠くから近づいてくる鯨型の機械侵食者が・・・
少し前の金の結界棟付近
『なんじゃあれは?』
火の結界棟に向かったと思っていた鯨型の機械侵食者が何をしたのかは不明だが、急に方向展開をしてトトのいる金の結界棟に向かって接近してくる。
『トト様!』
『おぉ大野木大尉どうしたのだ?』
鯨型の機械侵食者がこちらに到着するより早く大野木が無線を使って連絡をしてくる。
今回の作戦は敵である神化の名にジャックされて作戦がばれることがあったので、本来は使用しない作戦だったのだが、大野木はその命令を無視して無線を使用したことになる。
『緊急事態です・・・あの空に浮かんでいる生物が見えますか?』
『あぁ見えとるぞ。こちらに近づいてきておるわい』
『あれは神化の名によって改造された機械侵食者で鯨型らしいです。
それとあの鯨型の機械侵食者はマッコウクジラの様で超音波攻撃をしてきます。正面では不利です』
こちらに近づいて来ている鯨型の機械侵食者の正体がマッコウクジラであり、超音波攻撃が可能性であるとわかるとトトは急いで反転して後退する。
目的は近場の飛行場に行き戦闘機を確保する為である。本来数の少ない戦闘機は偵察様に使用しており、偽りの名が使用することはないが今回は特別であるが為に使用するつもりだ。
『しかしよく気が付いたのう』
『・・・私の部下のゼイノーン軍曹とローウィー小尉が発見しました。しかし彼らは多分やられたと思います』
『・・・そうか。素晴らしい部下を持ったな』
『はい。彼らは自分達が狙われるのを知っていて私に無線を繋ぎ連絡してくれました』
『大野木大尉・・・』
『私の事は気にせずに。もう老い先短い人生ですので。
トト様約束してください。我々の仇を!』
『約束する!』
大野木大尉との最後の無線を終えトトは飛行場へと急ぐ。
近づいてきた鯨型の機械侵食者に対してなにも出来ない大野木はただ呆然と立ち尽くすしかなかった・・・
帝の軍勢・軍事飛行場
『おや?あれは・・・偽りの名T トト様じゃないか。
何故こちらに近づいて来ているのだ?』
軍事飛行場で門番をしている帝の軍勢 街木竜乃介は近づいて来たトトに対して不信感を抱いていた。
偽りの名の連中が飛行場を使うことは希で、最近ではイクサが最新型を使用しただけでほとんど使用していなかったからである。
『お疲れ様ですトト様!本日はどのようなご用件で?』
『すまないがここにある戦闘機の中で1番速いのを使わせて貰うぞ。それと1番腕の良いパイロットもじゃ』
『了解です。しかしトト様いったいどうなさったのですか?』
トトは戦闘機の保管場所に案内してもらっている間にこれまでの事を説明し終え、今飛行場に勤務している中で1番腕の良いパイロットを紹介してもらい飛行場を後にする。
土の結界棟上空付近
『トト様あれですか?』
『そうじゃ。儂はこれからあの鯨型の機械侵食者に対して上空より奇襲をかける。
お主の腕ならば儂を爆弾の様に投下せるのも容易いのであろう?』
『大丈夫ですよ任せてください』
トトともう1人の人物は狭い戦闘機の中で鯨型の機械侵食者に対しての奇襲作戦を再確認している。
(・・・と言っても普通の人間を爆弾の様には投下したことはないのだけどね。しかしトト様も無茶をしますね爆弾と同時に特攻を仕掛けるなどと)
『それではトト様御武運を』
そう言うと戦闘機のパイロットは爆弾を投下させそれに続いてトトも落下する。
目標はもちろん鯨型の機械侵食者だ。




