壊レタ歯車
フリーは速さを生かした攻撃を繰り返していたのだが、グリーゼスの鎖を使ったカウンター戦法の前になかなか攻めきれずに苦戦をしいらている。
攻撃を繰り出してはガードされての繰り返しに、痺れを切らしたフリーは苛立ちを抑えきれずにいた。
『うざったい鎖ですね』
フリーは速さに任せた連撃で仕留めようとするのだが、重さの乗っていない攻撃はではグリーゼスの鎖を弾くだけで、なかなか本体へ攻撃出来ずにいた。
『ふん!』
グリーゼスは巨大化した両腕を地面に叩きつける。すると、その場がクレーターのように凹み土埃が舞い上がる。
『目潰し・・・効きませんよ』
グリーゼスは土埃を巻き上げた直後にガードに使用していない方の鎖を使用して、フリーを束縛しようと試みるが、一瞬で後方へと飛び退き回避する。
やはり偽りの名最速のフリーを束縛することは出来なかったようだ。
『やはりこの程度では捕まえられぬか』
『当然ですよ』
グリーゼスとフリーが再びにらみ合いをしていると、何処からか砲撃のような音が聞こえてくる。
『あれは・・・本部の方角か』
グリーゼスとフリーが聞いた音の正体は、帝の軍勢特別強襲部隊から上げられた信号弾で色は黄色のものだ。
『連絡待ち。そうか定時連絡をしておらんからか』
数分前・・・特別強襲部隊地上部隊仮拠点。
『撃ち方止め!』
ルガルドが指揮をしている部隊が射撃を止め、機械侵食者の殆どが動かなくなっているのがわかる。中には四肢がもげている者や完全に朽ち果ている者等、機械侵食者の進撃が止まった事がわかったので射撃を止めさせたのだ。
『動かなくなりましたね』
『あれだけ撃ちこんだんだもう殆ど生きていないんじゃないのか?』
『今の撃ちに残弾確認しておきましょう』
『そうね。弾切れで迷惑はかけたくないもの』
射撃を止めた帝の軍勢達はそれぞれ会話をし始める。
『・・・まだ数匹生きているな』
ルガルドが双眼鏡で動かなくなっていると、機械侵食者の残骸の中で微妙にまだ息のある機械侵食者を見つけて、追撃の射撃をするように指示をだす。
『ルガルド少佐!』
『どうしました?』
『他の機械侵食者がこちらに近づいて来ている気配は無いです。それとアルゲイト中将からの連絡で、グリーゼス様と同行していった部隊からの定時連絡が無いそうです』
ルガルドとは別の方向を見張っていた隊員が異常無しと報告しにくる。
『そうか・・・こちらは片付いたとアルゲイト中将に報告してくれ。それとグリーゼス様の部隊に派遣するかどうかは、アルゲイト中将の指示に従ってくれ』
ルガルドが話していると、仮拠点の方から黄色の信号弾が打ち上げあれる。
『仮拠点の方からか。いちよう我々も連絡をいれよう』
そう言うとルガルドは手元にある信号弾用の銃で、青色の弾丸を込めて打ち上げる。
『各隊員に通達!再び機械侵食者との戦闘の可能性あり。次の指示があるまで体を休めているように』
『また信号弾!?それも先ほどとは少し離れてた場所からじゃと』
黄色の信号弾が打ち上げられた後、数分後に青色の信号弾が打ち上げられている様子をグリーゼスと同じくフリーも見ていた。
『おいおい。こっちに来ていたのはあんただけじゃないのかよ』
『さてどうかのう・・・』
『っち。はぐらかしやがって』
フリーの問いかけにグリーゼスは適当に答える。
しかし今のでグリーゼスの後方に最低でも複数の部隊が、いることがバレた可能性がある。
明らかに不機嫌になったフリーは再び攻撃を仕掛けようと、後方に飛び退き距離をとる。
フリーとグリーゼスの距離は約50m程度・・・フリーは腰を落とし、神経を両足に集中させてクラウチングスタートの構えに入る。その姿はまるで獲物を狙う野生動物のようだ。
(まずいの・・・後方部隊にこ奴を合わせるわけにはいかん!あいつらでは対処出来んかもしれんし)
グリーゼスも攻撃の体勢の構えにはいる。こちらはフリーとは対象的に腰を落とし、左右に素早く動けるようにしてる。挑発しているのか先ほどまでガードしていた腹部や顔等はガードしていない。
フリーは右足に力を込め、一気に解放させる!
その反動でグリーゼス程ではないが地面にひびがはいりへこむ。しかしそんな事は重要ではない、全身バネを使ってスタートダッシュをしたフリーは瞬く間にグリーゼスに迫ってくる。
まばたき等しようものなら一瞬で刈られてしまうであろう攻撃だ。
(速い!?あのときより断然速くなっておる!)
グリーゼスも迫り来るフリーにカウンターを使用と右フックで応戦するが、片や全盛期の動きと同等の反応速度。片や全盛期より衰退してしまった反応速度ではやはりまだ若いグリーゼスの方に軍配が上がる。
グリーゼスのカウンターを軽々とジャンプで交わすと、フリーを飛び越え後方に到着する。
(まずい!?かわされた!仮拠点の方へ行かせてはならん)
グリーゼスが瞬時に振り向き確認をしようとする。
『っぐ!?』
グリーゼスの腹部に激痛が込み上げてくる。見てみると腹部にはフリーの右足がめり込んでいた。しかしグリーゼスの鍛え上げられた肉体と両肩の鎖を地面に突き刺し、錨の様に使用してその場に留まる。
(マジかよ!?グリーゼスの野郎この蹴りで吹き飛ばねぇだと!)
『甘いわ!』
『しまった!』
グリーゼスは腹部に蹴り込まれた右足を掴むと、思いっきり地面に叩きつける。
『っぐ。が、あぁ』
叩きつけられたフリーから悲痛な叫びが聞こえてくる。
そして続けざまに左手で殴りかかる。
『っく、そ・・・が』
フリーは力ずくで右腕を振りほどき後方に飛び退く。
後退したフリーは腹部を抑えながらグリーゼスをにらみつけていると、口元から血が垂れてくる。どうやら先ほどの攻撃でガードの薄い腹部を、狙われた為に吐血したのであろう。
『はぁ・・・はぁ・・・油断しましたよ』
『そうじゃろうのう。儂が先ほど信号弾でうろたえたと思ったのか?
それともお主の方が速いから、儂が老いてしまったから殺せるとでも思ったのか?』
フリーは苦虫を噛み潰したように顔をしかめる。
『そうですね。やはり貴方は強い・・・なのでこれを使わせてもらいますよ!』
フリーは自身の上着をその場に落とすとポケットから、直径5cm程の緑色の水晶らしき玉を取りだし、食べた。
『・・・!?なんじゃさっきのは?フリーの奴何を口にしたのじゃ』
『あぁ・・・う、ぐっ!?これは結構き、きついぜ』
フリーの体に両足と同じように機食細胞の鱗模様が両腕に現れる。しかしそれだけではない、先ほど食べたであろう緑色の水晶玉が心臓部分には張り付いている。
『あぁぁぁ!?ぐっ、ぐふ』
侵食細胞は次第に体全体を侵食していき・・・全身が緑色をした化け物へと変化していくなかで、かろうじて口元より上の部分は侵食していないのだが、フリーの目付きは異常なものへとなり変わってしまった。
瞳はまるで肉食動物のようになり、両腕はグリーゼスと似ているがグリーゼス程の太さと長さはない。
しかし注目すべき部分は瞳でも、両腕でもなく、両足である。
フリーの両足は先ほどとはまるで別物、そう例えるなら昆虫の飛蝗の後ろ足である。通常の人体とは逆に曲がった関節、侵食細胞によって青銅色に輝いている棘がフリーの殺気を具現化したかの様になっている。
『こいつはいぃ!最高の気分だ』
フリーは足元にある上着を再び着直すと、グリーゼスを視界に捉える。
『まるで機械侵食者じゃな・・・貴様は何をしたのじゃ?』
『私が取り込んだのは侵食細胞を活性化させる丸薬のような物です。これによって姿は異形の者へと変化してしまいましたが、大した問題ではないのです。
全身から湧き出てくるこの力・・・実に素晴らしい』
そう言い終えるとフリーは近くにあった残骸を蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた残骸の大きさは、大体2m程度で幅は大体10mm程度の錆び付いた鉄板らしき物なのだが、蹴り飛ばされた衝撃で大きく凹み、50m程度吹き飛ばされた。
『これなら貴様はを倒せる!!』
そう言い終えるとフリーは一気に跳躍しグリーゼスの元まで攻めいると、無防備な腹部へと重い一撃をいれるが、グリーゼスのとっさの行動で後ろへの跳躍と共に左手でガードした。
(ぐ、くそ!?今の1撃で左手が)
後退したグリーゼスの左手、丁度手の甲の部分が大きくひしゃげ血が滲んでいる。鋼以上の硬度をもつグリーゼスの両腕だがまるで意味をなしていないようだ。
『おぉ!?流石はグリーゼス。仕留めるつもりだったのだが、まさかかわされるとは』
苦痛に顔をしかめているグリーゼスに対してフリーは称賛を送る。
嘲笑うような称賛を・・・
『能力解放レベル2!! 再炎の紅剛!』
グリーゼスの両腕が赤い炎のような紋章が刻まれる。そしてフリーの一撃によって負傷した左手の傷が、みるみうちに癒えていき、再生した・・・
『ふっ・・・私に化け物だといっておきながら貴方もさほど変わらないと思いますが、グリーゼスやはり貴方も化け物ですよ。しかし衰えていますね。再生スピードが全盛期より遅いです』
『確かに全盛期より衰えておる。しかし・・・』
グリーゼスが仕掛ける。縮地と呼ばれる技法を使い一気に距離を詰めより、右腕による強力な一撃を放つ!
しかしフリーもかつては偽りの名として前線で戦ってきた人物、一瞬の出来事で油断したとはいえ回避することは余裕である。
そう慢心さえしていなければ・・・
『がっ・・・な、なんで!?』
強烈な痛みが腹部を襲い視界が逆転する。自分が今どのような状況か掴めないまま、吹き飛ばされたフリーは4.5回ほど転げ回った後で体勢を立て直して辺りの状況を見定めようとする。
グリーゼスは吹き飛ばされたフリーに再び攻撃を繰り出そうと接近する。
(ち、不味い!?)
フリーは追撃してくるグリーゼスの攻撃ををかわすために、近くの倒壊したビルの屋上に飛び乗った。
倒壊して高さは10m程度しかないのだがフリーならば楽々と飛び乗ることができ、すぐさま反転してグリーゼスを視界に捉える。
(かわされたか・・・ならばこいつでどうじゃ!)
グリーゼスは近くにあったひしゃげた標識を手に取ると、そのままフリーに向かって投げつける。
(アブね!?)
迫り来る標識をフリーはかわすと、先ほど自身がグリーゼスによって吹き飛ばされは場所を見る。油断していたとはいえ何故あの攻撃をかわせなかったのか探る為に。
フリーは襲撃をされた場所を確認すると奇妙な穴ぼこを見つける。穴の大きさは人の腕程度で2つ、1つはフリーのいた位置でもう1つはグリーゼスのいた位置だ。
先ほどフリーのが一瞬動けなかったのは、縮地による接近と右腕による攻撃で注意をそちらに向けたことによって、地面の下から這い出てきた鎖に足を絡めとられたことに気がつかなかったのである。
当然である、人間は目の前に熊が近づいて来ている危機的状況中で、足元に向かって来ている蛇には気付き難い。それにそれが目に見える形であれば接近に気が付くのだが、地面の中を進むとなればなかなか気付ける者はたぶんいない。
(あの鎖か・・・やはり厄介だな)
フリーの口元から血が垂れてくる。先ほどの攻撃によって負傷したのであろう、いくら全身を鎧ので硬めたとしても痛いものは痛いのだから。
『吹き飛べぇぇ!!砕鎖拳!二撃!』
『ふぁ!?うそでしょ!?』
倒壊したビルに向かってグリーゼスが鎖を纏った拳で殴りかかると同時に、皹の入った箇所に向かって鎖を撃ち込み再び左手で追撃の一撃をあびせる。
はつりをするときと同じように撃ち込まれた鎖は皹を拡げ、やがてビル全体へと皹がいき通り崩れ始める。
『どれだけおおざっぱなんですか。危ないですよ』
倒壊したビルから逃げることに成功したフリーは、グリーゼスの方に向けて話しかける。
砂埃で見えないが・・・
『多少の無茶は仕方あるまい』
砂埃がはれて倒壊したビルの瓦礫を退けてグリーゼスが出てくる。
何故か頭から血を流して。




