黒色ノ侵食結晶
帝の軍勢中央本部から帰ってくる最中で姫子は懐かしい人物出会い立ち話をしていた。
話の相手は五行信仰 土得のブライドの下で勤務しているレヴィ・マニージャ・アデレート少尉で、姫子とは軍事学校の同期である。
レヴィは学校を卒業すると同時にブライドの元に配属されてしまったので年に数回程度のしか会うことがなかったのだ。
しかし今回のレヴィの顔色は悪く、髪もボサボサになっている。相当ブライドの死ご堪えたのであろうレヴィはブライドをとても気にかけていたので、今回のブライドが死亡したと言うことを聞いていた姫子は、レヴィの話を聞かなければと思っていたので今回偶然運良く出会えた事に感謝をしていた。
レヴィは昔から世話好きで、昔姫子もお世話になったことがある。その時に姫子はレヴィの性格を少なからず理解しているつもりだ。
数分の会話ではあるがレヴィは元気を取り戻した様に見えてくる。レヴィとの会話を終えた姫子は空を見ながら何を思うのか・・・再び帰路へと向かい歩いていった。
『ただいま戻りました』
『お帰り』
帝の軍勢中央本部から帰って来た事をパルパトに報告し終えると、未だに傷が癒えていないオメガの病室へと向かっていった。
本来であれば地下に存在するカプセルで傷を癒すのだが、現在はリッチを癒す為に全力で稼働している為、もう1つのカプセルは起動不可の状態である。
そう・・・あの時倒れた筈のリッチは死んではいなく、僅かながらに生きていたのだ。
そして偽装機械侵食者の秘密を調べる為にトトによって再生治療をしている最中である。しかしオメガ、パルパトの第三の聖徒達は第一の徒、第二の戦徒と本質的に違う為治療するには一苦労らしい・・・
『オメガ様報告し終えました。しかし本当に良かったのですか?』
『リッチが未だに生きているということがか?』
『はい。私はオメガ様の命令には従います。しかしもしこの事がばれてしまった場合どのような処罰が下されるのか検討がつきません。基本的にオメガ様達、偽りの名の皆様の処罰はイクサの独断で決められますのでもしかしたら・・・』
姫子が言葉に詰まる・・・やはりこの事がばれた場合、最悪死刑になる可能性があるからだ。
機械侵食者は基本殲滅。それがオメガとパルパトに課せられた任務であり当然、偽装機械侵食者であるリッチの治療は含まれていない。
『確かに・・・最悪死刑になるかもな』
『でしたらやはりリッチを殺してしまった方が良いのではないでしょうか?』
姫子がオメガのベッドの隣に座って買ってきた林檎を剥いている。
実は姫子がこの話をするのは既に3回以上しており、3回ともオメガからの返答はノー。リッチを治療する事を止めることは出来ていない。
ちなみにこの事に対してはオメガが独断で決めたことになっており、パルパト、姫子、トトに対して処罰が行われないように手続きをしている。
『姫子。俺は元に戻ったリッチに聞かなければならない。
それに神化の名の弱点がわかるかもしれない』
『オメガ様・・・ですが私反対です。その事は変わりません』
『そうか・・・』
姫子が剥き終わった林檎をオメガに食べさせるべく口元に運んでいく。
オメガは姫子から貰った林檎を食べながら考え事をしていると、扉をノックする音が聞こえてきてくる。
姫子が確認しているとどうやら来たのはパルパトのようだ。 そのパルパトが姫子と入れ替わるように病室へと入ってきた。
『オメガ。さっきトトから連絡があってリッチの容態が安定してきたって。目覚めるのには早くて後数日、もしくは後数週間かかるかもだって』
『そうなのか。わざわざありがとうなパルパト』
『随分気にしてたからね。一様報告しておくよ』
オメガとパルパトが会話をしていると再び扉をノックする音が聞こえてくる。その音はさっきのパルパトの時とは違い、荒々しく急いでいる感じだ。
オメガが入っていいと声をかけると、姫子が慌てた様子で入ってくる。
どうやら内容を聞くようにトトからの連絡でパルパトに手伝って欲しいことがあるとの事だ。
パルパトはオメガに別れの挨拶をしおえるとトトがいる地下へと走っていった。
地下治療室・・・トトの研究室にて
『どうしたのトト?さっきの連絡にはリッチは安定して回復しているって言っていたのに?』
『あぁ。順調に回復はしておるよ。今回パルパトを呼んだのは別の理由じゃ』
『別の理由?』
『そうじゃ。ついて来てくれ』
そういうとトトはパルパトを治療室ではなくトトの管理する研究室の1つ、侵食能力によって精製される武器等を保管する部屋へと案内する。
偽りの名の中には自身の血液と反応させ武器を精製される事が可能な者、自身の細胞を変化させ身体を変化させる者、そしてその両方を兼ね備えた者がいる。両方兼ね備えた者は現在イクサ、パルパトだけではあるが・・・
しかしここの研究室にある全ての武器はパルパトの侵食細胞によって精製された武器であり、パルパト以外の偽りの名以外には使用することが出来ない。
何故パルパトだけしか使用できないのかと言うと、ここにある武器には適度にパルパトの侵食細胞を注がなければ形を保て無いからである。その理由からか一度使用してパルパトが気に入らない場合は放置される事が多く、武器の大半は使用不可の状態になっている。
しかしトトは形を崩した武器を定期的に弄りながらパルパト以外にも使用出来ないか模索してる為、地下の研究室の一室を保管庫として使用しているのだ。
『これは?』
パルパトが奇妙な声をあげて机の上に置いてある物資を拾いあげる。
その物資はビー玉程の大きさではあるが黒色な結晶である。結晶と言っても原石らしく面取りがされていないようで石のようにゴツゴツしている。
『パルパト。実は言うとこの結晶はリッチから出てきた物だ』
『・・・これが人の身体から出てきたと言うの?』
『あぁ。その通りじゃよ。しかし正確には身体と言うよりも機械侵食者化した筋肉、つまり侵食細胞の成れの果てから出てきたのじゃよ』
パルパトが不思議そうに見ていると、トトが机の引き出しから袋を取り出す。
『まさかそれって!?』
『お前さんの予測通り。リッチの体内から出てきた結晶と同じじゃよ』
トトが袋を開けると中には先ほどと同じような結晶が入っており、5つの結晶はどれも同じように黒光している。
『なんでこんなにたくさん?』
『これも先ほどの結晶と同じように機械侵食者化した筋肉から採取した物じゃよ。採取場所は両腕、両足、そして腰、辺りから出てきたのじゃよ。
この結晶を取ってみたのだか、リッチの機械侵食者化した筋肉は元に戻ることはなかったのだよ。
どうやら神経細胞まで侵食していたらしく、傷が癒えたとしても再び動けるようになるかどうかまではわからんのだ』
『そうなの・・・何故この事を私だけに?私よりもオメガに話した方が良いんじゃないの?』
『まぁ・・・確かにリッチの今の状態をオメガに知らせてやった方が良いとは思うが、パルパトを呼んだのは別の理由じゃよ』
『この結晶の他にも何かあるの?』
そういうとトトはパルパトの使用していた短刀を手に取り黒色の結晶を砕いた。すると砕けた黒色の結晶が液体のように変化し短刀へと侵食していき、銀色をした刀身が黒色へと変化してしまった。
パルパトが何かを言いたそうにしていると、トトは懐から半分になった黒色の結晶と布に包まれた二本のナイフを取り出す。
片方のナイフは銀色なのだが、もう片方は刀身の2分の1ほど先ほどの短刀のように黒色に変化している。
その内の一本は以前にパルパトが使用していたもので、使い勝手が悪いと放置していたものだ。
『これって私の侵食細胞に反応して侵食しているの?』
『多分この結晶はお前さんの侵食細胞に反応しているのではなく、侵食細胞自体に反応しているのだと思うのだよ。そしてこの侵食化した短刀とナイフなのだが、機械侵食者と同じ硬度に変化している。その証拠に』
トトは侵食化した短刀を手に取ると置いてあるナイフに斬りかかる。するとナイフが真っ二つになってしまった・・・本来であればどちらも刃が欠ける程度なのだが、短刀の方には欠けた形跡はない。
『なるほど・・・これって武器として利用するつもりなの?』
『儂は使用しても大丈夫だとは思うのじゃが、リッチの件があるから内密に頼む』
『了解』
『それとこの結晶は未だに未確定な事が多いので、ライフル銃を使用しているパルパトを呼んだのじゃよ』
そういうとトトは残りの黒色の結晶をパルパトへと譲り渡す。
何故パルパトに譲り渡したかというと、オメガの大斧もパルパトと同じで自身の侵食細胞を使用して創るのだが、オメガの大斧はパルパトの創るナイフや、短刀、ライフル弾に比べて消費する侵食細胞が多く、もしもの場合再び創るには1日程度の休息が必要だからだ。
『そういえばリッチの侵食細胞って何型なの?』
『実は言うと儂にもよくわからんのじゃよ。リッチは肉体強化系・・・だと思っていたのじゃが機械侵食者に侵食されて本来ではありえない筈の翼も生えている』
パルパトはトトから貰った結晶を棚に置いてある瓶に詰め替え終えると、ポケットにしまいながら質問をしてきた。
トトは昔にリッチと共に最初の使徒として機械侵食者の殲滅作戦に参加していた為、リッチと面識がありリッチの侵食細胞を知っていたのだ。
しかし機械侵食者に侵食されて翼が生えていたことは知らなかったのである。そもそもトトはリッチが生きていたということも知らなかったから当然である。
『そうなんだ・・・ねぇ、今のリッチってどうなってるの?』
『見に行くかね?
パルパトが儂ら以外の偽りの名に興味をもつなんて珍しいのぉ』
そう言いながらトトは扉を開けてリッチのいる治療室へと歩いていく。




