偽物ノ結晶
『奴らがあの結界棟から出てくるのも時間の問題ですね』
ジェスパーが結界棟の中央本部に向かっているところを目撃していたので、イルミデンテは迎え撃つ為に次の作戦をユセに連絡をいれたところだ。
そしてそれに付き従う形でチェインは行動しているのだが、まるで自分の意識は感じられない・・・
『こっちの方向だよね?』
『あぁ、大丈夫だね』
イルミデンテのいる方向に向かって空を飛んでいるのジェスパーと、そしてジェスパーに抱えてもらって空を飛行しているのは偽りの名S シルベルトである。
空を飛ぶことが可能なジェスパー、そして遠距離攻撃と捜索が可能なシルベルトが選ばれたのだ。
『前方約2km地点から足音が聞こえてくるよ』
『了解!覚悟決めておいてねシルベルト』
『問題ないよジェスパー』
ジェスパーとシルベルトはイルミデンテ、チェインと接触し戦闘を始める。
空中での移動と遠距離攻撃という組み合わせは非常に良いもので、遠距離持ちであるイルミデンテの対空砲しか飛んでこない状況だ。
チェインはイルミデンテの指示によって近くの物陰に隠れてはいるのでシルベルトに持っているガトリング銃で蜂の巣にすることは出来るのだが、イルミデンテの対空砲も威力が異常で一発でも喰らってしまった場合、一撃で撃ち殺されてしまう可能性があるので狙ってはいない。場合にもよるが・・・
『中々当たらないですね』
イルミデンテは物陰に隠れながら狙撃してるがやはり空を飛んでいるジェスパーに狙い撃ちすることは至難の技である。
しかし先程からジェスパーは避ける事に専念しているようで、狙撃の頻度は疎らでとても狙っている様には思えない。
『ねぇ・・・まだなの?』
『まだ聞こえない・・・もう少しの筈だけど』
イルミデンテに聞こえないくらい小さな声で話をしている。
どうやら何かを待っているようだ。
ジェスパーとシルベルトが時間稼ぎに様に戦っていると、シルベルトが何やら奇妙な音を耳にする。
その音は現在上空にいるジェスパー達より遥か上空から・・・
『ジェスパー何か空から音が聞こえてくる!』
『やはりシルベルトには気がつかれしまいますか。その耳は厄介ですね』
そう言うとイルミデンテは侵食結晶を取り出すと、持っているレールガンに取り付けるとジェスパー達に向かって狙撃を開始する。
しかしそのレールガンで打ち出した弾が先程の弾丸とは違い拡散して飛んでくる。
『シルベルト!?』
『だ、大丈夫?』
『私は大丈夫・・・でもシルベルト翼が』
『一端逃げよう』
拡散した弾丸がジェスパーの翼に直撃してしまったようで高度を保つ事に支障が出でしまったのだ。
よれよれの翼で物陰に逃げ込んだジェスパー達に何故かイルミデンテは追撃せずに先に進んでいく。
『悪いですね。貴方達が時間稼ぎするのは先程からわかっていたのですよ、なので私も時間稼ぎをさせてもらいました。
そのお礼に見逃してあげますよ。頭さえ潰せば後はどうとなりますからね』
『くそ!行かせるか』
シルベルトが物陰から身を乗り出して迎え撃とうとするがチェインに攻撃されて持っているガトリングガンの砲身がひしゃげ、もう一度シルベルトに攻撃しようとするがジェスパーがシルベルトを担いで上空に逃げた事で回避する事に成功した。
『私は見逃してますがチェインは見逃してくれないようですね』
チェインからの追撃はないようだ。どうやら結界棟の方に行ったイルミデンテの後を追って行ったようで、ジェスパーとシルベルトは難を逃れる事に成功した。
『すまないジェスパー。その翼は・・・』
『そうだね。この翼じゃあ悪いけど結界棟までは飛んでいけないよ』
安全な場所を見つけたジェスパーはボロボロになった翼をシルベルトに治療してもらっているところだ。
イルミデンテの弾丸を浴びた翼を酷似してしまった為に無理をすれば飛ぶ事は可能だが、結界棟、帝の軍勢中央本部にいる偽りの名達に連絡をいれるのが不可能になってしまった。
『ジェスパーの傷が塞がるまで私が守るよ』
『良いのイクサに知らせなくて?何か空から音が聞こえてきたんでしょ?』
『あの音の正体はわからないけど、ジェスパーを置いて行けないよ』
『ありがとう・・・それで音の正体って何かわかったの?』
シルベルトが聞いた音の正体というのは何か生き物のような鳴き声らしいのだが、今までに聞いたことのないような鳴き声らしい・・・そして例えるのが難しいと言っていた。
あの鳴き声の生物が結界棟を破壊したのはそれから数時間後・・・
数時間前の帝に軍勢中央本部
『それでディザイアス達がスライム状の物質と接触し、イルミデンテ達と戦闘を開始したと言うことですね』
『そうだね。多分あの様子ならイクサが言っていた通りだよ』
『これでまた偽りの名が減ってしまったね』
『あいつらを偽りの名だとは思いたくはないのぉ』
『皆さん談笑も緊張を解すのに良いのですが、ほどほどにして欲しいですね。シルベルトさんは準備出来ましたか?』
『もう準備は出来てる。ジェスパー行こう』
ジェスパーとシルベルトは先に中央本部を出ていく。
そして後を追うようにランテンも出ていく。
『それでイエスメデス様。ランテン様は大丈夫なのですか?』
『まぁ・・・大丈夫であろう。あの子には守らせるよりも攻め込ませた方が合っているのじゃから』
その場に残っている葵は先に行かせたランテンの事が気になるらしく不安なようだ。
イエスメデスが言うにはランテンは守りよりも攻めるのがよいらし、しかしのランテンは偽りの名よりも戦闘をしていないのでやはり不安な事には代わりはないが。
『それよりもワイズマン。イエスメデス用の例のアレは出来上がったのかい?』
『問題ないね。しかしイクサ我々にこのような秘密があるなんて知りませんでしたよ』
『しかしこれは妾が使用してよいのか?』
『お前さんが適任だよ。グリーぜスは亡くなってしまったい、トトには適正がない。最初の使途は残りはイエスメデスお前しかいないからね』
ワイズマンはイエスメデスにペンダントロケットを渡す。
ロケットに中には緑色の結晶が入っていてMの紋章が刻まれている。
『それでは私はまた研究に戻りますよ』
『わかりました。引き続き研究を頼みますよ』
ワイズマンが出ていき、イエスメデスもイクサ達に外に出ると言い残しこの場を後にする。この場に残っているのは次の作戦の最終確認をしている葵と、イクサが神化の名と遭遇した場所を見つめていた。
廃都アークコード神化の名地下基地
『こ、これはどうゆうことなの・・・』
イルミデンテと別れたユセは新たな武器を開発する為に数時間程ネクロートのいる区画を離れただけだった・・・そう此処には神化の名であるイルミデンテ、ネクロート、ユセの傷を癒す為の装置や機器が置かれている筈だった。
しかし今ユセが戻って来るとそこにはネクロートの姿は見当たらず、何故か周りには乱雑に投げ捨てられた機器が散らばっている現状だ。
『まさかネクロートがやったの?まだ侵食細胞は回復しきってはいないはずなのにどうして・・・』
ユセが周りの機器をかぎ分けながらネクロートのいた場所を目指すが、やはり姿は見当たらない。
どうやって動いているのかは不明だが、動けない筈のネクロートが此処からいなくなったということは何らかの手段を使って動ける状況にしたらしい。
『とりあえずネクロートを探しましょう』
そういうとユセはエンラを呼び出そうとするが応答がない。
普段であれば神化の名であるユセの命令に従いユセの元に駆けつける筈なのだが、何故応答がないのかその事を考えている最中に警報が鳴り響く。
ユセが警報の鳴っている箇所を調べると、警報が鳴っている区画は最重要区画にあたるアークコードの最深部・・・通称Vの結晶と言われている区画である。
Vの結晶は神化の名にとって最重要であるため警報区画がVの結晶の区画だとわかると、ユセはこの場所から飛び出して向かって行く。
『不味いです。不味いです。あの区画で何かあったら私がイルミデンテに叱られてしまいます。
べ、別に叱られる事は良いのですが・・・とにかく不味いです。私が無能の烙印を押されることだけは避けかければ』
ユセがVの結晶の区画きたどり着くと其処には・・・
『エンラ・・・なのですか?』
其処に居たのはエンラの姿をした人物がいた。いや・・・正確にはエンラとネクロート、2人の姿を掛け合わせた姿をした異形の者だ。
姿自体はエンラなのだが背中に背負っている武装、そして右腕のガントレットと仮面はネクロートそのもの・・・本来であればありえない姿だ。
当然である侵食細胞によって産み出された物は本来その産み出した人物でしか使用することはでかいない。当然例外も存在するが昔ネクロートの武装をエンラが装備しようとしたがは出来なかった事がある。
だが、何故か目の前にはネクロートの武装を装備しているエンラがいる。
違和感はそれだけではない・・・侵食細胞によって産み出された仮面を着けることはどんな偽りの名、神化の名も出来なかった。
しかし今現在その出来なかったことをしている人物が目の前にいる。
その事実は揺るぎない真実であるのだ。
『貴方はな、何者ですか?』
エンラの姿をした人物はユセの問いかけに答えない。
(ありえない!何故、偽装機械侵食者のエンラが私の命令に従わないのです?
まさかネクロートなのですか?それにしてはネクロートと大分体格が違いますが)
ユセが考え込んでいると前方から何か崩れる音が聞こえてくる。
ちなみに此処にくる途中にVの結晶区画の警報音は切っているのでこの区画には警報は鳴っていない。
『な!?あ・・・あぁあれは!?』
ユセが見たのは神化の名の神核であり、偽装機械侵食者の生命線・・・Vの侵食結晶が大きく欠けている。
Vの侵食結晶は偽りの名V ヴィゼイアスが隕石を封印する為に自身を犠牲にして造り出した者で並大抵の武器では傷つける事は出来ず、偽りの名、機械侵食者を弱体化させる傾向があるのだ。
しかし今目の前には大きく欠け、機械侵食者因子を出してるVの侵食結晶が存在してしまっていた。
『ど、どうしましょう。ま、まずイルミデンテに報告ですか?
そ、それとも隕石をなんとかした方が良いのでしょうか?』
ユセが慌てているとエンラが話しかけてくる。
『ユセ・・・でカけてクル』
機械的な音声にはなったはいるがその口調は正しくネクロートの口調のエンラがその場から出ようと此方に向かってくる。
ユセは慌てて前に立ちはだかり阻止しようとするがネクロートに腹を殴られて疼くまってしまう。
『ま、待って・・・』
ユセの言葉も虚しくネクロートはこの場を後にする。




