涙ハ枯レズ声ハ届カズ
(こ、ここハ何処・・・誰かイルの? 動け・・・な・・イ)
暗く何も見えない場所から光が差し込まれる。
いったいここは何処なのか、何故身体が動かないのか。何も分からない状態で目を覚ましたリッチ。
自身の身体が機械侵食者になっているのも分からないまま、リッチの意識とは関係なしに身体が動いてしまう・・・
『何だこいつは?』
『もしかして偽りの名の1人ですか?』
『Rの仮面・・・』
パルパトは地下に降りる前に姫子から貰った予備の弾丸をこめ終えると、嘆きの凶弾を構えいつでも撃てる態勢に入る。
オメガ大斧を構え、姫子は周囲に予備の伏兵がいないか確認をする為に辺りを見回している。
『この子は偽装機械侵食者と言って、偽りの名としての力を発現可能にした機械侵食者化した者です』
『偽りの名の機械侵食者化だと・・・』
オメガは持っている大斧に力をこめる。
当然である。
現状で偽りの名の機械侵食者化などデータにはない。
つまり今この瞬間オメガ達は未知の驚異と対峙することになってしまったのだ。
『ちなみにその子の侵食能力はそのまま使えるよ。そして機械侵食者としての身体能力も』
突如銃声が響きわたる。
銃声の発信源はパルパトの嘆きの凶弾で、銃口をからは煙が出ていているので発砲していることがわかる。
『パルパト!?』
オメガが声を荒らげてパルパトを注意する。嘆きの凶弾でリッチを狙撃したはずなのだが、狙撃されたはずの胸部からは血が出ていない・・・
『少し指が動いた。攻撃してくる前に動きを止める』
『パルパトちゃん気が早いですね。
今回の行動は正解ですが・・・ちょっと威力が弱いですね。その程度じゃリッチはまだ活動可能だよ』
リッチの入っているカプセルの硝子が割れ砕け散り、今まで動けない状態でいたリッチが動きだす。
リッチはオメガ達、偽りの名と同じような仮面を着けて、人の頭蓋骨を模様した仮面、頭部からは鬼のような角が2本突き出していて、右の頬にあたる部分にはRの模様がある。
両手を拘束具で拘束されておりぼろぼろの薄いワンピースを着ている。首もとには首輪らしき物、胸の辺りから腰にかけて2つに分かれた鎖が背中にまで延びている。
先ほどまではカプセルに入っていた液体で見えずらかったが、背中にはコウモリのような翼と腰部分からは蜥蜴の尻尾のような物が生えて、翼は鎖によって締め付けられているので大きさは分からないが、尻尾は地面についてから1m程度の長さがある。
『動きだした・・・』
『先手必勝!先に潰す!』
オメガはリッチが動きを出すより早く攻撃を仕掛ける。
右から木を切る様に一刀両断の構えから繰り出される攻撃を受けリッチが吹き飛ばされる。
ガードや回避といった行動を一切せずに吹き飛ばされたリッチ。反応出来なかったのかそれともわざと攻撃を受けたのかは分からないが、リッチは崩れ落ちるた瓦礫の中から起き上がる。
『あ、あキあぁァ。い、イたい』
リッチは聞き取りずらい声で何をしゃべってはいるが、その声がオメガ達に聞こえることはなかった・・・
『パルパト、姫子、彼奴の右腕部分を見てくれ』
『オメガ様アレって!?』
『まさか・・・』
オメガはリッチに攻撃を仕掛けた後、パルパトと姫子の元まで戻ってくると確認するように問いかける。
『アレはもしかして皮膚が機械侵食者しているのですか?』
『いや、アレは皮膚じゃなくて筋肉だと思うぜ』
姫子は気味悪そうにリッチを見つめる。
リッチはオメガの攻撃で皮膚の一部が剥がれ落ちて筋肉が剥き出しになってしまっている。剥き出しになってしまった筋肉は赤い色のはずなのだが、リッチの場合は鉛色のようになっていて、機械侵食者特有の金属質な輝きを放っている。痛そうにオメガによって傷を付けられた場所を押さえている。
ダメージを負ってはいるが、戦闘不能というわけではないいうだ。
『かなり不気味ですね・・・』
『もう一度撃つ。オメガ避けて』
パルパトは再び嘆きの凶弾を構えて、発砲態勢を整えようとしたその時。
突如爆発音が響きわたる・・・そして聞こえてくる苦痛な叫び声。
煙が晴れて辺りの視界がクリアになってきた。
そして爆発音がした場所には先ほどのオメガ達と対峙していたリッチが地面に倒れていた・・・
『オメガ様何かしましたか!?』
『いや、俺は何も・・・』
『私も何もしてない』
突如爆発したリッチを不思議そうに見つめる3人。
当然である。いくら機械侵食者化したとはいえ、自然界で人間が突然爆発するなどありえないのだから。
『あぁぁ!?イたい。痛い』
爆発したリッチから悲痛な叫び声が聞こえてくる。
煙が晴れて現れたリッチの拘束具はぼろぼろに砕け散り、リッチはぼろぼろに傷ついた翼を拡げ煙を祓う。
リッチの身体は全身のあちこちに爆発によって出来た傷痕があり、皮膚が焼け爛れたことによって内部の機械侵食者化した筋肉が痛々しく見える。
『拘束具が爆発したのか?』
『酷い・・・』
拘束具が爆発したことによって自由になったリッチは周りに居るオメガ達を観察している。
『さぁ。リッチちゃんオメガちゃん達を倒してね。
オメガちゃんて言うのはあの大斧を持った偽りの名で、白い翼を生やした偽りの名はパルパトちゃん。
そんでそこに居るもう1人の女は別に殺してしまってもいいや。オメガちゃんとパルパトちゃんは半殺しで止めておいてね』
ネクロートが指示をだし終えるとリッチはオメガ達に向かって飛びついてくる。
爆発したダメージは未だに癒えていないにも関わらず、まるで痛みがないかのように全力で向かって攻撃を仕掛ける。
体重を乗せた重い一撃や、傷ついた右足による蹴り、尻尾を使っての奇襲攻撃等を繰り出してオメガを仕留めようと攻撃してきている。
その攻撃をオメガは大斧でガードや回避等をして反撃しているのだが、オメガの大斧による鉄をも一刀両断する攻撃をリッチはガードもせずに攻撃に専念しているだけである。
『ガードの概念がねぇのかよ』
『私のライフル銃による銃撃もまるで効いていないようですね。
パルパト様、鉄格子は破壊できそうですか?』
『駄目、これは機械侵食者化した大型動物の骨を使っている。オメガの大斧でなら破壊できるかもしれないけど多分何回か攻撃しないと無理かも』
オメガがリッチの相手にをしている間に、パルパトは孤爪を使って鉄格子を破壊できないか試みてはいるのだが、どうやらパルパトの孤爪では破壊することが出来なく苦戦をしている。
『でも、こいつの攻撃をかわしながらの破壊は無理じゃないかな?
それに、俺はパルパトと違って空中で踏ん張りなんてきかねぇし』
オメガはリッチの攻撃さばきながらパルパトの方向に目線を送る。
そんななか、姫子はオメガとリッチの戦闘が激しいのか未だに攻撃に参加できずにいた。
『だったらやることは1つ。オメガ私も参加する』
『助かるぜ』
パルパトが空中から舞い降りると、孤爪でリッチを両腕を拘束しようと試み、オメガはリッチの動きを止める為にレベル2になって反撃を開始する。
『レベル2だぜ。姫子、援護を頼む』
オメガはレベルの能力でリッチと距離をとる為に空気弾を発射する。
リッチが吹き飛ばされたのを確認すると対機械侵食者用の手榴弾を放り投げて援護する。
何もされていないのに突如吹き飛ばされた事に混乱しているリッチは、姫子の投げた手榴弾に対して反応が遅れてしなったのか、手榴弾の爆撃範囲から逃れられずにくらってしまう。
『あ、ぐっく』
爆撃の痛みで悶えているリッチに対してパルパトは孤爪を使い両腕を拘束することに成功した。
しかしそれだけではない、パルパトは空中に飛び上がるとそれに釣られて両腕を拘束されているリッチも浮き上がり、およそ5mの高さからリッチを硬い鉄の上に叩き落とす。
『がぁぁぁ!?邪マ・・・だ。どけ』
辛そうに叫び声をあげると、リッチは拘束されている両腕を地面に向かって振りかざし、パルパトを地面に引きずり下ろそうとする。
『これなら!』
姫子はリッチに向かって銃弾を浴びせるが、リッチは怯まずに攻撃を続行しておりパルパトは空中での踏ん張りが効かなくなったのかバランスを崩してしまう。
『パルパト!孤爪をパージしてくれ後は俺が殺る』
『了解。オメガ!』
『白鉄の剣山!』
オメガは能力を使用してリッチに斬りかかる。
オメガは大斧で斬りかかると同時に、追加攻撃で斬りかかった瞬間に圧縮された空気を大斧の刃の付いている部分とは逆部分から噴出させ、最初の攻撃よりもより一層強力的になった斬撃をくらわせる。
『やったか?』
『姫子。油断しないで』
オメガの攻撃をくらったリッチは勢いよく壁にぶつかると、鉄の壁を変形させ衝撃で締めてあったボルトや金具が吹き飛ばされ、土の部分まで衝撃が伝わったのか土煙が巻き上がる
オメガは一端パルパト達の方向に戻る。
パルパトは孤爪での攻撃から嘆きの凶弾に切り替え、姫子もライフル銃に装填をすませリッチが動くのを見極めている。
『オメガ。空気弾で煙を』
『了解』
そう言うとオメガは空気弾をリッチの吹き飛んだ場所に飛ばし煙を晴らす。
『こいつは!?』
『この子が偽装機械侵食者の正体・・・』
『まだ私達と変わらないくらい』
煙が晴れて現れたリッチの姿は、胸の部分から顔にかけて斜めに横断する形でオメガの大斧で斬られた傷痕が生々しく残っていて、仮面も左の半分以上が壊れている。
壊れた仮面からはリッチの素顔が露になり、そこにはまだ10代前半くらいの顔立ちをした少女が倒れていた。




