蝕バマレル記憶ト共ニ
オメガの攻撃をくらって吹き飛ばされたリッチは鉄の壁に激突し、気絶したのかそれとも死んでしまったのかわからないが未だに動かずにいた。
(痛い・・・何故私がこんな奴らに)
薄れゆく意識の中でリッチは何を思うか・・・そしてこの場をさったネクロートは今は何をしているのか。
偽装機械侵食者の謎は解けないままオメガ達はリッチに近づいて行く。
『死んだのでしょうか?』
『パルパト』
『了解』
パルパトは嘆きの凶弾でリッチを狙撃する。
『確認してくる』
オメガはパルパトの嘆きの凶弾が着弾したのを確認すると、リッチが死んだのでいるのか、それともただ気絶しているだけなのかを確認する為にレベル2の能力を解除して近づいていく。
オメガはリッチとの距離は約2m。ちょうど大斧での最適な距離を保ち、オメガは一呼吸する。
(妙だな・・・さっきからネクロートの声が聞こえない。
彼奴の性格なら俺達の戦いを観戦してもおかしくないし、このリッチとかいう偽装機械侵食者は自信の超とっておきだって言っていたのだから、倒されたりしたら何かしらのリアクションをとってもいいはずなんだが)
『これは・・・』
オメガは仮面が砕け顔の3分の1見えているリッチ素顔を初めてみる。
リッチの仮面は人の頭蓋骨の様なマスク型の仮面に鬼の様な角があるのが特徴的なのだが、その角は仮面に付いているのではなくリッチの頭部から直接生えている物だった。
『気を失っているのか?』
オメガは呼吸音と心音を聞く為にリッチに近づく。
『オメガ様大丈夫ですか?』
『少し待ってくれ』
(呼吸音は聞こえる・・・心音もちゃんと聞こえる気を失っているのか?
だったら都合がいい)
『パルパト薬を使うぞ』
『了解』
オメガの言っている薬とは、偽りの名の侵食細胞を強制的に抑え込む作用のある薬で、オメガやパルパトは予備も含めて2つ持っている。
オメガが薬を注射している間もリッチが目を覚ますことはなく気を失ったままである。
(どういうことだ!?)
この薬は即効性に優れていて、体内に入れた直後から効果を発揮するはずなのだが、リッチは侵食細胞は未だに解かれてはいない・・・
『パルパトこの薬は不良品じゃないよな?』
『不良品じゃない。どうしたの?』
『リッチが元に戻らない・・・』
『どういうことです?』
パルパトと姫子が同時に驚きの声をあげる。
オメガはその証拠にリッチに注射した注射器を放り投げ、パルパトと姫子の方に飛んでいく。注射器に入っているはずの薬は空になっており、薬の雫がキラキラと照明に反射している。
オメガがパルパト達の方を向き、リッチからほんの数秒程度目を離した隙に悲劇が起こる・・・
『オメガ様後ろ!』
振り返った瞬間オメガの目の前に迫ってきていたのは銀色に輝く一筋の閃光。
リッチとオメガが戦闘をしている隙にネクロートは廃病のとある区画に来ていた。
『アレは何処かなぁ・・・発見!』
ネクロートは瓶に入っているカプセル状の薬品を棚から取り出すと、2錠ほど服薬した後再び棚に戻した。
その瓶のラベルにはЙやц等の文字らしき物が書かれているのだが、意味は不明で何て書いているのかは不明である。
『ふう・・・少しは落ちついたかな。そろそろリッチちゃんがオメガちゃん達を半殺しにしているところかな?拘束具を爆破してあげてから10分程度は経過しているし』
ネクロートは少し考え込んでいる。
リッチが区画から出ようとしたその時、上の階から爆発音が聞こえてくる。
そしてその後に続く何かを鉄に打ち付ける音も・・・
『もしかしてリッチちゃん苦戦しているのかな?これは不味いことになっちゃたかも・・・』
『こいつ気絶していたはずのなのに』
リッチの尻尾を使ってた攻撃を間一髪のところでかわすことに成功したオメガは、距離をとり反撃しようと試みる。
『がっ!?な・・・なに』
鉛色の拳が視界に入ってくる。
次にオメガの視界に入ってきたには鉄の壁、そして全身を襲う痛みと血の味・・・
オメガはとっさの行動で顔面への攻撃を防いだが、ガードに両腕を使ってしまった為に腹部ががら空きになってしまった。リッチはそのチャンスを見逃さずに腹部へと蹴りをくらわせ、オメガを吹き飛ばした。
『オメガ様!?』
『姫子下がって』
オメガの元に駆け寄ろうとしている姫子をパルパトは止めにかかる。
『なぜ、こうゲきをスルのです?』
リッチの口から疑問の声がこぼれ落ちる。
まるで何故攻撃をしてくるのかわからないようで、本当に不思議そうにしている。
『オメガから離れて!』
パルパトは嘆きの凶弾でリッチを狙撃する。
先ほどまでパルパトの弾丸をかわしていたリッチなのだが、今回はかわせずに左胸部分に着弾してしまった。
『こレハ・・・』
『オメガ様の敵がぁぁ!』
パルパトが嘆きの凶弾で狙撃している間に姫子はリッチに向かって突進していて、腰に装備しているナイフを抜き出すと、リッチの首もとに目掛けて攻撃を繰り出す。
攻撃は成功したのだが、リッチの機械侵食者化した筋肉に傷を付けることは出来ずに刃が欠けてしまう。
『何故、動けナイ・・・』
『オメガ様』
『姫子、す、すまない』
混乱しているリッチを他所に攻撃が通じないとわかった姫子は、オメガを抱き抱えてリッチとの距離を保つ。
『こいつ何故あの怪我で動けるの?』
パルパトは嘆きの凶弾をリロードし直すと、オメガ達の方に駆け寄りオメガに薬を注射する。
基本的に侵食細胞は傷付き、体力の落ちた者は使用しない決まりになっている。解除しなければ侵食細胞に肉体が蝕まれ、細胞が変化した部位が2度と動けなくなるからだ。
『パルパトありがとう。助かったぜ』
『でも不味いわよ。私の嘆きの凶弾の残り残弾数は2つ、それにこの弾丸で身動きを封じれる時間は5分程度。彼奴は特別耐性が高いと思う』
ぐったりとしているオメガに姫子が支える感じにしている。
『姫子、パルパト少し手伝ってくれないか』
オメガはぼそぼそとかすれ声でじゃべりだす。
そしてふらふらと立ち上がったオメガはリッチの方に進んで行き、リッチと会話が成立する距離に近づく。
『おい、リッチお前は何者だ?』
オメガはリッチに語りかける。何故今さら質問をするのか、言葉が通じないはずなのに。
『私ハ、リッチ・・・偽りの名のひとリ。貴方達モ偽りの名なノに何故、なかまのワたしヲ攻撃するのデスか?』
『仲間ですって!?最初に攻撃をしてきたのは貴女の方ですよ』
『違う!貴方が私ニ薬ヲちゅうしゃしようとしたかラだ!私はマダ戦える。ヴィゼイアス様は私ニこの場を預けルと言ってクダさったのだ』
『どういうことだ!?』
『言っていることがわからない』
リッチは何故かオメガに襲いかかったことも、オメガ達と戦ったことも覚えていないのか必死に誤解を解こうとしているが、オメガ達も言っていることがわからないようで話は全く噛み合っていない。
『ふざけるナ!貴様モ仮面をツケテいるのなら偽りの名のはずダ』
『あぁ、そうだぜ!俺は偽りの名O オメガ』
『私は偽りの名P パルパト』
『ダったら何故私に薬を射とうとスル。マサか!?裏切りか?』
『裏切りは俺達じゃなくて、神化の名と名乗っている奴のことだ。
俺達はそいつを追ってここまで来たんだ』
『そして貴女と出会い。貴女が最初にオメガ様を襲ってきた』
『チガう!?私は襲って何ていない第一に、神化の名ナンテ知らない』
『な!?まだ言いますか?』
リッチは先ほどのとは一転してオメガ達と会話が成り立っている。そしてどうやら神化の名のことは知ってはおらず、未だに不確定なことが多い。
『貴様ラ、ここの私を侮辱スルのか?』
『貴女さっきから言っていることが私達と噛み合っていない。
もしかして貴女・・・ねぇリッチさん1つ質問していいですか?』
『・・・どうぞ』
姫子とリッチが言い争っているのをパルパトが割ってはいる。
落ち着きを取り戻したのかリッチは素直に質問に答えてくれそうだ。
『ヴィゼイアス様とは誰ですか?』
『なっ!?キサま、我々偽りの名の中でも1.2を争う実力である。
偽りの名V ヴィゼイアス様を知ラナイだと!?』
『おいおい、最強は偽りの名X イクサ様だろ誰だそいつは?』
『私は知らないですね』
『ナンダと・・・』
リッチが言ったヴィゼイアスという偽りの名は現在存在しない。
そしてリッチの反応を見るにリッチが言ってことは本当のようだ。
『貴様ラの言う・・・偽りの名X イクサなどというなハ私は知らナイ。そして私の知っている偽りの名V ヴィゼイアスは貴様ラは知ラない。何故だ?』
リッチはかすれタ声でオメガ達に問いかける。その声には最初の警戒心も、オメガに対する怒りも感じられずにただ答エを知りたいただそれだけだった。
『姫子。手鏡を貸してくれない』
『どうぞ』
姫子は自身の持っている鞄から手鏡を取りだしパルパトに手渡す。
それを受け取るとパルパトはリッチの方へ向けて、地面を滑らせてるように投げる。
『リッチさん。この手鏡で今の貴女の顔を確認して見てください。どうして私達が貴女と敵対しているのか、その理由がわかるはずです』
リッチは姫子の手鏡を拾いあげ確認する。
そして手鏡がリッチの手元を離れ地面に落ちて砕け散る・・・
『ナンダこの顔は・・・なんなんだこの姿は!?』
リッチは地面にペタリと力なく座り込み、自身の変わりきった姿を再確認する。リッチの身体にはオメガによって斬られた大きな傷痕、そして爆発によって傷ついた痕の場所はすべて皮膚が無くなって、機械侵食者化した鉛色の筋肉が見えている。
そこには元の少女の面影はない、ただの変わり果てた化け物が涙を流していた。




