木ノ上ノ梟、金色ノ兎
イクサが提案した討伐作戦まであと10日程度、ジョスパーは今日も気儘に結界塔を守護するしている。
ジョスパーはあまりにも暇なので結界塔の最上階でうたた寝をしてしまった。
本日結界塔の警備をしている2人は知らないまま。
結界塔木得 最上階
結界塔の最上階は灯台のようになっており、光源の変わりに巨大な望遠鏡の様なものがついていて、機械侵食者が結界塔に近づかないか常時監視していて、常に2人1組で行わなければならない決まりになっている。
現在は昼過ぎ、望遠鏡を覗いて警戒中の土御影竜之介はこちらに接近する黒い点に気がついた。
『あれは・・・鳥型の機械侵食者が2匹!』
『なに!?他に地上からの奇襲は!?』
『・・・ありません。鳥形の機械侵食者のみです』
結界塔 最上階で警護している帝の軍勢、時実優と土御影竜之助は鳥型の機械侵食者を知らせる為に警鐘を鳴らそうとするのだが・・・
『時実、土御影鳴らさなくていいよ』
結界塔 最上階で警護している筈の時実と土御影の後ろから声が聞こえてくる。
『ヤッホー。時実、土御影お勤めご苦労さん』
何時からいたのか偽りの名J ジェスパーが時実と土御影の後ろに立っている。
『ジェスパー様!?どうしてこのような場所に?』
『やぁ・・・暇だったから寝てたら何だか騒がしくなってきてさぁ。それでね、起きてみたら時実と土御影が慌ててたから何事かと思ったの?
ねぇ。敵ってあのこっちに向かって来ている鳥型の機械侵食者だけなんでしょ?』
ジェスパーは眠たそうに欠伸をしながら、鳥型の機械侵食者がくる方向性を見つめる。
常人からでは小さな黒い点に見える程度の物を指差しながら。
『はい。その他にこちらに近づく機械侵食者はおりません』
『わかった。じゃあ私が倒しちゃおっかなぁー』
ジェスパーは時実と土御影の前に出て身を乗り出す様なポーズをとり、周りの時実と土御影は左右に分かれ敬礼する。
『ちょっと運動したいと思っていたの。あの子達なら少しは遊べそうかなぁ?
ねぇ。どう思う?』
ジェスパーは後ろに振り向くと、わざとらしく小首を傾げる。
『ジェスパー様のお好きなように。あの距離でしたら我々はまだ手出し出来ませんので』
『それじゃ私、ちょっとあの子達と遊んでくるね。時実、土御影は引き続き警備よろしくね』
『いってらっしゃいませ』
時実と土御影は共にジェスパーに敬礼をする。それに対してジェスパーは時実と土御影に手をふり、結界塔から飛び降りていった。
『さぁ!潰させてもらうよ!
偽りの名J 機食細胞解放!』
機食細胞を解放したジェスパーはミミズクを型どった仮面を被っていて、仮面の右側の目元部分にはJの模様がある。
ジェスパーの両腕部分がモコモコと膨れ上がり、白地に黒の梟柄の翼に変化していく結界塔から飛び降りたジェスパーは翼に変化した両羽を羽ばたかせその場に静止しすると、こちらに接近する鳥型の機械侵食者を見つている。
『レベル2解放・・・白金の剛爪!』
ジェスパーの両腕同様に両足も変化をはじめ猛禽類の様な足に変化する。
その姿はまるでおとぎ話に出てくるハーピーの様な姿が近いのだが、本来ならば人間なら爪の部分にあたる部分が白金に変化し、太陽光を反射していている様子はまるで刃物のように思える程である。
『弱いなぁ。鳥型の機械侵食者ってこんなに雑魚だったけ』
ジェスパーは最初の一撃で一匹倒し、続けざまにもう一匹の機械侵食者に攻撃すると致命傷をくらわせることに成功した。
そして致命傷をくらったもう一匹の機械侵食者はジェスパーに捕縛されてしまった。
『ムカつくなぁ。こんなに手応えがないんじゃ遊び相手にもならないよ』
ジェスパーは不機嫌そうにしながら捕縛した機械侵食者をどうするか考える・・・数分後何を思いついたのかジェスパーは自信の結界塔とは違う方向にに飛んでいった。
『・・・ジェスパー様が明後日の方向に飛んでいったぞ?』
『また何か余計なことをするのではなかろうか』
ジェスパーを見守っていた時実と土御影は、明後日の方向に飛んでいったジェスパーを不思議そうに見ていた。
まぁ。・・・彼らでは止めることが出来ないので見ているしかできないのだが。
結界塔金得 司令室
只今、偽りの名S シルベルトは午後のティータイムを楽しんでいた。
『シルベルト様。今日のスイーツはスフレチーズケーキ、紅茶の方はアッサムのミルクティーでございます』
『ありがとうミルフィ』
シルベルトの横にはミルフィと呼ばれるメイド服を着た女性が立っている。長くストレートな黒髪、そして糸目のせいで常に笑っているように見える。
『んー。やっぱりミルフィの作るスイーツは最高です』
ミルフィの作ったスフレチーズケーキを食べながら幸せそうにため息をこぼす。シルベルトが食べている姿は、つい先日オメガ達と会話していた人物とは思えないほど緩みきった笑顔だ。
『っん!?』
『どうなさいましたシルベルト様?』
シルベルトは食べていたスフレチーズケーキを一口ほど残すと、席を立ち窓の方に目を向ける。
『シルベルト様・・・』
『ミルフィ少し離れて。偽りの名S 機食細胞発動』
シルベルトは窓を開けると少し離れて能力を発動させる。
機食細胞によって変化したウサ耳をピコピコと動かして何かを探しているようだ。
『何かくる』
シルベルトはこちらに近づいて影を確認する。シルベルト達がいる司令室は地上から150ほど離れているのにこちらに近づいて来ているのが確認できるということは、空を飛べる生物であるということ。
そして近づいて来ている生物はかなりのスピードであるということ。
『・・・!?ジェスパー?どうして貴女がここに?それに何それ』
こちらに近づいて来たのは偽りの名J ジェスパー。
『どうしてって。そりゃ、暇なんですよ。
それでこの機械侵食者で遊ぼうと思ったんす。
本当はシルベルトじゃなくてイエスメデスに会いに行く予定だったんだけど、どうやら留守だっんですよー。
そーれーでーシルベルトなら暇だと思って来たらちょうどビンゴだったみたいですねー』
ジェスパーはキラキラした目線でシルベルトを見つめている・・・のではなくシルベルトの影に隠れて少しだけ見えているスフレチーズケーキを見つめているようだ。
『ねぇ。シルベルト あそこに置いてあるケーキとこれ、交換しない?』
ジェスパーはほぼ死にかけに鳥型の機械侵食者を指・・・もとい翼で指差す。
『いらないです。それにあれは私のです』
シルベルトはジェスパーに向けていた銃口を下げると、全然興味がないと言わんばかりに能力を解除する。
『えぇぇ。いいじゃん少しくらい』
『それよりは貴女、自身の結界塔の守護はどうしたのよ?』
『部下に任せてきた。たまには息抜きも必要でしょ』
『たまにはって』
この二人を見ていると仲の良い友達みたいに見えてくる。シルベルトとジェスパーは歳が近いということもあり最初この地に来たときはお互いに仲が良く共に助けあったり、励ましあったりすることが多かったのだがそれぞれ結界塔の守護者となると会う機会が減ってしまい、そのうえ部下が出来たことによって以前のような態度ではいられなくなったのが原因である。しかし今現在はジェスパーが半分強引にシルベルトの司令室に入ろうとしている。
『シルベルト様いいではないのでしょうか?それにケーキならまだありますし、紅茶もまだ大丈夫です』
そう言うとミルフィはシルベルトの返事を待たずに、扉から出ていってしまった。
『いい部下じゃないの』
ジェスパーは空いている窓から司令室に入ろうとするとシルベルトに呼び止められる。
『ジェスパー。それ、中に入れないでくれる汚れるのは嫌なの』
ジェスパーは死にかけに鳥型の機械侵食者をその場で捨てると、ずけずけと司令室に入ってくる。
『うぉ!?そ、空から何か降ってきたぞ』
『どうした!?今の音は何だ?』
ジェスパーが落とした機械侵食者群がるように、結界塔を守っている帝の軍勢が集まってきた。鳥型の機械侵食者は首が折れているようで、ありえない方向に曲がっている。どう考えてもジェスパーが落としたことによって曲がった感じだ・・・当然であるが機械侵食者化したからといっても、致命傷を受けてから強い衝撃を受けてしまうと普通に絶命してしまう。
『もしもし・・・はい。こちら地上警備部E班。応答を許可します』
『こいつは鳥型の機械侵食者だぞ。上空警備部は警報1つも鳴らさずにいったい何をしているんだ』
『・・・おい、こいつ死んでるぞ』
『おいおい。こっちの結界塔では機械侵食者死体でも降ってくるのかよ』
『そんな訳ないでしょ』
突如空から降ってきた鳥型の機械侵食者に対して、突っつく者や若干引いている者、上空警備部との連絡をとっている連絡班など反応は様々なのだが、鳥型の機械侵食者が死んでいると分かると若干興味を失っている。
まぁ、当然こちらに危害が無いなら警戒する必要はないから当たり前である。
『今、上から連絡があってこの鳥型の機械侵食者はジェスパー様が倒したそうだ』
『またジェスパー様かよ!?』
『なんだ?ジェスパー様はこんな事が趣味なのか?変わってるんだな』
『そんなわけないでしょ。はぁ・・・処分が面倒ね』
敵の襲撃ではない分かるとそれぞれ各々の担当区域に戻っていく。
『美味しいわねこのケーキ』
『まぁね。それより下に連絡しておいからあの鳥型の機械侵食者は掃除しなくて大丈夫よ』
『ありがとう。それは助かるー。あ、紅茶のおかわりもらえる?』
シルベルトとジェスパーは共にお茶会を楽しんでいる。
『ねぇ、本当は何しに来たの?まさか本当に暇なわけじゃないでしょ!?』
『まぁ・・・暇ではないけどもちょっとあんたの顔を見たくなったのよ』
『どうして?』
ジェスパーはシルベルトの後ろに回り込むと・・・突然後ろから抱き締めた。
『ごめん・・・少しだけこうさせて』
『ジェスパー・・・』
『シルベルト・・・何だか胸騒ぎがするの多分近い間にきっと大変はことがおきるかもしれないの』
シルベルトはジェスパーの言葉に耳を傾ける。普段はお調子者で怠け者の彼女だが、それでもシルベルトの大切な友人である。
『ジェスパー・・・』
『何してるの』
『いや、熱でもあるのかと思って』
シルベルトはジェスパーの腕を退けると、向かいあってお互いのおでことおでこをくっ付けて、熱がないかどうか確かめている。
まぁ、当然熱はないのだが。
『熱なんてないわよ。シルベルトあんたの本当に気をつけてね』
『わかってるから』
しばらくの間ジェスパーはシルベルトと楽しくお茶会をしたあと、流石に時間を空け過ぎたようで、急いで帰ってしまった。
『ジェスパー・・・あなたも気をつけてね』




