創ラレシ天使
『何だかあれは!?』
『どうした?何かあったのか?』
『あれを見てくれ』
土の結界棟の警備をしていた隊員が声をあらげて望遠鏡から離れ、もう1人の隊員に覗かせる。
もう1人の隊員も望遠鏡を覗きこんだ瞬間に驚きの声をあげる。
その隊員達が見ていたのは巨大な雲である。しかも此方に向かって近づいてくる。
『何だ?ただの雲じゃないか』
『違うんだよ。あの中に何かいるんだよ』
『どうゆう事だ?』
どうやら最初にあの雲を見つけた隊員が言うには此方に近づいて来ている雲の中に巨大な影を見たようなのだ。
しかし今は近づいて来ている雲の上に更に雲が重なってしまった為に雲全体が薄暗く、望遠鏡で覗いて見てもわからなくなってしまったようだ。
しかし・・・雲が意図的に移動することは実際ありえるのだろうか。
『昨日飲み過ぎたんじゃねぇのか?顔洗ってこいよ』
『昨日は飲んでねぇよ!まさか信じてないのか?』
『確かにあの雲はこっちに近づいきているけど考えて過ぎじゃねぇの?あの中に機械侵食者が居るとは思えねぇなぁ』
機械侵食者と言う者は本来生物に寄生しその姿、皮膚や筋肉、骨格等を金属質の物質に変えられた者の事を指している。機械侵食者化に伴い食事量や狂暴性が増大した事によって巨大化する傾向にある。
しかしながら機械侵食者化してもその行動自体にはあまり変化が現れず、蟻型の機械侵食者が土の中で暮らしていることや、鳥型の機械侵食者が空を飛んでいることから推測できる。
突然鳥が土の中で暮らすようになったり、蟻等の昆虫が水の中で暮らしているという報告は今のところ挙げられてはいない。
なので現在こちらに近づいて来ている雲の中に機械侵食者が居るという事は普通に考えればありえないことで、鳥型の機械侵食者がわざわざ雲の中に入ろうとする理由がないからである。
『いや・・・もしかしたら神化の名とか言う連中の船かも知れない』
『まさか・・・だとしたら不味いじゃねぇの?早く四季中将に連絡しないと』
『確かに俺が連絡してくる。お前は引き続き見張っていてくれ』
『了解だ』
そう言うと見張りをしていた1人が四季に連絡しようと結界棟を降りる。
『どうした!?何かあったのか?』
結界棟の頂上で警備にしているのは2名と決まってはいるが、他にも結界棟の内部を警備している兵は複数いてその内の1人が上からきた警備兵に話しかける。
交替の時間にはまだ早く、機械侵食者を知らせる警報は鳴り響いてはいないので今降りてき警備兵に疑問をもったからだ。
上から降りてきた警備兵は事情を話すとすんなり通してくれて、帝の軍勢中央本部への連絡をいれる。
『分かりました。それでは現在対処可能な偽りの名を向かわせます』
『了解しました。それでは我々は引き続き警備を行います』
『頼みますよ』
帝の軍勢中央本部への連絡をいれて帰る途中・・・奇妙な音が聞こえてくる。
そう何か生物の鳴き声に似た音が・・・その後意識が途絶えたのは数秒後の事である。
帝の軍勢中央本部各結界棟連絡室
『・・・?あれ?』
『どうした何かあったのか?』
『いや今四季中将に連絡を入れた結界棟からの連絡が途絶えたんですよ』
『他の結界棟からの連絡はできまっせ』
『こちらも異常無しであります』
『機材の故障でしょうか?』
数分前に四季中将へと連絡を要求し、報告を完了したはずの土の結界棟の方からの連絡が途絶えたのである。
各結界棟には通常無線の代わりに常時、帝の軍勢中央本部各結界棟連絡室に信号が送られて来ており通常であれば途絶える事はない。
この信号は電力が確保出来ない場合であっても予備電力に切り替わり、予備電力に切り替わった事を知らせる信号が送られてくる筈なのだ。
しかし今現在はその信号が来てはおらず、予備電力に切り替わった事を知らせる信号に変わってはいない。
何故こうなったのか土の結界棟に連絡を入れようとしたのだが連絡がつかない。
他の結界棟には連絡がつくのに土の結界棟にだけ連絡がつかない状態になってしまっているのだ。機械の故障を疑って診たのだがどの機材も正常に作動しており故障は見当たらない。
『不味いですね。土の結界棟からの連絡が完全に途絶してしまいましたよ』
『至急四季中将に連絡を。それと近くにいる帝の軍勢に目視での確認を行わさせてます』
『了解です』
帝の軍勢中央本部司令室
『こちら司令室。連絡室どうしましたか?』
『こちら連絡室。土の結界棟連絡班班長左京三貴夫です。
四季中将閣下土の結界棟から連絡が途絶えました。例の信号も途絶え、こちらからの応答にも反応はありません。
機材の故障も見られなかったので現在近く帝の軍勢を使用しての目視確認を行っております』
『分かりま・・・失礼少し待ってください』
『大丈夫だ葵。私がでよう』
『な、イクサ様しかし』
『問題ないさ』
帝の軍勢中央本部で次の作戦の準備をしていた四季の元に連絡室からの連絡がくる。
内容は土の結界棟からの連絡が途絶え目視によく確認を行っているという事をなのだが、別の受話器が鳴り響く。この受話器は各結界棟による特殊電波を管理している区画からのれ緊急連絡用の受話器であり、この受話器が鳴り響いているということはどこかの結界棟の特殊電波に異常が招じたという事を表すことになる。
『こちらイクサどうしたのだ?』
『え?あっ・・・イクサ様、緊急事態です。土の結界棟で発信している筈の特殊電波が途絶えています。
このままでは機械侵食者が区画より進行してくる可能性があります』
『何!?そちらもか!?』
『どうなせれましたかイクサ様?』
『いや・・・こちらで対処する。そちらは引き続き他の結界棟に異常がないか確認をしてくれ』
『了解です』
イクサと葵はすぐさま土の結界棟に派遣する部隊を編成させ出撃させる。
緊急事態の為に出撃する部隊は土の結界棟から近い火の結界棟と、金の結界棟から数名である。
出撃する前にわかった事なのだが、土の結界棟付近から約半径5kmの区画内にいる帝の軍勢全員に連絡がつかいない異常事態になっている。
その為に非常に不本意ではあるが偽りの名T トトを向かわせる事を決定する。
『しかし一体どうしたのだ・・・まさか神化の名が攻めて来たというのか』
『ですがイクサ様。いくら神化の名がイクサ様と同じ技術を使用したとしても、あの結界棟の機能を停止させることは可能なのでしょうか?』
『それは私にも分からないが疑問はもう1つあるのだよ。いくら我らの技術を使用したとしても土の結界棟に常駐警報している約1400名帝の軍勢、その付近を警備している約800人の帝の軍勢の無線システムを一気に無力化することは可能なのかということだ』
『イクサ様達の技術を使っても不可能なのですか?』
『爆撃等で殲滅する事は可能なのだが土の結界棟付近からは爆撃音や、爆炎を確認したという報告は確認されていないのであろう?』
『はい。確認させれおりません』
『葵よ場合によっては私、もしくはイエスメデスが出撃する可能性があることをイエスメデスに連絡しておいてくれ』
『分かりました』
四季がトトに土の結界棟に行くことを命じた後疑問に思って事をイクサに聞いてみる。
しかしながらイクサの知識には半径5km以上に疎らに展開している2000人に以上の人間の無線システムを、全て同時に無力化する様な技術はないということ。
現在こちら側にいる偽りの名はイクサ、イルミデンテ、トトの3名。侵食地にて戦闘を開始した偽りの名はジェスパー、シルベルト、ランテンの3名。そしてアークコード内において戦闘を開始したと思われるオメガ、パルパトの2名となっている。
いくら神化の名を滅ぼす為とはいっても10名以上の偽りの名を、失ってしまったのはかなりの痛手である。
だがそれも仕方ない事なのだ・・・敵は全て排除する。
そうしなければ平和という物は勝ち取れないのだ。どんな手段を使ってもどんなに犠牲をはらっても彼方の敵意が向けてくり限り争いは無くならないのだから。
数分後・・・帝の軍勢中央本部情報室
『四季中将から連絡だ。土の結界棟に送り込むために火と金の結界棟から数名調査に送れとの事だ』
『了解です』
『それと土の結界棟にもう1人、偽りの名T トト様も出撃すると言う事だから調査する連中にその事を知らせておいてくれ』
四季からの命令を受けて火、金の結界棟から調査をする為の部隊に連絡をいれる。
現在土の結界棟がどのような状況になっているかは不明だが、調査に向かう帝の軍勢には標準装備の他に信号弾を撃てる銃を装備させての出撃するように四季から命じられている。
はっきり言ってしまえば土の結界棟に調査に行く連絡の装備は機械侵食者と戦闘をする為の装備と何も変わらず、いざ緊急出撃となると多少時間がかかってしまうようだ。
彼らが土の結界棟にたどり着く頃には一体どうなっているのか・・・それがわかったのは今から数分後の事である。
数分前・・・侵食地イルミデンテ側
『どうやら我らの天使は天罰を執行なされたようですね』
イルミデンテは土の結界棟に向かって行った雲を見つめながら小休止中である。
『さて・・・イクサ貴方はどのよう対処しますかね』
イルミデンテは不気味な微笑みと共に再び歩み始める。目的地はもちろん土の結界棟である。




