廃病カラノ脱出
暴走するリッチを力ずくで拘束させ大人しくさせたと思っていたのだが、自身の身体が傷つくのも気にせずに無理矢理拘束を解きオメガ達に迫ってくる。
しかしオメガ達に攻撃を仕掛けようとするが力尽き倒れてしまった。
オメガはリッチが最後に話した言葉が気になり、リッチを偽装機械侵食者にした秘密をネクロートに問いかける。
『オメガ様・・・』
オメガは気を失ったリッチを横にさせ、こちらに戻ってくる。
顔は仮面で直接見ることがで出来ないが、悲しそうな雰囲気が感じられる。
『ネクロート!話してもらうぜ。20年前に何があったのか』
オメガはネクロートの首もとを右手で締め上げる。
『姫子!ネクロートの両足を撃って動けなくさせろ!』
『わ、わかりました』
オメガは怒鳴るように姫子に指示を出す。いつものオメガからは考えられないような口調で指示を出された、姫子の額からは緊張の汗が滴り落ちる。
そして姫子はネクロートの両足をライフル銃で撃ち抜く。
『ぐっ!痛いじゃないオメガちゃん・・・』
『パルパトの爪隷傀儡が解けたか、タイミングはバッチリだったようだな。
これで会話が出来るようになっただろ。話せ!』
オメガは姫子に指示を出してライフル銃を構えさせる。
パルパト自身も爪隷傀儡を解いたのでレベル1に戻っているところを、オメガに横に退かされ少しよろけてしまった。
パルパトのレベル2能力は右腕に集められた侵食細胞を超至近距離で発動させることによって、触れた相手を一定時間行動不可にさせることが可能で、パルパト自身も行動不可になってしまうのが弱点である。
しかも、一定時間経過してしまうとレベル2能力を強制的に解除させてしまい、解除後は体力の消費が大きいので乱戦状態が多い機械侵食者戦ではあまり使用は適してはいない。
『オメガ。私はこっちに来たときの約束を忘れたの?』
『パルパト様何を!?』
パルパトはオメガがネクロートに近づくのを阻止するように立ちはだかる。
『知っているでしょオメガ、私達はこちらの奴らには極力関わらない。
ここいいる神化の名N ネクロートも、そこで倒れてい偽装機械侵食R リッチも私達には関係無い。こいつらのことはイクサに任せればいい』
『確かにそうだ。しかし俺は知りたいんだ。
どうしてリッチが涙を流していたのかを』
オメガは横たわるリッチに視線を送ると再びネクロートに視線を戻す。
姫子はどうしたらよいのか分からずに少し距離をおいて様子を見守ってはいるが、ライフル銃は未だにリッチに狙いを定めている。
突如この廃病に爆音が響きわたり大きく揺れ動く。その直後には何かが崩れ落ちる音も聞こえてきて、オメガ達は立っているのもやっとな位だった。
揺れは1分ほどでおさまったのだが、施設の照明も壊れてしまい真っ暗になってしまって、いったい何があったのかは不明である。
『いったい何がおきたんだ!?』
『何も見えない・・・』
『少し待って下さい。有りました』
姫子は手持ちの簡易照明をつけて周りを照らす。
辺りには照明の壊れた破片やガラスが散らばってはいるが、流石に鉄で出来た壁や天井が崩れることはなく、多少天井が歪んでいる程度である。
オメガ達が落ちてきた穴には崩れた瓦礫や土、大きな岩が覆いさっていて、この場所から脱出するのは困難なようだ。
『あ~あ・・・ついに落ちちゃったか』
両足を撃ち抜かれたことによって立っていられなくなったネクロートは、地面に四つん這いになりながらため息を溢す。両足からは痛々しく血を流してはいるが、姫子の撃ち抜いた箇所が良かったのかそれほど血は流れていない。
『おい!ネクロート落ちたとはどういうことだ!?』
オメガはパルパトを押し退けると、ネクロートの胸ぐらを掴み無理矢理立たせる。
『イルミデンテの作戦が成功したのですよ。まぁ、作戦時間的には少々遅れたようですが。』
『イルミデンテだと!?そいつは誰だ?』
『作戦の成功・・・さっきの揺れと関係あるの?』
オメガはネクロートに問いただす。
パルパトは瓦礫で塞がれた穴を見つめる。穴の上には土砂や大きな岩等が落ちて来たことによって塞がれており、先ほどのまで届いていた地上の光が見られない。
オメガやパルパトの攻撃で壊して岩を退かそうにも、周りの地層が不安定になってしまっている可能性があるので迂闊に壊してしまうと、再び土砂で埋もれてしまうかも知れないのである。
そして、パルパトの攻撃ではびくともしない、オメガは現在レベル2の能侵食力を使用出来ないので最早脱出は不可能に近い・・・
『脱出は不可能なのかしら』
『そのイルミデンテの事も気になるがまずは脱出する方が先か。
姫子、脱出口は何処にあるはずだパルパトと一緒に探してくれ』
『ねぇねぇ。オメガちゃん脱出口の場所を教えてあげよっか?』
ネクロートがケタケタと笑いながらしゃべっている。
人をバカにするように。
『何が目的だ?』
オメガがネクロートに冷たい視線を送る。仮面を着けているので表情はわからないが、声が先ほどのとは違っていて殺気のようなものを放っている。
『オメガ騙されないで』
『そうですオメガ様。こいつの言っている事は信用しては駄目です』
ネクロートの言葉をうけて、脱出口を探そうとしていた姫子とパルパトは、その場に止まりネクロートに武器を構えていつでも撃てるようにする。
『確かにそうだが、最早こいつが俺達から逃げきれることは無いだろう。
両足を撃ち抜かれて、侵食能力が使用できるまでには後最低でも後24時間以上は必要なだからな』
『なっ!?何故その事知っている・・・』
先ほどのまでニコニコしていたネクロートは途端に血の気が引いたように青ざめる。
『リッチが教えてくれたのさ。お前達がイクサやトトと同じなら24時間は再び使用不可だからな』
『そうなのですか?』
姫子が不思議そうにパルパトに問いかける。
『トトは自分の侵食能力が私達と違うことを教えてくれた。
私達は非常時の為の薬を使うことによって侵食能力をもう一度使うことが出来るの』
そう言うとパルパトは懐から眼鏡ケースらしき物を取りだして姫子に手渡す。
姫子がそれを開けると中には注射器が入っている。パルパトの言った通り既に使用されていて、中身の液体は無くなっているのがわかる。
『へぇ・・・やはりオメガちゃん達は便利ですね。私達には出来ないのですよ』
先ほどのまで青ざめていたネクロートが再びしゃべりだす。顔色は元に戻ってはいるが、動揺を隠しきれてはいないようで額から汗が滴っている。
『先ほどの話に続きをしましょうよ。オメガちゃん。
私はこの場所からの脱出口を教えてあげます。その代わりにオメガちゃん達は私を見逃して下さい』
『なんですって!?』
『正気なの』
ネクロートの提案を聞いたパルパトと姫子は驚きのあまり声が出てしまった。
それもその筈、この状況でネクロートを逃がしてしまった場合、ネクロート達の神化の名の手がかりが無くなってしまうからである。
『ずいぶんとわりの合わない取引だな。それに俺達には貴様を尋問して吐かせる方法や、取引に応じないこともできるんだぞ』
先ほどまで黙っていたオメガは冷たい視線で冷静にネクロートからの提案を指摘する。
『確かにそうかもしれませんね・・・しかしこの場所の出口探すのにどれ位の時間がかかるかなぁー
気にならないのかなーさっきの揺れはどんなのか?』
『やはりさっきの揺れはお前達の仕業か!?
後他に何人の神化の名がいるんだ。そしてその目的は何だ!』
オメガが再びネクロートの胸ぐらを掴み無理矢理立たせる。
しかしこの絶望的な状況でもネクロートな決して諦めてはいなかった。
『私が教えるのは出口だけです。それと見逃すというのは私をこのに置き去りにするだけで結構ですよ』
『俺が裏切るとは思っていないのか?』
『確かに出口を教えた後で私を再び捕まえればいいでしょう・・・しかしそれでは駄目なのです』
『どういうことだ?』
『くふふ・・・それはですね』
ネクロートはオメガの耳元で呟く。
オメガから少し距離をおいていた、パルパトと姫子からは聞こえない距離にいるので2人は話の内容を理解することが出来なかった。
『そうか・・・パルパト、姫子この場をさっさと撤退するぞ』
オメガはネクロートと何を話しのかは不明だが、リッチを担いで出口を探そうとこの場から離れる。
『ちょっと待ってオメガ!ネクロートの言ったことを本気で信じるの!?』
そそくさとこの場を後にするオメガに追いつくように、パルパトもはや歩きでついてくる。
姫子は少し遅れてはパルパトの後についていく。
『パルパト、俺達がこの廃病の地下に来たときの事を覚えているか?』
『ネクロートの作った穴から私達は降りてきた』
『そうだ。そして俺達全員がこの場に降りて来た瞬間に穴が塞がれた』
オメガ達は話しながらとある壁にたどり着いた。
そしてオメガが壁に手を触れると侵食能力と反応して壁が変形し、奥へと続く道ができあがった。
『これが出口ですか?』
『あぁ。そうだ!』
『オメガ本気でネクロートを置いていくつもりなの?』
『パルパト。ネクロートが信じられないのは仕方がない、だがこの俺を信じてはくれないか?』
オメガはパルパトの正面に立つと真っ直ぐ瞳を見て問いかける。
『後でちゃんと説明してね』
『もちろんだ』
『わ、私もオメガ様を信じますよ』
姫子もやはり気になってはいたのか、パルパトの横に立ってオメガの方を見つめる。
『姫子なら最初っから俺についてきてくれると思っていたからな』
オメガは照れくさそうに目線を外すと奥へと進んでいく。
それについて行くように姫子、パルパトと進んでいくと扉が閉まりだす。
『これって?』
『そうだ。俺が降りてきた穴と同じ仕掛けがこの区画全体に仕掛けられている』
完全に閉まった扉を見ながらオメガは指をさして指摘する。
扉の反対側にはオメガ達が降りてきた穴と同じように、機械侵食者の骨で出来た鉄格子のようになっている。
『しかし何故この扉は閉まったのでしょうか?』
『すまない姫子、その話はまた今度だ。
今は先をいそぐぞ』
オメガは不思議そうに扉に近づこうとする姫子の手を握ると、先を急ぐ為に再びはや歩きでこの場を後にする。
パルパトも不思議そうに首を傾げたがオメガの後を追ってこの場を後にする。
『あぁ・・・行っちゃった。
まぁ、仕方ないか。
あぁ・・・後、どれくらいで侵食能力は回復するのかなぁ』
1人この場を残ったネクロートは傷を手当てしながらぼやいていた。




