屍カラ這イ出ル者
動きだした団子虫型の機械侵食者はネクロートとオメガの間で奇妙な行動をしている。
さっきまで逃げる為に地面に穴を掘っていたのだが、今は何故かもぞもぞとその場で動いたいるだけだ。
そんな奇妙な行動をしている団子虫型の機械侵食者を倒す為に大斧を手に取り、レベル2の能力で一気に距離を縮めるにかかるオメガなのだが・・・
『邪魔だ!』
オメガはネクロートの前に立ちはだかる団子虫型の機械侵食者を、大斧を一刀両断しようと上段から振り降ろす。
『うぇ!?なんじゃこりゃ?』
団子虫型の機械侵食者を一刀両断したオメガは、奇妙な感触にみまわれる・・・
通常虫型の機械侵食者を斬った場合、侵食した外皮部分は鉄と同等の強度に変わるので通常ならば硬い感触なのだが、何故かこの団子虫型の機械侵食者の外皮は柔らかくまるで普通の虫のように・・・
『パルパト!』
『わかってる』
パルパトはオメガを弦爪で絡めとり後ろに下がらせる。
斬られた団子虫型の機械侵食者の内部から白いもぞもぞと動くものが這い出てくる。
『うぇぇぇ!?まさかあれって?』
『蛆虫・・・』
斬られた団子虫型の機械侵食者から這い出て来たのは30cm程の蛆虫である。
しかも一匹だけではない。はっきり言って数える気にはならないが10や20どころではない蛆虫がもぞもぞと動きまわっている。
『少しくらいは時間を稼げるかな?
さぁ!羽化の時間だよ』
ネクロートが右腕のガントレットに嵌めてある宝石を取りのぞくと、謎の赤い液体が入った玉を宝石の嵌め込まれていた部分に嵌め込んだ。
そしてネクロートがガントレットの一部の歯車が回転させると、出ていた注射器が引っ込み別の物が出てくる。
それはスプレーのような形をしていて蛆虫に向けて吹き掛けると、通常であれば蛹になる筈の蛆虫が蛹にならずにそのまま蠅へと変化していく・・・はっきり言ってキモい。
『ご、ごめんパルパト・・・俺蛆虫はちょっと無理。蠅に変わったら教えてくれ』
オメガは堪えきれないのかパルパトの背中の後ろに隠れる。
『頼むから吐かないでよ』
パルパトが少し呆れ顔でオメガの頭を撫でる。
『あらあら?オメガちゃんは虫が苦手なのかな?
ねぇねぇ、今凄いんだよもぞもぞと動いて必死に羽化しようとしているの』
『何も聞こえないです!だから喋らないで!!』
オメガや両耳を抑えながら聞こえないというポーズをとっている。
『邪魔!』
パルパトは嘆きの凶弾で再びネクロートを狙撃しようと狙いをさだめて・・・撃つ!
しかし、羽化仕立ての蛆虫型の機械侵食者が遮るように飛び込んで来たので不発に終わってしまった。
そして約20匹の蛆虫が羽化し蠅へとなった。
それだけではない。羽化した蠅は既に機械侵食者化しており、鉄色や銅色に輝いている。
『オメガ。蛆虫は全部蠅になったよ』
『そ、そうか。パルパトすまなかった』
『大丈夫』
オメガはパルパトの背中から恐る恐る顔を覗かせ確認をする。
『さて、オメガちゃんとパルパトちゃんの相手はこの子達にしてもらって、私はちょっと帰ろうかなぁー
(時間的に少し余裕はあるけど念のために早く帰ったほうがいいよね)』
そう言うとネクロートはオメガとパルパトに向かって手を振りながら逃げようとしている。
『おいおい。俺達を倒すんじゃなかったのかよ?』
オメガは大斧を突き立て威嚇している。パルパトは嘆きの凶弾を背中に担ぎ直して、弦爪で相手をしようとしている。
『ごめんね。オメガちゃんにパルパトちゃん。時間だからもう帰らなきゃいけないの』
ネクロートを守るように蠅型の機械侵食者がオメガとパルパトの邪魔をしている。
あまり大きい分類ではないが20匹程度、しかも飛行できるタイプとなかなか厄介だ。
『残念じゃがそれは無理じゃ』
『だーれー?』
ネクロートは声のした方向に振り向く。
その先にはトトと姫子がそれぞれ武器を構えていた。
仮面を着けているので顔は分からないが・・・その特徴的な仮面と格好で判断したのだ。
偽りの名の適合者はそれぞれに特徴的な身体能力と、素顔を偽る為の仮面を着けている。オメガのような近距離攻撃型、パルパトのような中距離支援型など戦闘スタイルは様々である。
そしてパルパトのような特殊複合タイプも存在する。
偽りの名T トトの仮面は右側にTの模様、そして何故か左側部分が剣道の面の様になって、本来ならばあるはずのない縦の金具が三本はいっている。
両腕には小手を嵌めていて、腰部分には鞘に入った日本刀。
トトはオメガやパルパトより侵食細胞の武装している部分が少ないのが特徴的で、現在は前線を退いているが、戦闘経験はオメガやパルパトよりも上でネクロートよりも上であるかも知れない・・・
『偽りの名T トト
それに誰ですか?その子は?』
突然出てきたトトと姫子に対して不快感を感じているネクロートを他所に、トトと姫子は会話をし始めた。
『遅れてすまんのぉオメガ、パルパト少しばかり説得に手間取ったわい』
『オメガ様、パルパト様お怪我はないでしょうか?』
『大丈夫だぜ』
『問題ない』
『ねぇ。無理しないでよ』
ネクロートは蠅型の機械侵食者の一匹に指示を出し姫子に攻撃を仕掛ける。
しかし、蠅型の機械侵食者は姫子に攻撃することなく倒れ込む・・・
蠅型の機械侵食者は一刀両断され、無惨にも斬られた胴体と頭がもぞもぞと動いている。
『相変わらず凄い居合いですね・・・』
トトの鞘からは蠅型の機械侵食者らしき血が鞘から滴ってる。
しかし不思議なことに本来であれば機械侵食者と対峙した時に出る筈の、金属音が一切聞こえなく刀剣も見えることはなかった。
『この蠅型の機械侵食者は儂が引き受けよう。姫子ちゃんはオメガ達と共に奴の相手を』
『分かりました』
トトが姫子に指示をだしている間にネクロートはそそくさとこの場を後にして、前線を離脱してしまっていた。
ネクロートを守る為なのか、蠅型の機械侵食者は攻撃を仕掛けようとはせずに警戒しているばかりだ。
『でもトトじぃ、どうやって彼奴らを撒くつもりだい』
『こいつを使うんじゃよ』
そう言うとトトはポケットから瓶に入れられた赤い液体を取り出す。
『そいつは?例のアレかい?』
『そうじゃ。まだ実験段階じゃがこれを使用する。使用したらわかるなオメガよ』
『了解だぜ。パルパト、姫子を運んでやってくれ』
『了解』
『パルパト様お願いします』
各々がそれぞれ行動を開始する。
オメガはクラウチングスタートのポーズを、姫子はパルパトに抱きつく形だが左手を自由にしていて、ライフル銃で狙撃できるようにしている。パルパトは左手で姫子を抱きしめ、右手には弦爪でできた盾を装備している。
『いくぞ・・・3・2・1今じゃ!』




