進ンダ針ハ戻ラナイ
自身の変わり果てた姿を目の当たりにしてしまったリッチ。
何故オメガ達が自身を攻撃してきたのか、その事を考えるよりもリッチは自身の変わり果てた姿に絶望してしまう。
何故、このようなことになってしまったのか?
その答えを求めてリッチはオメガ達に問いかける。
『これが答えです』
パルパトは短く一言だけ言いはなった。だだ真実を・・・
『私ハ何者だ・・・この傷でなぜ生キテいる?』
リッチの涙は止まらない。流れた涙が頬をつたって自身の傷口にたどり着くが、リッチはどうすることも出来ずにその場でただ疑問を投げ掛ける。
『はっきり言おう。あんたのその胸の傷口は俺の大斧によるものだ。そしてあんたの爆発によって出来た傷痕は多分、神化の名と言う奴が俺達と戦わせる為に拘束具を爆発させたんだと思う』
『オメガ様危険です!』
リッチに近づいていくオメガを姫子は止めようとするが、パルパトに止められてしまう。
『いったい何があったんだ?』
オメガはリッチの隣に座り込む。
『私達ハ機械侵食者化をフゼグ為に戦ってイル。お前達ハ違うのか?』
『違う。俺達は機械侵食から街を守る為に戦っている』
リッチは未だに俯いたままだが、出会った時よりは物腰が柔らかくなっている。もしかしたら本当のリッチは優しいのかも知れない。
『バカな・・・何故機械侵食者化を阻止するタメに戦わない?
機械侵食者化ノ原因でアルあの隕石を排除シナければいつまでも同ジだぞ?』
『機械侵食者化は五行信仰の結界によって守られいる。拡散する可能性は皆無だ』
『五行信仰だと・・・それはナンナノダ?』
『知らないのか?五行信仰は20年前に造り上げられた未来の技術を使用した結界塔で、結界の働きによって以前は空気感染していた機械侵食因子を抑え込むことに成功したんだ』
『な・・・に20年前ダと!?』
『どうした!?何故そんなに驚く?』
オメガとリッチは2人で話していると、先ほどのまで俯いていたリッチが急に顔をあげオメガの方を見つめる。
未だにリッチの瞳からは涙が流れていたが、そんなことなどリッチには気にしている余裕がなかった・・・驚くべき言葉を耳にしてしまったからだ。
『私達がこの地に来たのはホンノ1ヶ月前ダぞ。そのコトが正しいのナラ私は何故歳をトッテイナイ・・・わたしハ・・・わたしだけナノか他の偽りの名も歳をとらないノカ?』
『そんな事はないと思う・・・私達の知り合いの偽りの名T トトや偽りの名X イクサはそれなりにの歳だから』
『何!?イクサだけではなく、トトまでいるのか?』
『あぁ。いるぜ。知り合いか?』
『知り合いナノか・・・いまのワたしは本当に人間ナのか?それとも奴らと同じ機械侵食者ナのか?何故私には20年間の記憶がないのだ・・・』
この場にいるリッチは20年前から歳をとっていない、それが真実をならリッチは20年間の何をしていたのか?
リッチにはその記憶がない・・・そしてオメガやパルパトの言葉が真実だという証拠も。
気持ちを落ち着かせ、混乱する思考を整理しながらリッチは願うように呟いた。
どうか・・・だだの冗談であって欲しいと。
『貴女の事は私達にはわからないです。しかし私達が戦っている神化の名N ネクロートなら知っているかもしれません』
『ね、ネクロート!?あの子が貴方達のト戦っているの?』
『えぇ。そうです。この廃病に逃げこんだのですが、どうやら罠だったようで』
『廃病!?コこが?』
『多分ここはネクロート達、神化の名の秘密基地みたいな場所だと思う』
『ネクロートが裏切っタのか?』
『いいえ。違うよリッチちゃん』
オメガ達がリッチと話していると、そこに聞いたことのある声の主ネクロートがいた。
いったい何処から入ってきたにかわからないが、ネクロートはリッチの後ろ側におり、オメガ達と戦っていたレベル3の状態を解除していた。
『ネクロート!?さっきの話ハ本当なのか?貴様は裏切ったのか』
『そんな訳ないでじょリッチちゃん。そいつらが嘘をついているのですよ』
『おい!そいつの話にのされるなよ』
混乱しているリッチはネクロートに近づき真実を確かめようと問いかける。
混乱しているリッチをネクロートは優しく抱き締める。
『ネクロート・・・私ハ』
『何者言わなくていいよ。リッチちゃん・・・どうして』
リッチの腹部にネクロートの注射器型の武器が突き刺さる。そしてガントレットに含まれている液体が体内に入り込む。
『ネクロートと・・・どウして!?』
『もう一度だけ夢をみていてね』
『リッチ!!』
オメガは一気に距離を縮めてネクロートに斬りかかる。
しかしその攻撃をリッチが止め、尻尾を使ってオメガの首を刈り取る動作にはいる。
『オメガ様!』
後ろから姫子の援護射撃がリッチ尻尾に直撃し、攻撃の軌道を多少だが外すことに成功した。
『助かったぜ姫子』
オメガは距離をとり再び攻撃の構えにはいる。
『何故リッチちゃんの記憶が戻ったのかは知りませんがもう一度夢の続きを、リッチちゃんがまだ偽りの名の頃に戻してあげるよ』
そう言い終えるとリッチはオメガに飛びかかる。
ネクロートに注射されてからリッチは先ほどオメガ達と話していた時とは瞳の輝きが違い、死んだ魚の用に瞳が濁っている。
まるで心が無いような・・・
『ネクロート貴様!』
『オメガ!リッチを止めておいて。私達がネクロートを仕留める』
オメガはリッチの攻撃を防ぎながら叫ぶ。
パルパトは翼を拡げてネクロートがオメガとリッチの戦いに邪魔しないように立ち回っている。姫子もパルパトの援護をする為にライフル銃に弾をこめ、いつでも追撃ができる用意をしている。
『何かをしたのです』
姫子がネクロートに問いかける。
先ほどまでオメガと話していたリッチとは雰囲気がまるで違い、最初に戦った時と同じ感じがしているからだであり、ネクロートがリッチに何を注射したのかを確かめる為に。
ふと、ネクロートが微笑む。
普段であれば話したりはしないのだが今回は特別である。
(くふふ。なんて愚かなのでしょうか・・・やはり我々、神化の名の技術は素晴らしいです。第3世代であるオメガちゃん達でも我々の技術がわからないのですね。
まぁ、この女がわからないのは当然ですが。
しかし、なんて気分が良いのでしょうか)
『では、できの悪い子でもわかりやすいように教えてあげましょうか。
この注射器に入っている薬品は私の侵食能力の改良品で、貴女に分かりやすく言いますと麻薬の様な物です』
『やっぱりその液体が原因か』
『戻す方法はないのですか?さっきは一時的ではありますが元に戻りましたよ』
『くふふ。教える訳がないでしょうが。
方法がわかったとしてもそれに必要な物も、必要な手順も知らなければ全て無駄なんですよ』
ネクロートは姫子の問いかけに意気揚々と答えてくれたが、肝心なところははぐらかされてしまい、結局オメガの攻撃で意識を取り戻したのは偶然だったのかも知れない・・・
『リッチ!目を覚ましてくれ!』
オメガはリッチの攻撃を防ぎながら問いかける。
先ほどのリッチとの会話が頭に引っ掛かっているのか、オメガは攻撃を躊躇しているようにも見える。
(くそ・・・さっきリッチの攻撃でレベル2になるだけの耐性がないぜ。
どうすればリッチを止めることができるんだ?)
『レベル2・・・爪隷傀儡』
『ふぇ!?パルパトちゃ』
ネクロートの動きが止まる。
パルパトがレベル2の侵食能力を発動させてネクロートに近づき、右手を胸の辺りに押しつけていた。姫子はパルパトがネクロートに突っ込むのと同時に姫援護射撃を行う。しかし姫子の援護射撃はネクロートに対して攻撃する訳ではなく、その場に止めるためのである。
『オメガ様!』
『了解!』
姫子が合図をするとオメガはリッチの攻撃を受け流し、大斧の鎖を使用してリッチを拘束することに成功した。
リッチは鎖で身体をぐるぐる巻きにされており翼も拘束されている。そして大斧によって鉄の壁に打ち付けるようにされていて、両腕が動かない状態での脱出は困難のようだ。
(どうにか成功したようだな。
パルパトの能力が解けるまで5分程度・・・そして俺の大斧もリッチを拘束する為に使ってしまったしこの5分が勝負だな。
俺のはトトとは違って体術はあまり得意じゃないからな)
(動かない・・・パルパトちゃんが何かしたのでしょうか?
非常に不味いですね。リッチもオメガちゃんの攻撃で身動きがとれないようですし)
(爪隷傀儡の使用時間は約5分・・・)
オメガはネクロートに近づくと注射器を取り出す。
入っている薬品はもちろん侵食細胞を抑え込む作用がある物で、これを使用してしまうとオメガかパルパトは自力でのみ能力を解除しなければならなくなってしまう。
リッチも大斧と鎖によって拘束されてはいるが、未だに戦闘可能性な状態であるためオメガとパルパトはどちらかが致命傷を受けてしまうと非常に危険な賭けである。
(これは超非常に不味いですよ。まじで不味いです
オメガちゃんに私の素顔が・・・イクサやトトに知られてしまう)
オメガはネクロートに注射をすると、ネクロートの神化の名の能力が解除されて仮面がなくなり素顔が露になる。
『やはり神化の名というのは侵食細胞を使用しているようだな、この薬で能力が解除されるということはそれが証拠だ。
そしてお前の正体はイクサ様やトトにでも確認させてもらうぜ』
『ガァァァ!ごワレろ!』
『オメガ様!リッチが』
『嘘だろ!?あの鎖を壊すつもりか?
身体がもたないぞ』
リッチが大声をあげて悶える。自由な尻尾を使って鎖に攻撃して引き千切ろうとしているのだが、ぐるぐる巻きにした鎖は最早ただの鉄の塊のように硬く、強引に脱出しようとすると鎖が巻かれている両腕や翼が折れてしまう可能性がある。
しかしリッチはその事気にしている様子も、痛みで躊躇しる様子も全くない。
爆音が施設内に響きわたる・・・オメガの鎖を引き千切ってリッチが自由になる。
全身血まみれはリッチは、痛々しいほどぼろぼろになった身体を引きずりながらオメガに再び攻撃を仕掛けようと手を伸ばす・・・よろよろと近づくリッチの足取りはおぼつかなく、最早歩いているのが不思議な位の深手である。
『どうして・・・そんなになるまで』
オメガは近づいてくるリッチの手をとり抱き締める。
『もう戦わなくていいんだ。リッチお前はもう戦わなくていいんだよ』
オメガがリッチを抱き締めた理由はただ1つ・・・彼女の瞳から涙が流れていたからだ。
最初の出会いは敵として戦っていただけだが、ほんの僅かな時間のだけの会話がオメガの心に突き刺さる。
『私達ハ機械侵食者化をフゼグ為に戦ってイル』
その言葉はリッチがまがいもなく機械侵食者と戦っていた証拠である。
『私ハ守るコノ場所ヲ・・・ヴィゼイアスさまが私に託した・・・ノ・・・だ』
リッチは気絶してしまう。
彼女が再び目を覚ますことはあるのかないのか。




