偽りの名V
『それでトト達はその半透明な物質をどうしてたの?』
トトの話を聞いているパルパトは疑問に思う。
第三の聖徒のパルパトとオメガに課せられた任務には、その半透明な物質について何も知らされてはいないからだ。
そのような危険性の塊が存在しているのならばパルパト達の機械侵食者討伐任務に支障が出てしまうからだ。
『まぁ。まだ話は終わってはおらん。続けても良いかの?』
『続けて』
パルパトからの返事をもらうとトトは再び語り始める。
『ネクロート大丈夫か!?』
トトがネクロートを半透明な物質から引き離すとヴィゼイアス達のいる方へ逃げていく。
イクサは未だに半透明な物質の中にいる。半透明な物質はどうやら再び移動して行き、どうやらネクロートのいた足場に向かっているようだ。
しかし、今まで地を這うようにしか動いていいなかった半透明な物質は、立体的に纏まりまるでスライムの様になるとネクロートのいた足場を包み込む。
『イクサ無事ですか?』
『こちらは問題無いです。やはりネクロートの侵食細胞に反応しているようです』
『ヴィゼイアス不味くないですか?あの半透明な物質、スライムみたいになってますよ』
双眼鏡を覗き込みながらイルミデンテは1人高台に避難している。
トトとネクロートが無事に避難したのを確認すると、ヴィゼイアスはイルミデンテに銃で撃つことを許可をイクサには退避命令を出してイクサの避難を待っている。
あのスライムに変化した半透明な物質は未だにネクロートのいた場所に留まっており、動いていたはいるがその場からは動いていない。
イクサの避難を確認するとヴィゼイアスはレールガンを命中させる。
しかし、レールガンが直撃した筈の半透明な物質は再びスライムに戻っていく。
どうやら効果はないようだ。
『効果なしですかね?』
『ないですね。私が攻撃してみます』
そう言うとイクサは槍を構えて半透明な物質に攻撃を開始する。
イクサの槍が命中した半透明な物質は、先ほどのイルミデンテのレールガンが命中した時と同じように再び元に戻っていった。
どうやら効果はなかったらしい。
『私の攻撃でも効果はないですね。撤退しますか?』
『排除出来ないのなら撤退しましょう。イルミデンテ先導をお願いします』
『撤退するのは良いんですけど・・・これを排除しないと駄目じゃないですかねぇ』
イルミデンテが指差している方向には半透明な物質がに移動してこちらの行く手を阻んでいる。
その姿は人の様に変化しているが、下半身は未だにスライム状であり顔らしき部分も見当たらない。
しかしこの半透明な物質はどのようにしてこちらの位置を察知しているかは不明だが、ヴィゼイアスのいる方向へと攻撃を開始していた。
『ヴィゼイアス回避を!』
トトが半透明の物質の人間で言う所との首らしき部分に向かって攻撃をする。トトの攻撃が直撃した半透明な物質は斬られたのにも関わらずに動いている。
どうやら斬られた事に気がつかないのか未だに攻撃してくる、半透明な物質には痛みや感覚らしき部分は無いように思える。
しかし攻撃は未だに続いてはいるが動きが鈍く、攻撃範囲が大きいだけでかわすことは可能だ。
『鈍いだけでかわすのは簡単ですね。ネクロートは大丈夫ですか』
『私は大丈夫だよ。どうやらあのスライムはヴィゼイアス様を狙ってますね』
『どうして私なのでしょうかね。これではじり貧になってしまいますよ』
『ヴィゼイアスが美人だからじゃないんですか?』
『あの生物に好かれたいとは思いませんね』
『そもそもアレはどうやってヴィゼイアスを狙ってるんですかね』
各々が回避を行動をするなかで半透明な物質は未だにヴィゼイアスを攻撃しており、攻撃の衝撃波で腕の様な部分が地方に飛び散る。
飛び散った半透明な物質は再び集まり出している。
『それにしてもさっき見かけたより量がが少ないような』
『確かにそうですね。イルミデンテ、銃を撃った時に手応えはありましたか?』
『なかったですね。トトやイクサはどうです?接近戦の方なら手応えあったんじゃないんですか?』
『私の個人としての感覚ですが、やはりこの生物はスライムの様な感じですね。槍で攻撃しても血もではせんし』
『儂も同じじゃ。斬れるには斬れるが、再び元に戻っていくから無駄骨じゃ』
武器持ちで攻撃力のあるイクサと、トトがこちらに攻撃してくる半透明な物質を食い止めている。
イクサは右手の槍で攻撃しながら左手の盾で防いでいる。イクサの盾も鎧や槍と同じように侵食細胞によって生み出されいるので、この半透明な物質によって食べられることはない。
トトは居合い斬りの様に攻撃していて、半透明な物質が纏まりつく前に振り落としている。そのようにする事によってトトはイクサとは違う方法で食い止めている。
しかし、食い止めていられる時間も限られている。
体力には限界があるのだから。
イエスメデスのレールガンも威力は大きいが連射力、残弾ともに心もとない。攻撃手段が近接格闘のヴィゼイアス。同じく近接格闘及び尻尾による中距離メインのリッチ。戦闘そのものが不得意なネクロートは回避に専念している現状だ。
『別れて逃げますか?』
『そうですね。あの半透明な物質に有効な攻撃手段がない者は引いた方がいいでしょう。イルミデンテとネクロート、リッチは撤退してください』
『いいんですかヴィゼイアス様?』
『仕方ありませんネクロートが収集出来ないのなら別の方法を考えましょう。手段は無いわけではないのですから』
イルミデンテ、ネクロート、リッチが撤退しやすい様にヴィゼイアスが3人と距離をとる。ヴィゼイアスを援護するためにイクサとトトも後退する。
『ヴィゼイアス様御武運を』
『トトもこいつに触れたらアウトなんだからあまり無理はしないでね。もう年なんだし・・・』
『イクサ最後にこいつに1発撃ってみましょうか?』
3人は各々が捨て台詞をしゃべりながら撤退していく。
『それでどうしますか?』
『本当は隕石でやるつもりでしたが仕方ありません。あの半透明な物質を押さえ込むには結晶化を使用します』
『仕方ありませんね。私とトトで惹き付けますヴィゼイアスは準備を』
『了解じゃ』
ヴィゼイアスを守る様にイクサが前衛、トトはイクサの援護する様に後方へと移動する。その間にヴィゼイアスは結晶化に必要な自身の侵食細胞と血を流血させる。
本来、結晶化には大量の血と大量の侵食細胞を使用する必要があるが、ヴィゼイアスただ一人だけは例外で結晶化その物を武器として利用できる。これによって生み出される侵食結晶は対機械侵食者様であり、武器として脆いが機械侵食者の機械化した細胞には有効的である。
しかし、デメリットも存在するヴィゼイアスが作り出せる侵食結晶には上限があり、そして一度使用した侵食細胞は二度と回復しない・・・つまり作り出せば作り出すほヴィゼイアスが弱体化してしまうのである。
『出来ましたよ』
額に汗をかきながらヴィゼイアスは侵食結晶で出来た武器を構え・・・半透明な物質に向けて投げつける。
武器といっても石器時代のナイフの様に先端が尖っているだけで、イクサや他の偽りの名に比べて殺傷能力も低い。
しかしながらこのナイフは機械侵食者が触れた場合、傷ついた箇所から侵食していき終いには機械侵食者化した母体の身体機能を停止させる事が可能である。
あの半透明な物質が未だに何なのかは不明だが、イクサの槍や盾がネクロートの触手の様に食べられていない事からあの半透明な物質には有効と考えている。
『やはり有効的だったようですね。ヴィゼイアスの攻撃で動きが鈍くなっています』
『少し疲れました』
『ちょうど良かったのぅ。雨が止んで晴れてきましたようじゃ』
トトが言っていた通りに先程まで降っていた雨が止み壊れた隙間から光が差し込んでくる。
半透明な物質の動きも鈍くなり最早ヴィゼイアスを捕らえる事は不可能に近い。
辺りの安全を確認したイクサが信号弾を撃って撤退したイルミデンテ達と、集合地点で待機しているイエスメデス達に連絡をいれる。
直ぐ様帰って来た信号弾は、現在ヴィゼイアス達がいる地点から離れており位置的、距離的にも集合地点にいる
イエスメデス達の信号弾だと確認できる。
しかし、信号弾を撃ってから5分以上が過ぎたのにも関わらずに未だにイルミデンテ達からの信号弾が発見出来ていない。
何故イルミデンテ達から応答が無いのかは分からないが機械侵食者との戦闘により負傷したのか、それとも何かしらの事件に巻き込まれたのか・・・しかしどちらも確率は低い。
偽りの名が3人もいるのだから大丈夫だとは思うが。
『何故イルミデンテから連絡がないのでしょう』
『それよりはこいつはどうします?流石に放置という訳にはいきませんし』
『儂はとりあえず保留にしておいて隕石の回収に向かった方が良いと思うぞ』
『待ってくれトト、ヴィゼイアスは体力を消耗しているまた後日では駄目だろうか』
イクサの提案にトトは拒否する理由はこの地域は今も機械化の影響下にあり、次第に侵食領域は拡大する一方で隕石を回収しない限りその侵食は止めることは出来ないからである。
『わかりました。少し休憩した後向かいましょう』
『トトも少し休んでください』
『おぉぉ!?これが機械侵食者の産み出す隕石か』
『流石にこれは素晴らしいですね』
『いいサンプルが取れそう』
イエスメデス、リッチ、ネクロートが3人は隕石の落下地点に来ている。隕石のサンプルを採取する為に・・・




